第6話 作戦会議
崖から転落した兄は、オッサン妖精達による間一髪の救助で一命を取り留めた。
「もう! 気をつけてよお兄ちゃん!」
「すまない、我が愛しの妹よ〜!」
抱き着こうとした兄を、妹が殴る。
「あ! あの、そろそろ行きませんか? 日が暮れると、悪魔は力を増してしまうんです」
兄妹のやりとりを笑って見ていたカインだが、突然そのことを思い出したらしく、みんなを促し始めた。
「何だって? そりゃ大変だな!」
「ええ、ですから急ぎましょう!」
カインを先頭に、六人は再び移動を開始した。しかし……。
「見ろ、妹よ!」
「あっ! 丸虫! 可愛い〜〜!!」
マイペースな兄と、可愛いと感じるものを見ると周りが見えなくなる妹。この兄妹の度重なる道草(全部、丸虫の観察)が原因で、結局村の付近にたどり着いた頃には、辺りは薄暗くなってしまっていた。
一行は、村から結構近く、これは危ないんじゃないかというくらいの距離で、無謀にも野宿を始めた。
「よく見てください。暗いですけど、村の中を何かが歩き回ってるのが見えますか?」
「本当だ…。なんかいっぱいいる。あれは人間じゃないの?」
村の中を徘徊する無数の影は、明らかに人間の形をしていた。
「あれはグールです。人間の肉を食らう不死身の怪物です」
「不死身!!?」
大きな声で驚く兄を、妹が口に人差し指を当てて無言で注意する。
「恐らくフェレスは、あの一番大きな長老の家にいるはずです」
村の中央に、一際大きな家が建っている。周りの闇と、数多のグール達によって、その立派な家からは、まがまがしさが湧き出ていた。
「ハッハッハッ! 長老の家、すっかり魔王の城だな! あっ、そういえばさあ、あの長老ってやけに他力本願じゃね?」
兄はいきなり関係の無い話題を口にしだした。
「そうですね。僕も前々からそう思ってました」
カインが話に乗ってきた。
「私もちょっと思ってた…」
妹も同意した。
「何を隠そう、我々も同じ意見です!」
オッサン妖精達が声をそろえて言った。
どうやら長老はみんなから、地味に嫌がられているらしい。
その夜は悪魔討伐の作戦会議ではなく、長老の悪口で盛り上がった。
そして朝がきた。
「みんな、起きたか? これより作戦会議を行う!」
六人はまず、村をうろつくグール達をいかに攻略するかを議題にした。
「私達が囮になるというのはどうでしょう? 私達なら空を飛べるので、安全に囮役をまっとうできますよ」
オッサン妖精達は自分達が囮になると言い出した。
「なるほど、オッサン妖精達なら、その強烈なインパクトでグール共の気を引くことができるな」
「でも、グールはあんなにいるんだよ。オジサン達の囮だけじゃ……」
確かに小さな妖精数匹では、あの数全てをどうにかできるとは思えない。
「あのグールって奴、数は多いけど、なんか頭悪そうじゃないか? そこをつけば何とかなりそうなんだけど…」
この兄に頭悪そうと言われるグール達は、相当頭が悪いのだろう。
「頭が…悪い……そういえば、グールは目の前の物を認識する能力に乏しく、匂いで仲間と餌を判別していると聞いたことがあります……」
カインの発言に、兄が歓喜の声をあげた。
「なるほど! じゃあ体からグールの匂いを発することができれば襲われずにすむんだな!!」
「理論上ではそうです。でも……グールの匂いは、『匂い』じゃなくて『臭い』なんです…。三角コーナーの生ゴミみたいな嫌な臭いなんですよ……。」
この世界にも三角コーナーが存在するらしい。
「そうか……ならばしかたあるまい……。生ゴミを………生ゴミを被る!!!」
「えええええええええええ!!!!????」
兄……御乱心!!
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