英雄兄妹(67/86)縦書き表示RDF


ついに、フェレスの隠し持つ小さな武器が登場!
英雄兄妹
作:HEERO



第67話 踊るフェレスの小型拳銃


 動かなくなってしまったリリムを、兄妹達はただ呆然と見下ろしていた。
 「わたすの勝ち。では魂はいただくぞ」
 倒れ伏しているリリムの体から、微妙に汚らしい色の輝きを放つ玉が浮かび上がった。恐らくそれがリリムの魂なのだろう。色が汚いのは、リリムの性格が汚れているからなのだろうか? それともそれが悪魔の持つ魂特有の色なのだろうか? 断定は出来ないが、まあ多分前者だろう。
 「魂の色はな、その持ち主の性格で決まるんだ」
 ほれ前者だった。
 リリムの体から抜けた魂が、面白い顔の悪魔の手の中に収まる。
 「さて、この魂を返すて欲すくば、もう一人わたすと戦え」
 「え!? お、おい!! お前に勝てば、魂返してくれるのか!? リリムは生き返るのか!!?」
 「ああ。わたすに勝つ事ができたら魂は返す。それで女子おなごは生き返る。だけども、負けたらまた魂はいただく」
 「ああ…よかった……リリム生き返るんだな……」
 兄の瞳には、安堵からか涙が浮かんでいた。
 「みんな、次は俺がやる…!! 俺がリリムの魂を取り返してやる!!」
 「お兄ちゃん……」
 妹が兄の腕を強く掴む。
 「大丈夫、俺に任せろ。救世主はこんな所で負けたりしない。そうだろ?」
 兄は優しく微笑むと、妹の頭にぽんと手を置いた。
 「さて、いっちょやりますか!!」
 決然と立ち上がる兄。
 「次の相手は、あんたか。魂、いただくぞ」
 「へっ! やれるもんならやってみやがれ!!!」


 「さて、ここに二つの魂がある。わたすににらめっこで勝つ事が出来たら、両方返すてやる。ただす、負けたらまた魂は貰うぞ」
 面白い顔の悪魔の両手に一個ずつ魂が浮かんでいる。
 「くっ……救世主様までもがやられてしまうなんて……」
 地べたにはリリムと兄の亡きがらが転がっていた。あれだけ意気込んでいたのに、兄は即行で負けてしまったのだ。相当格好悪い。
 妹は生命活動の停止してしまった二人を目の前にし、涙を浮かべて戦いていた。
 「妹さん、大丈夫です次は僕がいきます」
 「カイン君…!?」
 「僕が本気を出せば、顔だけで熊を笑い殺す事も可能です!」
 それは凄過ぎるぞ、カイン。
 「妹様、ここはカイン君を信じましょう」
 「鼻血男さん……」
 「そんな顔しないでください。カイン君に万が一の事があったとしても、まだ私がおります」
 鼻血男は自分の胸を拳で叩いてみせた。実に心強い……叩いた後で噎せたりしなければ。
 「そしてもし鼻血男がやられちゃっても、まだオイラがいるから安心しろよな! 兄貴の魂、オイラが絶対に取り返してやる!」
 鼻血男に続き、チョルトも妹に励ましの言葉をかける。
 妹は複雑そうな面持ちだ。
 「みんな……(私、こんなんじゃ……今のままじゃ駄目だ……。みんなみたいに、もっと強い心を持たなくちゃ。自分を、そして仲間信じる強い心を……)」


 「さて、ここに五つの魂がある。わたすににらめっこで勝つ事が出来たら、全部返すてやる。ただす、負けたらまた魂は貰うぞ」
 リリム、兄に続き、カイン、鼻血男、チョルトまでもが敗北を喫し、魂を奪われてしまった。妹に大口を叩き、やたら期待を持たせておきながら、三人ともニ秒足らずでやられてしまったのだ。どう考えても妹を馬鹿にしているとしか思えない。
 「残ったのは、俺達だけですね……。次は俺がやりますよ」
 フェレスは冷静な口調でそう言うと、妹を残して悠然と面白い顔の悪魔に向かって歩きだした。
 「ま、まってフェレスさん!! 次は…次は私がいくよ!!」
 フェレスを追って駆け出す妹。が、不意に、彼女の小さな体が「あっ!」という叫び声と共に前のめりに傾く。慌てていたため足元に意識が回っていなかったのだろう、彼女は地面から飛び出していた小さな石に躓いてしまったのだ。
 そして悲劇は起きた。
 体勢を崩した妹は、目の前のフェレスのズボンを咄嗟に掴むと、倒れゆく体の道連れの如く、それをそのまま一気にずり下げてしまった。
 「え…!? わっ! ちょっ!! わあああああ!!!」
 ズボンが下がった事によって、フェレスの下半身が露出する。
 「ズ、ズボンが…!!」
 フェレスは慌ててズボンを上げようとするが、何故か妹が強く掴んでいるせいでなかなかそれが叶わない。
 そして必死にズボンを履き直そうとする彼の股間では、人を殺すには少々心許ない『小型拳銃』が激しくローリングしていた。フェレスの股間で狂ったように踊るその小さな銃器を、面白い顔の悪魔は凝視している。
 「ク……ククク」
 面白い顔の悪魔から発せられる微かな笑い声。嘲笑ともとれるその笑い声に気付いたフェレスは、目を見開き、ズボンを上げようとする手を止め、その場にへたりこんでしまった。よっぽどショックだったのか、その頬は涙で濡れている。どうやらコンプレックスだったようだ。


 「フェレスさん、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
 妹はフェレスに土下座で謝った。
 「もういいですから……頭を上げてください。俺もズボンを上げますから」
 フェレスのズボンはまだ下がっていた。
 「次は俺がやります。いいですね?」
 「う、うん…」
 ズボンを下げてしまった負い目があるせいか、妹は素直に了承した。
 「あの……俺がにらめっこをしている間、後ろを向いていてくれませんか?」
 「え?」
 「お願いします……」
 「うん、分かった。フェレスさん、負けないでね」
 「はい。あっ、すみません、もう一ついいですか?」
 「何?」
 「俺がもし負けたりしたら、その時は貴女だけでも……」
 「私、逃げないよ。みんなを見捨てたり出来ないもん」
 「そ、そうですよね…。すみません……」
 フェレスは再び、面白い顔の悪魔に向かって歩きだした。
 妹はフェレスに言われた通り後ろを向き、両手を合わせて祈り始めた。
 (頑張って、フェレスさん……!)
 心の中でフェレスにエールを送る妹。彼女の肩は小刻みに震えている。
 (ああ……私、フェレスさんのズボン思いっ切り下げちゃったけど大丈夫かなぁ……。お尻見ちゃったし……。フェレスさんの記憶が戻っちゃったら、私殺されるかも……)
 妹よ、今はそんな事を心配している場合ではないぞ。やはりあの兄の妹だけあって、少し思考がずれているのかもしれない。
 「あの人と一緒にしないで!!!」
 す、すみません!!


 ある日、僕達が泊まる宿屋の一室から、お兄さんとリリムさんの声が聞こえてきました。悪いとは思ったんですけど、つい興味本位でドアに耳を当てて、僕は二人の会話を盗み聞きしてしまったんです。
 「あっ、あん! き…気持ちいい…! いい! もっと! もっとダーリン!」
 「あっ、リリム! ち、血が…!!」
 「大丈夫…! もっと…そのまま……奥まで!」
 「あ、ああ…」
 「い…痛…!」
 「ご、ごめん!」
 「ダーリン……出そう?」
 「も、もうちょっとだ……もうちょっとで……出た! あっ! 入っちゃった!!」
 「中に入っちゃったの!? 『穴』を下にしたら出るかしら…」
 「分からない、やってみよう」
 気付いたら僕はドアを開け、こう叫んでいました。
 「お兄さん! 何で中に出しちゃったんですか!? リリムさん!! 穴を下に向けたって出てきませんよ!! もう手遅れです!! おめでた決定ですよ!!!!」
 僕は二人がその……性行為的な事に及んでいるとばかり思っていたのですが、実際は違っていました。
 お兄さんの手には『耳かき』が握られていたのです。
 「はっはっは! 何言ってんだよカイン〜!」
 「あんた本当にバカインね!」
 誰か、僕を殺してください。











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