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後編

千冬は、昼まで大学に予定があるらしく夕方に訪れた。


予定の5時を過ぎてる待っていると、常連の3人組と1人新顔の女の子が先に来た。


「今日のクロワッサン、当たりだな。すごいうまい。」


「昨日、来ないでよかったわね!!」


「いや、そういう意味じゃねぇよ」


「明日から私と来ましょうね。」


「行かないわよ!!」


「英一郎の敗北を知りたい、敗北って何だ?」


それもパクリ。毎度毎度、楽しそうな奴らたちだ。俺・・・僕も、こんな楽しい高校生に見えていたのかなぁ・・・。いや・・・。


と、考えてると千冬が入ってくる。


「ごめん、遅れた。」


「いいよー、お疲れー。」


何時ものカウンター席で、千冬を迎える。このパン屋は僕と、マスターしかいない。


挙句にマスターは、ほとんどなにしてるか良く分からない外出なので、実質どころか9割以上、僕が運営してる。カウンター席に勝手に千冬専用の場所を作ったりもしてる。


「今日のクロワッサンは、美味く出来たんだろうな?」


「ごめんねー、さっき完売しちゃった。」


「あぁ゛!?」


あ、千冬、少し落ち込んだ。


「代わりと言ってはなんですがー、このパンをー」


当店新メニュー(予定)であるパンを、カウンターの裏から出す。


それは、雪の形を象ったパンである。


「?こんなパン見たことねぇよ?」


「今度メニューに出す予定のパンなんだけどねー、試食してほしいなって」


「ほう・・・雪の形してるのか。なんか白い粉付いてるし」


千冬は口いっぱいに頬張る。口の端から生クリームが出てくる。


「一口じゃ食べきれないなこれ。だけどうまいな。」


「なんかー、クリームを、口から出しながらそのセリフ卑猥だなー。」


「!?そその発想が卑猥な、んだよ!!」


殴られる、痛くないけど。


「ちなみにー、そのパンの名前千冬パンって名づけるかスノーパン~ver.千冬~にしようかと思うんだけどどっちがいいとおもうー?」


「どっちもよくない!!」


また殴られる、ちょっと痛い、けど、嬉しそうなんでよしとする。



次の日、僕はお休みだけど、千冬は大学だと言うので、パンを焼いてお昼に参上することにした。


11時ごろから大学に潜入。時々潜入するけどなんだか、こういう学生じゃないのに学校にいるっていうのがなんともいえない、いけないことをしているみたいな気分になって少し気持ちが高揚する。


1時間ぐらいうろついてたらチャイムが鳴って、生徒たちがわらわらと出てくる。


その中で千冬を探すのは、割と困難。正直、カラコンしてまで黒にしないで青目でいてほしいと思う。


第一、元々金髪なのになんで、黒髪にしてしまうのか。


とか、考えてると千冬を発見する、が、隣に男がいる。何やら話しているが、千冬が嫌がってる素振りをみせる。


それでも男は何か言ってるので、これは良くないと思い、間に入って、男の腕をにぎにぎする。


「お前、俺の女になにしてんだよ?」


ちょっと力が入りすぎて、ミシッて音がした。


「あ、いや。なんでもないっす・・・。」


男は、腕を放してやると、すごすごと帰る。


「何か、あったのー?」


「なんでもねぇよ」


周りに人が居ることなんかお構いなしに、抱き締めて囁く。


「俺は、大丈夫なのかって、聞いてんだよ?」


「・・・。別に、ナンパ断っただけだよ。」


「そっか、でも何かあったらすぐ言うんだよ?」


「分かってるよ・・・。分かったら、離してくれ。恥ずかしい。」


「んふふー、可愛いからやだ。」


「っ!!離せ!!」


乱暴に離される。


「行くぞ!!」


今度は乱暴に手を握って僕を、連れて行く。


これもまた恥ずかしいって、思わないのかなぁ。


「後さ、なんか人の目が想像以上に集まってるのはなんでだろ?」


「金髪碧眼がそれだけ目立つって事だよ!!」


「あーなるほど。」



僕のことですか。




私は、小さいときに転校を、繰り返していた。


私は、いわゆるハーフだけど、英語なんか喋れない。


周りは好奇の眼に満ちていて、金髪碧眼を一つのブランドみたいに、皆から妬まれたり、蔑まれて生きているうちに、私はすっかり自分の髪を黒髪にして、黒のコンタクトレンズを入れて攻撃的な言葉を言うようになった。


誰も私に関わらないでいてほしかったし、私もまた誰とも関わりたくなかった。


だけど、一二三だけは違った。


高校で、ただ2年間一緒だっただけなのに、別にろくも話してもないのに、少しだけ金髪が生えてきた時に、一二三は言った。


「なんで、金髪染めてんの?」


「誰もいないからだよ。」


「目も青い人がいないからなの?」


「そうだよ。文句あんの?」


「そっか。周りが黒だから黒にするの?」


「そうだよ!!」


何が言いたいのか分からず、なんだか無性にいらついたのは覚えてる。


次の日、一二三は金髪に青いカラコンをして、先生に止められながら走って私のところに来た。


「どう?少なくとも一人は金髪がいる訳だけど戻さないの?」


不覚にも、久しぶりに人の前で、笑ってしまった。


何故かその後、私も一緒に先生に怒られたのは納得できなかったけど、一二三は結局、登校2時間で黒髪に戻されて私に謝って来たが、


「別に私、頼んでないだろ」


で、終わった。まぁ、私たちの付き合いはそのすぐに始まるんだけどね。


一二三は、そのままバイトしてたパン屋に働いた。


金髪にして青いコンタクトにまたしてた。


私は止めたけど、聞かなかった。少し嬉しかったのは、隠し切れなかったけどね。


口調も、どんどん優しくなっていった。どうやら、私の口の悪さを直そうとしてるらしい。


正直、私のためにそこまでしてくれる一二三が心配になるけど、やっぱり嬉しかった。


照れるから口調は、中々綺麗にならないけど、今度の休みにでも金髪に戻して、驚かせようかと思っていたりする。




今日は一二三のクロワッサンを食べられて、気分がいいから少し、サービスしてあげる。


「ねぇ、一二三」


「うんー?」


違うところを見ていた一二三を、振り向かせる。


「だーいすきっ!」


それを聞いた一二三は、にやーって笑って、


「しってんよ」


ちょっと調子に乗りすぎたから殴る、痛くない程度に。




そのまま私もにやーって笑って、唇を重ねる。

どうも、わんだーふぉれすとです。

これで3部も終わりとなりますです。

話の途中の高校生が誰かは、1部を見ていただければ分かると思います。

次は、また高校生のお話です。ぜひまたお会いしましょう。

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