第7話 生ゴミ兄妹
「持ってきましたよ〜!」
オッサン妖精達が、集落から戻ってきた。彼らは大きなゴミ袋を持っている。
「お兄ちゃん……本当に被るの……?」
妹は顔を引き攣らせた。
「そ、そんな顔するなよ! 俺だって超嫌なんだ。でもさあ、考えようによっちゃ、生ゴミ被るだけで、この世界の平和に貢献できるんだぜ? 安いもんだろ?」
兄は変にポジティブだ。
「そうだよね……。うん、お兄ちゃんの言うとおりかもしれない。私、ちょっと甘えてた。私も被るよ、生ゴミ」
妹は変に真面目だ。
「二人とも……ありがとうございます……。カマドーマのために、そこまでしていただけるなんて……」
カインは目を潤ませた。結構涙脆い性格らしい。
「しかし、問題はフェレスですよ? 奴は厄介な魔術を使います。油断すれば、いかに救世主様といえど、一瞬にして我々のような非力な妖精の姿に変えられてしまうでしょう」
オッサン妖精達は不安げな表情で言った。
「それはまずいな…。何か魔術を防ぐ方法とかないのか?」
「アンチマジックの効果がある装飾品を身につければ防ぐことができるかもしれません。しかしそういう類のアイテムは、大きな街へ行かないと、なかなか手に入らないんですよ」
「じゃあ、どうしたらいいんだ?」
「避けて、避けて、避けまくるしかないですね……」
「なんじゃそら!!」
随分無責任な話である。
話し合い(結構適当だったが)を終えた六人は、ついに作戦を開始することにした。
「生ゴミ投下しますよ〜!」
オッサン妖精達が集落から持ってきた生ゴミが、兄妹の全身に降り注がれる。
「これって、とおりすがりの人が見たらイジメにしか見えないよな」
「うん……。なんか、カイン君と出会ってから、汚い目にばかりあうような気がするんだけど……」
兄妹は全身生ゴミまみれとなった。『生ゴミ兄妹』である。
「臭!! 俺達、臭!! だがこれで完璧だ!! いくぞみんな!! 作戦開始!!!」
グールと兄妹では、見た目の違いが判然としている。しかし、グール達は僅かな違和感を抱きつつも、生ゴミの臭いを漂わせている兄妹を仲間として認識したようだった。
「上手くいったね、お兄ちゃん」
「そうだな。このままフェレスの所へ乗り込むぞ」
兄を先頭に、兄妹はグールの間を抜け、長老の屋敷へと向かった。
兄妹があまりにも見事にグールの群をくぐり抜けていくので、カインもオッサン妖精達も何もすることがなかった。
「ハッハッハッ! 暇ですね! しりとりでもしますか?」
残された者達はしりとりを始めた。
グールの群を突破した兄妹は、ついに長老の屋敷の門の前にたどり着いた。
「真正面から入るのは危ないんじゃない?」
「そうだな。でも相手は魔術を使うような奴だ。俺達が村に侵入していることは、もうばれていると考えた方がいい」
真面目な意見を述べつつ、兄は妹の尻を掴んだ。
「さりげなく掴むな!」
妹が兄に殴り掛かる。
「ヒイイ! どうか、どうかお慈悲をぉぉぉ!!!」
騒いでいる兄妹の後方で、観音開きの門が音を立てて開いてゆく。
「お、おい! 見てみろ妹よ! 門が勝手に開いたぞ!」
「本当だ! もしかして私達もう……」
妹の予想を確信に変えたのは、長老の屋敷から現れた悪魔の言葉だった。
「フッフッフッ……ご名答。お前達のことは村に足を踏み入れた瞬間から気付いていたよ」
外見は若い人間の男のようだが、背中からはいかにも悪魔らしい、コウモリのような翼が生えている。
「お前がフェレスか!」
「だったらどうするんだ?」
「決まってるだろ! 我ら生ゴミ兄妹が成敗してくれる!!」
そんな兄妹に成敗されたくない。
「生ゴミ……? なるほど、生ゴミを被ってグール達をやり過ごしたってわけか……。人間も侮れないな」
フェレスの右腕が鈍く光る。
「お兄ちゃん! フェレスが魔術を使うよ!」
「何で分かるんだ?」
「何でって、手が光ってるじゃん!」
「おお! 本当だ!! 何で光ってるんだ!?」
「だから魔術を使うからだよ!」
「あ、そうか……。でも何で魔術使うって分かるんだ?」
「手が光ってるからだってば!」
兄妹のアホなやり取りを無視し、フェレスの手からは容赦なく光弾が放たれた。
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