第51話 エーテル発動
鼻血男の判断ミスにより、リリムとチョルトは大きな痛手を負ってしまった。レヴィヤタンを撹乱し、攻撃を阻止するという重要な役割を担っていた二人の脱落。この状況はまさに…
「最悪じゃないですか!」
カインが叫んだ。
「落ち着けカイン! まだ俺がいるだろ!?」
「お兄さん!?」
兄がパンツ一丁で敵の前へと歩み出る。
「お、お兄ちゃん……どうする気なの……? パンツとか脱がないでよ…?」
「妹よ……今回ばかりは俺がつっこむぞ。脱ぐわけないだろ!!」
「エヘヘ……ごめん」
妹は非礼を詫びた。
兄は欄干の手前で仁王立ちし、両目を固く閉じた。
(多分出せるはずだ…。この感覚……あの時と同じ……)
兄の体がほのかに輝きだす。
「よし……いける……いける…………いっけぇぇぇぇ!!!!」
強烈な光。仲間達は眩しさのあまり、反射的に兄から目を背ける。
「見よ! 我が仲間達よ!! これが、シスコンエロの力だぁぁぁぁぁ!!!」
残念ながら、眩しいので誰も見ていない。
「お、お兄ちゃんが光ってるの!?」
「こ…これが……シスコンエロの力!? 変態も境地に達せば、輝きを放つということですか!!?」
「じゃ、じゃあ、あれが変態の究極形態ってこと!!? 凄い! 凄いわダーリン!!」
甚だしい勘違いをする仲間達。これでは神の立場が無い。
やっと目が慣れてきたのか、仲間達がおもむろに兄の方へ目を向けた。
「ん…!? 君! それはまさかエーテルじゃないのか!?」
輝く兄を見て、鼻血男が声をあげた。
「だから言ってんじゃん! シスコンエロの力だって!!」
「シスコン…エロ……? いやいや、それはシスコエルじゃないのか!?」
「あっ、悪い、間違えてた!」
兄は恥ずかしそうに頭をかいた。
「グオオオオオ!!」
レヴィヤタンが咆哮をあげながら体を大きく後方へと反らした。口の中の青白い光は一層激しくなる。
「くるわよダーリン!!」
「ま、任せろ!!」
レヴィヤタンはしなった体を勢いよく翻し、身構えている兄に向かって(単純に光って目立つから目についたのだろう)容赦なく光線を放った。
(だ、大丈夫だ!! 止めてやる!! 絶対に止めてやる!!!)
光線は欄干をいとも簡単に突き破り、兄が力強く構える両腕へと飛び込んだ。レヴィヤタンの大口と兄との間に、青白い直線が描かれる。
「ぬぅおおおおお!!!」
少しずつ、着実に光線の勢いに押しやられる兄の体。足を纏うエーテルとの摩擦でガリガリと削られてゆく船のデッキ。
「ダーリン!!」
「お兄ちゃん!!」
「く…来るなぁぁ!!! 来るなら今晩俺の部屋に来てくれぇぇぇ!!」
以外と余裕らしい。
光線に押された兄の体は、ついに操舵室の壁へと押し付けられた。
「ぬぐうぅぅぅぅ!!! ふぬおおぉぉぉぉ!!! ゴルバチョォォォォォフ………!!!」
兄の奇怪な叫び声と共に、フッ、と、光線が止んだ。同時に兄の背中が壁から離れる。
「かはぁ…! はぁ……はぁ…はぁ……」
兄はその場で四つん這いになり、荒い息を吐きだした。
(俺が『はあはあ』言ってると、なんか変な目で見られそうだな……)
それは考えすぎだ、兄よ。
「……次は……こっちの番だ……!」
兄はおもむろに立ち上がると、両手をレヴィヤタンの顔へと向けた。
それを見た中間達が、感嘆の声をあげる。
「さ、さすがエーテル! 飛び技も使えるんですね!」
「いっけえ、兄貴ぃ! ぶっ飛ばせぇぇ!!」
しかし、兄の顔は懸念に満ちていた。
(なんか勢いで手ぇあげちゃったけど……何も出なかったらどないしよう!!!)
『大丈夫、自分を信じるんだ。そうすれば必ずできる。今、君はエーテルであり、エーテルは君なのだから』
「シスコンエロ!? 分かった…! やってみる!!」
シスコエルの言葉に勇気付けられ、兄の顔に力強さが戻る。
「撃ち抜けぇぇ!! 必殺、『シスコン・ガトリング』!!」
兄がそう叫ぶと、合わされた両手の周りにエーテルの輪が描かれた。そしてその輪から無数のエーテルが弾丸となって撃ち出される。
「凄い! 本当にガトリングガンみたい!」
目を丸くする妹。
「な、何ですか、ガトリングガンって?」
カインが妹に尋ねる。しかし兄の技に見入ってしまっているためか、彼女からの返答はなかった。
(そんな……)
カインのピュア・マインドは深く傷ついてしまったようである。
「オラオラァァァ!!」
兄の撃つエーテルの弾丸は、まず、レヴィヤタンの胴体に命中した。兄はそこから狙いを頭部へとずらしてゆく。
「体は頑丈だが、顔面はどうかなぁ!!?」
「グガアアアアアァァァァ!!!」
無数の弾丸がレヴィヤタンの顔面を捉える。そしてその内の何発かがが、レヴィヤタンの眼球を撃ち貫いた。
「グオオオオオオオオォォォォォォ…………………」
勝負はついた。
レヴィヤタンはゆっくりと海中へその身を沈める。
「ハア……ハア………あいつ……逃げてくぞ………勝った……勝ったん………だ……」
体を纏っていたエーテルが消えると、兄は前のめりに倒れた。
「お兄ちゃん!」
「ダーリン!」
「お兄さん!」
「兄貴!」
「君!」
仲間達はバラバラの呼び方で兄の元へ駆け寄る。
「大丈夫、気を失っているだけのようだ」
「よかった…」
「でも随分体力を消耗してるみたいよ! はやく部屋へ連れていきましょ!」
その頃フェレスは…
「こ、こうですか!?」
「オーウ!! エクセレェェェント!! ユーのダンスには魂が宿ってるぜ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
ダンスをマスターしていた。
|