ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第13話 崩壊、誓い
───BN基地の前にある格納庫に生き残りの部隊の人達が集まっていた、その中にはエリルと愁もいた。
エリルはどこか落ち着かない様子で周りを見渡し、愁は力無く壁にもたれ掛かっている。
すると格納庫に見覚えのある二人の青年、羅威と穿真が戻ってきた。
「羅威!穿真!良かった、無事だったのね」
エリルは真っ先に二人の元に駆ける、穿真は余裕の表情を見せていたが隣に立つ羅威は少し疲れた様子だった。
「大丈夫?」
「ああ、お前等が行った後に穿真が助けに来てくれてな」
「ごめん、本当は愁をここに届けた後に羅威を助けに行きたかったけど……」
「何かあったのか?」
「私達はしてやられたのよ、ERRORに」
「どういう事だ……?」
羅威達の疑問に答えるようにエリルが今あった出来事を語りだした。
エリル達が基地に戻った時、既に紳やセーシュ達も戦場へと出ており、確実に基地に近づいてくるERRORを掃討していたはずだった。
防衛ラインを段々と上げていきERRORを排除していき明らかにBNが優勢になりつつあった。
だが、この状況はERRORの作戦により一変した。
ERRORは中央基地の地面を突き破ると、大群のERRORが一気に中央基地内部へとなだれ込んだのだ。
次々に溢れ出すERRORに基地内は一瞬にして地獄へと変わる。
Person態は基地にいる負傷して運び込まれている人達や、兵士以外の人間達も容赦無く噛み砕き食い殺していき……。
「反則だよ、地中から来るなんて……私達、何も出来なかった……」
気づいた時には既に多くのPerson態が皆を喰い殺していた。
負傷して体を動かす事の出来ない人達も、それを治療していた人達も。
そしてPerson態は次々に基地内に侵入し、多くのBN兵士が命を落とした。
「今、溢れ出てきたERRORを殲滅し終えてここで待機していた所なの」
その事実を知らされ、驚きを隠せない二人。
「お、俺達がいない間にんな事が起こってたのかよ……くそっ!」
半ば混乱気味の穿真、周りを見ればたしかに兵士の数が少ない。
羅威はその話を聞いて愕然としていた、当たり前だ、あれだけ皆が力を合わせ、命を捨ててまで守ろうとした基地を
こうもあっさりに壊滅させられたのだから。
「紳さんやセーシュ達も皆が頑張ったのよ!私だって!皆!でも……」
「エリル、もういい」
エリルの瞳からは涙が零れ落ちていた。
急に膝の力が抜けたかのようにその場に座り込んでしまう。
俺はそんな彼女を抱きしめて上げる事は出来なかった。
格納庫にいる兵士達は皆愕然とししている。
無理も無い、俺達は守る事も救う事も何も出来ずに負けたのだから。
格納庫にはわずかな負傷者が運び込まれている。
ERRORは人間を殺しているのだろうか、それとも人間を食料と思いただ食べているだけなのだろうか。

───「姫様、体調の方はいいかがですか」
基地にいたゆいは既にERRORに占領された基地からは脱出して格納庫の横にある小屋へと移されていた。
その小屋の周りには銃を持った数名の兵士が立っており、小屋の中には唯が椅子に座っていた。
不安で暗い表情の唯に、側にいるセーシュはそっと飲み物を渡す。
「はい、私は大丈夫です」
「気分は、具合は?どこか悪い所は……?」
「あの!すこし一人にさせてください」
「わかりました、何かあれば部屋の前にいる兵士に伝えてください」
セーシュは唯の元からゆっくり離れ、そっと部屋を出ていく。
「ダン様、どうしたのですか?」
部屋の前に壁にもたれ掛かりながら一服しているダンの姿があった。
「……俺の勘は案外当る」
「はい?」
最後に大きく白い煙を吹き、自分の吸っている煙草を携帯灰皿に入れる。
「この場はもう駄目だ」
それは起こった、地震かと思う程の強い揺れが兵士達を襲う。
そして地面に開いている穴から大量のERRORが湧き出してきたのだ。
基地内に響き渡る警報音、戸惑う兵士達。
今、こんな状況、こんな状態で起こる出来事。
「セーシュ、姫様を早く車に乗せろ、この基地から出るぞ」
「ここを放棄するつもりですか?!」
「ああ、今の戦力じゃもう無理だからな」
「まだわかりません!若様と私達がいれば……」
「てめえ等だけで何ができる、諦めろ」
「しかし!この基地は」
「さっさと行動しろ、時間は無いと思え」
そのダンの迫力にセーシュが言葉を失う。
「……わかりました」
まだ基地内には負傷者だっている、助けを求めている人達だっているというのに……。

───その警報は既に格納庫にいた兵士達にも聞こえていた。
羅威、エリル、そして穿真達は自分の機体に乗り込み、負傷した兵士達の避難の手助けをする。
負傷した人達や兵士達、皆が次々に大型の車に乗り込んでいく。その中には愁の姿もあった。
怪我をしていない兵士達は自分達の我雲、戦車に乗り込む。
歩兵部隊の人達はロケット砲を装備して軍車に乗り込み、戦闘態勢をとる。
我雲に乗るパイロット達のモニターにセーシュの姿映し出される。
『全兵士に告ぐ、我等はこの地域を放棄し、一度本部に戻る事となった。
 退却しつつERRORをなぎ払え、深追いはするな。それでは行くぞ』
『了解』
モニターからセーシュの姿が消えると同時に、今度は穿真とエリルの姿が表示される。
「エリル、戦えるか?」
『当たり前でしょ!私はもう平気、それより避難している車の護衛をしないと』
『護衛はお前に任せるぞ。俺と羅威は少し時間を稼ぐ為に前方に出る』
『……わかった、二人とも無理はしないでよね』
エリルとの通信が途切れ、モニターには穿真の姿がまだ映っていた。
「穿真、俺は嘘を付いた」
『嘘?』
「俺は彩野にこの基地を守るって言ったのに、それを実現できそうにない」
その言葉を聞いた穿真は簡単に答えた。
『なぁに、お前が彩野を守ればそれでいいんだよ』
羅威は黙ったまま、何か考えている顔をしている。
『ん、許してもらえなけりゃ謝ればいいだろ。俺も一緒に謝ってやるからよ』
こんな状況でも笑って見せる穿真、だが羅威の顔は見る見る青冷めていく。
『お、おい。どうしたんだ?』
「彩野はまだ…基地内にいる……」
『……は?』
羅威は急いで基地に通信を試みる。
だが消えてくるのはノイズ音だけしか聞こえてこない。
『ま、待てよ!基地内の人達は皆救助されたんじゃねえのか?!』
「彩野がいる司令室は敵の侵入を防ぐ為の防衛装置が着いてある。
 この区域が安全と分かった所で防衛装置は解除される、しかし少しでも危険となれば
 防衛装置の働きは継続、基地内に多くのシャッターが下りて敵の侵入を防ぐ事になる」
『なっ、内側から解除する事とか出来ねえのか?!』
「可能かもしれんが時間がかかる……」
既に基地の壁には何体ものPerson態が張り付いている。
地面の穴からも大量のERRORが現れてくる、もはやあの流れを止める事は出来ない。
『って事は、彩野達はまだ基地内に閉じ込められてるって事かぁっ?!』
「可能性は高い。穿真、俺は───」
『行くなよ羅威!』
穿真の乗る我雲が羅威の我雲にマシンガンの銃口を向ける。
『いくらお前でも今行けば確実に殺される、死ぬぞ』
「だが俺は約束した、守ると。なら俺はその約束を果しに行くしか……」
『お前が死んだら元も子もねえだろがっ!お前が基地に行く素振りを見せた時
 お前の我雲の両手両足を吹っ飛ばして胴体だけ持ってこの領域から撤退するぞ。言っておくが俺は本気だ、これ以上仲間を失うのは嫌だからな』
羅威は……まるであの時の愁の立場に立たされた様だった。
あの時愁は一人の兵士を助けようと、自らの危険を顧みずに特攻した。
俺はそれを止めていた、だがもし自分があの立場に立たされたら俺はどうするのだろうか。
そして今、俺はその立場に立たされている。
『羅威!……頼む』
「だが……俺は!」
『危ねえっ!』
我雲に飛び掛るPerson態をマシンガンで吹き飛ばす穿真。
波のように押し寄せてくるPerson態、穿真が両手マシンガンを一気にぶっ放す。
次々に押し寄せてくるPerson態に銃弾の雨を浴びせていく羅威。
それに続いて穿真もマシンガンをぶっ放していく。
「俺は彩野に言ったんだ、命に代えてもこの基地を落とさせないと」
我雲の出力をフル機動して、一気にPerson態の上を飛び超えていく。
『馬鹿がっ!行くなって言ってんだろが!』
「お前も言っただろ、彩野を守れと」
『はぁ?冷静に判断して行動しろ!お前らしくないぞ!』
穿真からの通信を切る羅威、もはや基地はPerson態に埋め尽くされていると言っても間違ってはいなかった。
そんな中に、一機の我雲が無謀にも接近している。
着地をすればたちまちPerson態に取り付かれるだろう。
だがその時だった。基地にへばり付いているPerson態もろとも吹き飛ばし、基地の中から一機の機体が姿を見せた。
「我雲!……いや、違う!?」
それは機体と言えるのだろうか、それは『生命体』と言っても過言ではない。
その機体は赤く鋭い眼光で羅威の乗る我雲を見つめていた。
守玖珠すくす 羅威らい
冷静沈着で負けず嫌いな性格。
NFの軍人を激しく嫌っており、復讐しようとしてBNに所属している。
いつも首から下げられているペンダントの中には一枚の写真が入っており、命より大切な物らしい。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。