英雄兄妹(3/86)縦書き表示RDF


究極の試練を前に、早くも兄妹がくじけそうになります…。
英雄兄妹
作:HEERO



第3話 出発


 カインが目を覚ましたのは深夜の真っ只中だった。
 「起きてください、お兄さん」
 夢の世界から引き戻された兄は、いかにも不機嫌そうな顔で上半身を起こした。
 「お前は夜行性か? カナブンか?」
 「す…すみません。きっと僕の世界と時差があるんだと思います」
 「ふうん…。で、用件は何なんだ? 妹はやらんぞ」
 「え〜〜! 駄目ですか? あ、いや、そうじゃなくて、そろそろ僕の世界にきてもらえませんか?」
 「今から? 明日じゃ駄目なのか?」
 カインは俯いてしまった。
 「……今こうしている間にも、僕のいた世界では悪魔達が人々を苦しめているんです……。それを思うとじっとなんてしてられません!」
 「お前、自分だけ散々スリープしといて、俺と妹の睡眠は妨害かい! しかしまあ、気持ちは分からんでもない。だからあと十分だけ眠らせてくれ。それから行こう。お前のいた世界へ!」
 「あ、ありがとうございます!!」


 眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込み、兄の顔を照らす。
 「ん、ん〜〜〜! あれ? もう朝か?」
 兄はカーテンを開けた。白い光が部屋に流れ込む。
 「爽やかなモーニングだぜ!」
 兄は陽射しを全身に受けたまま、背筋を伸ばした。
 「酷いですよ…」
 兄の背後で誰かがぼやいた。その声に反応して兄が振り向く。
 「十分って言ってたじゃないですか……。それなのに爽やかな朝を迎えちゃって……」
 「あっ! 悪い、カイン! 爆睡しちまったよ! 何だよ、起こしてくれりゃよかったのに!」
 「何度も起こしましたよ! でも全然起きてくれなくて……それどころか、見てくださいよこれ!」
 カインは顔のアザを指差した。
 「ど……どうしたんだそれ!?」
 「お兄さんが寝言を言いながら僕を殴ったんですよ!」
 「ま、まさか『ギガグラヴィトンナックル』か……?」
 「そ……そうです」
 「すまない。俺、寝相が悪くてさ……。夢の内容がすぐ現実に反映されてしまうんだ」
 「ど、どんな夢見たらそんな技が飛び出すんですか……」
 コン、コン。兄の部屋にノックの音が鳴り響く。
 「お兄ちゃん起きてる!? カイン君の世界に行くんでしょ!?」
 朝から元気のいい妹の声。兄は微笑を浮かべ、カインを見た。
 「カイン。俺は毎朝、この妹の声に起こされるのだ。羨ましいか? 羨ましいだろ?」
 「え…ええ、まあ……」
 「フフフ……妹はやらんぞ?」
 (ええ!? 何この人!?)
 もう、カインにとって兄の存在は、理解の範疇を超えていた。


 朝食を取り、荷物を確認し、ついに三人の出発の時となった。
 「よっしゃああああ!! 行こうぜ二人とも!!」
 兄はやる気に満ちていた。
 「でもどうやって異世界に行くの?」
 妹が首を傾げる。
 「『ある場所』に、長老が出してくれた、この世界と向こうの世界を繋ぐ穴があります。まずはそこへ行きましょう」
 カインの案内の元、兄妹は次元の穴へと向かう。


 「カイン君……私、この穴に飛び込む勇気無いよ……」
 「カイン、ここにきて俺達を罠にはめたのか?」
 兄妹はいきなり大きな試練に直面した。
 「す、すみません……。穴の出現する場所は、長老本人にも分からないみたいで……」
 今三人がいるのは、もう誰も住んでいない、古びた空き家……の中にある『汲み取り式便所』の前。
 「どういうことだよ!! 何でよりによって、ぼっとん便所の奥底に異世界間を繋ぐ穴があるんだよ!!!」
 温厚な兄がキレる。
 「私……もう駄目……」
 滅多に弱音を吐かない妹が嘆く。
 「そ、そんなぁ……。お願いしますよ二人とも〜〜」
 早くも窮地に陥ってしまった兄妹。果たして、ぼっとん便所に飛び込むことはできるのであろうか?


ある意味クライマックスですねw











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