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作:極



第48話 尊い、ひとり


「皆さん始めまして、エリル・ミスレイアと言います。これからよろしくお願いします!」
彼女はそう言って頭を下げると教室にいた10人程の生徒が拍手をして彼女を歓迎していた。
軍の学校に転校生がやってくるのはそう珍しい事ではなく、俺は気にせず窓の外に広がる景色を眺めている所だった。
「羅威先輩、転校生ですよ!軍の学校にも転校生って来るんですね!」
「うるさい、余りはしゃぐな」
後ろに席に座っている彩野は嬉しくて仕方ないのか、俺の背中を何度も指で突付いてくる。
たしかに嬉しいのはわかる、このクラスに女性は全員で3人しかいない。勿論彼女を含めてだ。
「もーっ!本当先輩ってテンション低いですね」
「お前が高すぎるんだよ」
テンションが高い奴、そういえば今日はあいつがいないな。
どうせまた遅刻だろう、あと1分もすれば教室の扉を強引に開けて教室に入ってくるに違いない。
自己紹介を終えた彼女は先生に自分の座る席を聞くと、彩野の隣の席に決まったらしく鞄を持ってこちらに近づいてきた。
「は、始めましてエリル先輩!私彩野って言います!これからよろしくお願いします!」
緊張しすぎだろ、後ろから聞こえてくる彩野の声はどこかぎこちない。
「よろしくね彩ちゃん・・・って呼んでもいいかな?」
「はい!全然構いませんよ!エリル先輩!」
と、1分たったのか。教室の扉を強引に開けると息を切らしながらあいつが教室に入ってくる。
「ギリギリセーフだな!」
「穿真、アウトだ。廊下立っとけ」
先生にそう言われて廊下に立つ程、穿真は素直じゃない。
「待ってくれ先生、俺にはちゃんと遅れた訳があるんだ!」
「ほほぉ、どんな言い訳だ」
先生は腕を組むと穿真の話しを聞いてやるらしい、結末はもう見えているけどな。
「実はここに来る途中に道に迷った老婆がいてねぇ、んで・・・」
「もういい、立ってろ」
「うい・・・」
渋々と教室から出て行く穿真。こうして俺の隣の席は開いたまま1時間目を迎るのだ。
それにしても今の時代に生徒を廊下に立たす教師がいると知れば、きっと転校してきた彼女も少しは驚いてるだろう。
「よし、それじゃ授業を始める。愁、1時間目は何だ?」
「1時間目は数学だと思います」
俺の目の前の席に座っている愁は名前を呼ばれると、自分が今机の上にだしている本を見て答えた。
「うむ、そうだな。それじゃあ教科書の・・・」
こうして始まる学校生活、とは言っても普通の学校ではなく軍が管理している学校だ。
まぁBNの学校は大抵軍が管理している、管理しているからと言って普通の学校とは得に変わらい。
ただ違う事と言えば銃の扱い方や、機体の扱い方を教わる事とか、まぁ後色々あってそのぐらいだろう
1時間目が終わるとようやく解放された穿真は教室に入ってくるが足取りが重い。
大きな溜め息をしながら俺の隣の席に座る穿真、鞄から教科書と漫画を机の中に入れる。
「穿真、お前は遅刻しないよう努力した事があるのか?」
「んー遅刻しない努力はしてるけどな、寝坊しちまうんだよ」
なら寝坊しない努力をしろよ、と穿真と話していればいつも心の中でツッコミを入れてしまう。
「それはそうと、今日このクラスに転校生来たんだろ?何処だ?」
お前の後ろにいる奴がそうだよ、てかここに来る時絶対に視界に入っただろ。
「お前の後ろにいる奴だ、つうかここに来た時点で気づけ」
「後ろ?誰もいねーぞ」
そう言われて後ろを振り向けば、席が二つ開いておりたしかにいない。
「彩野もいないし二人でどこか行ったんだろ。次の授業まで待つんだな」
「なぁなぁ、転校生って女か?それとも女子か?どっちだ?」
・・・どういう意味だ、穿真と話していると俺まで混乱しかねない。ただ言えるのは男を望んでいない事だ。
何て言えばいいのかわからなかったが、前の席に座っていた愁が振り返り会話の中に入ってくる。
「女性でしたよ、名前はエリルさんっていいます。身長は彩野さんより高い方でしたけど」
「ふむ、女は良いとして背が彩野より高いんじゃあなー」
穿真、お前見てから決めずにまず身長で判断するんだな・・・。
「彩野さんより身長の低い女性何てそういないと思うよ?」
「世界は広いんだ、必ずいる。いると俺は信じているぞ!」
そんな穿真のどうでもいい言葉を聞き終わると、次の授業が始めるチャイムが鳴り始めた。
廊下に出ていた生徒や、教室で喋っていた生徒達が自分の席へと戻っていく。
もちろん彩野と彼女もだ、教室に入ると慌てて席まで走り席についた。
・・・最初はそんなに気にしていなかった、同じクラスになった事は些細な出会いだと思っていた。
出会いとはそんなものなのだろう、簡単で、単純。彩野も、穿真も、愁も、皆そうだ。
でも、それでも。幾ら些細な出会いでも、日が立てばその出会いに感謝する時が来る。
お前と出会っていた良かった。そう言える時が俺は何どもあった。
俺は運が良がいい、人並み外れて良い方だ、命を助けてる人に出会ったり。
供に話し、笑える人達と数多く出会ってきた。

だからって、出会いがあるからって、こんな別れた方が許されるのか。
彩野は・・・何故死んだ、彩野が何をしたんだ、どうして、あんな場所で、あんな所で、あんな風に殺されなくちゃならないんだ。
生きたまま人間を踏み潰す、それを何の躊躇いも無くした奴は人間なのか?いいや、違う、鬼だ。人間じゃない。
それを見ていた俺は何も出来なかった、助ける事も何も、ただ彩野が踏み潰されるのを見ているしかできなかった。
体が動かなかった、腕が動かなかった、機体が動かなかった、全身が固まり、何も考える事が出来なくなったからだ。
戦場で人が死ぬ事ぐらいわかっている、そんなの俺は今までずっと見てきた。
でも、でもなぁ、頭でわかっていても、この感情は抑えられない、この涙は、止められない・・・。
エリル、彩野、香澄。どうして死んだ・・・どうして死んだんだよ・・・あの鬼、あの鬼がいなければこんな事にはならなかった。
何もかも、全てあの鬼が悪い。あの鬼がいなければ彩野と香澄は生きていた、エリルだってもしかすれば生きていたかもしれない。
あの鬼が俺から大切な人達を奪い、殺し。悲惨な別れを俺に味あわしてくる。
それなら・・・殺すしかない。殺すしか、殺す。あの鬼だけは俺の手で、絶対に・・・。
だから俺は生き延びる、例えどんなに絶望的な状況でも。

赤鬼に倒された俺はあの後すぐに機体から脱出し、何とか基地まで辿りつく事が出来た。
だが基地は既に蛻の殻、紳達は何処に行ったんだ。まだ戦場で戦っているのか、それとも・・・。
どっちにしろこのままだと俺は死を待つだけ、何としてでもこの場から逃げなければならない。
とりあえず司令室に行こう、そこにはまだ兵士達がいるはずだ。
そう言っても俺はこの基地に来るのは初めて。簡単に司令室を発見できると思えないが、今は探すしかない。
それにしても、この基地は何年前に作られたものだろうか、壁や廊下は汚れいるし、電灯が点いていても薄暗い。
外からは爆音や銃声が聞こえてくるたびに微かな振動が体に伝わってくる。
その振動を受けながら俺は薄暗い通路を歩いていくと、足音と供に部屋の扉の開く音が聞こえた。
どうやらまだ兵士がいるらしい、すぐさま音のした部屋の扉の前に立つと、扉が自動的に開き、部屋の中に入る。
部屋の電気は点いておらず、部屋は暗闇に包まれ部屋の状況が全く見えない。
とりあえず灯りを点けてみるか、力の入らない腕を俺はゆっくりと肩まで上げ扉付近の壁を触るとすぐに壁の凹凸を発見できた。
恐らくこれが電灯のスイッチだろう、押してみると小さく音が鳴り、灯りが2、3回弱く点滅した後ようやく灯りが点いた。
「来ないでッ!」
女性の声で気付いた、前を見ると棒のような物を振りかざした女性が俺に迫って来ていた。
反射的に手で受け止めようとしたが腕が動かない、だが腕が使えなくても足が使える。
振り下ろされた棒を足を振り上げ蹴飛ばすと、態勢を低くして相手の両足を横から蹴り上げると、女性は簡単にこけてその場に倒れる。
倒れてから一行に起き上がろうとしない、まさか気を失ったのか?
顔は倒れていて見えないがNFのパイロットスーツを着ている時点でコイツはNFの兵士だ。
ん・・・この子はたしかあの機体に乗っていた子じゃないのか?どうしてこんな所にいる。しかも一人で・・・。
まぁいい、とりあえず倒れている女性を起こそう。この女性は小柄だから力の弱い腕でも何とか体を起こす事が出来た。
その時、倒れていた女性の顔がふと俺の視界に映った。
「え・・・」
見覚えるある顔、忘れた事の無い、あの顔。
俺は女性を壁を背にして寝させると、いつも首に掛けているペンダントを取り出した。
ペンダントを開けるとそこには一枚の家族写真が入っている、小さい頃の俺、後ろには両親、そして俺の横に立っている少女。
写真の少女と、今倒れている女性の顔を見比べる、似ている、似すぎている。
あの時玲は死んでいなかったのか?あの爆発で俺は重傷だった、生きていた。それなら、玲が生きていても納得できる。
だが、どうして玲がNFにいる、何故あの機体に乗っていた、何故兵士になっているんだ・・・?
色々な思想が俺の脳裏を飛ぶ、急に目眩が起こり、気分が悪くなっていくが、俺はじっと玲を見つめ続けた。
もしかすれば玲ではなく、玲に良く似た女性なのかもしれない。
それは直接この女性に聞けばわかる、意識を取り戻し次第聞いてみるか。
灯りの点いた部屋は案外広く、部屋の中心には大きな机があり、その上には机の上いっぱいに資料が並べられていた。
一枚の資料を手に取るとプリントについていた埃が宙を舞い、咳が出てしまう。
その咳が更に埃を巻き上げる、手で口を覆い隠せない俺はその場から離れた。
「うっ・・・けほ、けほっ・・・!」
埃が彼女の方にも飛んでしまったのか、気を失っていた女性は咳をすると閉じていた目蓋をそっと開ける。
意識がハッキリしないのか、彼女はやけに落ちついた様子。しかし、それは俺が彼女の視界に入る途端に一変した。
「ひ・・・っ・・・!」
彼女は俺を見た途端に表情が強張り、壁を背にして俺から逃げようとする。
だが俺の方が部屋の扉に近く、彼女は如何する事も出来ない様子だ。
「落ち着け、俺はお前に何もしない。それより聞きたい事がある」
「わ、私・・・NFの兵士ですよ。殺さないんですか・・・?」
「今俺達のいる部屋は戦場じゃない、質問に答えてさえくれればそれで良い」
「は、はい。わかりました・・・」
多少落ち着いてきたみたいだ、さっきより呼吸も安定しているし、震えも無い。
だが俺をまだ警戒している、無理もないか。
「君の名前を教えてくれ」
「名前、ですか。レン・スクルスと言います」
レン。玲とは名前が違うが、似ている。
だからと言って彼女を玲と決め付ける訳にはいかない。
「君に兄弟はいるのか?」
「えっと、姉が・・・あ、いや、いません・・・」
「姉がいるのか?」
「い、いません」
「・・・そうか、君に兄はいないんだな?」
「え?はい、兄はいませんけど・・・」
兄はいないが、姉はいるのは確実、となるとこの子は俺の妹の玲ではない。
「あの、どうしてそんな事を私に・・・」
不思議に思っても仕方が無いが、その訳を話せるはずがない。
「別に、こちらの事情だ。それより何故君はここにいる」
「その・・・気がついたらここに来てて・・・」
何を言うかと思えば、気がつけばここにいただと?無意識にこの基地に来たというのか、この子は。
「ほ、本当です!私何でここにいるのか全く憶えてないんです・・・!」
「君は自分から機体から降りたはずだ、それからここに来たんじゃないのか?」
「え、私自分で機体から降りたんですか?私はたしか機体の中で座ってたんですけど・・・」どういうことだ、本当に記憶が無いのか?あの時たしかにこの子は自分で機体から降りたはずだ。
「君の乗っていた機体は、たしか青白い色をした機体だろ」
「は、はい。私の機体の色はその色でしたけど・・・どうして知ってるんですか?」
質問を質問で返されると困る、どうやらこの子は本当に記憶が無いらしい。
謎の多い子だ、戦場で機体から降りてきたのもそうだ、何かが抜けている気がする。
「どうやら君は本当に知らないらしいな、まぁいい。基地の外まで案内する、ついて来い」
本来なら捕まえなければならないが、腕の使えない俺にはそれが出来ない。
だからと言ってこの子をまた蹴るのも気が引ける、甘いと言われればそうかもしれないが、俺は基地の外まで彼女を案内する事にした。
「すみません、貴方の名前は何て言うんですか?」
「俺の名前?守玖珠羅威だ」
「あの、こんな事言うのも何ですけど。羅威さん少し変わってますよね」
「俺がか?」
「だ、だって。変な事ばかり聞いてきますし、敵の私をこのまま逃がすなんて・・・」
「・・・そうだな、変だな」
たしかに今の俺は変だ、気が狂いそうになるぐらい。
俺が部屋から出ると、彼女もまた部屋を出て俺の跡をついてくる。
基地から出るには俺が来た道を戻ればいいだけの事、時間は掛かる事なくすぐに基地の出口に到着した。
「ここが出口だ、じゃあな」
そう言って俺は出口から離れていく、ここに来るまでに他の兵士と会うだろうと思っていたが、まさか会わないとは。
とりあえず階段を上って司令室を探してみるか。
「あ、あの!ありがとうございました!」
声のした方に振り返ると、彼女は俺にお礼を言って頭を下げていた。
・・・彼女はNF、BNの敵。彼女はBNの兵士を数々に殺してきたと思うが、それは俺も同じだ。
俺はまた振り返ると、階段の方へ足を進めた。っが、その時。
「きゃああああああ!」
後方であの女性の声が聞こえてきた。
声というより悲鳴だ、何事だと思い俺がまた後ろを振り向くと、女性は基地の出口で座り込んでおり、全く動こうとしない。
そして俺の視界に移ったのは彼女だけではなかった、黒い巨体の体をした化物が何匹も基地に入って来ている。
化物は基地に入ってくると、ゆっくりと歩き座ったままの彼女の元に向かう。
この化物、まさかERRORなのか?こんなERROR見た事も無ければ聞いた事も無い、それにどうしてERRORがここに・・・。
「い、いやぁっ!」
っち、今はそんな事を考えている場合ではない、あの子を助けなければ・・・このままではERRORに殺される。
俺は彼女の元へ走ると彼女に前に立ち、膝を曲げてその場にしゃがみ込んだ。
「立って2階へ逃げろ、早く!」
彼女は俺に頭を下げると、何とか立ち上がる
「は、はい・・・」
返事をした彼女は後ろに走っていくと俺が上ろうとしていた階段を勢いよく登っていく。
さて、今度はERRORだ。始めてみるERROR、人間の形をしているが、人間の姿はしていないな。
あの体、腕、足、首・・・全てが太い、それを見れば奴が人間離れした力を持っている事が一目でわかる。
俺が一人戦いに行った所で肉の塊にされるか、体を引き裂かれてバラバラになるかどちらかだ。
だとすれば今の俺は逃げる事しかできない、奴らは走ることが出来ないのか、人間を見つけても走って追う事は無いらしい。
だが奴等は俺を見た途端虚ろな目をした顔をこちらに向けたままゆっくりと近づいてくる、Person態とは違いこいつ達は笑わないのか。
俺はその場から離れると階段を駆け上がり2階に向かう、ここにも兵士の姿は見当たらない、それにあの子もだ。
「羅威さん!こっちに来てください!」
女性の声のする方へ体を向けると、重そうな鉄の扉を横にスライドさせこっちに手招きしている彼女がいた。
俺は彼女の所に向かうと部屋に入る、そして女性は鉄の扉を力一杯動かし始める、完全に扉が閉まると鍵をつけようやく一安心といった感じだ。
「この扉ならあのHuman態も入って来れないと思います」
「Human態って言うのか?あのERROR」
「そうですけど、羅威さんは見るの初めてですか?」
「ああ、君は見た事があるみたいだね」
そう言いながら俺は来た部屋を見回してみる、この部屋だけ扉が違うという事は何か大事な物があるに違いない。
広い室内、見れば辺りは本棚が数多く並び何千を超える本が並んでいる。
今は本よりも武器が欲しい所だ、俺は銃を持てないが彼女に持たせる事が出来る。
「はい、あのHuman態は凶暴な上に頑丈で、並大抵の武器では歯が立ちません・・・」
全身黒色の鱗のようなもの覆われていたが、あんな化物を倒すには対戦車用に使う無反動砲でも撃たない限り死にそうに無い。
「だとすればその重火器を探しに行くしかないな、この部屋を出て武器を探しに行こう」
「だ、駄目ですよ。今外に出ればHuman態に見つかります!」
「ここにいても同じ事だ、いずれ見つかる。なら見つかる前に武器を取りに行かなければ・・・」
「駄目です、この基地には兵士がいるはず。助けが来るまでここで待機していた方が身の為ですよ!」
何だこの子は、さっきまであんなに震えていたというのに、今では強気で俺と相反する事を言ってくる。
俺の事を考えてか、それとも奴等の事を恐れているのか・・・彼女の言う意見はたしかにまともだが、俺はどうも納得が出来ない。
かと言って一人で出て行こうとしても、今の俺の腕ではこの重い扉を開ける事も出来ず、結局この部屋で待機する事になった。
「わかった、じゃあこの場で救援を待つ事にする。だが5分だけだ、5分たって誰も来ないなら・・・」
その時、鉄の扉から鈍器で殴るような鈍い音が聞こえた。
何回も、何回も。音はしだいに大きくなり、厚みのある鉄の扉が少しずつ変形していく。
5分もいらない、さっさとこの部屋から出ていればよかった。
「っち、化物に場所がバレたな。他の出口は無いか手分けして探すぞ」
彼女は頷くとすぐさまその場から離れ部屋の中を走り回り出口を探す。
俺も本棚と本棚の間と走り、窓や扉が無いか探してみるが全く見当たらない、この部屋には窓すらないのか?
もう一度来た道を戻ろうとした時、入り口の方から何か物の音が聞こえた。恐らく扉が破壊されたのだろう。
ピンチをチャンスにとはこの事、奴等が数匹程度ならこの広い室内を移動して部屋から出れば良い。
「ら、羅威さん!助けてください・・・!」
彼女の声が聞こえてくる方向に走ると、あの化物が彼女を壁まで追い詰め近づいていた。
人間が目の前にいても奴らは走ること無くゆっくりと歩んで行く。
その姿はPerson態とはまた違う恐ろしさがある。
「おい化物、その子を殺す前にまず俺を殺してみろ」
俺は本棚から一冊と本を引き抜くと、その本を化物の頭に投げつける。
すると化物の足は止まり、そっと俺の方を向くと歩く方向を変えて俺の方へと近づいてくる。
「レン、今の内に逃げろ!」
その声を聞いて彼女が走り出す、化物の後方に彼女の姿が見えた時、ふいに彼女は止まり俺の方を向いた。
顔は蒼白としており、絶望しているようにも見える。
「羅威さん後ろッ!逃げてください!!」
後ろ?言われた通り後ろを向くと、もう一匹あの化物が俺の後ろに立っていた。
「なっ」
化物の足は遅かったが、俺が化物の間合いに入った途端に腕が動きだし、俺の頭を掴みかかった。
驚く程速い腕に俺は逃げる事も出来ず、黒い豪腕は俺の頭を掴んだ。
とっさに目を瞑ると、何かが破裂する音が聞こえる、嫌な音だ、でも何の音だ。俺の頭が潰れる音か?
さっきから俺の頭を掴んでいる手は何を思ったのか潰そうとしていない、こうして意識がハッキリしているのは生きている証拠だ。
俺が目を開けると、俺の頭を掴んでいる手は地面に落ち、目の前には上半身の無い化物の足だけが立っている。
が、それも地面に倒れると、俺の前に一人の男が立っていた。
「ラース!?」
「羅威、伏せて」
俺が態勢を低くすると、両手で持っている巨大なレーザー銃のような物を化物に向け引き金を引く。
赤いレーザーが放たれると、俺を襲うとしていた化物は木っ端微塵となり肉片が辺りに飛び散る。
「ふぅ、まさかこんな野蛮な兵器を僕自身が使うなんて」
「ありがとうラース助ったよ・・・でもどうしてお前がここにいるんだ?他の兵士はどうした」
「兵士?もうこの基地には僕達以外の人間はいないよ」
「は・・・?」
基地に誰もいない?何故、ERRORが来たからか。それとも全員戦地に向かったのか?
「羅威は知らないと思うけど、この基地に地下には隠し通路がある。紳さんや他の兵士はそこから無事に脱出したよ」
「如何いう事だ・・・BNに何が起きたんだ・・・?」
「羅威の機体が破壊された後、セーシュさんの命令で基地にいる兵士達、そして紳さんを地下通路が逃がすように指示したのさ。
 だから基地は蛻の殻、あとは時間を稼ぐ為に数十人の兵士が機体に乗り戦っていたんだけど、ERRORも出てきたこの状況だと
 多分もう誰も生き残っていないよ」
セーシュの指示?セーシュの命令を紳が素直に受け止めたのか?
あの方なら供に戦ってくれると信じていたのに、一体何が起きたんだ・・・。
「それで、あの子はNFの兵士みたいだけど。どうしてあんな子がここにいるんだい」
「色々とあってな・・・この子を逃がそうと思ったがERRORが入ってきて・・・」
「ふーん、まぁいいけど。この話しを聞かれた以上あの子をNFに渡す訳にはいかない。一緒に来てもらおうか」
そう言うとラースは女性の元へ向かい承諾を求める。
「わ、わかりました。ついていきます」
「うん、その方が安全だからね」
「ラース、どうしてお前はこの基地に残っているんだ?」
「ん?羅威を探してたんだよ。羅威の機体の損傷率だと多分脱出してると思ってね」
「俺を・・・探してた?」
「っそ、僕についてきて」
ラースは俺に背を向けると部屋から出て行く、俺と彼女はラースの言われた通り後をついていく事にした。
「羅威、エリルは脱出した・・・?」
「いや・・・脱出していない・・・」
「・・・そうか、うん。わかった」
ラース、エリルの事が気になるのか・・・。俺が見た所無花果はあの赤いリバインに破壊された。
まさか無花果があんなにも早く破壊されるなんて思っていもいなかった、エリルが死ぬ事も・・・。
「ついたよ」
周りを見渡すとそこは格納庫だった、だが機体の姿は無く、その床には大きな穴が開いている。
「コントロール室に行って地下に向かう為の貨物用エレベーターを起動させないとね」
コントロール室はそう遠くないすぐ近くの小部屋らしく、ラースがその部屋まで歩いていくと俺達も自然に後を追ってしまう。
部屋に入ると様々な機器が並んでおり、ラースはその機器の一つに手を伸ばす。
その様子を見ていた俺はふと横を見ると、そこにはレーダー機器が置いてあった。
画面を見てみると赤い反応と黄色い反応が基地を囲んでいる、赤い反応はERRORだろう、そしてこの黄色い反応は敵機。
だが俺は目を疑った、友軍機の青い反応が1個だけ存在していたのだ。
それに機体はまだ動いている、青い機体を取り巻く赤い反応が次々に消え、黄色い反応を消していく。
まだ戦っている、一人戦場に残って、俺達の為に、BNの為に・・・。
「ラース!どこかに機体は残ってないのか!?」
装置の起動スイッチを押そうとしていたラースの手が止まり、羅威の方へ体を向ける。
「突然何を言うかと思えば・・・どうしたんだい」
「まだ誰かが戦っている、見過ごす訳にはいかない。どうせ逃げるのならあそこで戦っている兵士も連れて行く!」
「それは無理だよ、今戦っているのは多分セーシュだからね」
「なっ・・・セーシュだと?それならなお更助けないと・・・」
「言ったよね、この脱出はセーシュの指示。それに彼女は命を懸けて戦っている、説得しても応じるはずがないさ」
「だから俺にセーシュを見捨てろと、そう言いたいのか?」
「セーシュの思いを無駄にするのかい?今彼女が戦っているのは僕達を逃がす為。
 それに羅威、例え機体があっても君に何が出来る。満足に動かせないその両手で機体を操縦できるの?」
気付けば俺とラースは口論をしていた、助けるか、助けないか。
冷静さを保っていたラースだったが、次第にその冷静さは消えていた。
「全く動かせない訳では無い、それに説得が無理ならセーシュを力ずくでも助ける」
「ふざけるなよ・・・」
「えっ」
今まで聞いた事の無いラースの怒りの篭った言葉。
溜めてきていた怒りと悲しみが爆発したのか、俺の胸倉を勢いよく掴むとそのまま壁へと押し付けた。
「ふざけるなって言ってるんだよ!羅威ッ!」
初めてだった、これだけ怒りを剥き出したラースを見たのは。
「君は守るとか助けるとか簡単に言ってるけど、君は誰を守った?
 彩野か?香澄か?エリルか?誰を守ったんだ?誰を助たんだ!?言ってみろよッ!」
激しい剣幕を見せるラースに俺は何も言い返せない、彩野も、香澄も、エリルも、俺は誰も守れなかった。
知らされる己の無力さ、結局俺は何がしたかったのか、何をしてきたのか、俺は何の為に戦争をしてきたのか。
「助けてくれました!」
彼女の声にラースは横を向くと、目に涙を浮かべているレンが俺達を見ていた。
「羅威さんがいなければ私殺されてました、でも羅威さんが身を張って私を助けてくれたんです!」
「羅威、君は味方を見殺しにして、敵は守るのかい?」
「違います、羅威さんは私を一人の人間として守ってくれたんです。敵や味方なんて関係ありません!」
ありがとう、レン。君がそう言ってくれると多少は気が楽にはなる。
だが、俺が仲間を守れなかったのは事実。そしてラースは俺の為を思い俺を止めている。
もう誰にも死んでほしくない、皆そう思っている。でもこれは戦争、戦場で死ぬのは当たり前だ・・・。
だからと言って、俺は死を受け入れはしない。守れるものがあるのなら、俺に力があるのなら、俺は守りたい。
「・・・ごめん、羅威だって傷ついている事ぐらい僕はわかっていたのに。つい・・・」
俺の胸倉を掴んでいた手から力が抜ける、ラースは数歩俺から下がると下を向いていた。
ラースの気持ちは俺に痛い程伝わる、ラースも俺と同じ、何も出来なかったんだ。
皆命を懸けて戦う中、自分は何も出来ない、ただ仲間の死闘を見る事しか出来ない、そんな自分が嫌だったのだろう。
少し沈黙が続いた後、ラースがふと頭を上げた。その目に怒りは無い。
「・・・羅威、実は1機だけ残っているよ」
そう言ってラースはコントロール室のスイッチを押す。
貨物用のエレベーターが地下から上がってくる振動が俺の足元から伝わってくる。
「本当は君達を逃がした後、僕が乗ろうと思ってたんだ。でも無理なんだよ、僕はパイロットじゃないからね」
ラースの言葉が途切れた瞬間、格納庫の地下から貨物用エレベーターが地上に到着した、1機の機体を乗せて。
全身灰色のシーツで覆われ、機体の形や色がわからないが、シーツは胸部の辺りに穴が開いており、操縦席に続くハッチは既に開かれていた。
「この機体は・・・」
「BNが極秘で開発した機体さ、結構古いんだけど。この基地の地下で眠っていた・・・いや、封印されていたと言った方がいいかな」
「封印されていた?」
「そう、その力を発揮すれば敵味方問わず全ての機体を破壊してきた機体だったからね。
 それにこの機体は操縦者にも害を及ぼし、最悪の場合死に至らしめる。それでもこの機体に乗るのかい?」
「聞かなくてもわかるだろ、ラース」
俺がそう言うとラースも少し笑って見せた、そして掛けていた眼鏡の中指を当てて少し上に上げる。
「そうだったね、あとこの機体は君にも動かせると思うから」
「SRC機能が搭載されているのか?」
「んー・・・、違うけど。乗ってみればわかるさ」
何故ラースはこの機体の事を俺に会った時すぐに話さなかったのか、そしてラースは俺達を逃がした後この機体に乗ろうとしていた。
ラース、お前は一体この危険な機体を使って何をしようとしていたんだ・・・。
「いいかい、セーシュを助けたら海を渡ってこの島を離れるんだ。その機体は海上を飛ぶ事は可能だからね。
 それと、絶対に生きて帰って来るんだよ、羅威」
「ああ、わかってる。行ってくるよ」
俺はコントロール室から出ると格納庫に止めてある機体へと走った。

「僕もあの力を解き放つ事にしたよ、先輩・・・これでもう後戻りは出来ない」
コントロール室に残っているラースは床に置いていたレーザー銃を持ち上げると、女性に話しかけた。
「さて、君。僕と一緒にこの基地から脱出してもらおうか」
「た、助けてくれるんですか・・・?」
「うん、羅威が助けた命だから。僕が責任持って君を安全な所まで連れて行くよ」
「ありがとうございます!あ、あとすいません。携帯電話持ってますか・・・?」
「ん?持ってるけど・・・」
「すいません、ほんの少しだけ貸してもらえないでしょうか。お願いします!」
「・・・別にいいけど、変な真似は起こさないでね」
そう言ってラースはポケットから携帯電話を取り出すと、そっとレンに手渡した。

基地の前で破壊されるギフツ、そのギフツの胸部には薙刀が突き刺さっていた。
ハルバード守護式は健在、基地に向かってくるERRORと敵機体を次々に破壊していく。
基地の周りには既に10機以上のギフツやアストロス、リバインの残骸が散らばっており、戦っていた兵士達が次第に怖気ずく。
『何だあの機体は!これだけ攻めて落ちないだと!?』
『それなら遠距離からの射撃を行なうまで、全員後退してあの機体に鉛玉の飴を浴びせてやるぞ!』
『了解!』
1機のリバインと4機のギフツが一斉に後ろに戻ると守護式に小銃を向ける。
っが、兵士の目の前には既に薙刀を振り下ろす守護式が見えていた。
『は、速っ・・・!?』
問答無用で胸部を薙刀で切り裂かれるリバイン、それを見ていた兵士達は守護式目掛け一斉に引き金を引く。
数発が守護式の装甲に当たり傷が入るが守護式は地面を蹴り上げ高々とギフツの頭上を跳び越えるとギフツの背部に薙刀を突き刺す。
その横にいたギフツが守護式に銃を向けるとすぐさま薙刀を抜き取り横にいるギフツの両腕を斬りおとす。
後退して逃げようとしたギフツだったが、守護式の薙刀で胸部を貫かれて爆破されるが、
残っていた2機のギフツが背後からナイフを両手に向かってくる。
「遅いッ!」
背後から迫る2機のギフツの腕を斬り飛ばすと、両肩のレールガンでギフツの胸部に弾丸を撃ち込む。
同時に倒れるとそのまま爆発するギフツ、それを見ている暇等守護式には無い。
セーシュがレーダーを見れば銃数発のミサイルが一斉に守護式目掛けて飛んで来る。
「そのような攻撃、我には通じんッ!」
上空から降り注ぐミサイルを破壊しようとレールガンを向けた時、
上空のミサイルが一斉に分解され、中から高熱の徹甲弾が降り注ぐ。
徹甲弾は守護式を狙い次々に降り注ぎ、操縦席にまでその振動が伝わってくる。
「こ、小ざかしい真似を・・・うぁっ!?」
左肩に付いていたレールガンが爆破、左肩のシールドと一緒に吹き飛ぶ。
「ぐううぅ・・・っ!」
守護式の左肩からは煙が上がり、動きが鈍くなっていくが地面に膝を付けはしない。
必死に踏み止まりその場で耐えた守護式だったが、エネルギー残量が既に10%を切っていた。
頭から暖かい液体が顔に垂れる、モニターに反射して見える自分の顔には赤い血がべっとりと流れていた。
「っふ、血が出るのは生きている証拠。私はまだ・・・死なんッ!」
『たった1機でよく頑張った、だがERRORが出ている以上ここに長居は無用、死んでもらう』
黒い機体が上空から巨大な銃を構えると、守護式に狙いを定め引き金を引くと、黒い電磁場を纏いながらビーム砲が放たれる。
「当たってたまるかぁあああああああああ!!」
ギリギリでビーム砲をかわすと一気に上空へ舞い上がる守護式、黒い機体は背部に銃を戻すと大きな盾を取り出し攻撃を防ぐ。
「そのような盾!我薙刀の前では無力ッ!」
守護式は勢い良く薙刀を振り上げると、盾事機体を斬ろうと一気に振り下ろす。
薙刀の刃先が勢い良く盾にぶつかった瞬間、薙刀は宙を舞った。
黒い機体の持つ盾は普通の盾ではない、特殊の盾だった。
薙刀の刃先が触れた途端、高圧電線に触れたかのように激しい火花が出ると薙刀を一瞬で吹き飛ばす。
「我・・・薙刀が・・・!」
黒い機体の右手には剣が握られている、その剣は動きの鈍っている守護式の腹部へと突き刺した。
っが、その瞬間守護式の右肩に付いてあるレールガンが黒い機体の方に向けられると、胸部を狙い弾丸を撃ち出した。
『言ったはずだ、無駄な抵抗だと』
左手に持つ盾でその攻撃を軽々と防ぐ、空中で爆破した守護式は無残にも上半身だけが地面へと落ちていく。
地面に落ちた衝撃でついに守護式は動かなくなる。
「若・・・様、今頃・・・無事に・・・脱出・・・し・・・て・・・」
モニターには赤い警告表示が出ているが、もうセーシュにはそんな事どうでも良かった。
迫り来る黒い機体、剣先を胸部目掛けて突き出し、上空から急降下してきていた。
脳裏に浮かぶ紳との思い出、走馬灯のように次々に思い出が頭の中で再生されていく。
「私は・・・」
黒い機体の剣先が守護式の胸部を貫こうとした時、2発の黄色いプラズマ弾が黒い機体を吹き飛ばす。
『っぐ、何だこれは・・・機体が・・・動かん』
機体には凄まじい量の電流が流れ、機体からあちこち放電している。
画面に映るレーダーは機能停止、動いているのはメインカメラだけ、外の映像だけがモニターに映っている。
そしてそのモニターに1機の機体が映る、全身灰色のシーツで身を隠すあの機体が。
『大丈夫ですか!?あの機体・・・よくもゼスト様を!』
シャイラがゼストの機体へと通信を試みるが雑音が酷くゼストの返事も返ってこない。
アストロス・ガンナーの両肩に付いてあるレーザー砲をあの灰色のシーツを纏う機体に向けると両肩のレーザー砲から青い閃光が煌くレーザーを放った。
青く太いレーザーが一直線に機体へと飛んで行く、だが機体は避ける事無く、右腕を前方に突き出すとその場で待機していた。
レーザーの勢いは止まる事無く機体目掛け進み、突き出された右腕へと直撃した。
だが右腕が貫かれる事は無かった、機体の右手の平からは雷光が生じプラズマが発生する。
レーザーの衝撃で身を包んでいた灰色のシーツが吹き飛んで行き、ついにその機体が姿を現した。
黄金の機体、眼が眩むほどの黄金に、装甲のラインに沿って黒い線が入っている機体。
その機体の手から出ているプラズマがレーザーを弾くと、軌道をそれて森にレーザーが落ちる。
「セーシュを助けるぞ・・・『神威』」
神威は後ろに振り向くと、負傷している守護式を抱かかえる。
出力を上げて一気にその場から離れると、島から離れていく神威。
それを落とそうと戦艦から数十発のミサイルが放たれ追尾していくが、神威は海の上で止まると向かってくる無数のミサイルに左手を伸ばした。
左手から放電が始まり、広範囲に電流が広がっていく。
空中を飛んでいた無数のミサイルはその稲妻に触れていくたびに爆破、それが連鎖反応を起こし次々に爆発していく。
戦艦は機体を囲むと機関銃の一斉射撃を始めるが、銃弾は神威に触れる事は無く、全ての銃弾が神威から逸れる。
『何だあの機体は、機関銃が効かないなら主砲を撃つ!全砲門をあの機体に向けろ!』
周りを囲んでいた戦艦の主砲が神威に向けられたが、その神威は海の上から左手を海に向けた。
左腕を中心に渦巻くプラズマ、そのプラズマは次第に大きさを増していき、膨大な量の電気を蓄える。
雷鳴が轟き、雷光が神威を包む、そして左腕に溜まっていた電気が全て海へと放出された。
一瞬にして広範囲に広がっていく雷は戦艦に当たるとその脅威の力を見せた。
艦の司令室では機器が爆破、故障を起こし、艦に積まれていた弾薬が次々に爆発していく。
海上に浮いていた戦艦は次々に爆破炎上、海の藻屑となり消えていく。
「これが・・・神威の力・・・こんな機体が既に作られていたとはな・・・」
羅威はそう呟いた後、神威は稲妻の如く飛び去っていった。
その瞬間、軍事基地から閃光が見えると突然爆発を起こす。
巨大な爆発は周りにいたERRORを吹き飛ばしていき、爆発した基地は次々に崩れ落ちていく。
『全機撤退せよ、全機撤退せよ。これより島から離脱する』
SV、NFの機体達が次々に艦へと戻っていき、ピンク色の機体が倒れている黒い機体の所へ向かうと黒い機体に肩を貸した。
『ゼスト、大丈夫?』
『問題無い』
とは言うものの機体の出力が余り上がらず、アリスの乗る機体の力を借りなければ移動が出来ない程であった。

レーダーには何の反応も無い、見えるのは砂浜と海、そして森だけ。
神威は守護式の上半身をそっと砂浜に下ろすとすぐさま機体から降りる羅威、
神威の手を伝ってすぐさま守護式の胸部まで走っていく。
外部からハッチを開けると、そこには頭から血を流し、意識朦朧としているセーシュが操縦席に座っていた。
「セーシュ!しっかりしろ!」
「・・・」
返事は返ってこない、だがセーシュの力無い瞳はたしかに羅威を見ている。
羅威は操縦席に入るとすぐさまセーシュを抱かかえ機体から降りていく。
砂浜に下りるとセーシュを横に寝かし、上半身を少し抱かかえると必死にセーシュに呼びかけていた。
照りつける太陽が眩しくセーシュを目蓋を閉じようとしたが、羅威の頭で丁度太陽が隠れた。
「羅威・・・か・・・」
今にも波の音に掻き消されそうなセーシュのか弱い声が羅威の耳に入る。
傷付き、力の無いセーシュを見るのが初めてだった羅威はその姿を見ているだけで不安に駆られる。
「俺だ、羅威だ。セーシュ、俺達は助かったんだ、もう大丈夫だぞ・・・!」
「・・・若は・・・無事・・・か・・・?」
「紳か、紳は無事脱出したよ、セーシュのお陰で紳は無事脱出できたんだ」
羅威がそう言うとセーシュは微かに笑ってみせた、セーシュの不安がそこで消えたからだ。
戦っている最中も気にしていた、不安で一杯だった、それが羅威の言葉で安心へと変わる。
「ありが・・・とう・・・羅威・・・」
「えっ・・・?」
「若様は・・・無事なの・・・だな・・・良かっ・・・た・・・」
笑顔、これ程安心して、素の自分を見せたセーシュ何て見た事が無い。
それが逆に怖かった、もう何も未練が無いかのような、そんな笑顔が。
「そうだ、紳は助かった。次はお前が助かる番だ!セーシュ!しっかりしろ!!」
段々と命の灯火が小さくなっていくのが見ていてハッキリと分かっていた。
戦場では誇りを見せ、強さを見せてきたセーシュが、今目の前で、腕の中で消えようとしている。
「ら、い・・・」
名前を呼ばれた羅威はセーシュの左手を握り締める。
普通の女性と何ら変わりない小さな手は、羅威の手を弱々しく握り締めた。
「私は・・・わたし、は・・・幸せだ・・・」

「セーシュ・・・?」
目蓋を閉じたまま、動かなくなったセーシュ。
自分の手を握り締めていたあの弱々しい手は羅威の手からすり抜けた。
「おい・・・セーシュ、起きろよ・・・助かったんだぞ。俺達・・・」
何も答えない、羅威に聞こえてくるのは波の音だけ。
セーシュの顔には何粒もの涙が落ちるが、その涙はセーシュの頬を伝と羅威の足に落ちる。
「起きろよ!起きてくれよ・・・!セーシュ!」
セーシュの軽い体を抱き締める腕に自然に力が入る。今まで戦ってきた仲間がたった一日で、数多く死んでいった。
助けられた、あと少し早く動いていれば、あと少しだけ早く自分が行動していれば・・・。
「セーシュ・・・皆・・・皆ぁ・・・っく、うぅ・・・う、ああ・・・ぁああああぁああぁぁああああああ───────ッ!!」
仲間を誰も救えなかった羅威は怒りに震ながら天に向かって泣き叫んだ。
その怒りを向けたのは誰でもない、自分だった。
何故戦う、敵を殺す為に戦うのか。
違う、守る為に戦う。
BNを、友を。
人から、化物から、神から。
守る為に


正式名MFE-神威 (BackNanbers製)
全長-19m 機体色-黒金 動力-光学電子磁鉱石
数年前BNが極秘で開発した機体、その性能は従来のDシリーズを軽く超える程の性能であるが、
制御が難しく味方を危険に晒す事が多い、出力も若干不安定な為故障が起こる事もあり、
また操縦者に微量、又は大量の電流が流れてしまう事もあるので基地の地下で封印されていた。
武器はもっていないが攻撃力は強力であり、近距離から遠距離、広範囲にまで攻撃が可能。
プラズマや電流を使う攻撃を得意とし、攻撃から防御まで兼ね備えた機体である。











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