監禁少女
もう私の前に光なんて無い・・・・。
今が昼なのか夜なのか分からない、この暗い部屋に閉じ込められて一体何日がたったのだろうか…?体中に力が入らない。立ち上がろうとすると、まるで足の骨が崩れるかのような感覚に陥る。
逃げようとすれば、また殴られるかもしれない…。
「ただいま、ちいちゃん。良い子にしていたかな?」
悪魔の化身が帰ってきた。帰ってくるなり私に頬擦りをする。髭が針のように感じられた。
そして男はいつものように私の世話を始める。用意された風呂桶に出した排泄物を捨て、小さな水道の水で私の身体を隅々まで洗う。
こんな事、もう慣れてしまった…。
誰も助けになんて来ないこの狭い部屋の中で、私は目の前にいる体格の良い男と毎日同じ日々を過ごす…。
男がこの部屋から出て行けば、働きに行くに違いないから、きっと朝なのだろう。
男が帰宅すれば、きっと夕方か夜なのだろう。
男が一日中部屋にいる時は、今日はきっと休日なのだろう…。
私にはこんな方法でしか、時を知ることが出来なかった。
涙なんて出ない。言葉すら、忘れかけていた…。
・・・・・・
異様に明るい光りを感じ、ゆっくり目を開けた。久しぶりの光だ。私はゆっくり身体を起こした。男はいない。きっと仕事に出かけたのだろう。私は光源に目をやると、部屋の扉がわずかに開いていたのだ。しかし、次の瞬間私は背筋が凍った。その扉から誰かが私の方を見ていたのだ。とても驚いたような顔で…。
私と目があった者は扉を全開にし、そのまま姿をくらませてしまった。
どうして扉を全開にしたのだろうか?私を逃がすためなのだろうか?
扉から入る眩しい光たちは、まるで幸せの空間へと私を導いてくれているようだ。
私は最後の力を振り絞って立ち上がろうとした。だが足に力が入らない上に、手を後ろで縛られているからバランスすらとれない。私はうつ伏せになり、ゆっくりゆっくり這い出した。
少し動いては少し休憩をした。頬を畳の上に置くと、湿ったイグサの臭いが強烈に鼻についた。畳だけじゃない、きっとこの部屋も、私自身もすごい異臭を漂わせているはずだ。それが分からないのは、その臭いに鼻が慣れてしまったからなのだろう。
やっとの思いで部屋から出ると、そこは古びた木の廊下になっていた。私は出口らしき扉を見つけ、そこに向かって一生懸命這った。その時だった。
「どこに行くのかな?ちいちゃん」
頭が真っ白になった。私の体が急に震えだし、呼吸も荒くなる。
ゆっくり後ろを振り返ると、そこには仁王立ちした悪魔の化身がいた。その後ろには腹部から血を流した老婆が倒れている。
その老婆の顔は、先ほど扉の隙間から見た、あの目をしていた。
男の手には赤色に染められた包丁。
「あれほど勝手に扉を開けるなって言ったのに…」
男はそう呟き、倒れている老婆の腹に蹴りを一発入れた。男の右爪先が真っ赤に染まる。
老婆は思いっきり血を吐いた。そしてゆっくり私の元に視線を向けた。その目はまるで何かを私に訴えているようだった。
その時、私は全てを悟った…。
「ちいちゃん、いけないことしたら、お仕置きしなくちゃいけないんだよ?」
そう言うと、男はゆっくり私に歩み寄る。一歩足を踏み出すたびに、ポタッと包丁から赤い液体が滴る。
ポタッポタッポタッ…。
私はゆっくり目を閉じた。暗闇の中でだんだん近づくその音は、私の最期をカウントダウンしているようだった・・・・・。
完
初投稿です。
自分のHP上にていくつか小説は書いています。
今後も投稿していきますので、よろしくお願いいたします^^*