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Deltaプロファイル
作:極



第16話 波乱、旅立ち


どうして俺はこの世界に来てしまったのだろうか。
冷たい牢屋の中、ふと疑問に思ってしまった。
俺は最強の魔法使いだった。
どうしてそんな力があったのかを説明しろと言われても説明できないが。
大体、どうしてこの世界に来て魔法が使えなくなったんだ。
魔法さえあれば俺は今頃こんな牢屋から抜け出して元の世界に帰れるのに。
NFだろうがBNだろうが俺には知ったこっちゃない。
悪いかもしれんが、この世界で戦争が起ころうが滅亡しようが俺には関係の無い事だ。
・・・いや、俺は世界を助ける為に命を犠牲にしようとていたな。
だが、どんな世界でも始まりが有り終わりを向かえる、これは当然の事だ。
終わりがあって、始まりがある。出会いがあって別れがあるというのと多分同じ。
そんな簡単な定理に当てはめていいものなのかわからないが、俺はそう思う。
この話が全部、夢だったらいいのに・・・。

「そんなっ・・・甲斐斗さん!!」
崩壊する世界で、一人の青年が俺の名を叫んだ。
体中傷だらけ、口元には少し血が付いていて、両手には双剣を握っていた。
そしてその隣にいる、薄く美しい金髪を靡かせている一人の女性。
二人の姿は既にボロボロだった、その場に立っているのがやっとなくらいだ。
「ねぇ甲斐斗・・・約束したじゃない、一緒に戻ってくるって!」
「・・・ああ、お前等が俺に約束してくれたんだよな。絶対に元の世界に帰るって」
次々に地面に亀裂が走り、広がっていた空は変色しながら縮まっていく。
「違う!甲斐斗だって約束してくれたじゃない!帰ろうよ・・・甲斐斗・・・!」
彼女はそう言って俺に手を指し伸ばしてくる。
だが青年は違った、涙を流しながら俺の決意をわかってくれた。
「今約束してください・・・必ず、必ず僕達の世界に帰ってくると!」
おいおい、わかってくれたと思ったのに。コイツときたら・・・。
しゃーねえ、約束してやるよ。帰ってきてやる、絶対に。
俺は力の無い腕を前に突き出し、グッと親指を突きたてた。
その時にはもう二人の姿は消えていた、無地に元の世界に帰れたようだ。
せっかく約束したのに、速攻で約束破る事になるけどな・・・さて、一足先に天国に行ってみるか・・・。
ああ、『ここだけ』思い返すと俺って本当にカッコイイじゃないか。
コレはもう全米が涙するな、うん。俺カッコイイ。俺カッコイイ!

「うへへ、俺ってカッコイイぃ・・・うへ!」
「っ!って、寝言ですか・・・ビックリしたぁ」
甲斐斗を起こさないようにそっと牢屋の鍵を開けて部屋に入ってくるアリス。
手には包帯や消毒液などが詰め込まれている救命箱を持っていた。
「甲斐斗さんってナルシストなのかな・・・、ううん。それより今は包帯を変えてあげないと」
起こさずに包帯を替えようとしているのだろうか、必死に体に巻かれている包帯を取ろうとしている。
だが甲斐斗が寝返りをうつたびにビビって包帯を取る事が出来ない。
それに負けじと必死に包帯を取ろうとするアリス、寝返り、びびる、取ろうとする、寝返り、びびる、何これ。
「もう!じってしていてください!」
「ん・・・?誰だお前」
ようやく目が覚め、体を起こす甲斐斗、眠そうに目を擦ると軽くノビをする。
「私の顔を忘れたんですか?アリスですよ!包帯を取替えにきました〜」
「おおー、寝ている間にもう1時間たったのか、ご苦労様ー」
「いやー、4時間も遅れて来ちゃいました〜」
「は?」
時計、時計は何処だ、今何時だっ!
「今は夜の9時ですね、さぁ、包帯取りますよー」
そう言って彼女は俺の顔に巻かれてある包帯に手を掛ける。
ゆっくりと外されていく包帯、ようやく俺の顔を邪魔していた物が無くなった。
あー顔でも洗ってサパッリしたいなー、とか思っていると彼女が驚いた様子で俺の顔を見ていた。
「アレだけの火傷がもう治ってる・・・」
それは顔だけではなかった、俺の腕や足、体に巻かれている包帯を取ると、そこに傷は無く、火傷の跡すら無かった。
この人間離れした生命力と治癒能力が俺を長生きさせてくれる秘訣だ。
「これなら包帯いりませんね」
彼女はせっかく取り出していた包帯を救急箱に戻していく。
「・・・俺の事不気味とか思わないのか?」
「別に思いませんよ、それに甲斐斗さんの顔とっても綺麗だし」
「いやいや、顔が不気味とかじゃなくて」
「貴方が誰だろうと関係ありませんよ、甲斐斗さんは私達の命を救ってくれましたよね。
 それに、甲斐斗さんは悪い人には見ませんから、とても優しそうな方に見えますよ」
「はは、それは良かった・・・」
その時、急にアリスがしゃがみ込み、俺の目の前に顔を出してきた。
かすかに良い匂いが漂い、俺の体は固まったままアリスの顔を見つめていた。
アリスの方は軽い笑みを見せながら俺の目を見つめてくる。
「綺麗な目をしてますね」
「へ?」
そう言うと、彼女は照れ笑いをしながら救急箱を持ち上げる。
「てへ。すみません変なこと言っちゃって、それじゃおやすみなさ〜い」
「あ、ああ。おやすみ・・・」
よくわからない奴だ、ただ。少し可愛かったのは認めよう。
そういえばさっき彼女は俺の目が綺麗と言っていたが・・・。
ふと右手で右目を覆い隠してみる、・・・見える、はっきりと前が見える。
急いで洗面台においてある鏡を手に取り、自分の顔を凝視した。
そこに左目はあった、ちゃんと動き、しっかり物が見える。
何故、いつから左目が直っていたのか気づかなかった。
「薄々気づいてたけど、やっぱり俺って・・・」

波乱に満ちた一日は終わり、希望に満ちて欲しい一日が始まろうとしていた。
朝日の差し込まない薄暗い牢屋にいる甲斐斗はまだ爆睡中。
甲斐斗は爆睡中だが、BNの兵士達は既に起き、訓練に勉強等色々行なっている。
だが羅威達は違う、今日から本部を離れ戦艦に乗って各地を回るのだ。
出発の時間は近い。格納庫にはエリルや穿真、そして昨日ブリーフィングルームに来ていた兵士達が集まっていた。
「コレが戦艦リシュードかぁ、でけぇえなー!」
うれしそうに戦艦を見渡している穿真、多分コイツの心には夢と希望が満ち溢れているだろう。
「おいエリル!さっさと乗ろうぜ!!」
穿真が振り返ると、エリルは携帯電話を開いて時間を確認していた。
「ちょっとまちなさいよ、羅威がまだ来てないみたいないんだから」
「ぁあー?どーせ愁と話してんだろー」
「もぉー、時間後少ししかないのに・・・私ちょっと羅威呼んでくる」
開いていた携帯を閉じ、ポケットの中に入れて走り出そうとした時、穿真がエリルの腕を掴む。
「お前さぁ、少しは空気読めって」
「・・・アンタにだけは絶対に言われたくない台詞ね」
「だったら最後くらいゆっくりさせてやれよ、あの二人を」

「愁、起きてるか・・・?」
羅威はそこにいた、一室の前で話しかけている。
あれから一日がたった、昨日はいくら愁の部屋に行っても何も答えてくれなかった。
だが俺は嫌だ、最後の最後までお前とこんな感じで別れるのは・・・。
「ポジティブに行こう、愁。お前はこの醜い争いから抜け出せる事が出来たんだ。
 お前には弟や妹、両親がいる、家族がいるんだ。守ってやれよ・・・」
部屋からは物音一つ聞こえない、もしかしたらもう愁がいないのかもしれない。
それでも羅威はひたすら話し続けていた、愁が扉の向こうで話を聞いてくれている信じて。
「そろそろ時間だから俺は行く。
 ・・・愁、例えここで分かれても俺達は親友だ、それは忘れないでくれ」
またいつか会える、その時はまた、俺がカレーを奢ってやるからな・・・。

昨日から一歩も外へ出てないミシェル。
部屋のドアには外側から鍵が閉められて開かず、窓から出たくてもここは2階。
昨日来てくれた穿真やエリルもいなく、一人寂しく毛布に包まっていた。
その時、何やら外で騒がしい音が聞こえてくる。
開かなかったはずのドアがすっと開き、二人の兵士が部屋の中に入ってきた。
軍帽を深く被り、目元が見えない。彼等は部屋に入るや否や部屋の隅で縮こまっているミシェルに近づく。
「探したぜ、第1GM!一緒に来てもらおうか」
怯えながらその兵士を見つめているミシェル。
すると、もう一人の兵士が口を開き、ミシェルに手を指し伸ばした。
「安心して・・・私達は・・・貴方の・・・味方・・・」
「みか・・・た・・・?」
「そう言うこった、無理やり連れていかせてもらうよっ!」
さっきからよく喋る兵士が毛布に包まったままのミシェルを腰に抱きかかえる。
「後はここから逃げるだけ!さっさと逃げるぞ!」
「あっ・・・戦艦・・・格納庫・・・行く・・・」
「格納庫?やっぱりあの作戦で行く気なの?!」
「そうみたい・・・危険だけど・・・頑張ろ・・・」
「っしゃあっ!俄然やる気が沸いてくるぜ!」

「ふんごっ!?んが・・・今何時だっ・・・」
時計が無いのはわかっているが時計を探して部屋を見渡してみる、そこにはやっぱり時計は無い。
「俺の囚人生活一日目のスタートかー」
最近独り言が増えたのかと思うぐらい今日は起きてからよく喋る。
「よっし!今日から気分入れ替えて頑張っていくぞー!」
俺が一人、オーッ!と掛け声を発した瞬間、凄まじい爆音と供に部屋が揺れた。
地震かと思ったが、振動は長く、爆音が何度も聞こえてくる。
どうやら俺は、平和な日々に嫌われているらしいな・・・。


アリス・プリセント
医療担当の立派な医者、マイペースで明るい女性。
戦争は嫌いでBNもNFも好きではないがその事は皆に黙っている。
ただ目の前にいる怪我人を助けたい一身で医者になる決意をした。











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