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魔神、過去を振り返る 作者:フィロト・シプレ

伝説魔王ルシファー

一人の私がシルフィーアと戦っている頃、ジオディアでは政治的な動きが活発化していた。まず、最強の淫魔であるソートレイナが超魔王と呼ばれる最高ランクの魔王たちを誘惑していく。しかも全年齢対象で済むようなコミュニケーション方法だけで支持を取り付けていった。全年齢対象の時点で淫魔じゃないという突っ込みはおいといて、まず超魔王たちを味方に、凄い手腕だ。ソートレイナ曰く「ジオメデスへの友情だけで協力してくれる奴がほとんどだった」とのこと。友情だけで国を動かすことはないだろうが、父は魔王たちに凄く信頼されているようだ。自らの魔界だけでなく全ての魔界が豊かで暮らしやすくなるよう努力し続けた父を魔王たちは慕っている。借金大国だった魔界にビジネスを持って行き改善させた、暴君魔王の悩みを解決して名君に変えた、能力のない魔王を育てて優秀な魔王へ、こんな事を続けていったため居なくなった後も凄い人望だ。娘の私も誇らしい。
 そして、私が同盟国を集めていると知り、父の親友である伝説魔王ルシファーがジオディアに来た。うちとは家族ぐるみの付き合いなので私もよく知っている。父上も年上なのに”ルシファーおじさん”と言うと怒り出す”お兄さん”だ。魔神になる前の父は戦争で勝てない相手が多々存在していたため、味方を増やして外交的に従わせる。それでも駄目な場合はルシファーに頼み込んでいた。そんな強力な魔王であるが、呼び捨てじゃないといやがる親しみやすい悪魔だ。ただシェルと喧嘩したがため魔神にならなかった伝説魔王である。そんなルシファーは無駄に装飾された宇宙船でジオディアに到着。この日のために大理石と花とカーテンで飾った客間を用意。主要メンバーが迎える中、ルシファーは白いタキシードにバラを咥え、金ぴかの衣装で着飾ったダークエルフの美女三〇人ぐらい従えてきた。私の前に来ると恭しくお辞儀する、相変わらずなようだ。
「久しぶりだね、アリス。きれいになったじゃないか、結婚しないかい?」
「お久しぶりです。本題に入りましょうか」
 華麗に無視しようとしたが、アゴを持ち上げられて目を合わせてしまった。気取った顔ではあるが、きれいな碧眼に整った顔はかなりの美顔だ。いかん、ドキドキしてしまった。ルシファーは魔性の悪魔なのだ。しかしこの魔王にとってこれは挨拶である。
「アリス、少しは色気を磨いた方が良い。そうすれば僕ですら逆らえなくなる」
「なかなか魅力的な提案ですね。両親を助け出したら考えることとします」
 早く終わらせたいので適当にあしらってる感を出していると、後ろからセラリスの視線が私を刺している。ヤキモチ焼くなら変わってくれ、近所のおじさんに口説かれている気分なんだ。とも思っているが、ちょっともったいない気持ちもある。ルシファーと婚約すれば両親を助け出せるだろう、おそらく両親の目があれば変なこともしないはずだ。あとでセラリスが愚痴っていたが、セラリスがいやがっていたのはルシファーだった。このとき私は誘惑されかけていた。ルシファーはそんな気持ちを察してきたのか頬に手を置かれた、まずい! このままでは! そんなとき汚い音が聞こえ、周囲が黄色く染まったかのようににおった。
「わるい、我慢できなかった」
 犯人は笑顔の洋水だ、私を含む同じ部屋にいたものは例外なくむせた。何を食べればこんなにくさいんだ、しかし助かったという思いもあり思ったほど怒りがわかなかった。飾っておいた花は換気機能を持ち、すぐに消臭完了。ここまで強力なムード破壊はないだろう、ルシファーもテンションダウンして口説くのをやめた。そして洋水のところに向かっていき、凄い目をして胸ぐらをつかむ! これはまずいのではないか? ルシファーの魔力は洋水より上のはずだ! そこらの魔王が吹き飛ばされそうな怒気だが、洋水の表情は涼しい、図太い奴だ。
「君! なんてもったいない事するんだ! せっかく可愛い顔してるのに人前でガス出しちゃダメでしょ!」
「あ、ごめんなさい。つい」
 む? 洋水の顔を評価している? 髪を散らしているからかろうじて男子に見えるが、元は美少女顔だ。そんな洋水相手にルシファーは泣きながら説教、とことん美についてうるさい男である。なんせルシファーは大昔、美的感覚の違いでシェルに喧嘩を売るほどうるさいのだ。そんな中洋水はルシファーをおちょくって遊んでいる、まるで超合金の心臓を持っているようだ。無冠の帝王は人間のおもちゃとなっていた。この人間は遊んで良いときといけない時を心得ているらしく、最後に「あんまりルシファーがイケメンなんで嫉妬してしまった」とフォローして終了。ルシファーはけっこう単純なのですぐに回復、ソートレイナ、セラリス、麗子の順に口説いていった。そして遊ばれていた。こんな性格だから気取り屋なのに男女関係なく好かれている。散々遊ばれてテンションが少し落ちたようだ、と言っても標準レベルになっただけ。本題の外交へと話が移っていった。
「僕がアリスに従うのはこの戦いが終わった後からにするよ。今できることは貿易ぐらいだね」
「残念です、ルシファーが協力してくれればすぐに終わったのに」
 再びルシファーは私のアゴを持ち上げ、軽く誘惑モードに。私は百合じゃなかったと思いながらどきどきする。何でいちいち誘惑モードになるのだろうか? 聞いたら面倒ごとが起こりそうな気がする。
「僕の妻になってくれれば今でも従うよ。いや、この話は今度にしよう」
 ルシファーは何かにおびえたらしく私との距離を開けた。どうやら洋水がおなかをさすり「もう一回出すぞ」と脅しのサインをしている。なんだかなぁ。よほど強力だったらしくルシファーはまじめになった。
「挨拶はともかく、アリスがどれぐらい強くなったか見たいんだ。アリスがシルフィーアに勝てればジオメデスに『僕の育てたアリスが立派になったよ』と言い張れる」
「若干違和感がありますが、お気持ちは理解しました」
 どうやら子供扱いされているようだ。貿易の具体案になるとますます子供扱いされるが、洋水と麗子の連携でルシファーは押せない。外交の時は麗子がメインで行う、私じゃルシファーの相手は無理だ。ついさっきも惚れそうになってしまったからな。麗子は誘惑されてもいじるだけで効いてない。
「この魔界の生産力はどれぐらいだい? ヘルーザ一億機買いたいんだけど、一日過ぎるごとに買いたたかせてもらうよ」
 一日で一億機とはずいぶん無理のある数だな。一週間はかかると思うが。当然ルシファーは足下を見ているはずだ。無人機にしようと思ったがルシファーの要望により有人機へ、普通の悪魔でも扱えるように改造し、ジオディア軍のものより性能は落ちる。それでも一億機あれば魔宇宙最強の軍になるだろう。ジオディアでも維持できるなら配備したい! と私は考えるが、麗子にとっては願ってもないチャンスだったようだ。
「うん、一時間で作るから言い値の前払いでお願い!」
「麗子君、本当に出来るのかい? 違約金は高いよ?」
 高いのは困る。違約金として麗子が欲しいなんて言われたら洋水と喧嘩になるぞ。ルシファーなら言いかねない、本気じゃないかもしれないが言うだろう。しかし麗子はその上を行く。なぜか逃げようとした洋水は縄で縛られている。
「うーん、完了するまで洋水が接客するよ」
「えぇ!? やらなきゃダメ?」
 なんと洋水に飛び火した。若干震えてる、超合金の心臓でも防ぎきれないようだ。ルシファーの目が星に変化し、一回転して親指を立てた! 洋水を奪われたも困るのだが、ルシファーはヘルーザ一億機分のお金をを洋水の接客だけで良いんだろうか?
「OK! 完成させなくても良いからね!」
「おいおい、そんな趣味無いんだけど…… 年齢制限付きだったら逃げるぞ」
「ふっふっふ、そんな下品なことはしないさ」
 思いっきりため息をついた洋水、ルシファーにセクハラされながら私の心に直接データを送ってきた。初めからヘルーザを求めていると想像ついていたらしく、勝手にフリエライザー以外にも対応するタイプの開発+生産開始していた。交渉決裂したらソートレイナと洋水と麗子が全て買い取るつもりだったらしい。そんな状態で二〇〇万機が作ってあり、ルシファーからぼったくった資源でジオディアは直径六〇キロの要塞へ姿を変えた。セラリスが設計図を用意していたので一瞬で完成したのだ。生産能力は施設を増やしたことにより二〇〇倍に! 作っている間洋水は洋水を着せ替え人形にして遊び、声優以上に声を操れる洋水は萌萌ボイスを強要された。みんな面白がっていろんな服を着せて遊ぶも、年齢制限がかかるとおなかをごろごろ鳴らして牽制。そんな楽しいやりとりはルシファーの言葉で止められた。急な変化に戸惑った。
「話は変わるけど、シルフィーアとの戦いは大丈夫かい?」
 シルフィーアと親友と思われるソートレイナが固まるのは解る。洋水と麗子も大きな影響のある相手らしい、笑顔が消えた。セラリスも複雑な顔に。こいつら全員シルフィーアと関わりがあるのか? このとき会話の主導はルシファーだ。
「まずセラリス君、どうだね?」
「正直よく解りません。もやもやしてるけどシルフィーアとの関係は思い出せませんし」
 ん? どういうことだ? そういえばセラリスは一〇〇の魂が合体して、九九の魂の記憶は思い出せないらしいな。つまりその中にシルフィーアに好感を持つ記憶がある。具体的な事はまったく解らないらしい。
 次にルシファーは麗子にも同じ質問をした。麗子はよほど強い関係があるのか、様々な感情を押し殺すように深呼吸をした。二〇回はしただろうか、力強い表情に変わった。
「龍美お姉ちゃんが生まれるためにはシルフィーアお姉ちゃんを倒さないといけないもん。つらいけどがんばるっ」
 もう決意できてるようだ。洋水にも同じ質問をすると「以下同文」と短く帰ってきた。苦しいけど耐えるのが解る動揺具合。笑顔がないだけで怒りの表情をしてるわけではない。
 最後、ソートレイナの番に回る。ソートレイナは不快感を隠さなかった。マントの中では激しく障気が渦巻いているだろう、余裕がないのか表情に美がない。それでも何とか呼吸と整えた。
「シルフィーアと違って生まれ変わりは幸せらしい、偽善だが信じている」
 龍美という女は幸せ、シルフィーアは不幸せ。詳しく知るのはこれを執筆する頃となるが、その部分だけでは正解だ。これより少し前にソートレイナは神様から藤原龍美の話を見せてもらったのだろう。未来の歴史がなければ洋水も麗子も別人になっていたかもしれない。セラリスもどうなってるか解らない。と以前聞いたがいい気はしないな。
 それ以上話し込むことは出来なかった。直径八キロの小惑星がこちらに向かっていると警報がわめいた。洋水が慌てて戦おうとするも、ルシファーに制止された。そのかわりルシファー魔界から全長三キロ位のの大砲が向かって来た! 何でそんなに大きいのか気になるが、方針の部分がムカデの足みたいに突起物がついているのも気になる。発射された弾を突起物から出るエネルギーで強化し、凄い威力をぶつける兵器らしい。形状からムカデ砲と呼ばれている。ムカデ砲について散々説明したルシファーは洋水の両肩をつかんだ!
「洋水。さあ、トリガーを押したまえ」
 と唇を差し出したルシファー。肩を押さえられている洋水、なんだかどきどきする。どうしたというのだ、私は! しかし麗子とセラリスは肩を寄せ合いながら震えている。洋水は少女のような顔だが男にセクハラされると寒気がするらしい。洋水から出る障気は悪魔である私も怖い。でもルシファーを殴ったりはしない。
「ルシファー、目をつぶってくれ。恥ずかしい」
 目をつぶったルシファー、洋水は消えた。目を開けて驚いたルシファー、辺りを見回すと麗子が魔法のモニタを作り出し、洋水の映像を出す。どちらもフリエライザーなら誰でも出来る魔法だ。洋水は小惑星から少し離れた位置に行き、全長五メートルぐらいの大砲を出す。背中には機械の羽が取り付けられている、いつ付けたんだ? 身長の三倍以上の大砲はアンバランスさを感じさせるが、あんなもので小惑星を破壊する気か? 小惑星は魔法で保護されているので並大抵の兵器では破壊できないはずだ。と言うのは気のせいらしい。目を赤く光らせてから青いビームを発射! 羽からは大量の噴射剤により光の羽が生えている! ビームは、だんだん広がっていき小惑星を押し飛ばした! 溶かすのでも消すのでもなく押し飛ばした! 衝撃の魔法元素をビームにしたらしい。しかも普通なら何もないところに飛ばすだけだろう、洋水は巧みにビームをコントロールしてシルフィーア魔界主星に飛ばした! 命中する前に破壊されるだろうがとんでもない器用さだ。麗子は満足げに見ているが、ジオディア魔宇宙組はあっけにとられた。洋水が帰ってきて、
「男とキスしなくてもこれぐらいのことは出来る」
 と正直にルシファーへ不快感を示した。自力で解決できるならキスする必要ないな。BLシーンに毒されず済んだようだ。肝心のルシファーは歓声を上げながら洋水の両手をつかんだ!
「凄い! ブラボー! 人間の中に君のような猛者が居るとは! 凄すぎるよ!」
 なんと、ルシファーは洋水に惚れてしまったらしい。しかも私以外の女たちは面白がって煽る。洋水がかわしている間にヘルーザ一億機が完成。しかしそんなことで懲りるルシファーではない。
「頼む! 百倍! いや、一万倍払う! 洋水も売ってくれ!」
 こうしてルシファーはつまみ出され、今後洋水への猛アタックが始まることとなる。昔から変な悪魔だと思っていたが、男に猛アタックするとは。笑い終えたソートレイナはルシファーの気持ちをこう語った。
「普通の快楽に飽きてしまうとタブーに手を出したくなるのさ」
 思わずソートレイナ、セラリス、麗子を順番に見てしまった。三人はお互い見た後、にたにたと笑い始める。三人とも私を遊び道具と考えてるときがある、女にセクハラするのだからと思って後ずさりを始めるが、救世主がいた。救世主がごろごろと音を出して三人はひるんだ。その隙に私の手を取って公園へ空間跳躍!
「お互い同姓に狙われて大変だな」
「ああ、まったくだ」
 それにしても私はルシファーの挨拶を受けてから変になっていた。どきどきして洋水を見れなかったのだ。しばらく時間がたつといつも通りの感情に戻り、今まで通り保護者を見る感じで見れるようになった。私の保護者はいつのまにかソートレイナから洋水に変わっている。
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