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第35話 EDP、始動
───あれから一日がたち、とうとうEDP決行の日が来た。
兵士達は朝から慌しくEDPの向けて準備をしている中、東部軍事基地の門の前に一台の黒いリムジンが止まる。
当然門番の兵士達がその車に気づき、車の側に近寄ってくる。
「門番の方、ここの扉を開けてくれないだろうか」
運転手は一枚の紙を門番に渡すと、門番の兵士はその紙に書いてある内容はすぐさま読み始める。
すると、さっきまで強気だった態度が急変、顔色を変えてすぐさま門の扉を開けるよう他の兵士を指示をし始めた。
その様子に運転手は小さく笑みを見せると、止めていた車を発進させ基地の中へと入っていった。

───「伊達中尉!それは本当なんですか!?」
会議室に向かう廊下で急ぐように歩いている武蔵と由梨音。
そしてその後ろにはレンもついてきていた。
「ああ、騎佐久が言うには本当らしい」
まるで前からそうなる事を予想していたかの出来事だった。
前日の戦闘で兵士、機体や弾薬を消耗してしまい万全の体制でEDPを迎える事は出来ないと思っていた。
だが今は違う、機体も弾薬も全て揃い万全の体制になっている。
会議室の扉を開けると、既にそのお客は集まっていた。
一人の少女の両隣に座っている一人の女性、そして一人の仮面を被った者。
「初めまして、貴方に会えて光栄です。伊達中尉」
その少女の顔に武蔵は見覚えがあった、忘れるはずがない。
Saviorsの創始者、リシュテルト家の人間。
三人は横一列に並ぶと敬礼を始める、そして所属部隊、階級を言うとその場で待機していた。
「どうぞお座りください」
言われるままに三人は椅子に座る。
それにしても、どうしてSaviorsの人がこの基地に来ているのか。
そしてどうして第五機動独立部隊の兵士だけをこの部屋に呼び出したのかわからなかった。
「私一度お会いしたかったんです、最強の名を持つ貴方に。伊達中尉」
「はい、私も貴方のような方に会えて光栄に思っています」
椅子に座っている武蔵は冷静な顔をしていたが、両隣にいる由梨音とレンは緊張の余りじっと座っている事しか出来ない。
「何故Saviorsの方がここにいるのか……と、不思議そうな顔をしていますね。ラティス、彼等に説明してあげてください」
「わかりました」
フィリオの左隣に座っている女性が返事をすると、伊達の方に視線を向ける。
「何故SV(Saviors)の我等がここにいるのか、それは貴方達と共に『EDP』に参加するからです」
「昨日本部の方達とは話しを済ませてきました。
 SVは元々世界平和の為に組織であり最終目標は平和な世界を作ろうとするNFと同じ」
「だから……この作戦を共に遂行しようと?」
今まで黙っていたレンが口を開く、たしかにSVとNFの目的は同じかもしれない。
しかしSVとNFが決して仲の良い関係とまでは言い切れないし、そもそもSVの目的がよくわからない。
「そうです、ERRORは人類の敵、今は人間同士が争っている場合では無い、それは貴方達もおわかりのはず」
たしかにそうだ、今は人間同士が争っている場合ではない、それにSVが参戦してくれるのはNFにとっても有りがたい。
昨日消耗した戦力を補う事も出来る、それにNFの兵士を犠牲にしなくてすむのだから。
「そろそろ私達をここに呼び出した答え、教えてもらえないでしょうか」
ふと武蔵が口を開き、視線をフィリオに向ける。
何故この場所に武蔵の所属している部隊だけを呼び出したのか、武蔵はそれが気になっていた。
今度はラティスではなく、フィリオ自身が口を開いて答えを出した。
「先に言った通り、貴方にお会いしたかったのです。
 貴方の戦歴を前にご覧になりました、そして戦闘も。貴方ほど機体を使いこなせる人はいないと思っています」
「それでもし良ければ、来てはいただけないでしょうか……Saviorsの下に」
ヘッドハンティングだ、伊達武蔵程の腕前ならおかしくない。
伊達の両隣にいる二人は驚いた表情を見せる、当然だ。この場、この瞬間で武蔵を誘っているのだから。
突然の衝撃発言に二人は同時に武蔵に顔を向け、返事を待つ。
「伊達中尉のような強く逞しき方がいればSVは更に開花します。
 貴方も知っているはずです、本当のNFの姿を。貴方のような方がNFにいては……」
「お誘いは嬉しく思い光栄ですが、俺はSVには行きません」
大きく、強い口調で言ったその声を聞くと、両隣に座っている由梨音とレンが笑みを見せた。
「……そうですか、わかりました。突然この様な事を言って申し訳ありません」
フィリオは残念そうな顔をして頭を下げると、ラティスやその隣にいる仮面の男も頭を小さく下げた。
「俺達はこれから機体の整備をしておかないといけないので、失礼します」
武蔵は一人立ち上がると敬礼を済まし、部屋を出て行こうとする。
レンや由梨音も焦るように立ち上がると敬礼をして武蔵の元へと向かった。
「お嬢様、やはりあの方は……」
「ええ、行かれるみたいですね」

───目には見えない張り詰めた空気が既に基地を取り巻いている中、この男、甲斐斗は違った。
「っ…そろそろ仮眠終了するか……」
まだ眠く頭がボーっとしている、それでも俺は今日中に伊達中尉が提供してくれた情報に全て目を通しておかないとならない。
俺は眠気防止の為にコーヒーメーカーを機動、カップに注がれるコーヒーを一気に飲み干すとすぐさまPCのある奥の部屋に向かう。
「かいと、おはよー」
「ん、まだ起きてたのか?良い子は寝る時間だぞ」
俺は目を擦りながらボーっと立っているミシェルの背中を押してベットの方に連れて行く。
「まだねててもいいの?」
「寝てもいいに決まってるっての、ほら時計見てみろ。もう10時だぞ」
時計の針10を指している、誰がどう見ても10時。
丁度俺が寝たのは9時だから1時間仮眠した事になる。
すると突然ミシェルは俺から離れると部屋のカーテンの方へ走っていく。
ん、カーテンの隙間から微かに光が……いや、まさかな。
「あっ」
足元に何も無いのに関わらず、ころんと転げてしまうミシェル。
何かに掴まろうと咄嗟にカーテンを掴んでしまいミシェルの体重で簡単にカーテンは剥がれた。
眼に突き刺さる光、明るく輝く日光は希望ではなく俺に絶望を与えてくれた。
「朝の、10時?」
朝の10時?俺が寝たのは夜の9時だ。
え、それじゃ俺は13時間の仮眠を取っていたのか?仮眠ってレベルじゃない。
どうするんだ?俺はまだ見ていないデータは山ほどある、それを今から全部見ろと。ああ、昨日の夜見ておけばこんな事には。
「あああぁぁぁっ!俺の時間を返してくれぇえええっ!!」
頭を抱え込みながら俺はベットに崩れ落ちた。
あーあ、もう本当こういうのって嫌だ、あの時寝るんじゃなかった。
今はもうスッキリすっかり目が覚めている、仕方が無いから今からまだ見終えていないデータを見る事にしよう。
それしかない、俺にはそれしかないんだ。
脱力した体を起こし、PCの前にある椅子に座るとまだ見終えていない文章に目を通していく。
「ミシェル大丈夫かー?大丈夫なら顔洗って冷蔵庫の中にある物を適当に食べといてくれ」
そう言うとさっきまで倒れていたミシェルはむくっと起き上がり、またとことこ洗面所の方に走っていった。
俺の予想だと多分作戦の時間を伝えに伊達中尉が俺の所に来るはず、それまでにこの情報を全て見ておかなければならない。
その時だった、突然部屋の扉が開く音が聞こえてきやがった。
まさかとは思うが、そのまさかだった。青い軍服に身を包んだ伊達中尉登場。
「おはよう、気分はどうだい?」
「最悪です」
伊達中尉の爽やかな挨拶に負けないぐらいの顔で俺は挨拶を返してやった。
「どこか具合でも悪いのかい?」
「いや、別に具合は悪くないけど……」
「それならいいんだけど。あ、ちょっと俺と一緒に来て欲しい所があるんだけどいいかな」
「りょーかい、何処でも行きますよ」
俺は脱力した体を立ち上がらせると、妙に重い肩を自分の手で揉み解していた。
こんな晴れた日でも戦争は起こるのか……と、ふと思ってしまう。
窓から差し込む光を見て今日の天気は快晴。こんな天気の良い日は昼寝でもしたいものだ。
って、何を考えてんだ俺は。さっさと行く所行って物事済ましていこうじゃないか。

───そんな訳で来た所が格納庫、もちろん俺は軍帽を深く被り若干俯きながら歩いている。
周りを見てみると兵士達は慌しく機体の整備や調整を行なっている。
そんな格納庫内を歩いていくと、1機の機体の前に俺と伊達中尉は立ち止まった。
「見間違える程変わったようだね、君の機体」
「お、俺の機体?」
俺はその言葉を聞いてもう一度機体を見た、だが明らかに俺が乗ってきた機体とは明らかに違う。
そこに一人の女性が歩き煙草をしながら近づいてきた、どうやらこの機体を作り変えた人だと思う。
「神楽、こんな短時間によく仕上げれたね」
「当然、こんな機体見てたら弄りたくなるわよ。それにこの機体、思っていた以上に面白かったわよ」
女性は満足な顔をしながら煙草を吸い、伊達中尉と仲良く会話をし始めた。
この人と伊達中尉は顔見知りなのか、それとも奥さん?一人とり残された俺はとりあえず機体に近づいてみる。
「あら、勝手に機体に触らないでほしいんだけど」
しっかり俺の動きも見ていたのか、というかこの機体は俺の機体だから別に何したって構わんだろ……。
すると今度は伊達中尉が口を開き、神楽に説明をし始める。
「神楽には言ってなかったね、その人はこの機体のパイロットをしてくれる人なんだよ」
「へー、彼がこの機体を」
俺の顔を覗きこむようにしてくるが、ここで顔を見られる訳にもいかないので軽くそっぽ向いてごまかす。
「……まぁ伊達君の選んだ人なら間違い無さそうね。そうだ、それなら今からこの機体の事について話しましょうかしら」
「この機体のフレームは全てNF製特注のフレームに換えさせてもらったわよ。それにしても旧フレームを外すのが一苦労だったわ。
 まるで装甲と機体が全て一つから出来ているかのように、 外す事が簡単にできなかったんだから。
 それでやっと外し終えてフレームを付けてみたの。そしたらあら不思議、機体はあっという間にそのフレームを一体になり始めた。
 機体の全身に詰まっている肉のような物を検査してみた所、これはERRORが人工的に作り出した筋肉だって事が分かったの。
 ERRORと一体化した機体、こんなの見た事も聞いた事も無い。
 どうしてこんな風になってしまったのかも未だにわからないのよ」
一人で長い説明、ありがとうございました。
俺の勝手な決めつけかもしれないが、学者はよく喋るのではないかと思う。
だからこの女性の話もまだ終わっていなかった。
一本の煙草を吸い終え、携帯灰皿を使って煙草を潰し終えるとまたポケットから煙草を取り出し火をつけて吸い始めた。
「謎はまだあるわよ、この機体は光学電子磁鉱石を使用していた、
 そして骨組みを見てみるとこの機体がBN製だという事がわかったの。
 これが一番わからない事、ねぇ伊達君。
 どうしてそんな機体がNFの基地防衛を手助けしてERRORを倒し、この機体がこの場にあるのか。
 この機体に乗っていた人は一体何処に行ってしまったのかしらね。
 通信記録から見るとレンちゃんがそのパイロットとの会話を確認してるんだけど、
 未だにそのパイロットが見つからないのよねぇ……」
その未だに見つからないパイロットは貴方の目の前にいますよ。
たしかにこの女性が思うように幾つもの謎、疑問があるだろう。
俺だってそうだ、俺はBNの基地で戦っていた時、どうしてあんな台詞を言ったのか。
魔法も使えない俺ならあっという間に取り込まれていたはず、しかし俺は生きている。これは偶然なのだろうか。
「謎がある方が俺は面白いと思うよ、だからそれは謎のままでいいんじゃないかな」
「たしかに謎があった方が面白いけど、その謎が何なのかを調べるのが学者なのよ?」
「あ、それもそうだね」
また二人で会話が盛り上がっている、あんなに笑い楽しく喋っている伊達中尉を見るのは初めてかもしれない。
二人とも本当に仲が良さそうだが、伊達中尉にはもう一人仲の良い女性がいたはずでは……名前はたしか赤毛。
「赤城!?」
あ、そう、その名前だ。
伊達中尉が驚いた様子で名前を言うと、赤城が俺達の前に歩み寄ってきた。
「あら、赤ちゃん。体の方は大丈夫なの?」
「平気だ、それと私は赤城だ」
いつもの台詞を言うと、赤城はふと俺の方に顔を向けてきた。
緊張で鼓動が早くなるのがわかる、もしここで正体を見破られては色々と面倒な事になってしまう。
「丁度良いわ、赤城。貴方にもプレゼントを持ってきてあげたのよ。こっちに来てくれるかしら」
神楽はそう言って俺の機体の前から離れていく、その後についていく伊達中尉。赤城も自然に歩き出し神楽の後を追う。
俺は少し距離は置きながら三人の後をついていくことにした。
今度は赤色のリバインの前に立ち止まる三人。そのリバインを良く見ると背中に見慣れない武装がされていた。
「貴方専用の武器を用意したわよ、その名もLRB(Long Range Blade)
 LRSに比べて大きく、切断力を更に増して破壊力を上げたわ。
 両手で装備するから剣を背中に戻さないと盾や銃を手に持つ事ができなくなってるけど。
 どう?気に入ってもらえたかしら」
自慢げに煙草を吸ってみせる女性、その後ろに立っている赤城はじっとその機体を見つめ続けている。
「感謝するぞ神楽、これで私も武蔵に負けないぐらい戦える」
「貴方が伊達君を超えられるとは思わないけど、せいぜい頑張りなさい」
皮肉を言ったようにも聞こえるが、赤城にとっては励ましてくれる言葉に聞こえていた。
と、その時。見慣れた格好をした二人の女性と、仮面を被っている男が伊達中尉に近づいていく。
「は、初めまして伊達大佐!お、俺!違った!私は葵と言います!貴方の部隊と一緒に行動できて俺は本当に感激です!」
一人慌てふためきながら自己紹介をした女性。俺はよく知っている、SVの人間、葵だ。
なんでSVの人間がNFと一緒にいるんだ、二つの組織は敵対していないのか?
「初めまして、エコと言います。本日だけ伊達大佐の指揮下に入ることになりました……よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて自己紹介を済ました少女、エコ。
「先程お会いしましたね、俺の名前は愁と言います。大佐のような方の指揮下に入れて光栄に思っています」
か、仮面の男!?っつうことはコイツは以前俺と戦った『鬼』のパイロットか!?
「うん、こちらこそよろしくね。でも俺の階級は中尉。それにこの部隊の隊長は赤城だよ?」
「いえ、それがフィリオ様の特権で貴方の階級を大佐に戻し、この部隊の隊長に任命しました」
そんな事簡単に決めれるものなのだろうか、赤城や伊達中尉もそれを聞いて驚いた様子を見せていた。
「赤城を隊長から下ろすなんて、フィリオさんに会ってもう一度話しをさせてください」
伊達中尉は少し怒っているようにも見える、自分の事よりも他人優先の人だ。
自分が隊長に任命された事より赤城が隊長ではなくなった事の方が彼にとっては納得いかないんだろう。
すると、赤城が冷静な表情で口を開いた。
「ちょっとまて武蔵、私はお前が隊長の方が良いと思っている」
その赤城の言葉に便乗し神楽も口を開くと言葉を続けた。
「私も賛成ね、この戦。伊達君の力が少しでも欲しい時よ。貴方が隊長になり指揮をしてくれれば軍全体の指揮が上がるわよ。何たって伊達君は真の英雄だもんね」

───「……赤城、本当に俺でいいのかい?」
最後に一言、本当に自分が隊長になってもいいのか赤城に聞いてみた。
「ああ、私はお前を……いや、伊達大佐を信じているからな」
5ヶ月前のあの時、あの時までは伊達は大佐、部隊の隊長で活躍していた。
その下で戦う騎佐久、赤城、神楽。NF最強の歴史を刻んできた4人。
そしてまた伊達の下で働けると思うと嬉しさの方が大きかった。

───「わかった、俺が隊長を引き受けるよ」
その言葉に周りにいる葵達が笑みを見せた。
「君達も、共に頑張ろうね」
伊達大佐はそう言って三人に握手の手を伸ばす。
するとそれを待っていたかのように葵が伊達大佐の手を握り締めた。
「は、はい!頑張ります!よろしくお願いします!」
俺が前に見た葵は何処に行ったのだろうか、もっとガサツで男っぽい性格だったのに、伊達大佐の前になるととても女性らしく振舞っている。
「伊達君、貴方の機体について少し説明しておきたい所があるの、一緒についてきてくれるかしら」
神楽は伊達大佐の腕を掴むと、半ば強引に引っ張り、格納庫の隅の方に歩いていった。
あれ多分怒ってるんだろうなぁ。
「三人とも、他の部隊の隊員を紹介しようと思う。ついてきてくれ」
神楽とは別の方向に向かって歩いていく赤城、その後ろにSVの三人は付いていく。
どうやらNFとSVが手を組んだらしいな。俺にとってはそんなにうれしい情報ではない。
でも仕方が無い、伊達大佐と約束をしたんだ。EDPに参加すると、それは男として破るわけにはいかない。
ん…あれ、気づけば回りには誰もいない……。
俺はここで何をしてたんだっけ、たしか伊達大佐に呼ばれて来たはいいけど色々と人が増えて……。
帰ろう、自分の部屋。作戦までにはまだ時間があるみたいだ、帰って飯食ってまた見ていないデータを見るかな。
被っている帽子を更に深く被ると、俺は堂々と自分の部屋に帰っていった。

───格納庫の一番隅に置かれている機体『大和』
目には見えない圧倒的な存在感、威圧感を放っているその機体の前に武蔵と神楽は立っていた。
「伊達君、榴弾と鉄鋼弾と後もう一つ特別な弾を用意したわよ。
 LRC(Long Range Canon)、射線上の敵を一掃したい時はこれを使うといいわね」
「ありがとう、何から何まで準備してもらって……何か悪いね」
「いいのよ、伊達君に満足してもらえるなら何だってしちゃうんだから」
神楽は笑顔で話しているが、武蔵の顔は何か考え事をしているのか、暗く俯いていた。
「……どうしたの?」
「いや、ちょっと考え事をしてただけさ……」
「EDPが心配なの?大丈夫よ、伊達君と私の開発した機体があれば作戦は絶対に成功する。それに私は伊達君を信じてる、だから伊達君も私が開発した大和を信じて」
「ありがとう神楽、俺は信じるよ。そしてこの戦い、勝たなければ人類に未来は無い……だから絶対に勝利を掴んでみせるよ」

───午後1時、各機体は戦艦に詰め込む準備が進められていた。
兵士達も各艦に乗り込み、いつでも出発できる状態だ。一人の男を除いて。
「出発時間が1時10分とか聞いてねーっつうの!」
さっき伊達大佐から電話が来た。
『あと10分で出発するよ』
「はい?」
『ごめん、言うの忘れてた』
忘れた……じゃねえだろ!言うの遅いっつうの!
現在部屋からもうダッシュで格納庫へと走っている、間に合えばいいんだが。
俺がEDPに行っている間、ミシェルは俺の部屋で待機する事に。当然だな。
いちお部屋の鍵は閉めてきたが、また一人ぼっちにさせてしまうと思うと少し胸が痛む。
と言っても、この戦いが終わればまたここに帰ってこれる、さっさと終わらしに行こうじゃないか。
格納庫に向かうと、既に一つの戦艦が今まさに発進しようとしている、俺はそのまま全力で走り急いで入り口に向かって飛び込む。
それと同時に入り口の扉は閉まり、戦艦は動き出した。
「これで置いていかれたらシャレにならねえよ……ん?」
無い、さっきまで被っていた軍帽が何処にも無い。
この戦艦に飛び乗った拍子に帽子が抜けちまったらしい、これは非常にマズイ。
もし俺の顔が他の兵士に見られてしまったら……ああ、またややこしくてめんどくさい事が起きるに違いない。
そうだ、電話だ。伊達中尉に電話して来てもらえればいいんだ。
ポケットの中にある携帯電話を手に取ると、急いで伊達中尉に電話を試みた。
『お掛けになった電話番号は───』
繋がらない、となるとやはり自力でこの場を切り抜けるしかない。
この戦艦の格納庫へと向かい、機体に乗り込めば何とかなりそうだ、そうと決まれば格納庫に行くまでだ。
俺は意を決して足を出した、格納庫に向かう為に。
その時、まるで俺が出て行くのを見計らっていたかのようなタイミングで他の兵士が歩いてきやがった。
だがここで引き下がる訳にはいかない、俺は壁に顔を向けながら走り、何とかその場をやり過ごす。
突っ走る俺の姿を見て兵士達は首をかしげているだろうが今はそんなの気にはしない。
俺の場所からすると通路をずっと右に進んでいけば格納庫に着くだろう大体場所はわかる、戦艦に乗ったのは2度目だしな。
……とは言ってもこの戦艦に乗るのは始めてだ。本当にこっちで合ってんのかな。
「あれっ……?」
何で俺、倒れてるんだ?
頭の中に一瞬走った激痛、意識や記憶まですっ飛んでしまうかのような痛みだった。
余り力の入らない足で俺は壁にもたれ掛かりながら何とか立ち上がってみる、何で汗を掻いているんだ俺は……。
この感じ、何かが込み上げて来る感じ、吐き気ではない。
だがこの感覚、前にもあったようなっ、まぁ今はどこかで休む必要があるな……頭がくらくらする。
ふと前方を見るとWCのマークが見える、仕方が無いので今はここで休むしかない。
俺は壁にもたれ掛かりながら一歩ずつ大量の汗を掻きながら歩く。別に漏らしそうなのを我慢しているのではないが
ようやくトイレに入る事が出来た。すぐさま顔を水で洗うと俺は個室に入り便器に座り込んだ。
また頭に痛みが走ってきやがる、それに段々と意識も薄くなっていく……こんな所で寝たくは無い。
が、今は寝た方が良さそうだ、寝れば少しは楽になるかもしれない。決して心地よい眠りではないが俺はそっと目蓋を閉じた。
……臭い。

───それからどれくらい寝ただろう、ふと気がつくと一人のおっさんの声が聞こえてきていた。
『ついにERRORとの決着を付ける時が来た、この戦いで人類の存亡が決まるだろう!』
何トイレで熱弁してんだこのおっさん。と思ったが、どうやらその声は遠くから聞こえていた。
声が遠くの方から聞こえてくる、演説でもしているのだろうのか。
頭の痛みもサッパリ無くなり、快調である。こんな所で寝たら更に体調を崩してしまうと思ったが、その心配は無かった。
とりあえず格納庫に行かなくては、だがまず俺はその声のする方に向かってみる事にした。
何台もの機体が並んでいる、何人もの兵士が整列して並んでいる。
そしてその何百人という兵士の前に、数人の兵士が立っていた。
「『EDP』を遂行するのは難しい、困難な事かもしれない。多くの犠牲が出るだろう。だが、敗北は絶対に許されない。
 奴等『ERROR』は我々から土地を!家族を!自由を!全てを奪ってきた!
 この世界、この星、我等人類の為に。今こそNFの力を終結させERRORとの忌わしき戦いに終焉をもたらす。
 そして武器の無い平和な世界を、理想の世界を作り上げるぞ!我々の手で!」
数千人の兵士が一斉に敬礼をする、その足音、手の向き、全員が余りにも揃っていた。
さすが軍人と言ったもんだな、まぁいい。後はこの場で誰にも見つからずに機体に乗り込めればいいんだが。
「あーあー、マイクテスト」
さっき演説していたおっさんの声とは違う声、伊達大佐の声だ。
俺はまた身を潜め、今度は伊達大佐の演説でも聞いてみる事にした。
それにしても……空気が重い。
この張り詰めた空気、緊張というのだろうか。ここにいると息苦しさを感じる。
格納庫にいる全兵士が伊達大佐に視線を向けており、伊達大佐の顔からいつもの笑顔は消えていた。
「俺から言う事は少ししかないです、ここに居る全ての兵士に言います」
「生きろ。自分の命を無駄にするな、絶対に諦めるな。……俺が言えるのはこれぐらいです」
マイクの電源を切ろうとした時、格納庫内にアナウンスが響き渡った。
『 戦艦に近づいてくる熱源反応確認!艦内の兵士達は直ちに戦闘準備を!!』
「全軍に命令する、パイロットは直ちにパイロットスーツを装着、機体に乗り込み出撃体勢に入れ!』
伊達大佐の声に、格納庫にいた兵士達は一斉に散らばり始めた。
次々に機体に乗り込む兵士達、俺はその場に紛れこみ自分の置いてある機体に近づいていく。
操縦席から伸びるワイヤーに掴まると、自動的に引き上げを開始、難なく機体に乗り込む事に成功。
機体の中身は余り変わっていない、変わったのは外見だけなのだろうか、まぁ今はそんなのどうでもいい。
何故だか俺はとてもウキウキしている、まるでこれからお祭りが始まるかのような感じだ。
それにしても光栄だな、歴史に残る大戦に参加する事が出来るのだからな、暴れさしてもらうよ、最強の力をもつこの俺がな。

───「伊達大佐、こんな所に呼び出して私に話とは一体何でしょうか」
格納庫の隣にある小部屋に赤城を呼び出した武蔵、赤城は既にパイロットスーツに着替えており、自慢の赤髪を紐で縛っていた。
「赤城、大佐なんて言わなくていい。いつものように呼んでくれないか?」
武蔵もパイロットスーツに着替え終わり、いつでも機体に乗れる格好だ。
「いいのか?」
「俺だって自分が中尉の頃赤城って言ってたよね、だから赤城も普通にしていてくれないかな」
「わかった、それで武蔵。私に話とは何だ?」
さっきまで敬語で話していたが、突然タメ口となり軽々しくなる。
その切り替えの早さに武蔵も少し驚いていた。
「話って言っても、赤城に言っておきたかったんだ」
「言っておきたい事?」
「うん……赤城。もし俺が死ぬ時がきたら、その時は───」

───全ての準備は整った。
数十もの戦艦のハッチが開き、次々にギフツやリバインが発進していく。
そして徐々に見てきた赤波、数百以上ものERRORが大群で、波のように押し寄せてきていた。
だがその時だった、上空から落ちる一発の砲弾。
戦艦が通る道を開けるかのようにERRORの大群を吹き飛ばす。
一発だけではない、何十発、何百発もの砲弾が雨のように降り注ぎ、ERRORをゴミのように吹き飛ばしていった。
上空に見える一つの母艦。
NF最強の航空母艦『アルカンティス』まるで一つの要塞が浮かんでいるかのような形をしているのが特徴的だ。
地上の戦艦は最大出力で、一気に穴の開いたERRORの波を突破していく。
空からの攻撃では何も太刀打ちする事が出来ないERRORは地上の艦に張り付こうとするが、その速さと弾幕で次々に吹き飛ばされていく。

───伊達武蔵率いる第五独立機動部隊のメンバーは『GATE』到着後『GATE』の中心にあるコード入力装置を機動させ、
PWコードを10分の間に入力しなければらならない。コードを入力するのは伊達武蔵、彼にかかっている。
ちなみに何故10分以内なのかは、敵の侵入を防ぐ為のセキュリティ機能が起動しているからである。
地下から『ERROR』が現れる為、戦艦や部隊メンバーは全員『GATE』の上で戦い、
『GATE』を開く事成功した場合、全火力をもって戦艦の通れる道を作り脱出を行なう。
全機体に武蔵の声が流れる、愁、葵、エコ。そして赤城、由梨音、レン、甲斐斗……それぞれの思いを胸に武蔵の命令を聞いていた。
『ノイド、アステル、ルフィス。俺たちは掛け替えの無い友を……仲間を失った』
『今まで無念にも命を落としてきた戦友の為にも、俺たちはここで決着を付けるしかない』
モニターに映る一つの光景、そこには銀色に輝く巨大な門が広がっていた。
その光景を見ると、通信回線を部隊から全体に切り替える。
『どうやらGATEに到着したみたいだ、艦内で待機している全部隊に告ぐ、俺達の守るものの為に』
『EDPを……開始せよッ!』

───ついにこの時が来た。
戦艦のハッチが開くと、待機していた数十機もの機体が次々に発進する。
航空母艦『アルカンティス』から次々に投下される機体、そして出撃していく戦闘機。
武蔵達の部隊も次々に出撃していく中、甲斐斗が乗っている機体だけ何の動きも見せない。
軍人がこんなにも命を張り、戦っている。それは当然の事なのだろうが、俺にはその意味が初めてわかった気がする。
元々俺は軍が嫌いだった、だが伊達武蔵と会って何かが変わった、やっぱりすごいよこの男。
だからと言って軍が好きになったわけではないが、この青空の下、能天気に暮らしている人間がどれだけいるのだろうか。
本当ならここにいる軍人も、平和な暮らしが出来ていたはずなのにねぇ。
さて、考えるのは止めにしよう。俺は約束通りEDPに参加するまでだ。
正式名MFE-アストロス・ライダー (Saviors製)
全長-18m 機体色-青緑 動力源-光学電子磁鉱石
獣の姿をモチーフに作られており、両手の甲には長い鉤爪が付けられており
オーガと似て接近戦闘用タイプの機体に仕上がっている。
Person態等の小さなERRORとの戦闘用の為に両腰には小型のキャノン砲がついている。
コクピットは広く二人専用の機体に仕上がっている、元々一人用だったが改良を加え
二人で操縦するように作られた、その為敏捷力、反応速度はオーガを超えている。


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