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Deltaプロファイル
作:極



第3話 戦い、化け物


あれから数日達、体の方はすっかり直ってきた。
左腕に刺さったていた点滴の管も外れ、体に巻かれていた包帯も取り外されている。
何とか自由に病院を歩く回れるようにはなったが、病院の外に出ることを許されていない。
そんなある日、ルフィスが俺の前に現れた。
「おはようございます」
「ああ、君はたしか・・・」
「ルフィスですよ、前に言いました」
「覚えてる覚えてる、それで何か用?」
「はい、アステル少尉。これが貴方の軍服です」
ベッドの上に置かれた軍服は少し重く感じられた。
「アステル少尉は東部の基地移されたんですよ、早速着替えてください」
入院していたのに、いきなり軍事基地に移されるのか。
「部屋の外で待ってますね、着替え終わったら出てきてください」
伝える事を全て言うと、病室から出て言ってしまう。
前に会った時より少し冷たくなった感じがする、無理も無いか。
俺はもう誰も覚えていないという事に。当たり前だ、別人だからな。
そんな事を一人ふつふつと考えている間に俺は青の軍服を身に纏っていた。
ルフィスという女性が着ていた軍服は緑、軍服の色で階級が決まっているのだろうか。
俺は病室のドアがゆっくりと開けると、ルフィスは壁にもたれ掛かりながら不安げな表情していた。
「あっ」
しかし、俺の姿を足先から頭のてっぺんまでじっくり見つめてくると、
少しその不安が消えた用にも見える。
「さ、さあ行きましょう。ついてきてください」
彼女は俺から目を逸らし、一階に下りる階段へと向かう。
その彼女の後ろを服の襟を直しながらついていった。
一階に下りて病院を出ると。黒い車が俺を待っていた。
ルフィスがその車の助手席に乗り込んだので、俺も後部座席に乗り込む。
俺が乗り込んだ途端、開いていたドアが勝手にしまり。ものすごいスピードで車が走り出す。
「Dシリーズに乗れるかテストを行います、コレは説明書です。読んでおいてください」
携帯電話の説明書ぐらい分厚い書類をいきなり渡されてもなぁ、
1ページ目には何かロボットのような絵が書かれてある。
「Dシリーズって何?」
「簡単に言うと人型機動兵器、デルタマシンナーズの事です」
簡単に答えられてしまうが、よくわからない。
取りあえず今渡された書類を目に通せば何かわかるかもしれない。
とはいっても、俺は字を読むのが少し苦手だ。
けれど、渡された分厚い書類を俺は丁寧に一枚ずつ読んでいく。
・・・まぁ読めば少しは理解出来た、つまりDシリーズと言うのは戦争の道具という事だ。
戦車や戦闘機より高性能で頑丈、この世界の戦争の基本はコレを使って戦う事だろう。
俺はその分厚い書類をずっと見ていた、この世界がどれほど科学が進んでいるのかもよくわかる。
「着きました、降りてください」
ルフィスの声でふと我にかえると、ルフィスが車から降りていた。
俺が書類に目を通している間に配属先の軍事基地に既に来ていた。
この世界の街並みでもじっくり見てみようと思っていたのだが見れなかったな。

俺の目の前には大きな建物が聳え立ち、門が見える。
基地周辺は大きく分厚いコンクリートの壁で囲まれており、
監視カメラなどが付いているのがわかった。
俺には基地というより要塞にも見える。
ルフィスに付いていくと、基地の中央に聳えている建物には入らず。
その横に建てられている建物に案内された。
「あの、俺は一体何処に向かってるの」
「さっき言った通り、Dシリーズに乗れるかテストを行う為の試験所です」
俺が建物に入った瞬間、凄まじい音が部屋中に響き渡っていた。
案内された部屋は一枚だけガラス張りになっており。
そのガラスの先に見えるのは書類に描かれていた通りの機体が戦っていた。
かなり広いスペースだ、これ程大きな建物を作るとは・・・。
「今、赤城少佐と伊達中尉が模擬戦をしている所です。もうすぐ終わると思うので待ってください」
部屋には椅子が置いてあり、それに座るルフィス。
俺はガラスの前に立ち、二人の戦いを見てみる事にした。
な、何々だ。この動きは、この中に人が乗っているというのか?
俺が思っていたより、いや。それ以上の速さで機体が動いている。
両機が持っているサーベルとシールド。
互いのサーベルが激しくぶつかりあい、両者一歩も引かない。
と思ったが、一機が相手のサーベルを弾き飛ばす。
サーベルを弾かれた機体は背中に付いているアサルトライフルを手にして銃口を向けるが
相手の機体は高速で左右に動きながら接近し、照準が合わない。
引き金を引いた瞬間、サーベルは銃口を切断。
銃口を切り捨てた時にサーベルを胸部に突き立てた。
胸部、それはコクピットが付けられている場所、Dシリーズの脳だ。
「赤城少佐、伊達中尉。そろそろお時間です。交代してください」
ルフィスが二人の乗っている機体に呼びかける。
サーベルを突き立てていた機体はゆっくりとサーベルを腰に戻し、後退する。
それに合わせてもう一機の機体も格納庫に移動する。
「アステル少尉、パイロットスーツに着替えてください」
そう言うと、指を指して部屋を教えてくれた。
あの機体の動きを見せられ、俺は少し興奮していた、あれ程の動きが可能な乗り物に乗れるなんて。
俺は言われるまま指を指された部屋に入っていくと、一人の男が青い軍服に着替えていた。
多分、先ほど模擬戦をしていた人だろう。
「ん、君はたしかアステル少尉、久しぶりだね」
先に話しかけてきたのは相手の方だった。
とても優しそうに見える男だけど、本当にさっきの模擬戦をしていた男なのだろうか。
「っあ、記憶を無くしてるんだったっけ。ごめん」
「ああ、いえ」
「これからDシリーズのテストだよね、頑張って、応援してるよ」
「どうも」
やはり何とも優しそうな雰囲気を出している。
名前はたしか伊達 武蔵だったっけ、俺より一つ上の階級か。
武伊中尉が軍服に着替え終わり部屋から出て行く。
そういえば、伊達中尉と戦っていた赤城少佐と言うのは、
この前数分で部屋を出ていったあの赤髪の女性の事か。
果たしてどちらが勝ったんだろうか、あの勝負。誰がどの機体に乗っていたのかわからなかったし。
その時、更衣室にアナウンスが流れてきた。
『アステル少尉、早く着替えてください。時間がありません』
ルフィスの怒りの警告でやっと我に帰った。
最近どうも独り言が多いし考え事も多いな。
急いでパイロットスーツらしき服を慌てながら着ていく。
怒られないように早く機体に乗らなければならない。
俺は急いで更衣室を後にすると格納庫には既に機体の準備が出来ていた。
しかし、俺が乗る機体は何とも地味な色をした機体、先ほど戦っていた機体より張るかにダサイ。

『アステル少尉、が乗る機体は「ギフツ」です。早く乗り込んでください。テストを始めます』
んな事言われてもなぁ。取りあえずコクピットに乗り込んでみる。
広くもなければ狭くもない、何とも言えない空間である。
あれ、どうやってハッチ閉めるんだっけ。
すっかり度忘れをしてしまい、ハッチを閉めるスイッチの場所を忘れてしまった。
取りあえずそれっぽいスイッチを押してみる甲斐斗。
その瞬間、機体のメインカメラが光り。急にハッチが閉まる。
『MPT Standby OK』
目の前に広がっていた黒い壁が一面モニターに変わり。
頭の上などについてあるスイッチにもランプが付いて、コクピット席が明るくなった。
その光景に俺は少し感動してしまった、こんなのアニメでしか見た事無いぞ。
よ、よし。取りあえず電源が付いたんだし、動かしてみないと。
すると、モニターの横に小型のモニター映像が流れる。
その映像にはルフィスが映っていた。
『アステル少尉、前進して試験場に移動してください』
俺はレバーを前に押すと、機体は一歩ずつ歩き、少しずつ前進していった。

何とか試験場に移動すると遠くの方に人型の板のような物が現れる。
『射撃データを取ります、人型の板に現れる赤い点を狙って撃って下さい』
ルフィスの映像が小型モニターに現れたまま、ずっとこちらの様子を見ている。
「了解」
機体の腰に付いてある小銃を手に取り、何とか構えてみせる。
あんな遠くの的を、しかもあの赤い点を小銃で撃てだと?
何とかターゲットをロックオンして小銃を発砲する。
『・・・ターゲットに当たっていません。もう一度お願いします』
弾丸は的を大きく外れてしまう。
いや無理だろ、的が遠すぎる。
やはり機械まかせでロックオンしても駄目だという事か。
そうだ、俺がいつもしていたゲームのようにすれば。
ちなみに俺はゲームで負けた事が無い、その実力を今ここで発揮するしかないな。
今度こそ正確に撃ち抜いてみせる、俺は心を落ち着かせて引き金を引いた。
放たれた弾丸は一直線に飛んでいき、そしてターゲットの頭部に弾丸が貫通する。
「おっ、おお!当たったぞ!」
当たった喜びでつい声が出てしまった。
正直当たるとは思っていなかったがまさか当たるとは、やはり俺は素質があるに違いない。
コクピットで一人うれしさを隠せないそんな俺にルフィスが一言。
『あの、頭部ではなくて胸部を狙うんですけど・・・』
「え?」
ターゲットの板、赤い点は胸部で点滅している。
『頭部に当てる事は良いですが、今は胸部の赤い点を狙って下さい』
呆れた様子のルフィス、モニターの前で大きくため息をつく。
射撃テストはこの後も続いたが余りいい結果を出せなかった。
『射撃テストの結果、40点程ですね』
「なっ、40点って低くない?」
『続いては近接戦のテストを行ないます、
 ここで高得点を取らなければ降格です。頑張ってください』
俺の言葉を無視して次のテストに移りやがった、って。降格だと?
『少尉の階級の方は射撃、近接、機動、合計で180点以上を取らないと階級を落とされます』
「ちょっとまて、俺は記憶を失っているんだぞ!いきなりこんな機体を動かせる訳が無いだろ!」
『だから、頑張ってください・・・』
俺に見せたルフィスの悲しげで不安な表情。
何々だその顔は 彼女は俺に少尉でいてほしいとでも思っているのだろうか、
しかし俺は記憶を失っていて彼女の事を憶えていないんだぞ。
「頑張れって言われたら、頑張るしかないな」
悲しげな彼女をよそに、元気良く笑顔を見せた。
『少尉・・・』
そうだ、今の事だけを今考えるんだ。今するべき事、今なすべき事を。
「近接と機動のテスト、70点以上取ればいいんだろ?」
『はい、ですが今のアステル少尉では』
「俺を信じろ、必ず取ってやるよ」
『あっ・・・』
機体の前に何枚かの板が現れる。
次のテストは銃器を使わずにどれだけ早く、正確に板を壊せるかのテストだ。
やってやろうじゃねえか、俺が本気出せば不可能な事など無い。
その時、ルフィスとのモニター映像が消えてしまう。
一人オペレーター室で涙を流しているルフィス、必死に両手で涙を止めようとするが、止まってはくれなかった。
本当にアステル少尉は記憶を無くしたのか。
似ている、余りにもアステル少尉に似すぎていた。
それなのに、彼は覚えていない、全て忘れているのだ。

悪いが、こんな所で降格してたまるか、負けるとかそういうのは大嫌いでな。
死んだカイト・アステルの為にも、俺はカイト・アステルになり。この世界で生きて行くのも悪くは無い。
「おらよっ!」
次々に右手に持っているナイフで胸部を刺していくギフツ。予想外の素早い動きでターゲットの急所を仕留めていく。
ターゲットの板が現れていくが、まるで出てくるのがわかっているかのごとく全て破壊していく。

「赤城、あの動き」
先ほど赤城と模擬戦をしていた武蔵が甲斐斗の乗っている機体の動きに興味を示している。
「ああ、あの機体、記憶を無くしたアステル少尉が乗っている機体のはずだが」
二人が見ている中、試験場でひたすらターゲットを壊していく機体を見ている二人。
武蔵と赤城はその機体の動きを真剣に見ている。
「へー、記憶無くしてアレだけの動きをね。すごいと思わない?」
武蔵が振り返り、後ろにいる赤城に問いかけてみる。
「たしかにな・・・」
赤城は甲斐斗の乗っている機体を見ながら静かに答えた。
振り返っていた武蔵は体制を戻し、また甲斐斗の機体を眺める。
「もし自分が記憶を無くして。いきなりあんな物に乗れなんか言われて乗れるかな」
その言葉に反応を示す赤城、甲斐斗の機体を見ている武蔵の背中に視線を送る。
「何が言いたいんだ」
その後は何も答えてくれなかった。
赤城はただ黙って試験を見ている武蔵の背中を見つめる事しか出来なかった。

「これでラストッ」
ターゲットの板が出てきた瞬間、胸部をナイフを突き刺して破壊した。
『近接戦のテスト結果が出ました・・・82点です!』
「どんなもんよ!」
『すごいですアステル少尉!この勢いで機動試験も高得点を期待しています!』
しだいに笑みを見せてくれるようになるルフィス。
その表情を見て俺も俄然やる気が出てくる。
「最後の機動テスト、内容は・・・」
モニターに映し出される指令、次々に現れる障害物を避けながら目的地に到達する事。
「なるほど、障害物競走みたいなもんか」
既に準備OK、早速機動テストを行なおうとした時。事件は起こった。
試験場内にけたたましいサイレイン音と供にアナウンスが鳴り響く。
『Urgent Order B4エリアにERROR確認。B4エリアにERROR確認』
「急ぐぞ、武蔵!」
「了解!」
赤城は飲みかけのコーヒーを机に置き、すぐさま部屋を出て行く。
それに続いて武蔵も部屋を出る。
「エラーって、機械の不具合でも起きたのか?」
俺の目の前にあるモニターにルフィスの姿が映る。
『機械の不具合なら、どれ程マシな事か・・・敵ですよ、アステル少尉もすぐに現地に急行してください!』
「お、俺もコレに乗って戦場に行くのか?」
『はい、今回のテストは一時中断。アステル少尉の実力なら多分大丈夫だと思います』
おいおい、早速実戦を行なえるなんて。これは運が良いのか悪いのか。
だがこれで俺の実力を発揮できるじゃねえか、テストより実戦が一番だぜ。
「OK、それで何処に行けばいいんだ?」
『今からB4エリアのMAPをそちらの機体に送ります、赤城隊長の部隊に合流してください』
コクピットに付いているモニターにMAPが表示され、自軍の機体の位置と数が青い点で表示される。
試験場に着いている門が開くと、俺は出力全開で外に飛びだしていった。

既にNF軍の機体が10機程現場に到着しており、各機付近の探索をしている。
その時、赤城の乗っているデルタのコクピットのモニターに隊員の映像が流れる。
「赤城隊長、現場にいたはずの4機のギフツの反応がありません」
「何?各機警戒して付近を探索しろ。奴等はまだ近くにいる」
荒れ果てた市街地、建物には大きな亀裂が端いる。
植物も無く人影も見当たらない、ただ砂嵐が街を駆け巡る。
赤城はコクピットの黒いスイッチを押し、武蔵の乗っている機体に呼びかける。
「伊達中尉、そちらの現在の状況を報告してくれ」
赤城のモニターにコクピットで寝ている武蔵の映像が流れる。
その姿を呆れた様子で見ている。
「武蔵・・・」
「寝てませんよ」
閉じていた目蓋をパチリと明け、赤城を見ながら少し笑みを見せる。
「中尉、今度から任務中で寝ると減給にするぞ」
「いや、だから寝てな──」
突然武蔵の映っているモニターの映像が乱れ、交信が途絶える。
「なっ、応答しろ。武蔵!」
映像が映らないが、何かの音が聞こえてくる。発砲音である。
すると、他の場所を探索しに行っていた部隊の兵士から通信が入る。
「あ、赤城隊長!南西部でERRORに・・・ああ!来るな!来るなぁあああああっ!!」
何か動く物にひたすらマシンガンを発砲していく兵士。
赤城が必死に兵士を呼びかける。
「落ち着け!一度後退をしろ!」
兵士は完全に混乱している、弾丸が尽きるまでひたすらマシンガンを撃ち続ける。
「ひいっ、奴等が機体に張り付きました!装甲がああ!あああああッ!!」
兵士の乗っていた機体のハッチが開・・・いや、違う。開いたのではない。
穴が空いている、そこから何か動く物が見えるが上手く見えない。
装甲に空いている穴は少しずつ大きくなる。
「すぐに向かう!それまで・・・」
赤城がモニターに映っていた兵士の姿を見ようとした時、モニターから兵士の姿が無い。
スピーカーからは何かが削れ、砕けていく音が聞こえて来る。
「赤城少佐ー!援軍に参りました!」
聞き覚えるのある声が赤城のスピーカーから聞こえてくる、由梨音の声である。
赤城のモニターに由梨音の姿が現れる。
「由梨音?お前はERROR掃討部隊には入っていないはずだ、何故ここにいる」
その時、由梨音の映像が流れている横に甲斐斗の映像が映し出される。
「援軍に来ました、赤城少佐」
「なっ、何故お前が戦場に出て来ている!」
『申し訳ありません、つい日頃の癖で・・・。私が出撃を許可してしまいました』
今度はルフィスの映像が流れる、赤城のモニターには3人のコクピット席が映っている。
「アステル少佐は記憶を無くしているのだぞ、それなのに実戦に出るなど・・・」
するとまた赤城のモニターに人影が写る。
「こちら武蔵、援軍は大歓迎だよ」
「武蔵、大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ、だが現在味方3機がやられた」
『B4エリアのMAPを解析、自分及び敵の位置を表示します』
ルフィスの乗っているのは普通の機体では無い。
特殊なレーダーを取り付けており、正確な地形、味方・敵の位置と数を正確に伝える事が出来る。
赤城、由梨音、そして俺の乗っている機体のモニターに現在の状況が映し出された。
自軍の数は7、敵の数は20。武蔵は現在10体程の敵と戦っている。
「敵の数20って。相手はどれだけの戦力何だ?BNはそれ程強いのか?」
俺の発言の誤りを指摘するルフィス。
『違います、今私達の戦っているのはBNではありません』
「何?それじゃ今から俺達は何と戦うんだ?」
その時だった、俺の機体を囲むかのようにして赤い点が集まりだす。
『ERRORです』
俺の機体を囲むかのようにして突然地面から現れた生物。その姿は余りにも酷く、醜かった。
人間のような肉の色、2本の足と4本の腕で地べたを這いずり回る。
皮膚が透けており、赤い血肉と太い血管が体内に張り巡らされている。
目は無く、血のように真っ赤な歯茎を剥き出しにしている。
「なっ、何々だよあの化け物!?」
急いで背中に付いているマシンガンを手に取ると、俺は為らい無くその引き金を引く。
数匹が撃ち殺され、辺りに血が飛び散っていく。
だが残りのERRORが俺の機体に近づいて来る。その動きは何とも不気味で、見た事が無かった。
「化け物か」
『アステル少尉、ここは危険だ。戦闘が無理な場合は下がっていいぞ』
赤城隊長から通信が来た、たしかに。素人がこんな物を見たら身動き取れないな。
だが俺は違う、俺は素人じゃない。何故かニヤニヤと不適な笑み浮かべてしまう。
「こちらアステル、大丈夫です。俺なら出来ます」
『アステル少尉?』
全ての交信のスイッチを無断でOFFに切り替える。
「気持ち悪いんだよ、さっさと死ね」
俺は腕に装備してある小型ナイフを両手に取ると、次々に近づいてくるERRORを小型ナイフで片っ端から殺しまくる。
機体に張り付いてくる奴まで全てナイフで斬り、刺し殺していった。
気づけば俺の機体の周りにいたERRORの反応が全て消えている。
化け物に負ける訳無えだろ、何たって俺は最強だからな
っと、素の自分を出しすぎた。最近こんな喋り方してなかったからな。
俺は切っていた交信スイッチを全てONに切り替える。
「どうですか、俺の近接戦の力。見ていただけましたか」
その場にいた全員が黙っている、驚きで唖然としているのだろう。
少しやりすぎた感もあったが、戦えることをアピールするのには丁度良かったか?
「それにしても何々ですか、あの化け物は、気持ち悪いですね」
化け物もそうだが、俺の動きも少し不気味に見られていたかもしれない。
当然皆は何も答えてはくれなか、赤城は俺達に命令を下す。
「話は後だ、各機武蔵中尉の護衛に向かうぞ!」
各機、赤城の機体についていくが、俺はついていかなかった。
MAPには数個の巣穴が確認できる、先にここを叩いておくべきだ。

その間に数匹のERRORと格闘を繰り広げている武蔵。
LRSで機体に近づいてくるERRORを片っ端からぶった斬っている。
「人間様を舐めるな」
だが数が多い、斬っても斬ってもまだ出てくる。
武蔵の機体の後ろから数匹のERRORが忍び寄っている。
「このーっ!」
由梨音の機体の手に持つマシンガンが武蔵の後ろにいたErrorを撃ち抜いていく。
武蔵の隣に赤城と由梨音の機体、そして2機の兵士の機体が集合する。
「無事か、武蔵」
武蔵のモニターに赤城と由梨音の姿が映る。
「俺は大丈夫。でも仲間が・・・」
赤城達を囲むかのように建物の影から複数のERRORが姿を見せる。
各機のモニターに赤城の姿が映しだされた。
「全機、周辺のERRORを掃討後、奴等が出てきた巣穴を破壊する」
『了解!』
「巣穴なら俺が破壊しましたよー」
今度は全機のモニターに甲斐斗の姿が映し出された。
「奴等の出てきた巣穴にたっぷりと手榴弾を落としておきました、後はこの周辺にいる化け物を倒すだけです」
『アステル少尉、だから赤城少佐と別行動を・・・』
一人納得するルフィス。
赤城が新しく全機に指令を送る。
「皆聞いての通りだ、この地区のERRORを掃討後、基地に戻るぞ」
「それとアステル少尉、貴様は命令違反として減給だ」
「げ、減給!?」
ギフツが後部に付いてあるマシンガンを手に取ると。
武蔵と赤城は後部に付いているアサルトライフルを手に取って構える。
そういえば、赤城と武蔵の乗っている機体は俺達の乗っている機体とは形が違う。
これは上位階級の人間が乗れる機体なのか・・・?
『あっ、アステル少尉!センサーに反応ありです!』
モニターにルフィスの姿が映り、MAPに緑色の点が現れる。
「また敵か?」
『いえ、人間の反応が探知されました。直ちに救助に向かってください!』
何でこんな荒れ果てた市街地に民間人がいるのかね、まぁいいか。
っと、今度は赤城から通信が入る。
『油断するなよ、何処からERRORがいつ出て来るかわからないからな』
「了解」

早速俺は生体反応をした場所に向かってみた。
どうやらこの荒れ果てた市街地の中心部で反応しているらしい。
機動した時のスイッチをもう一度押してみると簡単にハッチが開いた。
俺はすぐさまその場から降りて付近の探索をしてみる事に。
「って、言ってもなー。何処にいるんだよ」
『アステル少尉、聞こえますか?今から私がじ・・・ぉ・・・』
え、ちょ。何か場所でも伝えてくれると思ったら機械の故障か?
耳に付けてある装置を軽く叩いてみるがルフィスの声が聞こえなくなる。
「ルフィスー、応答してくれー」
返事は返ってこない。
どうやら機械の故障だろう、きちんと整備ぐらいしといてほしいもんだ。
仕方が無いから一つずつ崩れかけの建物に入って行く事にした。
「おーい!誰かいないかー?いたら返事してくれー」
自分の声が建物内に響くだけ、耳元で風が通っていく程の音しか聞こえない。
何か静か過ぎて不気味だな、不気味な生き物は殺したが。
(けて・・・)
その時だった、かすかに聞こえてくる少女の声。
(たす、けて・・・)
少女の声が耳に届いた時、声の主がいる場所が一発で分かった。
まるで操られているかのように俺は走り出し、声の主の下へと急いだ。
たどり着いた場所は教会、しかし白く塗られていたはずの壁は茶色く染まり、ガラスなども割れている。
壁には大きな亀裂も走っているため、中に入るのは少し危険な感じを漂わせる。
「ここにいるのか?」
門を開けて、慎重な足つきで教会の中に入っていく。
少しサビついた匂いが漂う教会、本当は神聖な場所だろうが、今は汚い廃墟にしか見えん。
「おーい、誰かいないのかー?」
うん、返事など返ってこない、だがこの建物に誰かがいるのはわかる。
「ん?」
教会の一番奥に誰かがその場に座り込んでいるのが見え、急いで少女の元に駆けつけ。
「君だろ、俺を呼んだのって」
すこし大きめの服に身を纏い、青く綺麗な髪は大きく丸く角のある帽子を被っている。
少女は壁にもたれ掛かりながら静かに震えていた。
空ろな瞳は涙で濡れている。よほどここにいる事が恐怖だったのだろうか。
「大丈夫だって、助けに来たんだよ」
甲斐斗が優しく手を差し伸べるが、差し伸べられた手を避ける少女。
「いや、だからさ。助けに来たって・・・」
次の言葉を出そうとした時、教会の天井の一部が崩れ落ちる、その穴から何かが降って来る。
はぁはぁと犬のように舌を出し、ゴキブリのように地べたを這いずり回る生き物。
「出やがったな、化け物がっ!」
ドサッ、また何かが落ちて。いやまた何か落ちて、っておいおいおいちょっと待て。
教会の天井に空いたから次々に落ちてくる、うん。いや多過ぎろ。
さっきまでからっぽだった教会内、何故か5匹程のERRORが壁とかに張り付いているし。
俺が入ってきた入り口はERRORが封鎖していやがる。
何だ、軽く死ねる状況じゃないか。ははは。
笑ってる場合か? まて、落ち着け。
いやいや、落ち着いている場合じゃないだろ。
武器は何も持ってないし、こんな化け物どうしろって言うんだ?
ゲームならここでチートコマンドを発動して無敵とか出来るのに。
等と冗談を言える程俺に余裕は無い。
自分でもわかるぐらい額から汗が噴き出し、その場からどう逃げようかと必死に考える。
「はぅ!?」
俺は後ろでしゃがみ込んでいた少女を軽々と抱きかかえてると、もう一方の裏口に全速力で向かった
何とか裏口を通り、教会の外に出るのに成功。
よし、後は俺が乗ってきた機体に戻って、あの化け物をぶち殺してや・・・。
「嘘だろ・・・」
無いぞ、何も。何も無いぞ。
俺が乗ってきたはずのギフツが無い。
そんな馬鹿な事があるか、絶対にこの場所に止めて置いたはずだ。

何だ、何か鈍い音が聞こえてくる。何かが噛み砕かれているような音が。
俺はその音の方にゆっくりと振り向いてみた。
「んな・・・」
俺が乗って来たギフツを数匹のERRORが装甲を砕いて食べている。
何か酸の様な物を吐き出して装甲を溶かしていくERRORの姿も確認できた。
「お、おい。ルフィス、応答してくれ!ルフィス!」
いくら叫ぼうが、聞こえてくるのはノイズ音しか聞こえてこなかった。
い、今の俺に何が出来る?何も出来ないだろ・・・?
「赤城少佐!早くこのピンチを救ってくれよ!」
もし近くにいるのであれば機体の機動音が聞こえるはずだ。
しかし、全く機械音が聞こえてこない。
「あの」
抱きかかえている少女が口を開いた。
だが体と供に声も震えており、不安をあらわにしていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「えっ、あ。君のせいじゃないって。必ず逃げてみせ・・・」
俺が少女を見て話しているとき、奴等は頭上から襲い掛かかってきた。
きもい、まじで近寄るな!
ERRORは目の無い顔で俺を睨みつけているように見える。
ヒタヒタと2本の腕と4本の・・・めんどい、6本の不気味な足でで近づいてくるERROR。
「いや待てって。話せばわかるって、な?何事話し合えば・・・」
だがERRORは近づいてくる、奴等に言葉など通じないのか。

訳もわからん世界に飛ばされて、記憶喪失のフリをしたあげく。
ロボットに乗せられて、んで化け物に食われてはい終了。
俺の中の恐怖が怒りに変わっていく。
そんな勝手に、こんな簡単に、死んでたまるか。
俺が魔法さえ使えれば、こんな奴等・・・。
「あの」
『貴方は何故死にたくない、何故生きたいのですか?』
頭に直接語りかけように、女性の声が聞こえてくる。
その声は俺に同じ質問を繰り返す。
『貴方は何故死にたくない?何故生きたいのですか?』
何だ、この声、誰の声だよ。つうか、そんな事聞いてどうするんだよ。
まぁ答えてやる、何故死にたくないか、何故生きたいか。
「俺は死にたくない、何故なら生きたいからだ」
って答えになってないな。
『何故そこまで生きようとするのですか、死ねば楽になれますよ』
「・・・死んで楽になれるなら、喜んで死ぬけどな」
『・・・』
「誰だか知らんが、アンタは生きていて楽しい事とか嬉しかった事とか無かったのか?」
『楽しかった事もありません、うれしかった事もありません』
「辛い事や悲しい事もあるかもしれないけどな。
 だが、生きていれば必ず楽しい事や嬉しい事があるんだよ」
『本当に?』
「ああ、なんなら俺がそれを見せてやってもいい。だから・・・」

俺の周りを数匹のERRORが囲んでいる、もはや何処にも逃げ場は無い。
だがな、逃げ場なんて必要無いんだよ。
ゆっくりと閉じていた目蓋を開き、今、この場の現実を見る。
「運が悪かったな、化け物」
抱きかかえていた少女は気を失っているかのように目を閉じている。
俺は後ろを向き、その少女をゆっくりと地面に寝かせた。
「今お前等の目の前にいるのは、最強と言われた男だ」
その瞬間、一番前にいたERRORが俺の頭を食い千切ろうと喰らいかかる。
「あー、お前等って目が無かったっけ」
黒い残光が見えた時、既にERRORの首は吹き飛んでいた。
首が無いERRORは地面をのたうち回り、やがて動かなくなる。
所詮生き物、首を吹き飛ばせば死ぬもんだな。
「どうした、それで終わりか。纏めて掛かって来いよ」
俺の一言と供に、囲んでいた数匹のERRORが一斉に飛びかかってきた。

赤城達の部隊が甲斐斗の下に駆けつけるが、無残に食い散らされた機体の残骸を発見する。
『そんなっ、私が、私がアステル少尉を・・・』
蘇る記憶、あの時みたいに、アステル少尉が・・・。
「落ち着いて、ルフィス。まだ少尉が死んだとは限らないよ」
その時だった、格機体の通信から聞こえてくる声。
「あ、が・・・す・・・」
ノイズ音と供にスピーカーから何者かの声が微かに聞こえてくる。
「あの、聞こえて、応答ねが・・・す・・・」
『アステル少尉?!』

通信の場所を検索し、無事甲斐斗のいる場所を探し当てた赤城達。
甲斐斗は大きく手を振りながら身の安全が大丈夫である事を確認させる。
だが赤城達は驚かされた、甲斐斗の姿は全身血を浴びており。
周辺はERRORの残骸があたり一面に飛び散っている。
ERRORは鋭利な刃物で斬られたかのように綺麗に真っ二つにされていた。
「赤城少佐、無事に民間人の救助に成功しました」
赤城の機体に少し笑顔で敬礼を済ませた甲斐斗。
甲斐斗の明るい顔とは裏腹に、赤城達はこの場の状況を信じる事が出来なかった、一人で。どうやってERRORを
不安が謎となり、信じるものも信じれなくなる。
「とりあえず無事で良かった、詳しい話は基地に戻ってから聞かせてもらおうか」
武蔵中尉の乗る機体が片手を甲斐斗の足元に伸した。
甲斐斗は少女を抱きかかえたまま、武蔵中尉の乗る機体の手の平の上に移動する。
とりあえず初任務終了って事だ。


-ERROR-
未だ謎に包まれている生物。
様々な形、種類のERRORが存在する。
虫のように地面から湧き出る事もあり、以前作られた地下都市に巣があると考えられている。
人間のような形のERRORもいれば虫のようなERRORも存在しており、数、種類は未だ不明。













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