第22話 計画、壱
赤城はいつものようにふかふかの椅子に座りながらコーヒーを飲み、書類に目を通していた。
その横に立っている由梨音はその書類の内容が気になるらしく、横から顔を覗かしている。
「赤城少佐、一体どんな内容の書類何ですか?」
「・・・知りたいのか?」
「はい!知りたいです!」
すると赤城は空のコップをそっと由梨音に手渡す。
「コーヒー」
「はい!ただいまお持ちします!」
空のコップを受け取るとすぐさまコーヒーを入れてまた赤城の元に戻り、机の上に置く。
「んー、最近肩が・・・」
そう言うと、たちまち由梨音が椅子に座っている赤城の後ろに移動して両肩を揉んでいく。
だが疲れたのか、そのまま赤城の背中に抱きつくように赤城の両肩を腕を掛けた。
そして赤城の肩から顔を覗かして書類を一緒に見ようとする。
「離れろ、暑苦しい」
「暇なんですよ〜、見せくださいよ〜!」
今度は赤城の両肩を掴むと前後に揺らして見せてもらおうとするが、
その時赤城の握っていたコップからコーヒーが書類にこぼれてしまった。
「あっ!」
「・・・由梨音軍曹を減給に処する」
「ほぇええっ!?」
由梨音が驚いた衝撃で下がろうとしたが、腕が赤城の首に引っかかってしまう。
椅子は簡単に傾き、そのまま二人は後ろに倒れてしまう。だがまだ終わってはいなかった。
赤城の握っていたコップから熱々のコーヒーが服に大量に零れ落ちる。
「ああっ!少佐!?」
いつもポーカーフェイスを保っている赤城たが余りの熱さに一人起き上がるとすぐさま服を脱ぎ始める。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
由梨音は急いでタオルを赤城の服を拭き始めるが、赤城が軍服を脱ぐと白いブラウスは茶色く汚れていた。
それを見た瞬間、赤城特有の殺気が由梨音の体を一瞬で固めた。
「由梨音、腹を切る覚悟。出来たか?」
感じる、これが殺意の波動というものなのか。
赤城は汚れたブラウスのボタンを外し、それを由梨音の頭に投げる。
すると由梨音は新しいブラウスを取りに急いで部屋の隅にあるクローゼットに向った。
「えーと、えーと・・・」
「どれでもいいから早く渡せ、こんな姿誰かに見られたら・・・」
「失礼するよ、赤城。先ほど渡した書類を見てくれたと思うけどBNは・・・」
そんな事を言っていると武蔵が書類を見ながら部屋に入ってきた。
そして顔を上げるとそこには呆気に取られたような顔をした赤城が目の前に立っていた。
「あ、赤城!?」
上は下着一枚の赤城、運が良いのか悪いのか、武蔵はすぐさま後ろを向く。
「武蔵、見た・・・な?」
「何も見てないよ、あ、俺ちょっと用を思い出したから行ってくるね」
とは言ったもののそれは全てを見終わった後だ、脳裏に浮かぶ赤城の下着姿。
だがそれよりも武蔵はこの後自分が何をされるのかという方が不安で頭がいっぱいだった。
武蔵も感じていた、背後から伝わる殺意の波動を。
急いでその場から離れようとした時、軍服の襟が後ろから凄まじい力が引っ張られる。
その勢いのまま後ろに下がり、倒れこむように後ろにある椅子に座り込む。
「止めろ!命だけは、命だけはっ!」
「BNが拠点としていた元市街地がERRORにより崩壊したのは本当なのか?」
既に新しい純白のブラウスを着て、少しコーヒーのついた書類を手に武蔵に詰め寄っていた。
「あ、ああ。本当だ、偵察部隊が付近を探索した所、既にERRORの巣と化していたらしい」
赤城のブラウス姿に少し戸惑う武蔵、赤城はいつも黒く大きな軍服を身に纏っている為にどうも体が細く見えてしまう。
「何故ERRORがあの拠点を攻め込んだ、小さい拠点でもなければ大きな拠点でも無いはず」
「ERRORがBNの拠点に攻め込んだ目的、理由か。たしかにそれは俺も、上層部も疑問を抱いている。
それと、また新たな情報が入った、BNの第2旧本部で事件が起こったらしい」
赤城も椅子に座り、武蔵の話しに耳を向ける。
由梨音も修羅場が来なくてほっと一息し、机の上に二つコーヒーカップを置く。
「事件、ですか?」
由梨音も赤城の隣に座り、武蔵の話を聞こうとしていた。
「由梨音、いつもコーヒーありがとね。話によると彼等SVが動き出したようだ」
その言葉にいち早く由梨音が反応した、そして赤城が口を開く。
「その話は私も小耳に挟んだ、たしかに格納庫を爆破して襲撃したらしいな」
「大体そんな感じだ、だが更に詳しく、新しい情報が入ってきた」
「お前はどうしてそんな事を私より早く知っているんだ?」
ふと疑問に思った事を赤城が言って見ると、簡単に答えが返ってきた。
「俺には騎佐久がいるからね、アイツから色々と情報をもらってるのさ。
さて、その情報というのは二つあってね」
一つ目は爆撃された格納庫とは違う格納庫でBNの新型戦艦が出航した事。
二つ目はその次の日にまたもSVが基地内に侵入した事だった。
「新型の戦艦か、厄介な物を持っているな・・・」
赤城は一つ目の悩んでいたが、由梨音は二つ目の事件について興味を示した。
「あの、SVの方達は基地に侵入した後何かしたんですか?」
「それが何もせずに基地を出て行ったらしいよ」
「普通2回も連続で侵入しませんよね、なんでそんな危険な事をしたのかなぁ、って思いますよね!」
「ああ、俺もそう思った」
書類を一通り読み終え、席を立つ赤城。
読み終えた書類を机の上に置くと、机の引き出しからもう一冊の書類を持ってくる。
その書類を武蔵の前に出すと、また自分の席に座り込む。
武蔵から見れば始めてみる書類だった、その書類を手に取ると一枚目には大きく『EDP』と書かれていた。
ページを数枚めくっていくと、そこにはERRORについてや、ERRORの拠点等詳しく書かれている。
「赤城、まさか上層部は今度こそERRORを・・・」
「ああ、削除するつもりだ。そしてその書類が私の手元にあるという事はどういう事なのか・・・わかるな」
それは全てを物語っていた、『EDP』それはNFとERRORの命を賭けた戦いの印。
医務室には赤城達3人を除く第五独立機動部隊メンバーが全員揃っていた。
「『EDP』、僕達の部隊もこれに参加する事になったらしいよ」
先ほど赤城に渡された書類、アステルはそれを皆に配っていく。
誰もが不安な表情で書類を手に取り、どんな内容なのかページを捲ってみる。
「とうとうこの時が来たってもんだな・・・緊張するぜ」
ノイドが書類の内容を簡単に目を通していくとそれをまた机に上に置くが、対照的にレンやルフィスは真剣な顔つきで内容を読んでいた。
「作戦内容を先に伝えておくね、よく聞いてて」
まず南部軍事基地から更に南東には『GATE』と言う地下都市に繋がる巨大な門が存在する。
ERRORは地下都市を巣にして事もわかっている為に、その門を開けた後、空母から大型の収縮型光学電子パルス砲を放射。
その巨大な門からあふれ出そうとしてくるERRORをその一撃で消し炭にした後、数百発の爆弾を投下して地下都市事ERRORを跡形も無く吹き飛ばしていく。
もちろんこれで全てのERRORを消す事は出来ない、しかしこれ以上ERRORが増える事も無いのだ、これはNFとして大きな一歩となる。
だが問題点もある、一番の問題点はその『GATE』にあった。この門を開けるには入り口にある解除装置を作動させなければならない。
作動させる方法は二つ。
装置とDシリーズをケーブルで繋ぎ、機体の中からPWコードを打ち込む方法。
もう一つは機体に乗ったまま装置についているPWコードを打ち込む方法の二つだ。
「あの、どうしてそこまでして門を開ける必要があるんでしょうか・・・」
レンが手を上げてアステルに質問を投げかけていた。
するとレンの横にいたルフィスがその質問に答える。
「この地下都市は人類の避難所を作ろうとして出来た一つの核シェルターなの。
だからこの『GATE』は核を落としても破壊する事が出来ない程頑丈何だよ、だから破壊は無理だから開けるしか方法がないの」
「これで合ってますよね、アステル少尉!」
自信満々で答え、満面の笑みでカイトの方を向くルフィス。
「う、うん。それで合ってるよ」
そしてレンはそんなルフィスに尊敬の眼差しを送っていた。
「皆さん、お菓子でもどうですか」
医務室のキッチンから現れるセレナ、手にはクッキーが並べられているお皿を持っている。
そのお皿を机の上に置くと一目散にアステルが一枚目のクッキーを食べた。
「お前、いつも一枚目はすげぇ早く食べるな・・・」
そんなノイドをよそにアステルは一枚のクッキーをしっかり噛んで美味しさを味わっていた。
ニ番の問題点、それは誰が『GATE』を開ける為に解除装置を作動させに向かうか。 |