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Deltaプロファイル
作:極



第43話 感覚、感情


豊な緑と、近代的な高層ビルが立ち並ぶ都市。
その下では何千、何万という人間歩き回っている。
俺がこの都市に来るのはそんなに難しい事では無かった、ただ道を知らなかった為少し迷ったけど。
おっと、そろそろ新たな情報が出てくる時間帯だな。
ちなみに俺が今いる所は朝食限定メニューのある小さな喫茶店だ、目的は朝食とニュース。
丁度朝食が運ばれた頃にはテレビ画面に昨日起こったテロリストの襲撃について報道していた。
廃墟と化した宮殿の上空をヘリで実況中継とは、朝から良い取材してるじゃないか。
『現在BNの犯行という可能性が高いと見て捜査が行なわれています────』
BNの犯行で間違いないだろう、だが目的は何だ?宮殿にはSVの貴族がいるのは知っていたが、そいつを狙っていたのか。
それとも・・・ミシェルを狙って宮殿に潜入したのか。だとしても大胆な行動をしたものだ、これでSVとBNの関係は一番最悪なもんになる。
『神』とやらの復活と、ミシェルはどう関係しているのか、ミシェルを使って『神』という兵器を作動させるのかもしれない。
それを止めようとBNが必死な訳で、NFもSVとほぼ似たようなもんか。
「フレンチトースト美味いか?」
俺の前に座っているミシェルは笑顔で頷くと美味しそうに齧り付いている。
ミシェルがパンを食べ終えたら店出て何処に行こうか、危険だがやはり軍に潜入した方が良いか。
『緊急速報です!たった今からフィリオ王女の全世界同時中継が行なわれるとの事と連絡が来ました!』
急すぎる報告だな、だがこれで店から離れる事は出来ない。
リシュテルト家といえばSVの創始者にあたる、昨日の事件を体験して一体ここで何を言うつもりだ。
宮殿の映像が消えると、そこには何本ものマイクが立てられた台の前に立ち、真剣な趣の女性がいる。
あれがリシュテルト家の、俺を殺せと命令した人間か。
顔を見るのは初めてだな、こいつ等が神を復活させようとしているのか・・・。

『おはようございます、私はリシュテルト家の長女、フィリオ・リシュテルト。
 今回このような中継させて頂くのは、重大な発表と、それを国民の皆様に聞いてもらいたいと思い行ないました』
アリスとか言ってた女と似ているが、声と髪型、名前からして姉妹と見た。
この中継を見ているのはSVの人間だけではないだろう、恐らくNFやBNの連中も見ているはずだ。
ふと喫茶店から町の様子に目をやると、今まで歩いていた人達が全員足を止め、ビルなどについてある大型スクリーンに目を向けていた。
『先日私のいた宮殿が襲撃された事件、既にBNの仕業だという事が明らかになっています。
 一方的な武力介入を行なわれ、町にいた多くの人達に被害を被りました。
 EDPが行なわれ、今ではERRORの活動も停止、順調に『平和』な世界に進みつつあります。
 しかし、そんな平和な世界を脅かす存在のBNは、この世界で暮らす私達にとってどれだけ脅威なのかがお分かりいただけると思います』
たしかに、これだけを聞けばBNは酷い連中だと思える。
それに制限、制御されただけの情報を見ている国民にはこれだけで十分BNを危険な武装組織とわかるはずだ。
真実もわからず、ただただ目の前の情報を見て勝手に判断して認識する、馬鹿な奴等だ。
レジの隣から持ってきた新聞でも見ようよ俺は机の上に置いていた新聞に手を掛けた瞬間、店外の人間が何かざわめき出すのがわかった。
それにテレビから聞こえていた女の声が聞こえてこない、俺は新聞を机の上に戻すとまた店内に置かれているテレビを見てみた。
するとそこには、またも見た事の無い女性の姿が映し出されていた。
『それは違います、BNは世界平和の為に活動している組織。本当に危険な組織はBNではなくSVの方です。
 100年前、人類を滅亡まで追いやった『神』と言う名の忌わしき大量破壊兵器を、SVは再び呼び起こそうとしています。
 それを防ぎ、人類の力で平和な世界を築こうと存在しているのが我々BN。
 もしあの兵器を復活させてしまえば、この世界は炎に包まれ、二度と平和は来ないでしょう』
SVの人間ではない、BNの人間。恐らくSVの中継をジャミングして乗っ取ったのだろう。
『自己紹介が遅れました、私はBNの皇女、風霧唯と申します。
 我々は人類同士の戦いを望んでいません、昨日の事件に関しても我々BNは何もやっておりません。
 濡れ衣を着せられるような事はしないでもらいたいです、それでは』
風霧唯?ユイ、名前は同じだが・・・そんな訳無いか。てか、風霧って・・・。
モニターに映っていた少女が消えると、画面は真っ暗のまま何も映らなくなる。
こんな大胆な事をしてくるとは、BNも本気って事だ・・・こいつは面白くなってきたじゃねえか。
案外俺がBNに行けば歓迎されるんじゃねえのか?ああいう組織に限って俺みたいな奴を受け入れてくれたりするもんだ。
俺の目的その一、神とか言う馬鹿げた兵器の破壊。だが今は活動を停止しているみたい。
だから俺は目的その二を遂行している、前にも言ったが100年前の世界に帰る事だ。
その条件は何か、俺の力が完全に復活する事。だがそれでも過去に戻るのは難しい。
Dシリーズの動力源、レジスタル・・・これをうまく使えば俺の力は戻るのではないのだろうか。
まぁ、そんな簡単に力が戻れば苦労しないな。
「さて、行くか」
テレビは相変わらず画面真っ暗だし、もうこの店にいる必要も無い。
「どこに?」
「どこって・・・この町で俺と話したいと言っていた奴のいる所にさ」

SVの首都とも言える都市、今この都市の最北にある軍事基幹に彼等はいた。
中継はBNの妨害により中断、待機室で椅子に座っているフィリオは遣る瀬無い表情を浮かべていた。
そこに一人の男、ゼストが歩み寄り、座っている彼女の肩にそっと手を置く。
「顔色が悪い、大丈夫か?」
「え、あ・・・はい、大丈夫です・・・」
前を向いたままそう返事をしたが、大丈夫ではない事は見てわかる。
「放送は無理そうだ、BNの工作だろうな」
「そうですか・・・あの、三人の容態は」
「三人とも命に別状は無い、今は病室で安静に寝ている」
と、言った途端に待機室の扉が開き、右肩に包帯を巻いた葵が元気良く部屋の中に入ってくる。
「おーっす、二人ともおはよう!」
「あ、葵さん!?」
フィリオは驚いた様子で椅子から立ち上がると、すぐさま葵の元に駆け寄り、大きく頭を下げる。
それを見ていた葵はフィリオの肩に手を当てると下げている頭をゆっくりと起こした。
「来ていきなり頭下げられるとは思わなかったなぁ」
「申し訳ありません、私のせいで葵さんに怪我を・・・」
「フィリオのせいじゃないって、これは俺の弱さが招いた結果ってもんさ、ははは!」
「いえ、私の不甲斐なさでこのような結果になってしまったのです・・・」
葵は間を和ますつもりで言ったつもりだったが、逆にそれがまずい結果になってしまう。
「ってか俺の心配もしてくれてたんだ、ありがとなフィリオ。そうだ、これからエコと愁の所に行かないか?
 二人もフィリオが見舞いに来てくれたら喜ぶぜ、ほら」
そう言ってフィリオの手を握り部屋から出て行こうとする葵、フィリオがふと後ろを向くとゼストは軽く頭を下げていた。
そのまま二人は部屋を出て行った後、ゼストもゆっくりと歩き出し部屋から出て行く、当然向かうのはあの人のいる場所。

「ここがエコのいる病室だな、その隣が愁のいる部屋だ」
葵が病室の扉を開けると、ベットの上で壁に持たれたままボーっと前を向いているエコがいる。
「よーエコ!調子はどうだ!」
「普通・・・」
エコは軽く葵をあしらったが、その後ろにいるフィリオに気づいた途端に眼つきが険しくなる。
「エコさん、すいませ・・・」
「謝らないで」
キツイ口調で言われたその言葉に、フィリオは言葉が出ない。
だがエコの眼つきはココで解けた、悔しそうな表情を浮かべて俯いてしまう。
「謝るのは、私の方だから・・・。私は、貴方を守る事も、助ける事も出来なかった・・・」
あの時、宮殿が崩壊する前に4階には葵とゼストが辿り着いていた。
葵はエコを抱え、ゼストはフィリオを抱きかかえると、あの地下通路を使い宮殿から脱出、二人とも無事に生還できた。
「私は何も出来なかった、何も・・・」
エコは両手を震わせながら真っ白なシーツに深いシワが出来る程強く握り締めると、そのシーツに何滴もの涙が零れ落ちた。
そんな彼女を見て、自然に体が動いていくフィリオ。気づけば泣きじゃくるエコを抱きしめ、優しく髪を撫でていた。
それに甘えるようにエコもフィリオを抱きしめ、顔を胸元に埋めた。

エコの隣の部屋にいる愁は座っていたベットから立ち上がると、テレビの電源を消そうとテレビに近づいていく。
愁は仮面を被ってはいなかったが、いつもの軍服はしっかり着込んでいる。

俺がテレビの前まで来た時、聞き覚えのある曲がテレビから流れ出した。
「レジェンドクロス、再放送してるのか・・・懐かしいなぁ・・・」
このアニメには俺にとって色々な思い出があった、そもそもこのアニメを見たきっかけはラースの部屋に行った時だ。
穿真と一緒にラースの部屋に遊びに行った時、『面白いから見てみなよ』と言われて早速部屋に戻って二人で見ていた。
その次の日、アニメを知っている俺達三人は機体整備そっちのけのテンション上がりっぱなしでアニメの話をしていた。
それを見てエリルが羅威に『あの三人、目が活き活きしすぎて怖いんだけど・・・』と言っていたのを後で羅威から聞いた時には少し恥かしかった記憶がある。
懐かしい思い出、楽しかった思い出も今では良い思い出になっている。
・・・エリル・ミスレイヤ、無花果のパイロット。昨日宮殿を崩壊した無花果に乗っていたのはエリル。
エリルが俺達を殺そうとした、エリルが俺からまた全てを奪おうとした、エリルを、殺す。
「えっ」
今俺は何を思った、殺す?エリルを・・・?
ふと我に帰ると、俺の拳がテレビのモニターを貫いている。
さっきまで流れていた懐かしい曲は止まり、真っ暗な画面に俺の右手が伸びている。
そっと右腕を引くと、割れた画面の破片が足元に落ちる。右手には傷後は無く、服も破れていない、良かった・・・。
・・・良かった?何が良かったと言うんだ?俺は今さっき、エリルを殺そうと思ったんだぞ。
親友で、友達のエリルを、簡単に殺そうと思った俺って、一体・・・。
「愁、少しお話がしたいのですけど、よろしいですか」
扉の向こうからフィリオさんの声が聞こえてくる、すかさずその場にあった布をテレビの画面に被せ、小さな破片を大まかに手ですくいゴミ箱へと捨てる。
「はい、いいですよ」
後は急いで扉の前に立つと、自らゆっくりとドアノブに手を掛け扉を引く。
扉を開けるとフィリオさんが立っていた、当然だ。
フィリオさんは部屋に入ると部屋にある大きなベットの上に座る、俺は扉を閉めるとベットの上に座っている彼女の元に向かった。
「愁、ここに座ってください」
言われるがままに指定された場所に座るが、そこは彼女のすぐ隣の位置。一体ここで何を話すのだろうか。
「上に来ている服、全部脱いでもらえますか?」
「はい?」
「お願いします」
突然何を言うのかと思えば、服を脱ぐ?その前にフィリオさんの言っていた『話』は何処に・・・。
「え、ええ。わかりました・・・」
とりあえずコートを脱いだ後、上着のボタンを外した後に上着を脱ぐ。
上半身はYシャツと下着だけとなるが、相変わらず彼女は真剣な目つきで俺の体を見ている。
シャツのボタン外し終わると、ゆっくりとシャツを脱いでベットの上に置く。
その時ふと気づいた、シャツを脱いで見ると、自分の両腕が肌色じゃない。
赤や青の斑紋が腕から肩にかけてびっしり広がっていた。
俺の姿を見て彼女は両手で口を防ぎながら驚いた表情をしている、けど一番驚いたのは彼女ではなく、俺だった。
「何だ、これ」
すぐさま下着を脱いで見ると、やはり肌色とは程遠い斑紋が全身に広がっている。
身に覚えが無い、この腫れ具合は何か強い衝撃を与えられて出来たものだ。病気などで出来たものじゃない。
「やはりあの時の銃撃で・・・少し目を瞑っていてもらえますか・・・」
フィリオさんは俺の体を見つめながらそっと後ろに移動していく、俺は言われるままに目を閉じた。
目を瞑りながら昨日の事を少しずつ思い出していく、たしかに昨日の夜俺は何百発も撃たれたのは憶えている。
けど何も感じなかったんだ、痛みや恐怖とか全く無く、ただ体が勝手に動いて・・・。
頭の中の考えが急に消えると、何か暖かいもの、光のような柔らかい暖かさが背中から全身に伝わっていくのが目を瞑っていてもわかった。
「フィリオさん、一体何を?」
「大丈夫で・・・す。すぐに終わり・・・ますか、ら・・・」
掠れた声とともに背中の温かさは消え、俺の横でドサリと倒れる音が聞こえた。
「フィリオさん?」
ふと目を開けて横を向くと、目を瞑り意識朦朧としている彼女がベットに倒れている。
何が起こったのかと思い急いで手を伸ばそうとした時、自分の両腕にあった斑紋が消えている事に気づいた。
腕だけではない、体全体にあった斑紋が消え、綺麗な肌色に戻っている。
「私は、大丈夫です・・・少し休めば、楽になります・・・」
そんな事を言われても目の前で弱っている彼女を黙って放置する訳にもいかない。
俺は彼女を抱きかかえるときちんベットに寝かせ、脱いでいた服を急いで着替える。
「申し訳ありません・・・私の力では、これが限界だったのです・・・」
「フィリオさんの力?まさか俺の体の傷を消したのも、その力なんですか」
苦しそうに頭を下げる彼女は、また口を開き俺にある事を伝えてきた。
「貴方の感情を保つには、私の力では不十分でした・・・」
「俺の感情?」
「そうです、あの時家族を失った貴方は、まるで人形のように冷たく、表情も変えず、立ち上がる事もできませんでした・・・。
 私の力で今まで何とか失った感情を支えていましたが、貴方の感情に限界が・・・っ」
家族を失った時。
思い出した、何もかも、俺が何故ここにいるのかも。
俺が今こうして生きていられるのは、紛れもなく彼女のお陰だ。
彼女がいなければ、俺は悲しみや怒り、喜びや楽しさを感じる事の出来ない、ただの人形になっていたはずだ。
そして今、撃たれた激痛も感じず、親友を殺す事にも何の違和感も無かった俺は、少しずつ人形に近づいている。
いや、戻っていると言う方が正しいのかもしれない。
彼女を守っていると俺は思っていたが、反対だった。俺は守られていたんだ、ずっと。
「それなら俺は、限界が来るまで守り続けます、貴方と、貴方の作ろうとする世界を」
その答えに彼女は小さな笑みで答えてくれたように見えた。
そんな苦痛でのたうち回る彼女の顔を見て俺も思わず笑みを浮かべてしまった、こんなに面白いものが見れるなんて、今日は最高の日だ。

都市とは程遠い、草原と墓石がだけが広がる場所にアリスとゼストは立っている。
二人の立っている前にある墓石には既に花束が置かれており、そこにもう一束、花束を置くアリス。
「ラティス、今までお姉様を守ってくれてありがとう・・・後は私達に任せて、ここでゆっくりと眠りについてね・・・」
風で草原と同じように靡く髪を手で押さえると、静かに後ろに振り返り草原を後にしようとする。
ゼストは墓石の前に置かれた花束を少し見つめた後、無言でアリスの後を着いて行こうとするが、ふとその足が止まる。
「アリス、あの計画が明日行なわれるが、お前はどうする」
ゼストの言葉にアリスが立ち止まり、振り返る。その顔は涙で濡れていたが、泣いてはいなかった。
「行くに決まってるでしょ、BNとの争い、明日で全て終わらせるんだから・・・っ!」
それだけ言ってまた振り返り、歩き始める。その後ろ姿を見てゼストは何も思うのか、ただ無言で彼女の後を着いていくだけだった。

俺は飯を食べ終えた後、すぐさま宮殿へと向かった。都市の最北にある宮殿と軍事基地、実に分かりやすい為道に迷う事もなかった。
さすが本拠地とあって警備も伊達じゃない、物陰に隠れながら宮殿の周りを囲う壁には銃を持った兵士達がそこら辺にウロウロしている。
「ねぇかいと、どうしたの?」
「いやぁ、簡単に侵入できると思ってたんだが、簡単には行きそうにない事が今判明した」
俺一人だけでも難しそうなのに、ミシェルも一緒に連れて行かなければならないとなると更に難しくなる。
また交番に預けるか、いや、もう預けたりして一人ぼっちの所を攫われる、そしてまた俺が助けに以下略。
そんな在り来たりなパターン何てこっちから願い下げだ、だったら二人で行きゃいいだけの事。
「こういう時は誘導作戦だ、奴等の注意を反らした間にあの壁を登って侵入するぞ!」
「どうやって?」
「ふふ、心配するな。俺に良い考えがある!とう!」
物陰から出た俺は数人の兵士が歩いている場所へ走り、問答無用で殴り飛ばす。
注意を反らす事に成功、気絶した兵士達を一目のつかない所に投げればほら完成。後は壁を登るだけだ。
ミシェルを抱きかかえると壁を跳び越え領土に入り、すぐさま茂みに隠れる。
「さてと・・・」
何処行けばいいんだ。
宮殿でかいし広いし、アイツのいる部屋何てわからんな。
なら何故俺はここにいる、はは、俺ももう少し計画的に動く癖を身につけないとなぁ。
その時、ふと聞いた事のある女性の声が俺の耳に届いた。
女の声で男のように喋っている、そんな奴俺の知っている中で一人しかいない。
2階、丁度真正面の建物の2階から葵の声が聞こえてくる、窓も開いているし、行くっきゃない。
しかし2階の窓から侵入だなんて、一体どうすればいいんだー。っと思われるかもしれないが心配後無用。
「魔法は使えないが、人間離れした身体能力が俺にはある!いくぞミシェル!」
「えっ?あ・・・」
再びミシェルを左腕で抱えると、右手に剣を出現させる。
後はこの剣を壁に刺して段を作れば良い、あとはそこに乗ってジャンプ、俺だって計画ぐらいできるのさ。
一階の窓の上に剣を投げると、丁度良く刺さり段が出来上がる、俺はそれを踏み台にすると簡単に2階の部屋まで跳んでいく。
うまい事窓枠を掴み部屋の中に入ると、思ったとおり部屋の中には葵とエコがいた。
俺が入ってきた途端に葵の顔は一変して俺に指を指してきたが、エコの方は対して驚く様子も無く静かにベットで横になっていた。
「おま!お前何でこんな所に!?」
「話しがあったから来ただけだっつーの、てかあんま大きな声出すなって。俺がここにいる事ばれたらまたややこしくなる」
とりあえず抱いていたミシェルを椅子に座らし、俺は壁にもたれ掛かる。
「それに俺はお前等の敵じゃないだろ?別にSVのやる事にちょっかい出してないし」
「お前がその子を攫ってんだろうが!大人しくその子を渡せ!さもないと・・・ッ!」
葵が両手を振った瞬間、両手の甲に鍵爪が着き、今にでも俺に飛びかかってきそうな勢いだ。
仕方が無い、まずはこの女を黙らしてからエコと話しを・・・。
「葵、止めて」
横になっていた体をゆっくりと起こすと、エコはそのまま壁にもたれ掛かる。
エコの声に葵の動きが止まる、勢いが一気に冷めたようだ。
「えっ?」
「彼とは・・・色々と話してみたかった・・・葵もそうだよね・・・」
「ま、まあな。・・・しゃーない、エコがそう言うなら止めとく」
葵はまた両手を振ると、鍵爪が瞬時に無くなる、まるで俺の剣と同じ原理だ。
いや、もしかして同じなのか?とすればこいつ等はこの世界の人間じゃ・・・。
「高橋甲斐斗、いや・・・カイト・スタルフ。
 貴方も私達と話がしたいと思った、だから来たんだよね」
その名前を聞いた瞬間、俺は自分でもわかるぐらい目を開き、動揺してしまった。
カイト・スタルフ?こいつ、どうして俺の本当の名を知っているんだ・・・?
「驚いてるみたいだけど、私の方が驚いた。100年前に死んだはずの悪魔がここにいるんだから・・・」
こいつ、一体俺の何を知っている。何処でその情報を得た?何故俺の名前を、100年前にいた事も知っているんだ。
平然な顔をしているエコが不気味に感じてしまう、なんでだ、なんでなんだ。
「な、なんで。なんでお前、それを知ってるんだ・・・?」
「忘れない、絶対に忘れない・・・私の全てを奪った・・・悪魔の名前・・・」
恐れている、俺。俺が何を恐れる?何を何が、何で俺は。
この場から逃げ出したい、そんな気持ちが俺の脳内を延々と巡る。
「私達が、この世界の人間じゃない事は・・・もう気づいてるよね・・・?」
「あ、ああ。それは何となくわかってた・・・」
「どこの世界から来たと思う?」
・・・言えない、言いたくない。聞きたくもないッ!
「教えてあげる、私のいた世界、それは」
言うな、言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな。
「アルトニアエデン」
その言葉を聞いた途端、俺の頭の中が急に真っ白になった。
純白と言うのだろうか、眩い光しか見えない、何もかもが白い。
「かいと!」
ミシェルの声を聞いて視界が開けた。
病室、俺の両手には剣が握られ、その剣先はエコの首の手前で止まっている。
俺が振り下ろしていた、無意識に剣を出して、黙らせようと。
けど腕が震え、剣先が震えて・・・これ以上腕が進まない・・・。
「100年以上も前の事・・・思い出すのには、少し時間がかかった・・・。
 でも今、ハッキリと思い出した。あの時の事、全部」
殺意と憎悪が滲んだ瞳がじっと俺を見て放さない。
外見は少女、人間の形をしているが、今の俺にはそうは見えなかった。
もっと違う、別の何かに俺には見えていた。
両手の剣を消すと、俺はまた壁にもたれ掛かる、というか、持たれていないと立っていられないんだ。
その時、今まで黙っていた葵がベットの横にあるもう一つの椅子に座り、エコを見ながら口を開いた。
「エコ、教えてくれないか?お前の過去を」
「うん、いいよ・・・」
動揺している俺に構わず、エコは語りだした、あの時起こった、史上最悪の事件の事を・・・。


ダン・バイルド
常にサングラスを掛け、煙草を吸っている男、BackNumbersの紳が雇った用心棒。
射撃の腕は部隊の中でもトップクラスであり、機体の扱いも手馴れている。











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