関東管領職、越後の龍(1/4)PDFで表示縦書き表示RDF


※申し訳ありません。本文中で上杉 謙信は長尾 景虎と表しておりますが、この時期では既に上杉謙信と名乗っています。作者のミスを、ここで改めて謝罪致します。申し訳ありません。今後は気を付けます故、これからも宜しく御願い致します。
関東管領職、越後の龍
作:麗蘭



序、西の龍神


日の国・越後。
この地を治めし、長尾景虎こと関東管領が、齢三十を数えた頃。 景虎の住まいである春日山城が、突然騒がしくなった。
「でもまさか…」
「いや、でもそうかもよ?」
今朝は侍女達がやけに五月蝿い。
これでは、やっと戦から疲れて帰って来たというのに、ゆっくり休める筈が無かろう。 仕方ない。少し叱咤しておいたほうがよかろうか。
「何事だ…?」
「「お、お館様!」」
侍女達はようやく景虎の存在に気付き、慌てて深く頭を垂れた。
それを景虎は一声で制した。
「面を上げよ」
侍女達は主人の命に従い、そろそろと頭をあげる。
そんな侍女らに、景虎は眉間に僅かな皺を寄せ、いつもと変わらぬ声音で静かに問うた。
「今朝は何かと城内が騒がしいが、何事だ?」
景虎は小鳥の鳴く音が聞こえる、朝日の眩しい外を、窓越しから覗いた。
「いえ、それは…」
「少々申し上げにくく…」 景虎は困惑している二人を見下ろし、無意識に腕を組んだ。
着物の擦れる音がする。
「よい。申せ」
暫くして 侍女達はぽつりと語り出した。
「…ただの噂なのですが…。我が日の国・西の小国で、お館様を名乗りし大名がおられるとの噂が……」
景虎の眉間にますます皺が寄る。
「わたしを名乗る?どういう事だ」
「はい…。なんでもその大名は、他国との戦で勝利後、必ずといってよい程、“我は西の越後龍なり”。こう申して引き返すそうなので御座います」
もう片方の侍女が、代わって口を開く。
「私どもは、そのような大名の事など、今まで全く聞き入れなかった故……」
自分を無断で名乗られた事が害したのか、少し不機嫌そうに、再び尋ねる。
「して、その者の名は」
「確か…」
二人は顔を見合わせる。
やがて、一人がその名を口にした。
「聞いた話によると、多田 蛮崔ただ ばんさいと…」
「多田…。あまり聞かぬ名だな」

多田…か…。
見過ごし難いが、暫く様子を見る事にしよう。

景虎は戦の疲れを癒そうと、再び自室へと引き返した。



頭上で、数匹の鳥が鳴いた。


この度は、本作品を御覧下さり、誠に有り難う御座います。感想などが御座いましたら、是非とも評価お願い致します。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




TOP | NEXT


小説家になろう