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第23話 決裂、旅
───監獄生活2日目、外の空気が吸いたいです。
ミシェルを助けに乗り込んだが速攻でBNに捕まり今俺は艦内にある牢屋の中に閉じ込められていた、もちろん脱出は簡単。と思っていた時が……。
今の俺は後ろに両手を手錠で固定され、体は頑丈なヒモで縛られていた。
「こうなるならさっさと逃げればよかった、あいつ等飯に睡眠薬なんか入れやがってぇ」
「ははは、本当お前まぬけだな」
ああ、また陽気で元気でうるさい女の声が聞こえてきた。
「つうかお前も縛られてんだろが、お前の方がマヌケだっつーの」
俺と同じ牢獄の前隣の部屋にそのうるさい女はいる。
自分だって墓穴を掘ったから今監禁されてるんだろうが……。
「はあ?俺がお前みたいな馬鹿と一緒にすんじゃねーよ」
「どっちが馬鹿だ、大体こんな事になったのは馬鹿な事言ったお前達のせいだろが!」
「んな事知るかよ!ったく終わった事をグジグジうるせえ男は器が小さいなぁっ!」
「う、器が小さいだと!?」
「うるさい……」
そしてまた正面の牢屋にいる少女が呟き、俺達の交戦は一時中断される。
だがまだ喋り相手がいるだけでも良いのかもしれない、一人牢屋の中に閉じ込められるのはつまらないから。
「ああ、そうだ。お前達名前ぐらいは教えてくれないか?」
そうだ名前だ、俺はこいつ等二人の名前を知らない。
「名を名乗る時はまず自分からって事も知らないのかー?全くこれだから最近の男は……」
お前も半ば男だろうが、女の癖に男口調な奴め……だが一理ある。
「俺の名前は高橋甲斐斗、んでお前等は?」
するとまずはいつも陽気でうるさい女から自己紹介を始めた。
「俺はあおいって言うんだ、まぁよろしくな」
「へー、結構女らしい名前だな」
「はぁっ!?お前今何て言っ───」
うるさい女は飛ばして、次はこの少女。
「私の名前は、エコ」
うん、何とも環境に優しそうな名前だ。
さてと、二人の名前もわかった事だしそろそろ本題に入るか。
「それで、お前等二人はこれからどーするんだ」
「んー、ここに入れば多分仲間が助けに来てくれるからな」
仲間?この戦艦に?普通に無理だろ。
「お前今無理とか思っただろ?甘いねぇ俺達SVの力を甘く見てるな」
「助けるつったってどーやって助けるんだ?ここまで来てもらうのか?」
「私達がこの戦艦から脱出した後に助けてもらうのさ」
だからその脱出する方法を聞いている訳だが。
「私達は逃げ出すタイミングを待っているのさ、逃げようと思えばこんな所簡単に出られるね」
「ほー、そ、それならさ。俺も一緒に逃がしてはくれないか?」
「誰がお前みたいな奴助けるか、銃殺刑にでもされてな」
これまた恐ろしく酷い事を言うな、洒落にならん。
と、その時。一人の男が部屋に入ってくるとは葵の牢屋の鍵を開けると外に連れ出す。
「時間だ、着いて来い」
「やれやれ、まーた尋問かよ」
葵は両手両腕を縛られたまま立ち上がるとその男の後についていく。
そして葵が部屋を出るとまたその部屋に鍵を閉められる音が聞こえた。
「尋問かぁ、あの女の事だからべらべら喋るんじゃないのか?」
俺がエコに話しかけてみると、彼女は前より少し話してくれるようにはなっていた。
「多分、大丈夫……」
多分なのか、やはり絶対安心大丈夫って訳でもないらしい。
「今頃、あんな事や、こんな事を……」
あんな事や、こんな事。
よからぬ妄想をするのは俺だけでいい、エコと葵はSVの中でも上位階級の兵士らしく、
その分重要な情報も知っているようだ、それにしてもよくあのような女が上に上がれたな。
・・…にしても、両手に手錠、しかも両腕を縛られているんじゃあ何も出来ない。
いつもの俺ならこんな物簡単に壊して逃げれるというのに。
いや、逃げるって。俺は何処に逃げるんだ?
そうだ、俺は元の世界に帰るんじゃなかったのか、この世界に俺の居場所は無い。
そう、あの龍と青年もこの世界に来ていた、この世界に来る方法があるのなら帰れる方法だって必ずある。
「なあ、ちょっと質問してもいいか?」
「何?」
興味無さそうに呟く少女、何か考え事をしているのか、返事が少し遅かった。
「この世界って別世界に行く方法とかある?」
超率直的な質問だが気にしない、これなら確実に俺の聞きたい事が伝わったであろう。
「知ってる」
思わぬ答えが返ってきた、その一言が俺の頭の中で繰り返し聞こる。
まさか、こんな身近に別世界について知っている人がいるなんて……。
「ほ、本当か!?それなら別世界に行く方法を───」
「嘘よ……」
俺の期待は真っ二つに斬られた後ぐしゃぐしゃに踏み潰されて細切れにされた気分だ。
嘘ってもんは言っていい時とそうでない時があんだよ……。
でもまぁ冷静に考えてみればこんな少女に別世界の話なんてしても無駄か。
「でも、私は信じてる。別世界がある事を……」
てっきり信じていないのかと思いきや、意外な言葉をよく発言するな。
「そして、もしあるなら……その世界に行きたい」
その言葉がやけに暗く、重く感じた。
このエコって少女、一体何を考えているんだ。
「どうして別の世界に行きたいんだ?」
すると彼女は口を閉ざし、何も喋ろうとしなかった。
女心というのはよくわからないが、別の世界は絶対にあるから信じてもいい、俺は他の世界を数々回ってきた事だってある。
それに俺はこの世界に飛ばされてきたんだからなぁ。

───その頃、艦内のブリーフィングルームには羅威達部隊メンバーが集まっていた。
「あれ、ここに来いと言った本人が来てねえなぁ遅刻かあ?」
暇そうに椅子にもたれ掛かっている穿真、羅威はその左隣で書類を読んでいた。
「セーシュは今SVの奴等と話している、だから今は無理だ」
「って事は俺達だけで好きに話し合えって事かー、んじゃ隊長さんよろしく!」
そしてその穿真の右隣に座っているクロノの背中をぶっ叩く。
「ぐっ!?穿真さん痛いですよ!痛い痛い!」
「なーにすぐに慣れるって!」
痛がるクロノをよそに笑いながら背中をバシバシと叩いていく穿真。
横に座っている羅威は気の毒そうな顔をしていた。
「慣れる前に背骨が数本持っていかれるかもな」
そんな三人の前に一人の女が現れ、勢いよく机を叩く、その音に3人は驚いてすぐさま顔を上げた。
「3人とも遊んでないでさ、さっさと始めようよ!」
「そ、そうだな。んじゃクロノ、後は頼んだ!」
「え?ああ、わかりました。皆もう集まってるようだしそろそろ始めますね」
既に部隊メンバー6人は揃っていた、羅威が左の前の席に視線を向けると6人目のメンバーがそこに座っている。
クロノは教卓の前に立ち、口を開いた。
「まず僕達の任務を伝えておきますね、リシュードの護衛とBNの市街地周辺のERROR掃討です。
 NF、もしくSVの兵士がこの艦を落としに狙ってくるかもしれないので各自いつでも出撃できるよう機体の整備はしっかりしておきましょう」
「クロノー、部隊名って無いのかー?」
穿真が手を上げて突然質問して来た為に少し戸惑うクロノ。
「部隊名ですか?僕達の部隊名は第壱小隊ですけど」
「んな地味な名前じゃなくて、もっとカッコイイ呼び名とか無いのか?」
「そ、それはまだ無いですね」
どうやらクロノも穿真の話はたじたじのようだ。
「穿真、今はクロノが喋ってるんだ、黙って聞け」
ようやく穿真も黙り、クロノの話が始まる。
話し方と言い性格、たしかに隊長に適している。この部隊の隊長に選ばれたのも納得がいく。
後は戦闘での指示、判断、腕前だな。と、そんな事を考えていたらクロノの話が終わってしまった。
「という事で僕の話はこれで終わりです、長い話を聞いてもらえてありがとうございました」
クロノがそう言って穿真の右隣の席に戻ってくると、その後ろではエリルと雪音が何やら話していた。
「NFの時とERRORの時で陣形や戦略を変えてちゃんと考えているなんて中々やるじゃない」
「クロノ隊長ってしっかりしてますよね」
「本当、どこぞのばかとは大違いよね〜」
「だーれがばかだ、ばーか」
穿真は馬鹿という言葉に反応しすぐさま後ろを振り向く。
「あら、聞こえてたの」
「俺に聞こえるように喋ってただろが」
「っま、別に穿真のことなんて一言も言ってないし、てか馬鹿って言葉に反応したんだから自分が馬鹿だって事認めたわね」
だが穿真はエリルを見ていない、雪音だけを見つめていた。
「雪ちゃん気をつけろよー、こいつうるさくて空気読めないし凶暴だから」
エリルを軽くスルーしてその隣にいる雪音と笑顔で話している穿真。
しかし雪音は自分の隣で怒りに震えるエリルが怖くて何も喋れない、顔は笑っているが恐怖で顔が少し引きつっている。
「穿真君、それはちょっと言い過ぎだよ?」
「ん?俺なんて毎日そんな事を毎日言われてるんだぜ?俺って可哀想じゃ……」
「黙ってろこのロリコンがッ!」
その時、雪音の目の前から穿真が消え去る、そして右の方で何かが壁にぶち当たる音が生々しく聞こえてきた。
そっと右を向くと壁にもたれ掛かり、頭から血を流す穿真の姿がそこにはあった。
「穿真君!大丈夫ですか!?」
「雪〜、別にいいわよ、そんな奴ほっといても」
「で、でも……」

───相変わらずと言えば相変わらずの奴等だ、見ていて飽きない。
だが俺はいつ穿真が殴り殺されても文句は言えないような気がしてきた。
「おい」
俺はその強気な声に下げていた顔を上げると、そこには6人目のメンバーの女性が立っていた。

───「私、あんたが嫌い」
その言葉にその場にいた部隊メンバー全員の動きが止まる。
羅威も思いもよらぬ事を言われ何を言われたのかまだよくわからなかった。
「前に集まった時に上官を殴ろうとしてたよな?たかが使えない兵士一人をクビにしたぐらいでさ」
その言葉に羅威の眼つきがかすかに変わった。
「使えない兵士だと……?」
「うん、そうよ。魅剣愁と言う奴、彼の戦歴を見てみたが一般兵士以下の戦力だったわよ、それに何度も命令違反してるし」
黙っている羅威に対し女性の言葉はさらに続く。
「今までクビにならなかった方が不思議なくらいよね、今後はあんな無様な事はやめてくれよね?部隊の評価が下がるから」
「……たしかに兵士としては失格なのかもしれない」
「だが愁は誰よりも正義感が強く、純粋な奴だ。そして人としては何も間違った事はしていないと俺は思っている」
「……そんな事どうでもいいのよ、もう彼はいないんだし。私が言いたいのはこれ以上問題を起こさないでって事、わかった?」
羅威は何も言わずただその女性を睨み続けている。
「何よその目、言いたい事があるんなら直接……」
「そこまでにしとけ」
いつの間にか穿真が二人の隣に立っていた、そして腕を伸ばして女の口の前に持っていく。
もう喋るなと言う合図であろう、穿真は小さく首を横に振った。
その場にいた全員がその女性に視線を向けている。
「ふんっ、もういいわよ。私部屋に帰る」
女性はそういい残すと二人に背を向けて部屋から出て行こうとした時、羅威がふと口を開いた。
「俺達はただの兵士かもしれない、だがその前に。俺達は一人の人間だ」
その言葉に女性の足が止まる、だが何か呟くとまた歩き出し、部屋を出て行ってしまった。
クロノ・ウェイカー
戦艦リシュードの護衛部隊の隊長。
性格はおとなしく真面目であるが、伝える事ははっきりと伝える。
自分が隊長に任命されて少し戸惑っているようだが、彼なりに頑張ろうとしている。


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