14.もののけ全面戦争
14.もののけ全面戦争 その5
教室を後にした俺は、そのまま玄関で靴を履き替え、校門へ向かうことにした。
さすがに今週は午後の授業がないせいか、校外へ買出しに行く連中の姿が目立つ。中にはまだ昼休みのチャイムが鳴って10分もしていないのに両手いっぱいに買い物袋を提げて帰ってくる奴なんかもいる。いつの間に出て行ったんだろうか。
そんな連中を尻目に、俺は迎えが待っている校門へと向かう。そこでは、紅娘を学校までつれてきたヒビキが待っているはずだ。
すると、その校門のところで、俺は予想外な光景と遭遇した。
いつものライダースーツにサンバイザーで身をかためたヒビキは、確かに来ている。だが彼女は、そこにいる別の誰かと、なんともめんどくさそうに話をしていた。意外だったのはその相手だ。そいつの金髪巻き毛は、特に日本だと目立つから、遠くからでもそれと判別するのは造作も無い。
「証拠は挙がっているのです。くだらないことを仰っていないで、正体を現したらどうですの?」
「あんたもしつこいねぇ、あたしにゃ隠すようなことはねぇってえの」
「あなた、まだしらを切るつもりですの!?寛大な私にも限度がありましてよ!?」
「何が寛大だい、もう怒ってるじゃねぇか」
「それは、あなたが癇に障るようなことを言うからですわ!」
「そう言うお前も癇に障る物言いをしてるんだがな」
近くまで行って声をかけると、金髪巻き毛のクローディアお嬢様は驚いたようにこっちを向いた。俺に気付かないほどに、ヒビキとの会話にヒートアップしていたのか。
「あ、あなた、来ていましたの!?」
「将仁、おめぇ来んのが遅ぇよ、おかげで変なのに捕まっちまったじゃねぇか」
ヒビキは、そんなお嬢様がそうとうウザかったらしい。そんなことを言いながら俺のほうに来た。
「ちょっと!変なのとはなんですか!」
すると、いつも手に持っている扇子でヒビキのほうをびしっと指し、お嬢様が声を荒げた。
「お前のことだよ!」
負けじと俺も噛み付き返す。手が出そうになるのを、なんとか堪える。なにしろ、さっきは気にならなかったが、お嬢様のまわりには例によって何人かの取り巻きがいて、そこから少し離れて壁に背中をあずける迅がいたからだ。
「なんですって!?」
「普通、知らない奴に、いきなり難癖つけられりゃ、誰だって変な奴だと思うだろ!?」
「難癖などではありませんわ!いずれあなたは私のものになるのですから、その身辺にあるものについて把握しておきたいと思うのは当然のなりゆきではなくて!?」
「まだそんなこと言ってやがんのか、いい加減にしてくれ」
「あなたこそ、無駄な抵抗はおやめなさいな!だいたい、昨日もせっかく助けを出しましたのに礼の一言も無いなんて、あなたの人格を疑いますわ!」
「んなのてめぇが勝手にやらしたこったろうが!しかも無事解決したところに出てきて散々引っ掻き回しやがってよ!」
「それも、あなたに隙があるからですわ!」
「常時ボディーガードを侍らせてる奴が、なに偉そうなこと言ってやがる!」
そして、校門の前で口論になってしまう。
なんで俺は、こんなのにわざわざ付き合ってるんだろう。
漫画とかだと、こういう我侭放題のお嬢様は、思い通りにならない相手に惹かれるなんてぇのがパターンだが、こいつに限ってはその予想が外れそう、というか外れて欲しいと思う。もしこんなのが彼女になったら、図太い俺でも胃に穴が開きそうだ。
「のぅわぁっ!?」
そんなことを思っていたら、いきなり後ろから襟首を引っ張りあげられた。
「なぁ、将仁。口げんかするのはいいけどよ、あたしゃいつまで待ってりゃいいんだい」
俺を片手で宙吊りにしたヒビキが、俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。
いつもだったら「何すんだ」と言っているところだが、今回は願っても無いタイミングだ。
「あー、悪い悪い。つい乗せられちまった」
「おいおい、乗るのはバイクぐらいにしときなよ」
「へへ、面目ねぇ」
お嬢様をあえて無視して、俺はヒビキと話をする。気心が知れている分、お嬢様よりこっちの相手のほうが楽だ。
「ちょっと!話をしているのは私でしてよ!」
当然、自分が話の中心にないと面白くないお嬢様は俺にかみついてくる。
「俺には話すことなんざねぇ!俺は忙しいんだ!」
そう言い切ってやると、お嬢様はうっと言葉を詰まらせた。
「おっしゃ今の内だ、帰るぞ!」
「あいよっ!しっかり捕まってな!」
どうやらヒビキの奴もいいかげん飽きていたらしい。俺が声をかけたら、俺は問答無用で小脇に抱えられた。
「おりゃあああああああああああああああ!」
その直後、光景がもの凄い速さで後ろに吹っ飛びはじめた。それが、ヒビキがいきなりトップスピードにギアを入れて突っ走り始めたためだと理解するのに、ちょっとだけかかった。
ちらっと後ろを見ると、我に返ったお嬢様がなにか金切り声でわめいていた。どうやら、取り巻きたちに追いかけさせようとしているらしいのだが、ヒビキの足に人間が追いつけるはずもなく、その姿はあっという間に小さくなる。
そして、あっという間に、学校すら見えなくなった。
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