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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

弓の剣士。

作者: 和水 璃雨


もし既存のネタでしたらすみません…。




「誰もが匙を投げた」、「見た目綺麗なだけの単なるガラクタ」、…そんな言葉を散々言われた一つの武器と、少しばかり風変わりな考えを持った少女が出会ったのは、彼女がまだ年端もいかない子供の頃だった。



「おかあさん、あれ、スッゴくキレイだね!!まっしろだよ!!」


「そうね…貴女の髪みたいな、キレイな白銀ね…アレはね、弓って言うのよ。矢を射る為の道具なんだけど…あれは使えないモノなの。」


「ゆみ?や?…よくわかんないけど、なんでつかえないの?あんなにキレイなのにもったいないよ?」


「まぁ…それは貴女が大人になれば分かるわ。さ、行きましょう。」



アレを初めて武器屋のショーウインドウ越しに見た当時は、このキラキラと白銀に輝く弓が…まるで天使の片翼かと思った程綺麗で、それから片時も忘れることはなかった。


あの弓は…作った人出すら「適当に考えなしに作ったから、何をどうしたらこうなったのかサッパリ…。」と言うほど頑丈に作られていたのだ。人力では勿論、馬力や、私では仕組みを聞くだけで頭がこんがらがるような機械の力を借りても、弓を射ることは…いや、弓の本体はおろか弦もしならない程に。(寧ろ機械や矢の方が壊れたと聞く…どんだけ丈夫なんだよ…。)


しかも、ピーンと張ってある弓の弦が異様に鋭いのである…野菜のキュウリとかを弦に向かって垂直に振り落としたら、小気味良いぐらいにスパンと切れる…全く、何の意味を持って作者はこの弓を作ったのだろうか…甚だ疑問である。


まぁ、作者ですら分からないのだから、私が思い悩んだ所で詳細が分かる筈もない…だが、私には一つ考えがあった。多分、誰もが考え付かず、確実に皆が度肝を抜かすほどの名案が、今の私には(ひらめ)いていたのだ。


「おっちゃん、まだあの弓あるか?」


「おお、ガルデニーア。確認するまでもねぇだろ…ショーウインドウに飾ってあるんだから。」


武器屋のおっちゃん(その弓を作った人のお兄さんに当たる人)に呆れたように返されて、少し苦笑いをしてしまった。余りにも頑丈故に、武器よりは『客寄せ用の綺麗な置物』としての立ち位置に当たるので、正直おっちゃんに弓の有無を確認取らなくても分かる事なのだ。


「だって、盗難防止用の偽物(イミッテーション)かもしれないじゃない。実際、何回か盗まれてるんでしょ?」


まぁ、この美しく滑らかな曲線を描く白銀の弓を盗みたくなる気持ちは分かる。実際私も盗みたいぐらいだ。


「あー、大丈夫大丈夫。一応鎖で繋いでるし…それに、俺は兎も角弟が…な。」


「ああ、何か分かった。『武器として』じゃなくて『芸術品』として盗みにかかったからキレたんだね?」


「ったくよぉ…キレるポイントがイマイチ分からねぇ弟だよ全く。」


ふぅんと言いながら、ふらりと弓に近づく。大きさは私の背丈以上あり、少し見上げる形になる。


「…ねぇ、おっちゃん。」


「急に改まって…なんだ?」


「私、武器としてこの弓が欲しい。」


「……はぁぁぁあ!?」




あれから幾らか年が経ち、私も17歳――成人してから二年目を向かえた。


「ふふふ。」


あの時のおっちゃんの絶叫は、中々面白かった。目をカッと見開いて、口をポカンと開けて…思い出しただけで笑えてくる。まぁ、どうにか弓を手に入れられたのが良かった所だ。


今の私は、一応世界を見て回る旅人をしている。“一応”と言うのは、何か…路銀を稼ぐために立ち寄った町村を起点として、何か変な噂を語れているようなのだ。全くもって謎である。…因みに、旅に出るって両親に言ったらメチャメチャ心配されたので、旅に出ると言った次の日の早朝に、弓が入った武器屋のおっちゃん特製のケースと、必要な物を積めたリュックを背負って、こっそりと抜け出したので、金ないは、仕送りとか全く宛にならないはで…ちょっと四苦八苦してたりする。


「っと、危なっ。」


気を抜いていたら、目の前に巨大な熊が現れていた。…うわぁ、思いっきり目が合っちゃった…しかも、さっきうっかり蹴りあげた石が何か熊に命中したっぽいし…ああ、もうっ。


「ガルルルッ…グアァ!!」


私は体勢を低くして、ケースに入れて肩に担いでいた例の弓をケースから取り出して弓の金属で出来た部分を掴んだた上で、目の前の熊の首を――。


「っ~…せいっ!!」


弓の(・・・)で切った(・・・)のだ。


頭部を失った熊は、暫くのた打ち回ったと思ったら…力を失ったように倒れた。


「ふぅ…これだから変な噂が立つのかしら。『弓の(・・)剣士』とか…まぁ、別に気にしないけどねぇ。」


特に気にした風もなく(て言うか気にしたらやってられない)、テキパキと血抜きをしてから別に持っていたナイフで皮を剥いで肉と骨を切り分けていく…っと、肉の間から親指の爪ぐらいの大きさの赤黒く濁ったガラスみたいなのが――魔力石が出てきた。魔力石が出てきたって事は、この熊って魔獣だったのか…何か、魔獣にしてはやけにあっけなかったなぁ…。


因みに魔力石とは、自然界に溢れる魔力が込められた石や魔獣とかが体内に持っている石の事である。ぶっちゃけよく知らんけど、生きてく上ではあんまり意味ないから問題ない…と、勝手に思っている。


「魔力石は良い値になるからなぁ…よし、後はこれを買い取ってくれる店探しだな。」


後に彼女は、旅先で偶然出会った魔王討伐隊、俗に言う勇者パーティーとやらに話を聞き、ふらりと興味本意で訪れた魔王城にて、性根の腐った魔王の脳天にその弓の部分で一撃かました(要するに鈍器でぶん殴った。弦にしなかったのはせめてもの優しさ)事で『白銀弓の女勇者』と呼ばれる存在になるのだが、この時はまだ知らない事である。



…余談だが、脳天ぶん殴られた魔王は、王位を退いた元魔王(かなり頭の切れる良い王だが、やや脳筋寄りと重臣の談)にしごかれ、真面目な魔王になったとかならなかったとか、改心した魔王と魔王討伐隊のリーダーである剣士――つまりは本来の勇者が、『白銀弓の女勇者』ことガルデニーアに淡い恋心抱いたとか何とかは、魔王を含めた魔族が鬱蒼と広がる森と険しい山々がある地域に引っ込んだ為と、魔王討伐隊が国の重役に着いた為、言い伝えられてはいるが詳細は今のところ不明である。




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― 新着の感想 ―
[一言] うん、巨大ピーラーですな。 今日のメニューは、クマステーキっと(じゃない? ないよね)
[良い点] 物語がテンポよく進み、先はどうなるんだろうと楽しみながら読ませていただきました。 弓の特性が面白いです。 [一言] 鈍器として殴られた魔王。 弓と言う形から、どうしても弦で斬られたほうが軽…
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