ホワイトday〜苦いクッキーは幸せの味〜
この話はボーイズラブです。苦手な方はご注意ください。
「大翔みてみて!!クッキー焼いた!!クッキー!!」
今日はホワイトデー。俺の恋人―――響はクッキー片手にはしゃいでいる。可愛い喜び方をみて、俺――大翔の頬に笑顔と苦笑を滲ませる。
ここが俺の家だからいいものの、外でこんな姿は見せたくない。
―――俺がこんなに独占欲が強い男だと響と出会うまで知らなかった。
独占欲が強すぎて響を束縛してしまいそうになるから、気持ちを抑えようとして、
「俺は甘いものが駄目なんだって」
つい、そっけない言い方になってしまう。俺が甘いものが嫌いなのは嘘じゃないから罪悪感はないけど、素直に―――有難うって言いたいんだ。
「じゃじゃーーーーん!!今回は甘くないクッキーを作ってみました!」
「はい?」
響が手にしているクッキーを見た。見た目は普通のクッキーだが……。
「だーかーら!!甘くないクッキーだって!!」
と言い張る。
それはどんなもので……。甘くないクッキーってまさか!?
「塩を入れた、とかじゃないだろうな?」
響なら大いにあり得る。なんといっても天然だからな。
「塩が入ったスイーツ、今人気だからそれもありだよね……。塩キャラメルとか塩チョコとか。そして塩クッキー?」
響は納得したように頷くが、俺はもう一度聞きなおす。
「そう言うのじゃなくて……。間違って、砂糖の代わりに塩入れてないよな?」
それを聞いた響は頬をぷーっと膨らませた。
「酷い。大翔……。僕、そんなに信用ない?」
拗ねているような仕草だが、響はすごく落ち込んでしまったらしい。どうにか機嫌を取ろうと試みる。
「そうじゃなくて。その……塩が沢山入ったクッキーを味見した響が心配だなと思ってだなぁ……」
言い訳ぽくなってしまった。
それは逆効果だったのか、響は下を向いてしまった。
………ヤバい。
俺は直感的にそう思った。
下を向いている時の響は相当ショック受けてるとき、悲しい時だけだ。その仕草を見てしまえば断れるものも断れなくなってしまう。しょうがないと俺は頭を掻く。
「わかった。クッキー食べる」
ちょっと偉そうに言ってしまったが、響は嬉しいそうに目をキラキラと輝かせる。
「やったーー!!クッキー食べてくるんだ!はい、これあ〜ん」
響はクッキーを俺の口元まで持ってくる。
「自分で食べるからいい」
俺はそう言って、響が作ったクッキーを奪い取り、ササッと口に入れてしまった。
そんな俺を怒らず、響がニコニコ俺を見ている。
「美味しい?」
クッキーの感想を言った。
「……美味しい」
「本当に?」
上目づかいで再度訊いてくる響に、コクコクと頷く。
――――参った……。
俺は心の中で両手を上げた。
可愛すぎて、つい襲いたくなってしまうのだ。
あぁ〜、駄目だ。駄目だ!!
そんな葛藤をしていると、響は突然正面から俺の胸に抱きついてきた。
「何だよ」
「嬉しいなぁ〜と思って」
響は俺の胸に頬を摺り寄せてくる。
本当は焦げてて苦かったけど、響が俺のために作ってくれたと思えば気にならなかった。
『愛情たっぷりの苦いクッキー』
―――それは俺にとって、幸せの味のするクッキーだ。
こんにちは、彩瀬姫です。
この話はバレンタインday〜僕と俺の甘いチョコ〜の続きです。
今回は大翔視点で書いてみました。
と言うか大翔、響にバレンタインデーもホワイトデーにも、何もあげてないじゃん!!
って感じです。
大翔も何か響にしてあげればいいのに……。何か、ね?
遅くなりましたが、読んで頂き有難うございます。
感想などお待ちしております!!