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奏〜Kanade〜
作:にっくん♪



第31話 予想外


 監査会は無事終了した。校長と生徒会長にいたっては満点評価の「A」をくれたのだ。Aが最高点、Eが最低点。ちなみに、教頭二人は「D」だったが、サークル部員は全然そんなことは気にしなかった。
 吹奏楽サークルの門出は最高のものとなった。恭一も予想外に全員が上手くなっていたのにかなり驚いていたが、それ以上に嬉しそうだった。
 ちなみに、各クラブの様子を収めたビデオというものを毎年配布しているらしい。さっそく部員全員でそのビデオを観てみた。恭一がガチガチに緊張しているのに対し、ソロを吹いた翔は堂々としている。由美子は一生懸命だが譜面に噛り付いているわけでもない。沙希は楽しそうにシンセサイザーを弾いている。雪子のホルン姿もすっかり目に慣れ親しんだものになった。ふつうは顔が見えないらしいチューバだが、楽器の角度のせいか拓真の顔がヒョコッと見えている。指を懸命に動かす春樹の姿はなんとなくかわいらしい。美里はあんなに激しい動きをしているのに息切れもしていないようだ。
 陽乃は自分の姿を見た。ちょうどソロ(恭一の指示のせいでソロになってしまった)を吹いているシーンが映っていた。
「カッコいいじゃん、朝ちゃん」
 横から雪子がニコニコ笑いながら小声で話しかけてきた。
「雪子こそ、見てよ。ちょうど夕焼けの時間帯だから真っ赤になってカッコいいよ〜」
「やだ! そんなクサいこと言わないでよ。照れるから!」
「えへへ〜。みんなカッコいいよね!」
「うん。客観的に見ると恥ずかしいけどね……」
 まぁそれもある。今までこんな風に自分を見ることなんてなかったのだから。
「今日は楽器吹く?」
 陽乃は雪子に聞いた。
「あ、今日は親が用事があるから監査会終わったらすぐに帰るようにって言ってた。それに、東先生の都合で明日と明後日は休みなんだって」
「あれ? そうなの?」
 陽乃は聞いていない。しばらく休んでいたからかもしれない。
「うん。だから木曜日から活動再開だね」
「そっか〜……その間、退屈だな〜」
「まぁ、休憩もいれなきゃ。あ、もうすぐビデオ終わるよ」
「マジ!? ちゃんと見ておこう」
 前に向き直った拍子に、翔と目が合った。ニコッと笑い返したら、目を逸らされた。
「……?」
 何か変なことをした覚えはない。なぜ逸らされたのかよくわからなかった。

「陽乃、帰らないの?」
 美里に声を掛けられた。他の部員もとっくに帰ってしまっていたが、陽乃だけは入念に楽器を磨いていた。時刻は19時半。外もすっかり暗くなっている。
「うん。もう少しだけ楽器磨いて帰るよ」
「あまり遅くなりすぎないように気をつけてね! じゃあね〜」
「お疲れ〜。バイバイ!」
 美里に手を振って見送ると、音楽室が静まり返った。
「もう少しちゃんと磨いて……」
 不意に、パターンとスリッパを床に置く音がした。
「だっ、誰……?」
 緊張してしまう。変な人だったらどうしよう。
「……!」
 思わず身構えてしまったが、扉から現れたのは翔だった。
「あれ? 佐野じゃん」
「よぉ」
 なんとなくよそよそしい感じがまだしてしまうのは気のせいだろうか。
「どうしたの? 帰ったんじゃ……なかったの?」
「あ〜うん。ちょっと用事思い出して……」
「ふ〜ん。私、もうちょっと楽器磨いてるからゆっくりしなよ」
「うん……」
 そう返事をするだけで、ちっとも翔はその後も動こうとしない。
「どしたの?」
「あ、うん……」
 陽乃はフーッとため息をついた。
「どしたのよ、ホント。佐野、なんか監査会終わってから変だよ」
「そ、そんなことないって……」
 しかし、言葉とは裏腹に落ち着きが無い。明らかに挙動不審だ。
「私、なんかした?」
「え、いや……そんなんじゃないって」
「じゃあなんなのよ。気に入らないんだけど……」
 陽乃はフイッと後ろを向いた。

(どうしよ……言わんと状況がマズくなりそう……)

「……!」
 翔は意を決して歩き出した。
「んんっ!?」
 陽乃の前に、ピンク色の袋が飛び出てきた。
「な、何コレ?」
「たっ、たっ、たっ……!」
 これまでにないほど翔の顔が赤くなっている。
「た?」
「たん、たん、たん、たん!」
「何よ? タムタムの音の物真似?」
「ちゃう! そ、その!」
「じゃあ何なのよ……」
 陽乃はフーッとまたため息をついた。
 翔は目をつむって大声で言った。



「誕生日おめでとう!!」



「えっ……」
 急な翔の言葉に、動きが止まる。
「知ってる。ホンマは5日やってこと。でも、部活が明日明後日ないから今日渡しとかんと渡しそびれそうで……」
 陽乃の顔も思わず赤くなる。
「あ、ありがとう……」
 さっきまでの自分の態度は大失敗だったのでは……。
 陽乃はふとそう思った。しかし、さらに予想外の事態へと発展する。
「あ、朝倉さぁ」
「うん……」
 
 しばらく沈黙が続く。

 プアーン……とJRの電車の警笛が聞こえた。

(やだ……! なに、この沈黙! 早く喋ってよ、佐野……!)

「朝倉さぁ……」
 翔は自分の心臓の音が高鳴っているのにさらに緊張してしまった。

(言え! 佐野 翔! がんばれ!)

 自分にダメだしをして、勢いづけて一度に言い切った。





「オレと付き合ってくんね!?」



 陽乃の顔があっという間に真っ赤になった。


誕生日プレゼントをもらっただけでも予想外だった陽乃にさらに翔からの超・予想外な一言。どうなる二人の関係……!?











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