終、川中島の霧明け
その戦いは、両軍とも多数の死傷者を出した。
川中島の龍と虎は、結局勝敗のつかぬまま、四度目の川中島戦の幕を閉じた。
その後の越後龍は、というと……
「景虎様〜!!何処においでですか〜〜!!!」
あれはいつぞやの侍女の片方では……?
またか。あの者はよくわたしの眠りを邪魔するな。
……何か、あれに恨まれるような事をしただろうか……?
「お館様〜!景虎様〜〜!!」
侍女は未だ景虎を探しているようだ。
………寝れん。
「……何事だ?あと、渡りでどたばたと騒ぐな」
仕方なく渡りに出ると、侍女は、はっとして振り返る。
「あら、申し訳ありません」
「して、何用だ?」
景虎はいかにも眠そうに目を細めた。
「あ、そうそう。先程侍女頭の部屋に、これが飛んできまして…。とうの侍女頭は突然矢が射られたことで、只今失神中で……」
侍女は懐から一本の矢文を取り出した。
景虎は静かにそれを受け取り、熟読した。
――先日の合戦、見事であった。よくぞ一人で敵陣に飛び込んだ。次の合戦を、楽しみにしておるぞ。
名前は無い。しかし、景虎には差出人がわかった。
「ふん……。わたしもだ、虎よ――…」
ちなみに、その後龍と虎の争いが、両者の亡くなるまで続いたというのは、また別のお話。
もしかしたら、今もなお、川中島の何処かで、合戦は続いているのやもしれないが、それを知る者は、誰一人として残ってはいない。
そんな、戦乱の最中の物語――…
|