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第8話 『スカートをはいた鳥』
【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HGF=ホストグランドファーザー
HM=ホストマザー
HF=ホストファーザー
HS(ホストハウスの息子) 15歳
HD(ホストハウスの娘) 13歳


○飛行機の中

地球家族6人が座っている。
ミサが隣の席の母に、スケッチブックを見せている。
ミサ「お母さん、ほら、見て、見て」
母「あら、さっきのホストファミリーにそっくり。似顔絵上手ね」
ミサ「ほんと? でも、似顔絵より、服のセンスをほめてほしいな。私がデザインしてみたのよ」
母「なるほど、センスいいね」
ミサ「私、ファッションデザイナーにあこがれているの。だから、初めて人に会った時には、いつもその人に合った服をイメージするようにしているのよ」
母「へえ、イメージトレーニングか」
アナウンス「まもなく到着します」

○ホストハウスの玄関

地球家族6人。リコがドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HM「いらっしゃい」
HGF、HM、HF、HS、HDが出て来る。
母「5人家族でいらっしゃるんですか?」
HM「いや、あと一人、いらっしゃい」
スカートをはいた大きな鳥が出て来る。
HM「フラミンゴです。名前は、Aちゃん」
ジュン「へえ」

○居間

地球家族6人とHGF、HM、HF、HS、HD。
HF「この国では、フラミンゴは数年前まで絶滅寸前だったんです。でも、また増えてきたので、つい先日ペットとして飼うことが認められました」
HD「うちが、ペットとして飼った国内第1号なんですよ」
ミサ「へえ」
父「それにしても、スカートをはいた鳥というのが、またなんとも不思議な感じがしますね」
HF「この国では、ペットが洋服を着ているのは常識なんですよ。でも、ペットといえば普通は犬か猫ですからね。洋服を着たフラミンゴは、国内どこを探してもここにしかいませんよ」
HM「私は目新しいものがあまり好きじゃないんで、反対したんですけどね」
HS「お母さんは、嫉妬してるんですよ」
タク「嫉妬?」
HS「自分より、この鳥のほうが女らしいから」
HD「お母さん、スカートはいたことないもんね」
HM「まあ、ひどいわ」
全員「ハハハハ」

○ダイニング

ミサが一人でスケッチブックに絵を描いている。HM・HF・HGF・HS・HDの絵と洋服、それに鳥の絵。
ミサ「鳥のスカートか。うーん、ひらめかないな。鳥はやっぱり、裸のほうが似合ってるよ」
HDが来て、ミサに話しかける。
HD「こんにちは。私も13歳なのよ。同い年ね。よろしく」
ミサ「うん、よろしく」
HD「へえ、もしかして、ファッションデザイナーを目指してる? 結構才能あるんじゃない?」
ミサ「ううん、全然たいしたことないよ」
HD「良かったら、私のノートも見て!」

○HDの部屋

HDとミサの二人。HDのノートには、フラミンゴのスカートのデザインがいくつも並んでいる。
ミサ「これって・・・」
HD「そう、フラミンゴのスカートを、いろいろデザインしてみたの」
ミサ「フラミンゴの洋服のデザイナーなんて、いるの?」
HD「もちろん、いないわ。犬や猫の洋服のデザイナーは大勢いるけどね。でも、これからはフラミンゴをペットとして飼う人が増えるだろうから、デザイナーも必ず必要とされるわ。私は、フラミンゴが着る服のファッションデザイナー第1号を目指しているのよ。私はただ仕事がクリエイティブだというだけでは満足できない。今まで誰もやったことがない仕事がしたいの」
ミサ「・・・」
HD「どうしたの? 私の話を聞いてあきれた?」
ミサ「ううん、とんでもない。むしろ尊敬したよ。パイオニア精神旺盛だね。私はそこまで考えなかったからな」
そのとき、下で電話のベルが鳴る。

○居間

HFが電話に出ている。
HF「もしもし。あ、社長。わかりました。お待ちしています」
HF、電話を切る。
HMとHSが近づく。
HF「社長が今からうちにいらっしゃることになったよ。フラミンゴを見たいと、しばらく前からおっしゃっていたんだよ」
HM「あら、大変。Aちゃんは、どこか散歩に出かけてしまったわ」
HF「あ、いいよ。いつもどおり、夕方には帰ってくるだろ。社長にはそれまで待ってもらうから」

○ホストハウスの玄関前

太めの女性(社長)が玄関のドアを開ける。スカートの柄が、フラミンゴのスカートとまったく同じである。
社長「こんにちは」
HM「はじめまして。主人がいつもお世話になっております。どうぞお上がり下さい」
社長「では、遠慮なく」
影で見ているジュンとミサ。
ジュン(小声で)「あ、あのスカート」
ミサ(小声で)「同じ柄だ」

○居間

HMと地球家族6人
HM「ねえ、社長さんのスカート見たでしょ」
母「はい」
HM「同じスカートをはいたフラミンゴと鉢合わせになったら気まずいわ」
全員「・・・」
HM「Aちゃんが戻ってきたら、スカートを脱がせなきゃ。でも、私たちは応対していないといけないから、申し訳ないけどあなたたち、戻ってくるのを見張っていて、脱がせてくれないかしら」
母「わかったわ。でも、ペットが服を着ていないのはこの国ではおかしくないのかしら」
HM「おかしいわ。でも、仕方が無いのよ。自分と同じ服を着たフラミンゴを見るよりは、裸のフラミンゴを見るほうがましよ」
母「Aちゃんはどこから戻ってくるのかしら」
HM「いろいろなドアから帰ってくる可能性があるから、悪いけど手分けして見張ってほしいのよ。入口は、玄関と勝手口、それからあっちの部屋の窓も」
ジュン「はい」
HM「あと、あそこにも小窓があって、あそこから入ることはまずないと思うけど、念のため、じゃあ、リコちゃんはあそこを見張っててくれないかしら」

○廊下の小窓のそば

リコがたいくつそうに見張っている。
そのとき、小窓からフラミンゴが突然顔を覗かせる。リコ、驚く。
フラミンゴが完全に部屋の中に入る。
リコ、フラミンゴを捕まえようとするが、フラミンゴが逃げ回り、なかなかうまく捕まえられない。
ようやく背中に回りこみ、必死でスカートを脱がせる。
そこに、HFが現れる。
HF「あ、リコちゃん、どうしたの? この鳥はうちのペットだから、スカートをはいたままでいいんだよ」
リコ「でも、おばさんが・・・」

○廊下

社長の声「ちょっと、みなさんにお見せしたいものがあるの。駐車場の車の中まで、ちょっと戻るので5分ほど待っていてくださる?」
社長が客間から出てきて、そのまま玄関から外に出る。
HMも後に続いて客間から出てきて、HFとリコのもとに駆け寄る。
HM「あ、良かった。脱がせてくれたのね」
HF「ペットが裸じゃおかしいよ。スカートをはかせなきゃ」
HM「だめよ、社長さんのスカート、見たでしょ。Aちゃんのスカートとまったく同じ柄だとわかったら、絶対に気分を悪くされるわ」
HF「そんなことないよ。よく、犬や猫とおそろいの服を着ている人がいるじゃないか」
HM「フラミンゴは、犬や猫と違うわ。まだペットとして飼っているのはうちだけじゃない」
騒ぎを聞き、HGF、HS、HD、父、母、ジュン、ミサ、タクも駆け寄る。
母「あのー、ほかのスカートは無いんですか?」
HM「それが、Aちゃんのスカートは、まだこの1枚しか作ってないのよ」
HF「よし、多数決で決めるか。裸のほうがいいと思う人」
父、母、ジュン、タク、リコ、HGF、HMが手をあげる。
HF「スカートをはかせたほうがいいと思う人」
HF、HS、HD、そしてミサが手をあげる。
HM「ほら、やっぱり裸のほうが多いじゃない」
HF「いや、地球の方々には申し訳ないけど、やはりここは地球の方々は除いて考えたほうが・・・。地球の文化とは違うし」
そのとき、外で社長の声がする。
社長「たいへん!」
社長が玄関から入って来る。
社長「いなくなっちゃったわ。車から逃げ出したみたい」
HF「え、何がですか?」
社長「フラミンゴ、私も昨日から飼いはじめたのよ。見せようと思って連れて来たのに」
HF、そばにいるフラミンゴをよく見る。
HF「あれ、このフラミンゴ、よく見ると、Aちゃんじゃないぞ」
社長、フラミンゴの存在に気がつく。
社長「あ、ここにいたのね。でも、どうしてスカートを脱がせちゃったのかしら」
全員「・・・」
リコ「ごめんなさい。私が脱がせたんです。私、勘違いしちゃって。このフラミンゴ、この家で飼っている鳥だと思ったんです」
社長「あらそう。でもペットとして飼っているんだから、服を着ていないとおかしいわよね」
リコ「おばちゃんのスカートと同じ柄だったから。おばちゃんのスカートをこの鳥が奪っちゃったんだと、早合点しちゃったんです」
社長「ま、そうだったの。でも私、こんな小さなスカート入らないわ。アハハハ」
全員「ハハハ」
そのとき、もう1羽のフラミンゴが玄関から入って来る。
HS「あ、うちのAちゃんが戻ってきた」
母「ほんと、見事なおそろいですね」

○道

HM、HS、HDを先頭に、地球家族6人が外を歩いている。
ジュンと父が話している。
ジュン「リコが機転をきかせてくれて助かったよ」
父「リコは確かに頭がいいけど、機転のきいたことなんて言えるかな」
ジュン「じゃあ、どうして」
父「まさにあれは、リコの天然系の勘違いだったんじゃないかと」
いっぽう、ミサと母が話している。
母「ミサは、スカートをはかせるほうに手をあげてたわね」
ミサ「うん。多数決も確かに大事だけど、社長さんの気持ちが一番わかる人の意見を尊重することも大事だなって、今日思ったよ」
母「それって誰のこと?」
ミサ「娘さんのHDさんよ。社長さんに似て、とても新し物好きで。HDさんが描いたノートを見せてもらったんだけど、Aちゃんのスカートのデザインの候補の中に、HDさん自身のスカートと同じ柄があったのよ。フラミンゴでも、犬や猫と同じように、人間とおそろいの服を着て全然おかしくないって思ってるんだということがわかったの」
そのとき、前方からHMが叫ぶ。
HM「さあ、みなさん、動物園に着きましたよ。今度は野生のフラミンゴを見物しましょう」


【原作】砺波元
【脚本】砺波元


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