ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第24話 思い、脱出
───ERRORがよく出没する街にようやく到着したリシュード、早速格納庫に艦を停泊させる。
今日はもう日が沈んでいる為、後日町の周辺にあるERRORの巣に向かう事となった。
一見普通の町だが外壁が立てられており、小規模の軍事基地も存在している。
最近はERRORの襲撃が多く不安な為に本部方面の町に移住する人も増えてきているらしい。
だがこの町は物資の補給、生産に重要な町である為に町を放棄する事は出来ない。

───その頃羅威は艦内の食堂で食事をしていた。
無言のままカレーを食べていたが、ふとスプーンを握っている手が止まる。
そしてカレーをじっと見つめながら何かを考えている様子だった。
「何ボーっとしてるの、カレー冷めちゃうわよ」
頭を手の甲でコツンと叩かれると、またカレーを食べ始める羅威。
「ちょっと羅威、返事くらいしてよ。私の声聞こえてないの?」
「ああ」
「聞こえてるじゃん」
エリルはそう言って羅威の向かい側の席に座り、食堂で買ってきたサンドイッチを一口食べる。
「今日あんな事言われたから考えてたんでしょ?別に気にする事ないって。……でもまぁ、初対面だっていうのにいきなりあんな事言われたら腹が立つわよね」
羅威よりエリルの方が腹がたっているのか、眉間にシワを寄せて必死にサンドイッチに食らいついていた。
気にせず羅威は、また考え事をしながらカレーを食べていく。
するとサンドイッチを1個食べ終えたエリルが2個目のサンドイッチを食べようとした時、一つ聞いてみた。
「羅威ってさ、愁といつ出会ったの?」
「たしか6年前ぐらいだったかな」
「ろ、6年前!?どうりで愁と仲が良い訳ね。それで、何処で知り合ったの?」
「あいつと初めて会ったのは病院だった」

───そう、俺と愁が初めて出会ったのは病院の手術室だった。
戦闘機が墜落して爆破した時、俺はまだ生きていた。
だが手足の骨が折れ、腹部には重傷を負っていて、すぐにでも輸血をしなければ死ぬような状況だった。
しかし輸血に用意されていた血は既に無くなっていて、俺はただ死を待つだけだった。
そんな時、俺と大差変わらない少年が同じ手術室に運び込まれてきた。
少年の顔は笑っており、不安や緊張はまるでしていない、その少年から医者は血をもらい俺に輸血してきたんだ。
手術は無事に終了、俺はその少年に命を助けられたんだ。
「その少年が愁だったの?」
「ああ、アイツは俺の命の恩人だ。愁がいなければ俺は死んでいたからな」
「そんな事があったんだ、それで、その後は?」
「ん、まぁその後───」
俺が一人病室で寝ていると、愁が俺の病室に来てくれた。
お礼の言葉を言うと愁は照れてた、そして愁は毎日俺の病室に来てくれるようになってな。
俺が歩けるようにリハビリしている時も必死に俺を応援してくれて助けてくれたんだ。
「それから仲良くなってな、そんな感じだ」
「へ〜、そうだったんだ」
俺はエリルにこう話したが少し違う部分もある、俺は愁が病室に来ても何も喋ろうとしなかった。
母が殺された時のショックと、まだ妹が見つかっていないショックで放心状態だった。
だが愁はそんな俺の所に毎日来てはいろんな話をしてきた。
その中でも家族の話はとても楽しそうに話してきて、俺はその話が一番嫌いだったな。
でもしだいに分かってきた、愁は純粋な気持ちで家族の話をしているんだと。

───「さてと」
そんな話をしていると、既に皿に盛られていたカレーは無くなっていた。
俺が皿を片付けに行くとエリルも後ろからついてくる。
「どうした、まだ何か聞きたいことでもあるのか?」
「ううん、別に無いけど」
そのまま食堂を出て行くが、エリルがまだ後ろからついてくる。
俺は気にせず廊下を歩き自室に戻ろうとしていた。
ふと窓の外を見ると、夜の町が綺羅やかに明かりで映し出されていた。
明日はERRORの巣に向かわなければならない、この町を守る為に。
早く帰って寝るとするか。
「羅威!」
突然俺の名前を真後ろで呼ばれて俺は足を止めて振り返った。
エリルは少しため息をついて見つめてきた。
「あんまり一人で考えすぎないようにね?ここに愁がいなくても私や穿真、部隊の仲間がいるんだからさ、何でも話してよね」
そんな言葉を俺は愁に言ったような気がする。
でも、まさかエリルが俺にそう言ってくるとはな。
「彼女も話せばきっと分かってくれると思うし」
彼女?エリルは名前知らないのだろうか、ちゃんと書類に部隊メンバーの名前が書かれていたぞ。
「彼女って香澄の事か?」
「えっ!どうして名前知ってるの?」
「今日渡された書類に書いてあっただろ」
「あれ、書いてあったのね」
「ちゃんと読んどけよな」

───羅威はまた前を向き、自分の部屋に戻っていこうとした。
だが少し歩いた時、羅威がまた後ろを振り向く。
「エリル、心配かけてすまない。それと……ありがとな」
そう言い残して羅威は自分の部屋に戻っていった。
エリルも安心したのか、腰に手を持っていって一段落終えたよう顔をして羅威の背中を見つめていた。

───牢屋の中にいてもちゃんと飯は出してもらえる、そして晩飯の時間ときた。
食事の時間……食事と行ってもパンやスープ等簡単な物がおぼんの上に並べられているだけの食事である。
俺は一人と飯について文句を言いながらパンをかじっていた。
毎日コッペパンでさすがに飽きてきた、スープに浸して食べるという斬新なアイデアがひらめいたがやめておくことにした。
というか、俺だけ後ろ手に手錠をされているからスープ飲む時は犬のような格好をしなければならない。
だからスープは飲まん、こんな屈辱受けるくらいなら、スープなんか飲まん!
「質素だが味はまぁまぁだな」
「おいし……」
葵とエコのスープの飲む音が聞こえてくる。俺だって飲みたい、コッペパンだけだと腹も減る。
だが、だが……最強のこの俺がそんな犬のようなマネが出来る訳がない。
ま、まぁ。パンだけ食べるとコッペパン本来の甘味がよーくわかり、結構旨いもんだ。
とは言ってもパンをかじる時にどうしても頭下げてパンを銜えなければ。うぐぅ、どっちにしろ犬じゃねえか。
俺が一人そんなどうでもよさそうな事を考えていた時、床に食器が落ちる音が牢屋内に響いた。
その音を聞いてとっさにスープをこぼしたのだと俺は思い葵に話しかけてみた。
「あーもったいねえなぁ、スープこぼしたろ」
うっせーなあ、お前はパンでもかじってろ!と、いつもならそんな言葉が返ってきそうだが何も返事をしない。
二人の牢屋から全く物音がしなくなっていた、一瞬俺は何が起こったのかわからなかったが、耳を澄ましていると何かが聞こえてくる。
……寝息?何二人とも飯食いながら寝てんだ。
と、思ったがこれはアレだ、睡眠薬飲まされたな。スープにでも混ぜられていたんだろう、飲まなくて正解だった。
だが、こんな夜に睡眠薬飲まして何する気だ?俺みたいに後ろ手に手錠されるのだろうか。
すると、いきなり牢屋のドアの開く音が聞こえてきた、何故か俺はとっさに寝たフリをする。
足音を聞くと、どうやら人の数は二人。もしや誰かが助けに来たのか?と思ったけど、それは助けでも何でもなかった。
「よし、こいつ等寝てるぞ」
「どうやら薬が効いたらしいな、お前どの子にする?」
「そうだな〜、俺はこの小さい子でいいや」
何だこの会話、あっ、これよく映画とかドラマであるシーンだよな。
それも深夜枠にありそうな。こいつ等の狙いはあの二人か。
エコの牢屋の鍵の開く音が聞こえてくる。そして牢獄のドアの音が閉まる。
まさか、連れ去られた?って事は次は……。
「あいつ行ったな、んじゃ俺は〜」
このままでは葵まで連れて行かれる、こいつ等寝ている二人によからぬ事するつもりだ。
と、俺は思っていたが、その時。何故か。何故なのか。俺の牢屋の鍵が開いた。
ん・・・ん?俺?俺ですか?何故に俺?
「久しぶりに楽しめそうだな、むふふ」
そんな事言いながら俺に近づいてくる。
……おかしくないか?これ絶対おかしいよな?普通ここは葵を選んで二人がピンチな所に助っ人登場とかする、
『世界を守る為に命犠牲にしました』ぐらいの在り来たりな展開じゃないのか?
俺は汗かきまくりで寝たフリをしていた、忍び寄る足音は俺の足元で止まり、男は俺の体に掛かっているシーツを剥ぎ取った。
もういっそ寝ていた方が楽だったかもしれない、もう犬になるんで今すぐスープ、いや睡眠薬飲ましてください。
俺が男として諦めかけたその時、葵の寝ているはずの牢屋から何かがぶち壊される音が聞こえてくる。
何が起こったのかわからないまま俺は寝たフリをしていたが、その時俺寝ている背中に男が倒れてきた。
「うおぁあああああ!?嫌だぁああああ!!」
「ちょ、うっさい!静かにしろよ!他の兵士に気づかれるだろ!」
その声は男の声ではなく、葵の声だった。
俺が後ろに振り向くとやや怒ったような表情で葵が立っていた。
俺に倒れてきた男はどうやら気絶しているようだ。
「た、助かった……」
「それよりな、どーして私には誰も来なかったんだ」
「はい?」
「一人は少女で、一人は男だぁ?なんで俺はエコやお前に負けたんだよ。
 俺は胸あんだぞ!こんなにあんのによお!ったくこれだから最近の男はなぁっ!」
胸に手を当てながら俺を怒ってくる、だが今は葵に感謝しよう。
「それより葵、お前睡眠薬で寝てたんじゃないのか?」
「俺はスープ飲んでなかったからな」
「どうして?」
「そ、それは……って今はそんなの関係無え!もうこんな所にいてられるか、脱出するぞ」
「その言葉を待っていた、早く手錠を外してくれ」
「っま、俺は心優しいからな」
倒れている男の腰から鍵束を取り、その中にある鍵を使って甲斐斗の手錠を外す。
「ありがとよ、んじゃ早速エコを助けに行くか」
「助ける?そんな事しなくてもエコなら大丈夫だよ」
何言ってんだ、少女を前にした男は皆獣になっちまうぞ!
「ただいまー」
とか思っている時、既にエコが牢屋の前に立っていた。
「なんでいんの?!」
「ほらな、だから言っただろ」
「いやいや、エコ。お前ってたしか連れ去られたよな?」
「ぶっ飛ばした」
そうですか、ぶっ飛ばしたんですか。もう深い意味は聞かないでおこう。
何にせよ、これで準備は整った、両手も自由になった事だし。
「よし、後はあの子を連れ去って脱出するだけだな」
「そうね」
「あの子の居場所なら俺がわかるから、着いてきてくれ」
「え、何でわかんの?」
「何となくわかるんだよ、いいから着いて来い」
不思議そうに二人が首をかしげるが無理もない。
こうして夜中に俺達3人の誘拐脱出作戦が始まった。
エコ
緑色の髪に緑色の瞳が印象的な少女。
大人しそうに見えるが案外活発的であり、親友(?)の葵とよく共に行動する。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。