英雄兄妹(66/84)縦書き表示RDF


【あの人達は今】
兄妹達の乗っていた船の乗組員達は、兄妹達と別れた後、レヴィヤタンにしつこくおねだりをし、全員『海神の爪』を貰った。そして兄妹達が置き忘れていった『海賊の宝』を勝手に使い、強力な戦闘機能を兼ね備えた戦艦へと自分達の船を改良した。巨大な力を手にした今の彼らには、ムカデ王国でもうかつには手出しできないだろう。
英雄兄妹
作:HEERO



第66話 命がけのにらめっこ


 突如、兄妹達の前に現れた面白い顔の悪魔(名は不明)。彼は『負けたら命を無くすにらめっこ』という恐ろしい禁術を心得ていた。もう顔が面白いとか言ってられない。
 (まずい……確実にまずいわ……!! あんな面白い顔の奴に、にらめっこなんかで勝てるわけないじゃない……!!)
 絶望的な勝算。リリムの心が嘆きに満ちる。
 「わたすは昔から弱っちかった」
 不意に面白い顔の悪魔が口を開いた。リリムは「何なの?」といった顔で面白い顔の悪魔の方を見た。
 「特技と言えば『顔が面白おもすろい』事くらいだった」
 それが特技と言えるのか、甚だ疑問である。
 「だけども、この禁術と出会ってから、わたすは変わった。誰にも負けなくなった。わたすとこの禁術は相性あいそうがよかったんだ」
 『顔が面白いから、にらめっこの禁術を習得した』。この悪魔は頭が悪いくせになぞなぞの禁術を習得したチョルトとは違い、ちゃんと自分に合う、理に適った能力を選択している。
 「ね、ねえ…ちょっと待って。やっぱりやめにしない…? だってあたしもう既に笑いそうなのよ? こんなの全然勝負にならないじゃない。あんただって、勝ちの決まってる戦いなんかしてもつまらないでしょ?」
 「いいや、つまる、つまらないの問題違う。わたすはただ、この禁術で相手を倒すて、大好物のたますいが欲すいだけ」
 「た、魂…!?」
 どうやらにらめっこで負けると魂を取られてしまうらしい。さらに『大好物』という言葉から察するに、取られた魂は、面白い顔の悪魔に食べられてしまうのだろう。すこぶる恐ろしい話である。
 「リリム、にらめっこじゃそいつには勝てない!! みんなでリンチして倒そう!!」
 この状況に危機感を感じたのだろう、兄がリリムにそんな提案をしだした。というか『リンチ』以外に言い方は無かったのだろうか?
 「駄目よダーリン…。禁術はもう発動してるの。今、下手な事をすれば、それこそ私達全滅よ…」
 なぞなぞ対決の時もそうだったが、対決型の禁術発動中に、その対決を妨害したりすると、何らかのペナルティーが発生するのだ。
 リリムはもう、このにらめっこ対決からは逃れられない。
 「ぼちぼちはずめるか」
 面白い顔の悪魔がリリムの目の前に立った。
 (だ……大丈夫よ……! あたしはこんな所じゃ死なない…! 死ぬはずないわ!)
 リリムは仲間の方を振り返り、真剣な顔で口を開いた。
 「みんな、あたしの顔絶対に見ちゃ駄目よ! 特にマイ・ダーリン!!! いいわね!!」
 「は、はい…!!」
 兄妹達は怯えながらリリムの命令に従った。
 (あれ? つーか何で俺だけ念押されたんだ、?)
 そりゃ、好きな男に変な顔を見られるのは嫌だろう。それくらい気付け、兄よ。
 「さあ、始めましょ!」
 リリムは顔を伏せ、面白い顔の悪魔を見ないようにしている。いや、自分の顔を戦いが始まるその時まで、相手に見せないようにしているのかもしれない。
 「よす、いくぞ!」
 ついに始まる、命懸けのにらめっこ。はたしてリリムは、勝利を収める事が出来るのであろうか?
 「に〜らめっこす〜まそ! わ〜らった〜らあ〜の世! あっぷっぷ!」
 リリムはさっと顔を上げた。
 (くぅぅ……何であたしがこんな顔を……)
 今の彼女の顔は、かつての美しい形状を破棄し、完全に崩壊した状態にある。この戦いに勝つために、彼女は自慢の美顔を全力で不顔ぶがんに崩しているのだ。
 涙を流しながら顔をぐちゃぐちゃにするリリム。あまりにも気の毒なので、具体的な顔の状態を示す文章は控えさせていただく。
 「ぷっ…!」
 リリムの口から空気が漏れた。
 (駄目……笑っちゃいそう……!! ていうかこいつ、あたしの渾身の変顔を見ても何も感じないわけ!!?)
 面白い顔の悪魔はリリムの顔を見ても全くの無反応である。きっと自分自身の顔が面白いので、『変な顔』というものに対して免疫があるのだろう。
 「兄貴……リリムやばいんじゃないか……? 今笑いそうだったぞ…」
 「リリム……」
 このままではリリムの命が奪われてしまう。兄妹達の顔には不安が満ちていた。


 その『音』が聞こえたのはリリム達がにらめっこを始めて二十秒ほどが経った時だった。
 ぷぅっ、という軽快な音がリリムの戦いを見守る兄妹達の方から聞こえてきたのだ。
 「おっ、おい! 誰だよこんな時にかわいいオナラこいたのは!?」
 兄が笑いを堪えながら、キョロキョロと首を巡らす。
 「ぷっ!! アハハハハハハ!!!!」
 今のオナラのせいだろう。誰かが爆ぜるように笑いだした。
 「リ…リリム!?」
 なんと笑ってしまったのは、一番笑ってはいけない人物、リリムであった。
 リリムは腰を捻って兄妹達の方を振り返ると、悲しみと怒りと笑いが入り混じった恐ろしい顔で呪詛を口にした。
 「今オナラした奴……私は絶対そいつを許さない!! 百代先まで呪ってやるから!!」
 その言葉を遺し、リリムはその場に倒れてしまった。
 「リリム…!!」
 すぐさま兄妹達が駆け寄る。
 「リリム……し、死んでる!!?」
 オナラの音に笑い、リリム死亡…!?


カイン
「お兄さんは、付き合う女性との年齢差を気にしたりしますか?」


「別に気にしないぞ。妹とも十歳離れてるし。でもどうして突然そんな事を?」

カイン
「いや、もしお兄さんとリリムさんが付き合ったりなんかしたら、すっごい歳の差カップルだな〜なんて思ったりしたので…」


「俺とリリムは確か……歳の差281歳……」

カイン
「うわっ……」

リリム
「二人共、何の話してんの〜?」


「あ、リリムさん」

リリム
「え? 何でさん付けなの?」


「いや……何となく(よく考えたら人生の大先輩なんだよな……リリムって……)」











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