第19話 救助、犯罪
その頃、既に俺は荷物を纏めて基地を出ていた。
そしてようやく到着する我が家、ゆっくりとドアを開き、俺は家に入った。
ドアを開けた音に気づいてリビンクから駆け寄る足音が聞こえてくる。
「はーい、どちらさまですか・・・って愁!?」
エプロンを着け、右手にはお玉を持って現れた母。
「ただいま、母さん」
すると、リビングから二人の声が聞こえてくる。
「お母さんお腹すいた〜」
「すいた〜」
俺が靴を脱いで上がった途端にドタドタと慌しい足音がリビングから聞こえてくると、
二人はドアの開いている隙間からひょっこり顔を出してきた。
「愁にい!」
「お兄ちゃん!」
琉と茜が俺を見た途端、一気に明るくなり、テンションがMAXとなる。
笑顔で俺の所へ走ってくると二人は勢い良く飛びついて抱きついてきた。
「愁にいお帰り!」
「おかえり〜!」
見ない内に少し大きく、重くなったのか、やけに二人が重く感じてしまう。
僕は体に引っ付いている琉と茜をゆっくり下ろすと、二人の手を繋ぎながらリビングに戻る。
母さんは丁度昼食を作っている最中だった。
よほどお腹が空いていたのだろうか、俺からぴょんと跳び降りると台所の方に向かって二人は走り出した。
「お母さんご飯まだ〜お腹すいた〜?」
「すいた〜」
「はい!もう出来たからお席についててね」
「はーい!」
琉は引き出しからスプーンを4つ取り出すといつもの食卓にスプーンを並べていく。
そして茜は4人分のガラスコップを両腕いっぱいに抱えると落とさないように慎重に運んでいた。
茜の抱えている4つのコップをそっと持ち上げると俺は机に並べると、茜はうれしそうに笑顔を見せてくれる。
っと。その前にちゃんとうがい手洗いをしないといけない、すっかり忘れていた。
俺は一人洗面所向かうと簡単にうがい手洗いを済ませてくる。
そして皆が座っている食卓に戻り、席についた。
ん、この香り。どこかで・・・。
机の上に並べられている料理に目をやると、そこには美味しそうなカレーが皿に注がれていた。
「い、いただきます・・・」
両隣では琉と茜が美味しそうにカレー食べているが俺はどうも食欲がわかなかった。
・・・羅威、最後の最後で俺は逃げた・・・。何も言えなくて本当にごめん・・・。
あの時俺は泣いてたんだ・・・本当俺は弱虫だよ、何も言えずにただただ泣いていただけなんだから・・・。
「愁にいたべないの?」
「えっ?」
気がつくと琉が俺の顔を心配に覗き込んでいた。
「い、いや。食べるよ」
軽く笑ってみせながらスプーンを手に取ると、すっと横からスプーングが伸びてくる。
「茜があーんしてあげる!」
腕を伸ばして愁の口元にカレーをすくったスプーンを伸ばしてくれていた。
俺はぱくりと差し出されたカレーを食べる。
「おいしかった?」
「うん、とっても美味しかったよ」
俺が悲しい顔をしているといつもにっこりと笑ってきてくれる琉と茜。
俺は無意識に茜の頭を撫でていた。
その後ご飯を食べ終わると、茜と琉に引っ張られて二人の部屋に連れて行かれた。
そして二人が疲れて眠るまで一緒に遊び続けようと思った、二人の笑顔が少しでも俺の心に安らぎを与えてくれるからだ。
しかし、いつしか俺は遊びまわっている二人を見ながら体横にして腕枕をしていた。。
やっぱり子供のパワーはすごい、二人は無邪気に、元気に遊びまわっているのに俺と来たらもう疲れて・・・。
「っ・・・あれ・・・」
頭がボーっとしている、部屋にかけられている時計を見ると3時になっている。
俺がその場から立ち上がろうとすると、やけに体が重い気がした。
よく見ると俺の服を掴んだまますやすやと茜と琉眠っている。
二人の手をそっと解くと、眠そうに目を擦りながらリビングへと向かう。
そこには母さんが一人食卓に着いていた。
「もう、愁はすぐに顔出ちゃうんだから。琉と茜に心配させちゃダメでしょ?」
「あ、また顔に出てたのか・・・」
俺は母さんと向かい合うように席に着くと、母さんの方から話かけてくれた。
「軍で何かあったんでしょう?話してみて」
「・・・辞めたんだ、軍」
「えっ?」
「俺が違反ばかりするから、軍に辞めさせられたんだよ」
「そう・・・」
母さんは俺を怒ろうともせず、ただただ俺を見つめていた。すると、母さんがうれしそうな表情を浮かべている。
「不謹慎かもしれないけど、お母さんはその方がうれしいな」
そう、母さんはずっと俺の軍の入部を反対していたからだ。
「愁、貴方には弟と妹がいるの。貴方がいないと二人はとても寂しがってるのよ。
愁にいはまだ帰ってこないの?愁お兄ちゃんと遊びたいよ!・・・って」
「母さん・・・、俺は軍を辞めたんだ、もうこの家から離れないよ」
俺はそっと微笑みかけると、母さんの両手を握り締めた。
そこで改めてわかる、母さんの手はボロボロで、とても小さく感じた。
「そうだ、俺ちょっと行って来るね」
「えっ、何処に行くの?」
「バイクにでも乗って走りたいんだ・・・」
そう言って俺は玄関においてあるヘルメットを手に取ると家を後にした。
ガレージを思いっきり上げるとそこには新品同様のバイクが置いてあった、母さんがいつも手入れしてくれていたんだろう。
バイクにまたがってヘルメットを被り、バイザーを下ろす。
鍵を差し込むと心地よいエンジン音が鳴り響き、振動が体全体に伝わる。
たまには息抜きも必要だ、羅威も言ってたじゃないか、自分を責めるな・・・って。
アクセルを全開にして一気にガレージから出て行く愁。
久しぶりのバイクはやはり良い、直接風を感じられるからだ。
愁の行く道は全て信号は青、バイクは止まる事無く突っ走っていく。
と思ったが、やはり信号に捕まってしまった。
それにしても今日は本当に良い天気だ、こんな日にバイクに乗れる事に少しうれしさを感じていた。
その時、ふとバックミラーを見ると、そこには一人の少女が写っていた。
よほど急いでいるのだろうか、息を切らせながら一生懸命走っているように見える。
でも・・・何か様子がおかしい、少女が躓き地面にこける、だが少女はすぐさま立ち上がると走り出す。
そのまま少女は歩道を走り、信号が赤にも関わらず道路を横断しようとした。
横から来ているトラックに気づかずに・・・。
愁はアクセルを回し、すぐさま少女の元へとバイクを走らせた。
道路を半分渡っときにようやく少女は気づく、横を向くと一台のトラックが自分目掛けて向かって来ていた。
「危ないッ!!」
少女がトラックに轢かれそうになった時、愁が少女の洋服を掴む。
そして半ば強引に持ち上げ、何とかトラックとの衝突を防いぐ。
だが少女をつかんだ時の衝撃でバイクが不安定となり、体性を崩してしまった・・・。
俺はバイクから振り落とされる時、少女に怪我をさせないよう強く抱きしめた。
背中から道路に転げ落ち、強く体を道路に叩きつけてしまう。
痛みがあるのは生きている証拠と聞くが、生きているのかどうかわからない。
「痛っ・・・痛ててぇ・・・」
背中が痛い、ヘルメットしてるのに頭も痛い。
「い、痛い・・・です・・・」
すっかり忘れていた、俺は腕を放すとその少女に無事かどうか聞いてみた。
「君、大丈夫?怪我はない?」
「あ、ありがとうございます!何とお礼の言葉を申して良いのやら・・・」
「ああ、いえ。無事で良かったですね、もう信号無視はしたらダメですよ、それじゃ」
どうやら少女に怪我は無かったらしい、俺は自分の乗ってきたバイクを探す。
ん、あそこの電柱周辺に機械の破片が散乱してる、悲惨だなぁまるで鉄の塊じゃないか。
さて、俺のバイクは一体どこにあるのだろうか・・・。
「ってそんな!俺の・・・俺のバイクがあッ!」
バイク本体は煙を上げながら今にも火が付いて爆発しそうな勢いだ・・・。
「あ、あの!」
俺が悲しみ暮れている所にあの少女が俺に話しかけてきた。
「ん、何?」
「私を助けていただきたいのです、お願いします」
「はい?」
その時だった、一発の銃弾が俺の顔をかすり、煙を上げるバイクに命中する。
それが火種となりバイクは一瞬にして爆破、炎上、俺はその光景を唖然と見ていた。
「あ、あの!早く逃げないと・・・!?」
放心状態の愁と少女の前に黒いスーツを来た二人組みの男が現れる。
そして男達は徐に懐から銃を取り出そうとした・・・。
が、愁はその場で立ち上がり、二人の男の顔面を殴り飛ばす。
「君、名前は?」
その光景に少女は目を大きくして驚いていた。
「わ、私ですか?フィリオと申します」
「フィリオさん、貴方は彼等から命を狙われていますね。お守りします」
これだけ事が起これば愁も理解できる。
もう何で命狙われているの?とか、もうそんなの聞きはしない。
とにかくさっさと家に帰りたい、愁はその事で頭が一杯だった。
「えっと、ここから北にある私の家に行って欲しいのですが・・・」
「うん、わかった。それじゃあ行こうか」
愁は少女を抱き上げると、背中の痛みをこらえながら走り出す。
「ごめん、ちょっとヘルメットとってもらっていいかな」
そう言うと少女は俺のヘルメットはゆっくりと取り外す。
「すみません、私のせいで貴方の大切なバイクが・・・」
「バイク?ああ、仕方無いよ。君を助ける事が出来たからね」
そうだ、バイクがどうした。少女を助ける事が出来たんだ、これは素直に喜ぶべきだ。
「あ、そこを左に曲がってください!」
俺が言われた通り左に曲がる、すると俺の目の前にはこの街で一番大きいとも言える程の豪邸がそこにはあった。
広い敷地、大きな壁、大きな門。どうやらこの子はこの家の子らしい。
俺はフィリオさんを門の前で下ろすとすぐにその場から立ち去ろうとした。
「待ってください、お礼をしたいのですが・・・」
「お礼?そんなの別にいいよ、今日はもう帰りたい気分だから」
「でしたら明日!明日またここに来て下されますか?」
どうやら彼女はどうしてもお礼がしたいらしい。
「何時でも来てくださいね」
俺はフィリオさんに明日行くと言うと走って自分の家に戻っていった。
その後、家に帰り速攻で自分の部屋に戻る。
琉と茜が俺の部屋に入ってきてはまた遊んでほしいと言ってきたが。
もう俺にそんな体力残っていません、お願いです寝させてください。
また明日沢山遊んであげるから、だから今日だけは休まして欲しいと説得、わかってくれたようだ。
ああ、母さんにバイクの事何て言えばいいだろうか。そんな事を思いながら俺は眠りについてた。
それから一日がたち、朝を向かえる。
俺は起きると一人リビングに向かう、どうやらまだ皆起きていないようだ。
実は昨日の出来事は全部夢じゃないのか、とか思いながら朝のニュースを見ていたら昨日の事件が報道されていた。
『破損したバイクの検証結果がようやく出たもようです、それによりますと犯人の名前は魅剣 愁18歳。
証言によりますと魅剣容疑者はテロリストを手助けした後警官を殴り飛ばし、テロリストの一味と逃亡したと見られています。
なお、このテロリストは昨日あった第2旧本部の爆破をした者達と関係があるとの事、現在調査を進めています・・・』
なっ、何を言っているんだ?
テロリスト?俺が昨日テロリストを手助けした?俺は昨日少女を助けただけじゃ・・・。
だがその時だった、俺の家のドアを叩く音が聞こえてくる。
「はい〜、こんな朝早くどちら様ですか・・・」
俺はテレビの電源を消すとその場に隠れながら玄関の様子を伺った。
母さんは既に着替えていたが眠そうな顔をして玄関へと向かう。
ドアの鍵を開けてドアを開けると、そこには数人の警察が立っていた。
「魅剣愁はいるか?」
「ええ、いますけど・・・」
「逮捕状が出ている、魅剣愁を出せ」
「えっ、どういうことですか。よくわからないんですけど・・・」
「貴方のお子さんは本部襲撃事件のテロリストとの仲間かもしれないということです、中に上がらせてもらいますよ」
「ちょっと待ってください!いきなりそんな・・・!」
母さんが必死に止めようとしたが警察はどんどん家の中に入ってくる。
まさか、あの時助けた少女がテロリストだったというのか・・・?
今はそんな事を考えている暇は無い、どうする、全てを話して無実を証明するしかない。
俺はリビンクから出て警察の元に向かった。
「俺ならここにいます」
すると、俺に気づいた警察は懐かある物を取り出す。
犯人を捕まえにきたのだ、手錠をはめるんだな、と思っていたが甘かった。
警察が出してきたのは拳銃だった、俺は一瞬自分の目を疑ったがそれは紛れも無い拳銃だ。
「ちょっと待ってください!抵抗はしませんから・・・」
俺はすぐさま両手を挙げて降伏したが、警察はニヤリと不適な笑みを浮かべる。
まさか、本当に撃つはずがない。アレは脅しに過ぎない。俺は自分の心の中でそうであると願った。
「死ね、魅剣愁」
「えっ」
朝、その日の天気も快晴だった。
そんな平和な朝に一発の銃声が鳴り響いた時、警察の撃った銃弾は俺の左肩を掠めた。
俺はその時ようやく理解できた、こいつ等は俺を逮捕しに来たんじゃない、殺しに来たんだと。
俺は血が流れる左肩を右手で抑えながら隣の部屋に走った。
そして俺を逃がすまいと数人の警察は何発も銃を発砲する。
冗談じゃない、本当に冗談ではすまない。
俺はその部屋の開いている窓から飛び降りる。
ちなみにここは2階、彼等は俺が部屋に隠れていると思い捜索していたが。
俺は地面に無事着地すると家から逃げるようにして走った。
どうなってる、俺は昨日人助けをした、ただそれだけなのに・・・。
このまま走ったっていずれは見つかって殺される、隠れようにも何処に隠れればいいのか・・・。
『何時でも来てくださいね』
昨日助けた少女の声が俺の頭に流れる。
そうだ、彼女だ、彼女が全てを知っているはずだ。
俺は左肩の痛みを堪えながら昨日行った彼女の家に向かった。
「着いた・・・ここだ」
大きな壁に大きな門、間違いなくここだ。
俺はすぐさま壁についてあるインターホンを連打した。
『はい、どちら様でしょうか?』
女性の声が聞こえてくる、だが昨日の少女の声じゃない。
「昨日フィリオという少女をこの家まで送った者です!彼女に合わせてください!」
『無理です』
「えっ・・・ええっ?何故ですか!」
『フィリオ様は現在就寝中です、ですから無理です、また時間がたってから起こしになってください、それでは』
「ちょっと待ってください!時間が無いんです!」
ブツリという音が聞こえる、き、切られた。
さすがに我慢の限界だ、ここにいればいずれ彼等に見つかって殺されてしまう。
俺は家の敷地を囲っている大きな壁を見る、壁の高さは大体2m位か・・・。
「よっと!」
すぐさま壁をよじ登ると敷地内に侵入。
とにかく彼女から話しを聞きださないと気が済まない。
俺はすぐさま扉を開けて豪邸に入っていく。
広い、まるでお城の中のように豪華で優雅で美しい。
っと、早くフィリオさんに会いにいかないと・・・。
「ん〜、眠ー」
そこに、一人の少女が俺の前を横切っていく。
上はだぼだぼのパジャマを着て、下は下着一枚の姿、左手にはぬいぐるみを持っている。
髪の色、顔立ち、身長・・・間違いなくこの子だと核心した愁。
「フィリオさん!」
「ふにゃ?」
愁はすぐさまその子の側に駆け寄り、両肩を掴む。
「一体どういう事なんですか?!貴方は・・・」
すると少女は愁を睨みつけながら肩を掴んでいる両手を払いのける。
「汚い手でさわるなっ!」
「えっ?」
昨日会った時はおしとやかでお上品だった少女が今では全くの別人のような口調で喋ってくる。
「アンタ何者よ!あーわかった、さては泥棒ね、そうでしょ!」
「え、いや、泥棒じゃないって。昨日会った事覚えてないんですか?」
「はぁ?アンタみたいな奴顔も見た事無いわよ」
「そんなはずはない!昨日確かに俺と・・・」
その時、俺の後頭部に何かが当たっているのに気づいた。
ゆっくりと後ろに振り返ってみると、一人の女性が笑顔で俺の頭に銃を突きつけていた。
俺はこれからどうなるんだ・・・。 |