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地球のリコちゃん
作:トナミKK



第21話 『一方通行と行き止まり』


【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HD(ホストハウスの娘) 18歳


○バス停前の道

地球家族6人がバスを降りると、そこは、人が一人しか通れないほどのとても細い道である。
HDが出迎える。
HD「ようこそ、みなさん」
父「はじめまして。わざわざお出迎えありがとうございます。地図をもらっていますので、私たちだけでもお宅に行けたと思うんですが」
HD「いえ、この国では、道を歩くのはとても難しいので、私がご案内しないと・・・」
ジュン「そういえば、道がとても細いですね。こんなに細いと、すれ違うことも追い越すこともできないですよ」
HD「そうです。だから、すべての道が一方通行になっているんです。たとえば、この道はこっちにしか行くことができません。私について来てください」

○道

HD、歩き出す。地球家族、その後ろを一列になってついて行く。
ミサ「一方通行ということは、歩きながら、逆戻りするのは交通違反なんですか?」
HD「逆戻りすることはできません。戻ろうと思ってもできないんです。ためしに、やってみてください」
ミサ、後戻りしようとする。しかし、体が動かない。
ミサ「あ、本当だ! 信じられない。戻ろうとすると、体が動かないわ」
地球家族6人、ふりかえって戻ろうとするが、みんな動かない。
父「不思議だ。不思議な力がわれわれに加わっているようだ」
HD「道がとても細いので、逆戻りすると人とぶつかってしまってとても危険です。だから、決まった方向にしか歩けないようになっているんです」
タク「へえ」
そのとき、脇にそれる道があり、一匹のネコがいるのをリコが見つける。
リコ「あ、ネコだ。かわいい!」
リコ、ネコのもとにかけよる。
HD「あ、そっちに行くと、戻れなくなります!」
タク「え、戻れないって?」
HD「行き止まりなんです。そこに行くと、どっちの方向にも動けなくなります」
(図解)
リコ、ネコを抱くが、その場で立ち往生してしまう。
HD「こうなったら仕方がありません。救助隊を呼ぶしかないんです。
HD、リコのもとに行く。地球家族5人も行き止まりに向かう。
行き止まりには一本の木が立っており、てっぺんに赤い旗が立っている。
HD、赤い旗を指差す。
HD「あの赤い旗が、行き止まりの印です。くれぐれも、行き止まりに来ないように気をつけてください。これが救助ボタンです」
HD、木にとりつけられているボタンを押す。
HD「すぐに救助が来ますので、安心してください。でも、救助された回数の今までの最高記録は、1日に2回です。3回になってしまうと、新記録達成ということで、新聞に載ってしまって恥ずかしい思いをしますので、これからはご用心を」
そのとき、ヘリコプターの音が聞こえ、真上まで来て止まる。綱が降りてきて、救助員が降りてくる。
救助員「さあ、順番にこの綱につかまって、ヘリコプターに乗ってください」

○道

地球家族6人とHDが細い道を歩いている。
父「一時はどうなるかと思いましたよ。これからはみんな気をつけないと・・・」
母「それにしても、あのような行き止まりはなんのために設けられているのですか?」
HD「逃げた飼いネコを捕まえるためですよ。行き止まりには、ネコの好物のマタタビがたくさん置かれているんです」
タク「なるほど」
すると、前方にのろのろと歩く人々の行列があり、前に進めなくなってしまう。
ジュン「この行列はなんだろう?」
HD「渋滞ですよ」
父「なるほど。地球では車の渋滞はあるけど、人が歩く道で追い越しができないとすれば、確かにこんなふうに、人の渋滞も起こりえるわけだ・・・」
ミサ「なんで、みんなこんなにゆっくり歩いてるんですか? 後ろがつかえているから、もっと速く歩けばいいのに」
HD「行列の先頭の人は、もっと速く歩いているはずですよ。もしかすると、走っているかもしれません。でも、その後ろの人は、前の人よりも速く歩いてしまうとぶつかってしまうので、どうしても前の人よりもスピードが少し遅くなります。その後ろの人は、さらに少しだけ遅く歩いて、500人や1000人の行列になると、一番後ろの人は、こんなにのろのろ歩きになっちゃんですよ」
(図解)
父「なるほど。車の渋滞のしくみといっしょですね」
ジュン「そうだったのか! 車が渋滞するのはなぜだろう、一番前の車は何をやってるんだろう、ってずっと不思議に思っていたんだけど、そういうしくみだったんだね」
HD「これでは前に全然進めません。次の角を右に曲がって、渋滞を回避しましょう」

○しばらくして、道

地球家族6人とHDが細い道を歩いている。
母「ふー、さっきはびっくりしました。この道は人通りがないので、ちゃんと前に進めますね」
HD「ちょっと遠回りになってしまいますが、もうすぐ家に着きますので、安心してください」
そのとき、後ろから人が大勢走って来る音が聞こえる。
みんながふりかえると、大勢の人が、ものすごい勢いで自分たちに向かって走ってくる。
地球家族6人、びっくりして走り出す。
ミサ「(走りながら)きゃー、いったい何が起こったの?」
行列の先頭が、地球家族たちのすぐ後ろを走っている。
地球家族とHDも走るのをやめられず、汗をかきながら走る。
タク「助けてー、もうこれ以上走れないよ」
HD「みなさん、左に見える門を開けて中に入ってください! そこが我が家です!」

○ホストハウスの庭

地球家族6人とHD、息を切らして立っている。門の前を、大勢の集団が走りながら通過していくのが見える。

○居間

地球家族6人、まだフーフー言っている。HD、お茶を出す。
HD「みなさん、お疲れ様でした。いい運動になったでしょう」
ジュン「いったい何があったんですか? みんな、なんであんなに急いでいたんでしょうか?」
HD「誰ひとり、急いでなんかいないんですよ」
タク「え?」
HD「あの行列の先頭の人は、前から2番目の人が走っているので、自分も走らないと後ろがつかえてしまうと思って仕方なく走っていただけですよ。前から2番目の人も同じことで、前から3番目の人が走っているので、後ろがつかえないようにしょうがなく走っていたんです。そもそも、みなさんがさっき走ったのも、同じ理由でしょう?」
タク「そりゃ、まあそうですけど、じゃあ、あの行列の一番後ろの人は、どうして走っていたんですか?」
HD「一番後ろの人は、たぶん走ってなんかいませんでしたよ。のろのろと歩いていたかもしれません」
ジュン「そうか、理解できたぞ。今度は僕たちが渋滞の先頭にいたというわけですね」
HD「そういうことです。この国の人たちは、みんなとてものんびりしています。走らなければいけない用事なんて、めったにないんですから」
タク「へえ」
ミサ「なんだかとっても面白いわ。みんなで、もっと散歩してみない?」
HD「じゃあ、地図を差上げるわ」
HD、地図を広げて見せる。
HD「バスに乗って、隣の村まで行くと、山の中のハイキングができて楽しいですよ。山道も、もちろん一方通行です」
ミサ「えーっ!?」

○山道

地球家族6人が山道を歩いている。
母「景色がよくて、天気もよくて、最高ね」
ミサ、一番後ろを歩きながら、脇に生えている花に気がつく。
ミサ「あ、このお花、とてもきれい」
ミサ、1〜2歩だけ後戻りしようとするが、足が動かない。
ミサ「そうか、逆戻りできないんだった。残念」
ジュン「また見つけられるよ」
ミサ「今度は、行き過ぎる前に見つけないと・・・」

○しばらくして、山道

地球家族6人が山道を歩いている。
枝分かれした道があり、行き止まりになっている。そこにネコが一匹。足を怪我しているようす。
タク「あ、ネコだ」
ミサ「あ、そっちに行くと行き止まりよ。気をつけて」
ネコがいる所に立っている木には、赤い旗がかかっている。
タク「でも、ネコが怪我していてかわいそうだよ。どうしよう」
地球家族、困った表情。
タク「助けてあげようよ」
タク、ネコのもとにかけよる。ネコを抱いて、ハンカチで足をしばる。
タク「これで良し」
ジュン「タクは優しい子だな。でも、また、救助隊の世話にならなきゃ」
ジュン、木についている非常ボタンを押す。
しばらくすると、ヘリコプターが飛んでくる。

○山道

地球家族がヘリコプターから降りる。
タク、抱いているネコを地面に放す。
タク「さあ、もう大丈夫だろ」
地球家族、歩き出す。ネコ、タクの後をついてくる。
タク「困ったな、ついて来るよ」
タク、走り出す。ネコも後をついて走り出す。
父「ははは。地球のネコといっしょだな。逃げると、追いかけてくるんだ」
ミサ「私たちも行かなきゃ、タクが迷子になっちゃうわ。待ってー」
ミサ、走り出す。他のみんなも走り出す。

○しばらくして、山道

地球家族6人、ゆっくり歩いている。
ジュン「ふー、ようやくネコとお別れできたけど、余分に走ったから疲れちゃったな」
ミサ「私も」
父「あれ、ここはどこだ? 走っている間に、道がわからなくなってしまったぞ」
父、地図を持ってきょろきょろしている。
そのとき、前方に見える道を右から左へ走っていく人の集団が見える。
父「あ、あそこに人が見える。あそこまで行こう」
地球家族6人が歩いていると、後ろからさらに3人ほど走って来るのが見える。
ミサ「えー、もう私疲れて走れないわ」
ジュン「もう走らなくていいだろう。彼らも別に、急ぎの用事があって走っているんじゃないだろうから」
走って来た3人、地球家族のすぐ後ろについて歩き始める。
母「すみません、山道の出口は、こっちで合ってますよね」
母、自分たちが進んでいる方向を指差す。
3人のうちの1人「合っていますよ。出口のところに、バス停があります」
母「あー、良かった」
地球家族6人とその後ろの3人が歩いていくと、山道の出口があり、バス通りが見える。そのとき、バスが通り過ぎる。
ジュン「あ、バスがちょうど行っちゃった。次のバスはすぐ来るかな?」
3人のうちの1人「いいえ、今日はもう来ませんよ。あれが最後のバスです」
ミサ「えーっ、そんな・・・」
父「もしかして、みなさんは、あのバスに間に合うように走っていたんですか?」
3人のうちの1人「そうですよ」
父「えー、申し訳ありません。私たちがゆっくり歩いていたから乗れなかったんですね」
3人のうちの1人「いいえ、大丈夫ですよ。私たちはここから歩いて帰れますから。それじゃ失礼します」
3人、手前にある分岐点から横道に向かって歩いていく。
地球家族6人、立ち止まる。
ジュン「僕たちはホストハウスまで歩くのか」
ミサ「もう私、足が痛くて歩けないよ」
タク「それに、ここからホストハウスまでの地図も無いし」
母「助けを呼ぶにも、誰も歩いていないわ」
ジュン「そうだ。いい考えがある。わざと行き止まりまで行って、ヘリコプターに救助してもらおう。それならホストハウスまで帰れるぞ」
ミサ「次に救助されたら、3回目になっちゃうじゃない」
ジュン「そんなこと言っていられないよ。新聞に載ってもいいから、今日中にホストハウスに戻らなきゃ」
父「うん、ジュンの言うとおり、行き止まりに行って救助を呼ぶのは確かにいい考えだ。しかし・・・」
父、空を見上げる。すっかり暗くなっている。
ミサ「赤い旗を探そうにも、暗くて全然見えないわ」
そのとき、ネコの鳴き声が聞こえる。
タク「しめた、ネコだ!」
ミサ「そうか、ネコに連れて行ってもらいましょう」
タク、ネコの姿を発見する。
タクがネコを抱こうとすると、ネコが逃げる。
タク「あ、待ってくれ・・・」
タク、追いかける。
父「地球のネコと同じだな。こっちが追いかけると、逃げてしまうんだから」
ミサ、後を追う。
ミサ「ちょっと待ってよ、タク。もう私、あんまり走れないんだから・・・」
他の4人も走り出す。

○翌朝、ホストハウスの居間

HD、新聞を見て笑っている。
新聞記事には、地球家族6人の写真が映っている。
ミサ「あーあ、けっきょく、私たち、たくさん走らされたうえに、最後は3回救助されて新聞に載っちゃったわ」
父「でも、こうして無事に家に戻れて、本当によかったよ」
みんなでほほえむ。


【著作者】トナミKK
【原作】砺波元
【脚本】砺波元












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