英雄兄妹(77/84)縦書き表示RDF


オカ魔の代わりに兄妹達を偵察した悪魔の名前は『ガロ』。『暁の拷問吏』からの特別出演です^^(悪魔繋がりということで)
残酷小説からコメディー小説への異動に、彼も戸惑っていることでしょう(まあ、過激さでは暁の方が上ですけど…^^;)


そういえば悪魔って、一匹、二匹って数えるらしいですね(人間と近い存在である天使は、一人、二人だそうです)。知りませんでした;


「じゃあ、リリムさんも一匹って数えればいいんだね」

リリム
「このガキ……」

英雄兄妹
作:HEERO



第77話 レグロス現る


 オカ魔は怒られていた。
 「一体何を考えているんですか? 君の任務は偵察だったはず」
 薄暗い場所のため、オカ魔と向かい合う悪魔の姿は不明瞭。しかしオカ魔より随分小さな体をしているのは確かである。恐らく彼がレグロスだろう。
 「それがろくに獲物の戦力も把握せず、あまつさえ獲物の一人と接触して勝手に捕らえてくるとは…。何より戻ってくるのが早過ぎるんです。いっその事帰ってこなくてもよかったんですよ(あなたみたいな気色の悪い悪魔は)?」
 「そんなぁぁん! ごめんなさぁぁい!」
 辛辣な言葉を受け、オカ魔が悲鳴に近い声をあげる。
 「それです。その喋り方が私の気に入らないのです」
 「すみませ〜ん……」
 「まあ……いいでしょう。一応、『ガロ』があなたの代わりに偵察をしてきてくれましたし。すぐに出ますよ。『キャフ』と『ダンマ』を呼んできてください」
 「獲物を捕えにいくんですねん?」
 「そうです。仲間の一人が消えたとなっては、彼らもじっとはしていないでしょうから」
 「村から逃げだす可能性もありますもんねん」
 (君……それが分かっていながら、何故あんな事を……)


 「う〜〜ん! グゥゥゥゥッド、モォォォォニィィィィィン…………………グ!!」
 兄がうざい目覚め方をした(『グ!!』の時に目を開いた)。
 「敵の手の内かもしれないってのに、思いっ切り寝ちまった。相当疲れてたんだな、俺達」
 おもむろに立ち上がると、兄は畳で寝ている仲間達を見回した。
 「わおっ! 妹がこんな無防備な状態で! しかし事に及ぶには、周りの奴らが邪魔だな……」
 顔をしかめる兄。
 「あれ? リリムは? あいつ昨日一人だけ部屋に戻ってこなかったけど…。まさか外で寝てんのか!? おいおい、あいつ風邪引いてんじゃねえか!?」
 兄は仲間達を跨ぎ(カインは踏まれた)、足早に部屋から出ると、途中で転げそうになりながらも階段を駆け降り、宿の外へと飛び出した。


 「このベンチだっけ…。昨日の夜、カインが言ってたのは。あいつ、ここで寝てるのかと思ったんだけど……ん?」
 兄は足元に目を遣った。すると、乱れに乱れた、乱雑な足跡がそこにはあった。
 「何だこれ? リリムの奴、ここで激しく踊ってたのか?」


 『ダーリン……!』


 「えっ…!?」
 どこからともなく聞こえるリリムの声。
 兄はキョロキョロと辺りを見回す。

 『ダーリン…!!』


 「あ…あっちか!!」
 兄は森へ向かって走りだした。


 「これは…!!」
 それを見た兄は、目を丸くし、力無く膝をついた。
 無惨にも本体から切り離された、黒く細いリリムの尻尾。
 「嘘だろ…? 何で……」
 兄はたどたどしく、尻尾を両手で抱え上げた。
 『ダーリン!? ダーリンなのね!?』
 「ぬおぉぉ!!!」
 突然、尻尾が声を発した。それもリリムの声で。
 「尻尾がぁぁ!! 尻尾がぁぁ!! この世の終わりだぁぁ!!」
 『あたし! あたしよ! 落ち着いてダーリン!』
 「馴れ馴れしいんじゃ尻尾のくせに!!」
 兄は尻尾を地べたにたたき付けた。
 『ちょっ、酷いわダーリン! 今たたき付けたでしょ!?』
 「わ、悪い……って、お前リリムか!?」
 『え〜! 今気付いたの!? ショック〜!』
 どうやら兄をここへ読んだのは、この『尻尾リリム』のようだ。
 「お前……それ今どういった状態なわけ? 体が尻尾になっちまったのか…?」
 『違うのよ〜。その尻尾はただの尻尾。あたしは今、レグロスの塔で監禁されてるの』
 「はぁ!?」
 『昨日の夜、あたし、レグロスの刺客に拉致られちゃったのよ。その時契られちゃったのがその尻尾なわけ』
 「大丈夫なのか!? お前、体は!? 怪我してないか!?」
 『きゃっ! そんなに心配してくれるなんてリリム感激! 大丈夫、たいした怪我はしてないわ。取れた尻尾もすぐ生えると思うし、むしろこうして『通信機』として使えるから好都合だわ』
 もはや何でもありである。
 「お、お前の尻尾すげえな…。あっ、そうだ。また生えるんならさ、あと五回契って、他の奴らにも携帯させてやろうぜ。意外と便利かもしれん」
 『えっ!? な、何言ってんの!?』
 「何が? あ、そうか、この尻尾で話せる相手はお前だけだもんな。あんまり役に立たないか…」
 『いや……そういう事じゃなくて………』
 血も涙もない兄。
 「あらん? 尻尾と何のお話してるのん?」
 不意に、背筋の凍り付くような気色の悪いオカマ声が、兄の背後から発せられた。
 「誰だ!?」
 兄は声のした方を振り返りつつ、後へ飛びのいた。
 「なっ!?」
 声をあげる兄。
 「えっ!?」
 声をあげるオカ魔。
 (何だこいつ……変態じゃねえか!! 俺も随分変態と言われてきたが……こいつは次元が違う!!)
 (そんなに見つめないで……そりゃ私は魅力的かもしれないけど、私達は敵同士なのよん!!)
 (どうする!? どうすりゃいい!!? 逃げる!? いや、背中を向けた瞬間、間違いなくやられる!!!)
 (この子……意外とかわいい顔してるわねん………ああん、駄目駄目!! 私の馬鹿ん! またレグロス様に叱られたいのん!!?)
 硬直する二人。
 『ダーリン逃げて!! そいつよ!! あたしをさらったのは!!!』
 尻尾リリムの叫び声。一瞬間を置き、兄は力強く身構えた。
 『逃げてダーリン!!』
 「いや、こいつはここで倒す!」
 構える兄の姿を笑顔で見遣り、オカ魔はパンツの中から鞭を取り出した。
 「今度の獲物は活きが良くて結構ですね!」
 どこからともなく聞こえてくる、新たな声。
 「何だ!? まだいるのか!?」
 兄の顔に動揺の色が浮かぶ。
 「レグロス様よん!」
 「レグロス!?」
 オカ魔と向き合う兄の、左右、背後に、新たな悪魔三人がその姿を現した。つまり、今兄は四人の悪魔に囲まれた状態にあるのだ。
 「やべえ……死んだ……」
 兄、危うし!


カラオケ兄妹
第2話 予選

 オンツィーの歌唱大会に出場する事になった兄妹。しかし大会には予選があり、それを制さねば本選に出場する事は出来ないのだ。
 待合室はピリピリしたムードに包まれていた。
 「何だか、凄い雰囲気だね…」
 緊張した面持ちで妹が兄に身を寄せる。
 「でもこれ、ただの歌唱大会だろ? 奇跡的な確率で全員便秘気味なんじゃないか?」
 それは無い。
 「『レイ』さん。予選会場へお越しください」
 「お、ついに俺の番か!」
 兄はレイという名前で登録していた。彼の好きなロックバンドのヴォーカルから取ったのだろう。
 「頑張ってね! お兄ちゃん!」
 「おう! (むしろお前が頑張れよ…)」


 予選会場は待合室と廊下続きで、屋内にあった。
 「わお! ついに君の出番だね!」
 大会の主催者であり、この町の領主ピエールが、兄に馴れ馴れしく近寄ってきた。
 「おう、ピエールか。俺、頑張っちまうぜ! あ、ところでさ、待合室の雰囲気がやけに張り詰めてたんだが、なんかあるのか? この大会…」
 「優勝すると高級お菓子が貰えます」
 「菓子ぃぃ?」
 「ただのお菓子じゃありませんよ? 庶民の年収に相当するくらい高価なものなんですからね」
 「おお! そりゃなんか凄そうだな! (それを甘党の妹にプレゼントすれば……ウヒョヒョ!)」
 兄の心に邪念が芽生える。
 「あの、相手の方はもう歌い終わったので、そろそろ……」
 審査員の眼鏡男が情けない顔で兄に訴えた。
 「あ、はい」
 軽く足を開き、体の力を抜く兄。
 (あれ…? でもよく考えたらこの世界の人間にロックなんて通用するのか!? やばいな……すこぶる緊張してきた……。予選落ちは格好悪過ぎるし、とりあえず無難なポップスでいくか……)



作詞 REI 作曲 三郎太

【ツナマヨご飯】

醤油に染まるシーチキン
マヨに絡まるシーチキン
俺のハートを熱くするぜ

程よく混ぜたらご飯にダイブ
簡単 完成 最短 一分
お手軽最強究極料理

ああ ツナマヨご飯 あなたの姿に(I love you)
ああツナマヨご飯 私の心は虜(I want you)
君を離しはしない 永遠に、、、



 「はい、ツナマヨご飯でした。この歌はですね、REIが初めて作詞をした歌でして、デビュー曲『ネクロフィリア』のカップリングなんですよ…。このカップリングがなければ、売り上げは倍増したのでは、といういわくつきの曲だったりするんですけど俺は大好きで……」
 「素晴らしい! こんな歌初めてだよ! 君の国の歌かい?」
 「え、は、はい、そうです…」
 審査員が異常なまでに食いついてきた。ちょっと頭がおかしいのではなかろうか?
 「いや〜、いいものを聴かせてもらったよ! 他国の歌なんてそうそう聴けるものじゃないからね」
 兄とREIのせいで日本という国が酷く勘違いされてしまったようだ。


つづく!



REI
「俺は悪くねえだろ!?」











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