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死後ノ世界 ー廃園になった遊園地で誘う影

作者:黒豆パン

俺たちは廃園になった遊園地にやって来た。その遊園地にはピエロというやつが出るという噂があった。
その話によると、そいつのを見たものは、手招きによって死後の世界に行けるらしい。そんな死後の世界に行った奴が証言できるわけがないとかいうありがちはツッコミは置いといて、友人のヒロキとその廃園に行くこととなった。
「怖いもの見たさ」というやつは恐ろしく、幽霊や廃園という言葉だけでワクワクする気持ちを引き立てる。



懐中電灯で闇に染まった辺りを照らしながら、大きな鉄でできた所々サビの付いている門を押す。ギギ........という鈍い音を立ててゆっくりと開く。
遊園地内のアトラクションや店はどこもかしくも所々破損していて、夜の遊園地ということもあっていかにも何かが出そうな雰囲気をかもしだしてた。
冷たい風が恐怖心を煽るように首筋を撫でる。
入口の近くにある「ようこそ!あなたは124521人目のお客様です!」と書かれたプレートが今にも外れかかっていて左右にキィキィと不気味な音を立てながら左右に揺れる。

入ると電光掲示板のような装置があり、そこに「名前を入力をしてください」と緑の文字が表示される。

「うわ、ボロボロなのにまだ動いてる だな、これ」

軽く機械を叩き、じっと見る。

「名前か、とりあえずパパッと書いちゃうぞ」

機械の下にあった紙に2人の名前をささっと記入する。そしてすぐ上にある投入口と書かれたところに入れた。
紙は吸い込まれるように中に入って行き、
先ほどまで「名前を入れてください」と書いてあった文字は自分たちの名前に変わっていた。


後藤ヒロキ様
須藤健斗様

楽しんで行ってくださいね


そう映し出されると、目の前にあった赤と白の模様が書かれたゲートが開く。俺達は懐中電灯で辺りを照らしながら、2人は薄暗い夜の遊園地を進んで行く。
こういうのはやはり雰囲気を重視して夜に来るのが定番という奴だろう。


「なあヒロ、本当に死後の世界にピエロっているのかな」

俺はヒロキにそんな事を尋ねてみる。「居ない」と言ってもらい少しでも怖さを和らげる作戦だ。

「それを確かめるために来たんだろう」

「.....そうだな」

思っていた返答と違くがっかりし、生真面目なこいつに聞いたのが間違いだったとすぐに後悔した。

しばらく歩くが、一向にピエロの気配すらせず、1時間ぐらい経っただろうか。
外は夜が更け、よりまがまがしさを放つ。

俺は雰囲気をぶち壊すようなことを口にしてしまう。

「あ、すまんヒロ、ちょっと俺、トイレ行ってくる」

「全く、お前は緊張感がないな。ほら、行って来いよ」

「すまない。すぐ戻って来るから」

そういうと俺は小走りで闇に消えた。

両腕を腰のところにあて、「しょうがないなあ」と言いたそうな表情で後ろ姿を見ていた。





「はあ、結局ガセだったのかなあ」

懐中電灯を口にくわえ、遊園地内に設置されている男子トイレで用を足しながらそう、呟く。
ガセで例のピエロは居ないと思えると余裕を保つことができた。
用も足し終わり、口にくわえてた懐中電灯を左手に戻し外に出る。

「っ!」

俺は言葉を失った。先ほどまでの余裕は緊張に変わる。「居ないでくれ」という期待は音を立てて壊れて行く。そいつが視界に入ってしまったのだから。

赤と白の縦縞模様の服で赤い鼻、小太りのような体型。白塗りの顔はずっと嬉しそうな表情をしていた。


ピエロ。


最初に浮かんだ言葉。左手で持っている懐中電灯を強く握りしめる。そいつはこちらに来るわけでもなく、ただただ手招きを繰り返していた。
「こっちにおいで、良いものがあるよ」と言わんばかりに.....。
俺は身に起きた現象に思考がついていけず、ただただ立ち尽くす。

そしてしばらくすると足が動いていた。まるで操られたかのように、ピエロの方に進んで行く。


ピエロは俺がついてきている事を確認すると、その巨体を重そうに動かしながらどこかに歩き出した。
俺はピエロにどんどん誘われて行く。

しばらく歩くと、ピエロはミラーハウスに入っていく。それにつられて俺も入る。
ミラーハウスというだけあって、鏡がたくさん置いてあった。

「なんだよ....ここ」


それが正常な思考ができるようになった後の第一声だった。

懐中電灯を持ち替え、左手で鏡を触ろうとするが手が止まる。
そこに映し出されたのは「異常」な光景。

そこに映っていたのは血まみれの姿の自分だった。


「あ....あ.....あ.....あ......あ......あ......あ......あ.......あ.......あ......あ........」

同じ事を繰り返しながら少し後退する。

そしておそるおそる顔を触ってみる。手には赤い何かがべったりと付いていた。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

同じ事を繰り返しながら俺は走る。

もう思考は正常に動く事が出来ず、今起こった出来事で何も考えられなかった。

鏡を見ないように走るもミラーハウスの鏡達は残酷にも俺の姿を映し出す。
そしてその異常な姿を俺に突きつけて来る。

「やめろ!やめろ!来るなぁ!!」

しりきに叫びながらただただ走って行く。
無我夢中で走るが一向に出口は見えず、途中で走る速度が遅くなった。

ハァハァと息を切らせ、上を向くと、あの忌まわしき鏡が視界に写ってしまった。

「あれ?」

俺は不意を突かれた。そこにうつっているのは紛れもなく俺だ。もちろん血など付いていない普通の姿。

「いまのは.....幻覚?」

下を向き心を落ち着かせる。

「そう、幻覚、今のは幻覚。幻覚幻覚幻覚幻覚」

そう言い聞かせ自我を保つ。

「俺は悪い夢を見ているこれは夢、これは悪い夢............」

そしてまた鏡の方を向くとまた、そいつがいた。あのピエロが






みいつけた。







そう言いたそうな表情で.....。




「あいつ何やってるんだよ」

不満そうな表情で、ヒロキはトイレに行ったっきり戻って来ない友人を探して居た。

「あっ!」

ミラーハウスから出てきたその姿を見て、つい声が出てしまう。

「おい、どこ行ってたんだよ」

「ああ、ちょっとピエロに誘われてね」

右手に持って居た懐中電灯を振りながら答える。

「見たのか!?」

「うん、でもこの通り。色々と大変だったけど無事戻れたよ」

「お前本当に大丈夫か?」

「もー後藤はほんと心配性なんだから。平気だって」

「あと、少し雰囲気変わったか?」

「気のせいだよ。きっと」

右の手でポリポリと頭をかく。

「そうか」

少し様子が変なような感じがしたが、気のせいだと思うことにした。おそらく気のせいという奴だろう。

「俺ちょっと帰る。酷い目にあって、疲れちゃって......」

「え?置いてくのかよ!」

どんな目にあったかは分からないが、よほどひどい目にあったらしい、少しやつれているように見えた。入ってきた時の勢いなどもまるで感じられない。
1人で探索するのも怖いので、一緒に帰ることにした。


でもこうやって無事に戻ってきたのなら、あの噂は何だったのだろうか。「死後の世界」などと仰々しく言われていた。だが遭遇したという本人は少し疲れた様子ではあるがこの通り戻ってきている。きっと誰かがふざけてそんな事を吹聴したのだろう。

さて、帰って寝るとしよう。明日、こいつにピエロの話をたっぷり聴かせてもらうとしよう。明日がとても楽しみだ。




2人が立ち去ったミラーハウスからは「助けてくれ、助けてくれ」という声が何回も、何回も繰り返されていた。
夏のホラー2017に投稿作品。

この小説を読み終え、読んでいてお気づきだろうか?小説内の不自然な変化を。

○呼び方がヒロから後藤に変わっている
・最初のピエロについてヒロキに尋ねるシーン
「なあヒロ、本当に死後の世界にピエロっているのかな」

・最後のミラーハウスから出て来てからのシーン
「もー後藤はほんと心配性なんだから。平気だって」

○利き腕が変わっている
・トイレのシーン
用も足し終わり、口にくわえてた懐中電灯を左手に戻し外に出る。

・ミラーハウスから出て来て、「雰囲気変わったか?と聞かれるシーン
右の手でポリポリと頭をかく。


これは一体何を意味しているのか?
ーそれはもうそいつは「俺」という登場人物では無い。誰かが既に入れ替わっている.....。

最後の文章
2人が立ち去ったミラーハウスからは「助けてくれ、助けてくれ」という声が何回も、何回も繰り返されていた

ということは「本物」は死後の世界に連れて行かれているということ..........。

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