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第10話であった意味不明な誤字、誤爆について、誠に申し訳ありませんでした。
このような事が二度と起こらない様気をつけていきます。
また、今までDeltaを読んでくれた方には本当に心から感謝しています。
誤字が多く見苦しい所が多々あると思われますが一生懸命修正して書いて行きますので、これからも応援よろしくお願いします。
Deltaプロファイル
作:極



第41話 償い、儚い


ここはSVの本土、平和と自由の国。
宮殿の周りに多くの建物が並び、その下では沢山の人々が町を歩いている。
緑に溢れたその町は皆活き活きとしており、充実した暮らしをしている。
町の中心に建てられている宮殿、その中にある一室にアリス・リシュテルトが椅子に座っていた。
その横には無言でゼストが立っている、誰かを待っているかのように二人は無言のまま待ち続けている。
すると、部屋の扉が突然開き、リシュテルト家の長女フィリオが部屋の中へ足を踏み入れた。
その横にはラティスと愁が並び、後ろには葵とエコが着いて来ていた。
「ラティス達はここで待っていてください、アリスと二人っきりで話しをしたいので・・・」
そう言うとゼストも部屋から出て行き、ラティス達もまた扉の前で待機する事になった。
フィリオは部屋に入った途端用意されていた椅子に座らず、すぐさまアリスの元へ歩いていく。
ふとアリスが顔を上げた時、室内には小さく、そしてハッキリと叩かれる音が聞こえた。
叩かれる音は部屋の前いた5人の耳にも届く。
「叩いたな」
「叩きましたね」
ゼストとラティスの一言だけが静かな廊下に聞こえた。
エコと愁は無言のまま壁にもたれ掛かり、葵はじっとしているのが苦手らしくその場をぐるぐると歩き回っている。
部屋の中でアリスは叩かれた自分の左頬に手を当てていると、フィリオはその無音の部屋で口を開いた。
「アリス、貴方は自分で何をしたのかわかっているの?」
怒りを堪えるような声、アリスは震えている唇をそっと動かすと微かに返事をした。
「私は送りましたよね、あの機体『M,D』には近づいてはいけない、決して戦闘を行なってはいけないと。
 危険な存在なのは貴方もわかっていたはずです、それなのに貴方は・・・!」
「ごめんなさぁい!」
溢れ出る涙を必死に手で拭いながらアリスは謝った。
そのアリスの突然の変化にフィリオ驚きを隠せない。
「ア、アリス?ごめん、痛かった・・・?」
フィリオは叩いたアリスの左頬をそっと撫でると、その撫でる手にそって一筋の涙が流れる。

30分前、甲斐斗との戦闘後艦に戻ったアリスはすぐさまシャイラの乗る機体のハッチを開ける。
だが開いた瞬間ゼストがアリスを追い越し開いたハッチの中に入っていく。
そして機体の中から血塗れのシャイラを抱えて飛び出してくると、既に準備していたベッドの上にそっと乗せる。
アリスがベッドの上で横たわるシャイラに近づこうとしたが、数人の兵士がベッドを押して行き格納庫から素早く出て行ってしまう。
一目でわかる血の跡、傷の跡。その光景が完全に脳裏に焼きついた時、手足が小さく震えその場から動く事が出来なくなった。
その時、一人の男がアリスの前を横切ろうとした。
「ゼス・・・ト・・・!」
震えてしまい上手く名前が呼べなかったが、ゼストはこちらに気づき顔を向けた。
でもそれは一瞬だった、ゼストは止まらずに歩き続け、格納庫から出て行ってしまう。
いつも一緒にいてくれたシャイラが死ぬかもしれないという恐怖。
そしてゼストから見放された恐怖。幾つもの恐怖がアリスの全身を駆け巡った。

自分のしてしまった罪に震え、途轍もない罪悪感で押しつぶさそうになっているた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」
泣きじゃくるアリスをそっと抱きしめるフィリオは、謝り続けるアリスの頭をそっと撫で続けた。

「時間です、ここは私に任せて皆は休んできてください」
静寂に包まれた扉の前でラティスが口を開いた。
「いいの・・・?」
エコがそっと呟くと、ラティスはポケットの中に入ってある装置を開き時間を確認する。
「ええ、貴方達3人はEDPが終わった後まともに休んでいない、だからお嬢様から休暇が与えられています」
「それマジかよ!?なら早速部屋に戻ろうぜ!」
休暇と聞いて葵の顔が笑顔に変わる、今すぐにでも走って部屋に戻る気満々だ。
「ラティス、貴方は・・・?」
「私はここでお嬢様の警護を。安心してください、私一人で大丈夫です」
エコが聞きたかったのはラティスにも休暇が出ているかどうかだったが、どうやらラティスに休む気は無さそうだ。
「わかった・・・私達は戻るね・・・」
葵が先頭に立って廊下を歩いていくと、その後ろに愁とエコがついていく。
扉の前にはラティスとゼストの二人が残され、また廊下は静けさを取り戻したかと思えた。
「ゼスト、何故シャイラとアリスお嬢様を助けなかった」
「・・・」
シャイラは前を見続けたままゼストに話しかける、同様にゼストも前を見続けたまま無言で立っていた。
「二人の機体が発進した事は貴方も知っていたはず、発進した意味も」
相変わらずゼストは黙ったままで口を開こうとしない。
「いい加減話したらどうですか?」
「・・・お前は、フィリオが死ねと言えば死ぬのか?」
突然を口を開いたゼストだったが、その口から出た言葉は質問の答えではなく問いだった。
「突然何を言うかと思いきや・・・お嬢様の命令なら私のこの命、簡単に捨てれます」
「そうか、なら俺のした事に文句は無いな」
「どういう意味ですか・・・?」
それからゼストは語りだした、何故あの時アリス達を止めなかったのか。
「簡単な事だ、アリスは俺に黙って出撃をした。
 俺に報告すると出撃を止められるかもしれないと思ったからだ。
 そして危険だとわかっていながらもアリスは戦闘を開始した、アリス自身の意思で。
 それを止める権利、俺には無い」
皇女の命令は絶対、ならばアリスが戦いに向かったのを止めるのは逆らう事になる。
ゼストはその掟に忠実に従っただけと言いたいらしい。
「貴方それでもアリスお嬢様の親衛隊ですか?主を危険にさらす事に、何の躊躇いも無いのですか?」
「・・・」
それ以上ゼストは口を開こうとはしなかった。
ラティスもそんなゼストを見て諦めたのか、それ以上聞く事は止め、長い廊下はまた静寂へと包まれた。


宮殿のとある一室、壁に掛けられている時計の針は丁度12時を指していた。
机の上にはあの白い仮面が置かれてあり、分厚い軍服も椅子に掛けられている。
その時部屋の扉からノックをする音が聞こえてくる、俺は脱ぎかけのシャツを急いで着ると扉の前まで歩いていく。
そしてドアノブに手を伸ばした瞬間、突然扉は開き一人の女性が部屋に入ってきた。
「おい愁!迎えに来てやったぞ!」
「あ、葵さん?どうしたんですかいきなり・・・」
目の前には私服姿の葵さんが立っている、それも目のやり場に困るような大胆な服で。
「ほー、やっぱりな。仮面とったら中々のイケメンじゃん」
仮面を脱いだ俺の顔を見るのは初めてらしく、葵さんはじっくりといれの顔を見つめるくる。
「いつもは冷たい仮面を被ってる男も、仮面を脱いだら爽やか青年ってわけだ!」
「な、何ですかそれは!それより葵さんはどうしてここに」
「だから言っただろ、迎えに来たって。せっかくの休暇何だし街にでも行って遊ばねーとな!・・・じゃなくて休まねーとな!
 あ、言っておくけどデートじゃねーぞ?エコも来るからな!早く私服に着替えたら宮殿の前に来いよ!それじゃ!」
言うだけ言って葵さんは去ってしまった。あれ、迎えに来たのではないのか・・・?
何はともあれ今日は休暇、気晴らしに街に出るのも悪くないと思ったので俺は私服に着替えると早速宮殿の前に向かった。

宮殿の前には私服姿の葵さんとエコさんが立っている、俺もその場に向かうと二人も俺に気づいてくれた。
「お、来たな!それじゃあ行くか!」
「どこに・・・?」
またも先頭に立って歩き始める葵さんにエコさんはまず何処に行くのか聞いてみた。
俺も同じ事を聞こうとしたが先に聞かれてしまい黙って後をついていく。
「まずは服だ、新しい夏服とか水着が欲しいからな」
「わかった・・・」
という事で俺達は洋服店に行く事になった。
正直俺は服を買いたいとは思っていないが断る訳にもいかない為ついていくしかない。
歩いていると段々と道を歩いている人や道路を走る車が多くなる、街はもう目の前だ。
「街についたようですね、葵さんは何処の店に・・・」
街についた瞬間葵さんはすぐさま近くの洋服店に入っていく。
それに続いてエコさんも店内に入っていくので俺も渋々店内に入ってみた。
店内は広く、階段もあるから2階にも売り場があるみたいだ、丁度その階段をエコさんが上っていたので俺もその後についていく。
エコさんは2階の洋服売り場につくと2着の服を掴みそれを鏡の前で自分に照らし合わせている。
「ねぇ、こっちとこっち・・・どっちが良い?」
丁度後ろに俺がいたからなのだろうか、2着の服を自分の服に重ねながらどちらが似合っているか尋ねてきた。
そんなエコさんを見ていると、いつもは笑わないエコさんが少し楽しそうな顔をしている気がした。
「俺は両方似合ってると思うけど、決めるのならその右手に持っている方はどうかな」
「こっちね・・・わかった」
左手に持っている服を元の位置に戻すと、右手に持っている服を大事そうに抱えている。
「なあ愁!こっちとこっち、どっちが似合ってる?」
「っ!?」
耳元で突然葵さんの声が聞こえてつい驚いてしまい条件反射でその場から一気に離れる。
「おいおい、まさか驚いたのか?肝が小さいなぁお前は」
「突然真後ろから話しかけられれば誰だって驚きますよ!それよりどうかしたんですか・・・」
すると葵さんもまた両手に2着の服を持っていた、どうやら葵さんも決めてもらいたいみたいだ。
「って!それ水着じゃないですか!」
「そうだけど?こっちは赤くて派手で良いと思うんだけど、こっちのは豹柄で結構良いだろ?どっちが似合うかな?」
そんな事俺に言われても・・・葵さんを直視できない。
大体どうして俺に水着が似合ってるのかを聞くのだろうか、すぐ近くにエコさんがいるというのに。
「俺は両方似合ってると思いますよ・・・」
「当たり前だろー自分に似合ってるものを選んでるんだから。お前はどっちの水着が好みだ?」
「は、はい?俺は別に好みとか・・・」
「ほら、想像してみろって!どっちの水着が似合ってる?」
そんな事を言われたら嫌でも想像してしまう、綺麗な青空の下に広がる輝かしい砂浜と海。
そこには一人の水着姿の女性が立ってい・・・って、俺は何を考えているんだ!
2、3回頭を大きく横に振りながら何とか自分の頭に思い浮かばれた妄想を振り払った。
「変な事想像させないで下さい!」
「なっ!俺の水着姿が変だと!?」
「ち、違います!そういう意味じゃなくて・・・!」
「二人とも、店内は静かにして・・・」
既に洋服を2〜3着買い終えたエコさんの腕には洋服の入った紙袋が一つぶら提げていた。
「お腹も空いたし、何か食べに行こ」
気づけば12時半、まだ俺達は昼食を食べてないのでお腹が空いて来た所だった。
「そうだな、もう12時半だし腹も減る。とりあえず欲しい服全部レジに持って行ってくる」
最初からそうすれば良いじゃないですか、何て言えばまた怒られそうなので黙って葵さんを見送る。
「これ」
エコさんが腕に提げていた紙袋を俺に持てと言わんばかりに紙袋を持ち上げる。
まさか俺が呼ばれた理由はこれ?そんな訳は無い、紙袋の一つぐらいもちろん持ってあげる。
「ありがとう」
「どういたしまして、それにしても葵さん遅いですね。何かあったんでしょう・・・か・・・って!?」
見てはいけないものを見てしまったかもしれない、両手に2袋、合計4袋の紙袋を持った葵さんがこちらに近づいてくる。
「いやー買った買った。はいこれ」
こうして俺は合計5袋を両手に持って街を歩かなければならなくなった。
洋服店を出ると、葵さんがポケットの中から小さなチラシを取り出す、そこには地図のようなものが書かれてある。
「この近くに美味い店あるらしいから行ってみようぜー」
二人は身軽そうに街を歩いていくが、その後ろを歩く俺は荷物の多さに足元がふらついてしまう。
それに天気が良くてとても熱い、早く日陰に入らなければ倒れてしまいそうな程だ。
するとようやく店についたらしく二人が店内に入っていく、俺も重い荷物を軽く持ち直すと急いで店内に入った。
自動ドアが開いた瞬間、全身に冷気が駆け巡る。店内は冷房のおかげで程よい涼しさを保っていた。
店内は昼時なので人が多い、それにしても若い女性が多い気がする。
そしてカウンターの方にはガラスケースには様々なケーキ並べられていた。
「ここ、ケーキバイキングね」
エコさんはそう言うと近くのテーブルに向かい椅子に座る、葵さんは既に沢山のケーキをおぼんの上に乗せていた。
とりあえず手が痛いので荷物は机の下に置き、椅子に座って一息つくことにした。
っが、一息つこうと椅子に座った瞬間テーブルの上に溢れんばかりのケーキの山の形をして登場。
「よし、これ皆で食おうぜ!」
何を言っているんだ、コレだけの量を3人で食べれるはずがない。
「またこんなに食べるの・・・? 太るわよ・・・」
って言われているにも関わらず葵さんはひたすら食べ続けている。
「私は食べてもココしか太らないんだよ〜だ」
そう言って葵さんはケーキをほおばりながら自分の胸元を指差す。それを見てエコさんは何か不満そうな顔をしている。
「エコも食べたら少しは大きくなるかもよ〜?!」
「うるさい」
不機嫌ながらもしっかりケーキを食べているエコさんが何処となく可愛く見える。
隣の葵さんはケーキの次に今度はシュークリームを今度は食べている。
しかし、こう言うのも悪い気がするが葵さんがケーキを食べている姿は何だか似合わない。
骨の刺さった肉とかをガツガツ食べているイメージしか沸かない・・・。
「愁!ボーっとしてないで次のケーキ持って来い!」
「葵さんまだ食べるんですか?もうこれで十分じゃ・・・」
「いいからさっさと持って来い!」
何故一喝されなければならないのか疑問に思いながらも俺の手にはおぼんが握られていた。
さてと、一体どんなケーキを取ろうか、見てみれば何十種類ものケーキが並べられている。
きっと葵さんは選ぶのがめんどくさいから全部を1個ずつ取ってきたのだろう。だからあんなに大量のケーキがおぼんの上にあったのだ。
並べられているケーキの中に一つだけ1個しか残っていないケーキがある、とりあえず一つ目はこれをもらおう。
そう思って俺は最後のケーキをトングで掴もうとした時、もう一本のトングがそのケーキを持っていってしまった。
自分が取ろうとしたものを横取りされたら誰だってその人を見てしまう。
俺もそんな感覚でつい横を向けば、そこにいるはずのない人が立っていた。
「守るとか言って・・・お前は暢気に遊んでるのか」
黒髪の男、それは今まで何度も見た事のある姿。あの時、あの時も、鋭い目つきで俺を見てきた男。
その男が今俺の目の前に立っている。
言葉が出ず、体も動かない、言い用の無い恐怖が俺の全身を震え上がらせた。
「お前は約束を破った・・・わかってるよな?わかってるよなぁ?」
今までの和やかな場は一変して闇に包まれ、周りは何も見えない、ただ声だけ聞こえてくる、あの男の声が。
どうしてこの人が、こんな場所に、これは夢・・・?現実・・・?

「現実に決まってるだろ、こんな所でお前と会ったのは偶然だがな」
さっきまで回りに立ち込めていた闇は消え、目の前にはニヤリと笑みを浮かべている甲斐斗さんが立っていた。
それでも信じられない、どうしてこんな所に甲斐斗さんが・・・。
「あ、貴方がどうしてここに・・・」
「偶然って言ってんだろ。腹減ったから寄っただけだ、そしたらお前がこんな所で遊んでるとはな。
 まぁ安心しろよ、真昼間のこんな所でお前を殺したりしねえ。お、そうだ。今夜12時お前を殺してミシェルを迎えに行く事にするよ」
「・・・わかりました、約束を破ったのは俺です。罪は償います」
「当たり前だ、それじゃ精々生きている内に楽しんでおくんだなー」
そう言って最後のケーキを食べると、甲斐斗さんはポケットの中から紙幣を取りだし
それをレジカウンターに置いて店を出て行ってしまう。
甲斐斗さんの言う通りだ、守るとか言っておいて、こんな所で遊んで、あの子を放置してしまった・・・!
今からではもう遅いかもしれない・・・それでも俺は自分の言った事は最後まで遣り遂げたい。
俺は手に持っていたトングとおぼんの机に上に置くと迷わず俺は二人の元へ向かった。
「すみません葵さん、エコさん。俺は用事を思い出しました、先に失礼します」
「え、ちょ!いきなり何言って・・・」
もう一度頭を下げると葵さんの話しを聞かずに店を出て行く。きっと店では葵さんが怒っているに違いない。
それから来た道を走って戻ると、思っていたより早く宮殿に到着した俺は額の汗を拭い、自分部屋まで猛ダッシュする。
部屋に入れば椅子に上着が掛けられ、机の上に仮面が置いてある。
その上着を纏い、仮面を顔につけると、俺は部屋にあった大きな鏡で自分の全身を写す。
そうだ、これが俺だ。これが俺なんだ。
───準備は整った。
俺は既に仮面を被り、いつのも服装に戻っている。さぁ行こう、ミシェルの元へ。
場所はフィリオさんから聞いている、たしか宮殿の4階にある王族の部屋にいるはずだ。
早速階段を上っていくと、一室の前に2人の兵士が銃を構えて並んでいる、どうやらあの部屋にいるみたいだ。
「すみません、ここを通してもらえませんか」
「残念ですがここはフィリオ様の命令によりフィリオ様とラティス様しかお通しする事が出来ません」
俺の名前が無いだと・・・どうして俺は会ってはいけないんだ?あの子を守るには、あの子の側にいなければならない。
こうなれば力ずくで突破するしかない、これはやむ終えない事だ。そう自分に言い聞かせ俺は拳を振るおうとした時だった。
「魅剣?こんな所で何をしている、貴方には休暇が出たはずだ」
そこにはラティスさんが立っていた、右手にはジュースの入ったグラスを持っている。
「ラティスさん、俺をミシェルに会わせて下さい」
「何故急にそんな事を・・・?」
「約束を守る為です」
多分こんな事を言ってもラティスさんには何の事かわからない。
例え1から説明したとしても俺をこの部屋に入れてくれはしないだろう。
「・・・まぁいい、私が許可する。来い」
その予想外の返答に俺と、その扉の前にいた兵士までもが唖然となった。
「ほ、本当に良いんですか!?」
「別に構わない」
扉の前にいた二人の兵士は扉の前から離れると、ラティスさんはゆっくりと扉を開けて部屋の中に入っていく。
俺も一歩前に踏み出し部屋の中に入る。さすが王族の部屋とあって豪華な雰囲気が漂っている気がした。
部屋の中央にある大きなテーブルの上には数々の料理が並んでいたが、まだ誰も手をつけていない状態だ。
そこに持ってきたジュースのグラスを置いたラティスさんは、今度は大きなベットのある所へ向かう。
「既に食事の用意は出来ています、お食べにならないのですか?」
返事は無い、だがそこにはたしかに彼女はいた。毛布に包まって震えているミシェルが。
俺は彼女が視界に入った瞬間ベットに向かって歩き出す、彼女だ、彼女を守るのが俺の役目。
近づけば近づくほどわかってくる彼女が抱いている恐怖。
その彼女を俺がずっと放置していたかと思うと自分に激しい嫌悪感が胸を苦しくする。
初めて会った時もそうだった、彼女は震えながらある人の名前をずっと呟いていた。
「かいと・・・かいとぉ・・・」
「安心して、俺達は君に何も危害を加えない」
そう言うと彼女は俺の方をチラリと見てくれた、でも仮面をしているから誰なのかわからないはず。
俺はすぐに仮面を脱ぐと、その仮面を床に置いた。
「俺の名前は魅剣 愁。会うのは久しぶりだけど、憶えてるかな?」
彼女はゆっくりと、たしかに頷いてくれた。どうやら俺の事を覚えていてくれたみたいだ。
すると彼女は少し安心したのか、小さな口をそっと開いてある事を聞いてきた。
「かいとは・・・?」
「大丈夫、甲斐斗さんなら今夜必ず君を迎えに来てくれるよ。それまで俺が君を守るんだ」
「まもる・・・?」
「そう、俺が君を守る。命を懸けても絶対に。だから安心して食事をしていいんだよ」
そう言うと彼女はわかってくれたのか、包まっていた毛布からゆっくりと出てくる。
そして彼女はベットから降りると小さな靴を履いてトコトコテーブルへと向かった。
俺と彼女のやり取りを見ていたラティスが不思議そうにこちらを見ていたが俺は気にせずラティスの元へ向かった。
「魅剣、一体何を?私が幾ら説得しても一向に喋ってはくれなかったのに・・・」
「実は前に会った事があって、それで・・・。所でラティスさん、俺はこの部屋に残ってもいいですか?」
「理由は?」
「彼女を守る為です」
「・・・わかった、私からお嬢様に話しておきます」
当然反対されると思っていた俺にとって、その言葉は以外すぎた返事だった。
「あ、ありがとうございます!」
「魅剣ならこの子を任せられます、私はお嬢様の警護する役目があるので。それでは」
食事をしているミシェルを見ていたラティスさんの顔に少し笑みが見えた気がした。
そしてラティスさんは振り返ると部屋の扉を開けて部屋から出て行ってしまった。
部屋には俺と彼女の二人だけ、時計を見ると1時丁度、という事は今から10時間、俺は彼女を守ってみせる。

丁度昼の1時、日が一番照り、輝く時間帯。
そんな中、一人の少女と一人の男が街の花屋に来ていた。
「ねぇゼスト。どんな花がいいかな?」
「・・・」
何十種類もの花が飾られており、一体どの花を買えばいいのか迷うアリスだが、ゼストは何も答えない。
「いっつもそれよね、たまには答えてくれてもいいんじゃないの・・・?」
「お前がシャイラのお見舞いに花を持って行きたいと言ったんだろ、それぐらい自分で選べ」
たしかにゼストの言う事も一理ある、というかそうである。
「だって私、花とか買いに行った事ないんだから・・・」
「あの、ちょっといいですか」
アリスが一生懸命どの花を選ぼうか迷っていると、丁度隣にいた女性が声をかけてきた。
白いワンピースに麦藁帽子をかぶっているその女性の姿はまさに夏を感じさせる。
「随分と迷ってますけど、私でよければお花を選びますよ」
「ほ、本当?それなら是非選んでもらいたいんだけど!」
まさかこんな親切な人に会えるとは、アリスは早速頼むと女性は喜んで花を選んでくれた。
「ええ、いいですよ、所で今選んでいる花は誰かに贈るものですか?」
「そうなの、入院しているシャイラにお花を届けたくて・・・」
「それならカーネーションなんてどうですか?とっても綺麗で鮮やかな色をしていますし、匂いもキツくありません」
そう言って女性は赤く綺麗なカーネーションの花を一本掴むと、それをアリスに手渡した。
「これ良いわね、よし決めた。これにする!」
随分と悩んでいた花選びがあっという間に終わりを告げた。
アリスは店の人にお金を渡すと赤やピンクの色鮮やかなの花束を受け取るとそれを満足そうに見つめ、
それを見て花を選んだ女性もうれしそうに笑っていた。
「あ、そうだ!もしよかったら一緒にお食事しない?」
「は、はい。構いませんけど」
「じゃあ決まり!こっちに来て!」
そう言ってアリスは女性の手を引っ張りどこかに連れていこうとする。
それを見ていたゼストはアリスを止める事無く、ただ無言で後ろをついていく。
ついた所はあの宮殿、連れてこられた場所が場所であり女性は驚きの様子を隠せない。
「あの、ここって・・・」
「入っても大丈夫よ!ここは私の家みたいなものだから!」
門番の兵士はアリスに敬礼をしている様子から見て女性もこの子がどのような身分の子なのかがわかった。
そんな彼女を気にせずにアリスは宮殿の奥にある部屋へと走っていく。
走った勢いに任せながら扉を開けると、机の上に豪華な昼食が並べられている部屋へとついた。
アリスは花束を机の上に置くと、料理が並べられている机に向かい椅子を引いて手を繋いでいた女性を座らせた。
未だ戸惑い気味の女性はあたふたと周りを見渡し、目の前に並べられている料理を見つめる。
「ゼスト!私の分の料理を今すぐ持ってきて!」
「俺に言うな」
何はともあれ料理は無事に揃い、早速料理を食べようとしたアリスだったが、料理を口にしない女性を見て手が止まる。
「実は私リシュテルト家の人なんだけど・・・驚いた?」
「え、ええ。貴方がリシュテルト家の方だったなんて・・・。このような食事まで用意してもらえるなんて、ありがとうございます」
「気にしなくていいわよ、これはお花を選んでくれたお礼みたいなものだから、どんどん食べて良いからね」
そう言うと女性はお絞りで手を拭き、両手を合わせた後机に置かれてあるスプーンを握り、スープをすくうとそっと口に運ぶ。
「美味しい・・・!」
思わず言葉が漏れてしまう程の美味しさ、その反応にアリスも笑みを浮かべていた。
「あ、自己紹介がまだだったわね、私の名前はアリス。貴方の名前は?」
アリスの名前を聞いた途端少し驚いた表情を見せた彼女は手で口を隠しながらそっと答えた。
「あの、その・・・実は私の名前もアリスと言います」
「え!貴方もアリスって言うの!?」
「はい、だから私も今とても驚いてて」
「これはすごい!運命ね!同じ名前の人が会う何て早々無いわよ!ねえシャイラ!」
後ろに振り向きその名前を呼んでも、返事する者は誰もいない。
いつも自分の側にいて話しを聞いてくれた彼女はここにはいない。
アリスの笑っていた顔が徐々に戻っていく、そしてアリスは振り向くと、机の上においているカーネーションの花束を見つめた。
「その花束、シャイラさんに買ったものなんですね」
女性はそう言うとアリスは小さく頷き席に着いた。
「私の事は構いませんので、その花束をシャイラさんに届けに行ってあげてください」
「えっ、でもそれじゃあ貴方が・・・」
「気にしないで下さい、お料理とても美味しかったです。ありがとうございました」
料理も食べ終えた女性は席を立つと頭を下げてお礼の言葉を並べる。
「アリス王女がその花束を持っていけば、きっとシャイラさんの容体も良くなりますよ」
「わ、わかった!ありがとうアリス!私行ってくる!ゼスト、彼女を門までおくってあげて」
机の上に置かれた花束を掴むとアリスは真っ直ぐに部屋を飛び出していく。
その姿を見ていたもう一人のアリスは安心したような笑みを見せ、部屋を出て行こうとする。
それを見ていたゼストが部屋の扉を開けると、自分が先頭になり宮殿の出口まで案内していく。
「シャイラさん、体調良くなるといいですね」
「そうだな・・・」

宮殿の中にある病室、その一室には花束を持ったアリスが椅子に座っていた。
アリスの前には未だ意識が戻らず眠り続けているシャイラがベットの上で静かに眠っている。
頭には包帯が巻かれ、口に酸素マスクがついている彼女の姿を見るのはアリスにとって胸が張り裂けそうな思いだ。
「ねぇシャイラ、この花とても綺麗でしょ!私が選んだ・・・んじゃないけど、私が買って来たのよ!」
花束を顔に近づけるが当然返事は返ってこない。
「シャイラ・・・早くを目を覚ましてね。そしたらいっぱいお話聞いてね・・・」
手に持っていた花束をベットの横にある机に置くと、アリスは疲れていたのかベットもたれ掛かりそっと目蓋を閉じた。

二人のアリスが出会ったあの花屋に、彼等は集まっていた。
「アリスさんからの連絡が途絶えたのはこの場所らしいですね・・・」
黒髪の青年が辺りを見渡している中、一人の少女と二人の女性は店に売られている数々の花を色々と見ている。
「花って本当綺麗よね〜買って帰ろうかな〜」
「ああ、お前にはラフレシアが似合ってるな!」
その女性の隣ではへらへらと笑いながらその女性を指差す青年が。
「黙ってろ子供の敵!雪ちゃん、コイツには近づかない方がいいからねー」
女性はその少女を抱きしめると頭を撫でながら青年から距離を離していく。
「おいおい、俺酷い言われようだなぁ、羅威ー助けてくれよ〜」
青年は後ろにいる彼に助けを求めたが、その彼は花屋に近づいてくる女性を確認すると青年を無視してすぐさま女性の方に行ってしまう。
「アリス、今まで何処に行ってたんだ?皆心配していたんだぞ」
「ごめんなさい、でもすごい情報を持って帰ったから許して、ね」
軽くウィンクした女性は彼の横を通り花屋の前にいる皆の元へ駆け寄ると、頭を下げて謝っていた。
黒髪の青年は無事で何よりといった表情で胸を撫で下ろしている様子だ、そして皆を集めるとこう口を開いた。
「何はともあれ皆無事に揃って良かったよ、それじゃミーティングもあるから艦に戻ろうか」
彼等は帰って行く、その中で一人、アリスは寂しげな表情で後ろ振り返った。
見えるのはもう一人のアリスと花を買ったあの花屋。遠くから見てもその花々の美しさがよくわかった。
「ごめんなさい・・・」
そう言って彼女は止めていた足を前に出して歩き始めた、彼等と供に。この世界の為に。


シャイラ
ゼストとの正反対、明るく優しく、いつもアリス・リシュテルトの事を心配している女性。
謝り癖があり、些細な事をしてしまってもすぐに頭を下げて謝ってしまう。











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