英雄兄妹(69/84)縦書き表示RDF


素人の小説はやりたい放題できるからいいですよね^^
英雄兄妹
作:HEERO



第69話 二人の大悪魔


 妹に殴られたことにより、兄とカインの頭には、大きなタンコブが一つずつできていた。
 「うう……酷いじゃないか、マイ・サディスティック・シスターよ…。俺達はお前を助けようとしただけなのに……」
  「だからフェレスさんは何も悪くないの! みんなを助けてくれたんだよ!!」
 兄とカインは勘違いでフェレスを半殺しにしてしまったのだ。妹はその事を怒っている。
 「じゃあ何で、下半身丸出しでお前の上に乗ってたんだよ〜」
 「それは事故なんだってば! もうフェレスさんを悪く言うのはやめて!」
 「何だよフェレス、フェレスって…。はっ!! お前……まさかフェレスの事が……!!?」
 「もう、何でそうなるの!? でも…フェレスさんがお兄ちゃんだったらよかったのになぁ、とは思うよ」
 「なっ!?」
 言ってしまった。妹はついにタブーを口にしてしまった。本気でないにしろ、今の言葉で恐らく兄は死ぬ程の精神的ダメージを受けたに違いない。
 「フェレスが兄貴ならよかった…? じゃあ俺は…? お前が言いたいのはつまり……俺が兄貴じゃない方がよかった……という事か? 俺を兄貴とは思いたくないってか…?」
 「あ…そ、そんなつもりじゃ……本気にしないでよ……」
 「ふ〜ん、な〜るほどね〜」
 「えっ…?」
 意外にも、兄はそれほどショックを受けていないようである。それどころか口元には笑みさえ浮かべている。
 「俺だってお前を本気で妹だって思った事は一度もない。どうやら、俺達はお互い同じ気持ちだったようだな。それならこの際、もう兄妹なんてやめちまおうぜ」
 「そ……そんな……」
 兄の辛辣な言葉を聞いて、逆に妹の方が泣き出しそうになってしまった。
 「お、お兄さん! 言い過ぎですよ! 元はと言えば、僕らの勘違いが悪いんですから、妹さんにそこまで言うのは…」
 見るに見かねてカインが割り込んできた。
 「え? 何言ってるんだカイン? 俺は妹に『兄妹』という関係から『夫婦』という関係に格上げしようって事を言いたかっただけだぞ? あれ? 妹よ、何で少し泣いているんだ? あっ、俺と夫婦になれるのが嬉しいんだな?」
 誰かこのアホを止めてくれ。
 (そ、そうですよね…。よく考えたら、お兄さんが妹さんを故意に傷付けたりするはずないじゃないですか…。ああ、はやとちりした自分が恥ずかしい……)
 いや、お前は悪くないぞカイン。


 「ダ〜リ〜〜ン! 大変よ〜!」
 大変と言いながらも、リリムはゆっくりと兄の元へ歩み寄ってきた。彼女は瀕死状態の面白い顔の悪魔から色々な情報を引き出していたのだ。
 「おお、リリム。何が情報は引き出せたか? ていうか、あの面白い顔の悪魔はどうなった?」
 「それが、話の途中で力尽きちゃったのよ。だからそんなに多くの事は聞けなかったわ」
 「そっか……死んじゃったのか……」
 兄は肩を落とした。
 「ダーリン……人間の貴方にとって、『死』が日常から掛け離れたものである事は私にもよく分かるわ…。だけどこの『戦いの旅』で、死は切っても切り離しきれないもの。敵の悪魔に対して非情に徹しきれなくちゃ、この世界の人間はおろか、自分達の命すら守りきれないわよ」
 リリムはいつになく真剣な眼差しで兄を見つめた。
 「わ、分かってるけど……でも、リリム達とはこうやって……」
 「ダーリン、大陸にいる悪魔をなめちゃ駄目よ。ここにいる奴らは、小さな島でセコい事やってたあたし達とは全くの別物なの。さっき、変な顔の悪魔から聞き出したんだけど、どうやらこの大陸には、第四階層でも有名な二体の大悪魔が居座ってるみたいなのよ」
 「大悪魔…? 上級悪魔……ってやつか?」
 「うん。大体、上の中級から、最上級までの悪魔の事を大悪魔って言うの。ちなみにあたしは上の下級だからぎりぎりただの上級悪魔ね」
 「おっ! あとちょっと頑張りゃ、お前も大悪魔リリムってわけか」
 「ん〜、まあそうなんだけど、でも魔界で目立つと色々めんどくさいから、私としては『大』なんてもんは付かない方が助かるのよね〜」
 「そうなのか、悪魔の世界ってのも複雑なんだなぁ。それで、この大陸にいる大悪魔ってのはどんな奴らなんだ? リリムもよく知ってるのか?」
 「うん、知ってるわよ。どっちも冷酷、残忍な性格で、そこらの悪魔とは桁違いの強さを持ってるの…。まず一人目が『ベルゼブブ』。蝿の王よ」
 「ん? その名前……どこかで……」
 兄は目を閉じ、記憶を探り始めた。
 「兄貴、オイラの出したなぞなぞじゃないか?」
 「あっ! そうそう! チョルトの出したなぞなぞに出たんだ、そのベルゼブブって名前(第25話参照)!」
 随分懐かしい話である。
 「そしてもう一人の大悪魔が、『心滅の邪眼・ルナティックアイ』を持つ悪魔、『レグロス』。こいつも厄介ね」
 「ルナティックアイ!!??」
 兄と妹が同時に声をあげた。
 「え? 何? 二人とも知ってんの?」
 リリムが目を丸くする。
 「知ってるも何も、なあ、妹よ!」
 「うん! お兄ちゃんの大好きな『バンド』の名前もルナティックアイっていうの!」
 この兄妹は一体何を言っているのだろうか?
 「バン…ド? 何それ? 美味しいの?」
 バンドなど知るよしもないリリムは首を傾げた。
 兄は「ふっふっふ」と笑いながら、人差し指を立ててバンドについての説明を始めた。
 「バンドっつーのは、簡単に言うと、歌を歌うグループの事だ! んで、ルナティックアイは今俺達の世界で超大人気のロックバンド! もう泣くほどいい曲ばっかでさ、『Hidden Heart』、『WHITE&BLACK』、そしてデビュー曲の『ネクロフィリア』! こいつが最っっっ高にかっこいいんだよ!! 俺、カラオケじゃネクロばっか歌ってんだよなー!」
 「お兄ちゃん本当にその歌しか歌わないよね〜! そうそう、お兄ちゃん、ボーカルのREIに顔がそっくりなんだよね!」
 「そうなんだよ! だからこの前、俺の写真付きのファンレターを送ってみたんだ! REIさん絶対驚いてるぜ!! あとついでに妹の写真も送ったんだよな〜!」
 「え!? そんなの初めて聞いたよ!」
 「あれ? 言ってなかったか〜?」
 「言ってないよ〜!」
 「あはは、ごめんよ〜!」
 「まあいいけどね!」
 仲間達は呆れた様子で興奮する二人を見つめていた。兄妹はハッと我に返り、顔を見合わせ頬を赤らめた。
 「ま、まあ、今度機会があれば一曲みんなに披露するよ…! ほんとカッコイイからさ! あれ? でもどうしてこんな話になったんだっけ?」
 兄は苦笑いをしながらリリムの方へ顔を向けた。リリムは「も〜、ダーリンったら」と笑いながら脱線してしまった大悪魔に関する説明を再開した。
 「えっと、だからね、この大陸には蝿の王ベルゼブブと、心滅の邪眼・ルナティックアイを持つレグロスっていう大悪魔が…」
 「ルナティックアイ!!??」
 兄と妹が同時に声をあげた。
 「え? 何? 二人共知ってんの……って、これじゃループしちゃうでしょ! 大体ダーリンはともかく、何であんたまでボケに参加してるわけ? そんなキャラじゃなかったでしょ?」
 言いながらリリムは妹と顔を突き合わせた。確かに妹が兄と一緒にボケをかますなんて珍しい。
 「ご、ごめんなさいリリムさん…。『プリン買ってやるから一緒にボケてくれ』って、お兄ちゃんが言うからつい……」
 「あんたプリン好きなのね……。って、そんな事どうでもいいわ、話を戻すわよ。この大陸には蝿の王ベルゼブブと、心滅の邪眼・ルナティックアイを持つ…」
 「ルナティックアイ!!??」
 またしても驚きの声をあげる兄妹。
 リリムは妹の頭に「うらっ!」と、チョップをお見舞いした。
 「いった〜〜い!!」
 「何回同じ事繰り返す気よ!!」
 「だって…お兄ちゃんがもう一個プリン買ってくれるっていうから……。でも何で私だけチョップなの…? むしろ主犯はお兄ちゃんなのに…」
 「あたしをからかっていいのはダーリンだけ! あんたは駄目なの! これ常識! いい? 今度あたしの話を邪魔したら、あんたの命は無いと思いなさい」
 もう話を邪魔されたくないリリムは、妹に脅しをかけた。
 「私を殺したらリリムさんお兄ちゃんに嫌われるよ」
 「あっ、そっか…!」
 妹の方が一枚上手のようだ。
 「くっ…! 大悪魔の話をすれば確実に妨害が入る…。かといって妨害させないためにあんた(妹)に手を出せば、ダーリンに嫌われてしまう…。八方塞がりね…」
 リリムはアホだった。
 「リリムさん、その『ルナティックアイ』という言葉を出さなければいいんじゃないですか?」
 カインはリリムに耳打ちをした。
 「あ、そっか! ナイスよカイン! じゃあ、話の続きをするわね! さっき言った二人の大悪魔の内の一人、心滅の邪眼を持つレグロスって奴が、この近辺にいるらしいのよ!」
 「何だって!!?」
 やっと話が進んだ。
 「ど、どうする? 近くにいるなら倒しに行くか? でも強いんだよな……」
 「ダーリン! はっきり言って、第四階層にはレグロスより強い悪魔が存在するわ! 大悪魔ベルゼブブもレグロスより強いらしいわよ! つまりレグロスくらい倒せなきゃ、あたし達はこの先の戦いに勝つ事は出来ないのよ!」
 「そ…そうか……こんなとこで弱気になってちゃ駄目なんだな……。よし、じゃあレグロスって奴をかる〜く捻ってやるか!! 行こうぜみんな!!!」
 「オーーー!!!」
 このボナンザ大陸に存在する二人の大悪魔の内の一人、レグロス。はたして兄妹達は、このかつてない強敵を打ち破る事が出来るのであろうか!?


 「う〜ん、今回はなかなかいい終わり方でしたね」
 最後にお前が出てこなければな、カイン。 


兄がベタ惚れするロックバンド、『Lunatic Eye』とは一体どんなグループなのか?
下記は有名音楽雑誌『ロックンロールオンチッチ』の記事から抜粋したものである。


【Lunatic Eye】
 一年前にメジャーデビューを果たし、今日本で新たなブームを築き上げつつあるゴシック基調のロックバンドグループ。
 『狂おしくも物悲しい』という彼らのスタンスを前面に押し出したデビュー曲、『ネクロフィリア―狂わしき至高の愛―』は、ファンの間で最高の名曲と謳われている。

【メンバー】
 ヴォーカルの『REI』、ギターの『KOU』、キーボードの『SYOU』、そしてドラムの『三郎太さぶろうた』によって構成されている。

【謎のコメント】
 メジャーデビュー直後のインタビューで、ドラムの三郎太が「バンドが結成されて五年が経つが、どうも自分がメンバーの一員であるという実感が沸かない」という意味深なコメントを残している。その真意は未だに不明である。

【裏話】
 半年程前からヴォーカルのREIが自信を喪失しているらしい。
 以前メンバーで某カラオケ店を訪れた際、デビュー曲ネクロフィリアを、自分よりも上手く歌う妹連れの男性を目撃。それ依頼マイクを握る手が震えるようになってしまったそうだ。

【裏話2】
 ヴォーカルのREIがその地位を狙われているらしい。
 事務所に、彼の自信を喪失させたという上記の男性からファンレターが届いた(写真添付)。
 『俺はよく友人からREIさんに顔が似ていると言われます。だから最近調子に乗ってルナティ(Lunatic Eyeの略)の歌をカラオケで練習しちゃったりなんかしてます。ルナティ大好きです。俺もいつかルナティのメンバーに入りたいです』
 このファンレターを読んだREIは、「間違いない、こいつはヴォーカルの座を狙っている」と悲憤したそうである。

【裏話3】
 最近某カラオケ店付近を、帽子とマスクの怪しい男がうろついているらしい。その男はヴォーカルのREIに似ているらしく、「渡さん…絶対に俺のマイクは渡さん……」と常に呟いているそうだ。
 近隣の住民の話によると、ポケットには鋭利な刃物を忍ばせているらしい。警察の早急な対処が望まれる。

【小説化】
 Lunatic Eye。彼らの波瀾に満ちたバンド活動がコメディー小説化。本人達は書籍化の話を全く聞いておらず、そのうえコメディーであることに激怒。訴訟を起こす。


以上がLunatic Eyeの紹介記事である。
機会があれば、出版が中止された彼らの小説を、このサイトで公開したいものである。











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