第55話 消えゆく仲間達
レヴィヤタンは瞬く間に船との距離を詰め、海面から頭を出すのと同時に、薄く開かれた口から強力な水鉄砲を噴射させた。
「しまっ…ゴブッ!!」
水鉄砲は鼻血男に命中した。
「鼻血男さ…うわっ!」
続いてカインにも命中。
「大丈夫で…グバッ!」
更にフェレスにも命中した。
水鉄砲を受けた三人は船から弾き飛ばされ、荒れ始めた海へと落ちてしてまった。ちょっと格好悪い。
「ちょっ、あんたら何ポンポン飛ばされてんのよ!!」
リリムが翼を広げ、海に落ちた仲間達の元へと向かう。
「待ってて、すぐ助けるから…!!」
しかし…
「キャッ!!!」
レヴィヤタンの尻尾による強烈な打撃を背に受け、リリムは海面へとたたきつけられてしまった。
そして更にレヴィヤタンは、その打ちつけた尻尾の反動を利用し、雨のような飛沫をあげながら、船の側面へとその巨体をぶつける。
「きゃあああああ!! リ、リリムさぁぁぁん!! みんなぁぁぁ!!」
「フェレスゥゥ! くっそーー!!」
残ったのは妹とチョルトの二人だけ。この二人だけでは、海に落ちた仲間を助けることは勿論、レヴィヤタンを倒すことも難しい。
「グオオオオオ!!」
「うわっ!!」
チョルト目掛けて再び放たれる水鉄砲。チョルトは小さな羽で飛び上がり、なんとかそれをかわす。
しかしその攻撃は罠だった。
「チョルトさん、危ない!!!」
妹がそう叫んだ直後、チョルトの体はレヴィヤタンの大きく開かれた口の中へと消えてしまった。
「チョルトさーーーーーーーん!!!!!」
チョルトが食われた。
半ば放心状態でその場に崩れ落ちる妹。
「そんな……みんなやられちゃった……」
戦意を失っている妹に構う事なく、レヴィヤタンはあの時と同じ、青白いエネルギーを口に溜め始めた。
(駄目……やられる…。私にはあの攻撃を止められない……。もうゴキブリングも使えないし………ん? ゴキブリング!?)
妹はポケットに手を当てた。
「占い師のお婆さんがくれたゴキブリング…! まだこれがあった!」
妹は取り出したゴキブリングを中指に嵌め、レヴィヤタンに向けた。
「そうだよ…まだ諦めちゃ駄目だよね…。みんなはまだ死んでない。きっと私の助けを待ってる! あっ、チョルトさん……も、きっと無事!!」
最後のは恐らく自己暗示だろう。
「いって〜、何だここ…? あっ、そうか……オイラあの化け物に飲み込まれたんだ……」
さながら暗い洞窟のようなレヴィヤタンの腹の中で、チョルトは目を覚ました。
「うわっ!? 何だこりゃ〜!? 胃液か!? ベタベタして気持ち悪いな〜。オイラの体が酸に強くてよかったよ」
酸にまみれながらも、ひょいと立ち上がるチョルト。意外な性質の体である。
「これからどうしようかな…。適当に進んで出られそうな場所からでるしかないか……」
出られる場所として考えられるのは、口or尻。はたして、右も左も分からないチョルトは、二つの出口のうちのどちらにたどり着くのであろうか?
「尻はやだな〜」
妹の持つゴキブリングがキーンと、音を放つ。
「どんな魔法が飛び出すか分からないけど……今はこの指輪を信じる!」
リングの宝石部分が、白い光を放出した。そしてその光が線となり、何かの形を描き始める。
「これって……!」
光が描いたもの、それは、大人数人が裕に身を隠せるほどの巨大な盾であった。
「盾…攻撃の魔法じゃなかったんだ……。でもこれならあのビームを防げるかもしれない……!」
エネルギーのチャージが完了したのだろう。レヴィヤタンが前回同様、体を大きく後方へと反らし始めた。
(く…くる……!)
妹は震える右腕を左手で押さえ、今まさに撃ち放たれようとされている光線に備える。
(きっとお兄ちゃんも恐かったんだよね……。でも、みんなを守るためにあの攻撃を止めた…。それもたった一人で…。お兄ちゃん、私も……私も頑張る!!)
「グオオオオオオ!!!」
鞭のようにしなった体を勢いよく翻し、レヴィヤタンはデッキの上の妹目掛けて光線を吐き出した。
「止める!! 絶対に!!!」
光の盾が青白い衝撃を受け止める。
「く……くぅぅぅ……」
盾の効力は確かなものだった。光線を受けてもびくともしない。
しかしいくら盾が強固だとしても、それを扱う者の力が不足していてはすぐに押し負かされてしまう。
「この…ままじゃ……もたない……」
魔法を放つ右腕、そして光線の勢いに吹き飛ばされそうな体を必死に支える左足が(勿論、盾によって光線の勢いはかなり殺されてはいるが)ガタガタとぶれだす。そしてそのぶれはすぐに全身へと広まった。
「……やだ……こんな所で……何も出来ないまま……誰も守れないまま死ぬなんて………やだぁぁぁぁ!!!」
妹の目から涙が溢れ出す。
その時だった。
今にも壊れてしまいそうな妹の小さな体を、大きな影が覆う。
「あっ……」
同時にあれだけ騒いでいた妹の体が落ち着きを取り戻した。
誰かが妹の小さな右腕を掴んで支えてくれている。妹の小さな体を全身で受け止めてくれている。
妹には振り返らなくても、それが誰なのか分かっていた。
「来て…くれたんだね……お兄ちゃん」
「あったぼうよ!!」
|