第17話 再びマリモ村
「助かったぞカイン!」
兄のピンチを救ったのは、あのカインだった。気を失っている妹の指からゴキブリングを抜き取り、カインが電撃を放って、リリムに攻撃したのだ。
「妖精の姿では魔法が使えなかったんですが、どうやらゴキブリングがあれば話は別のようですね…」
やっと活躍ができたカイン。その顔は幸福感に満ちていた。
「い……いたた…」
リリムがよろめきながら立ち上がる。
「あ、あんた、よくも!!」
リリムの爪が今度はカインの方へ向けられた。
兄は咄嗟に彼女の腕を後ろから掴み、自分の方へ向き直させた。
「ゴルァァァァ!!」
兄が思い切りリリムの頬を叩く。辺りに乾いた音が鳴り響いた。
「なっ………!」
リリムはよろよろと後退り、力無く地面にへたりこんだ。
「…顔を叩かれた……それも人間の男なんかに……。手も足も出なかった……この私が……」
「感謝しろよな。手加減してやったんだ。お前が男だったらこれだぞ、これ!」
兄は握り拳を見せながらそう言った。
リリムはゆっくりと立ち上がり、翼を広げた。
「おい、無理するなよ。さっきの電気で感電したんだろ?」
いたわる兄を無視し、リリムは弱々しく飛び立っていった。
三人は、リリムのチャーム・アイから解放された男達を連れて、マリモ村へと戻った。村は歓喜と感嘆の声に包まれ、三人はまたもや、数多くの御礼の品をいただいてしまった(妹はまだ気を失っている)。
「お兄さん! 何、妹さんの服を脱がせようとしてるんですか!」
「妹の発育状態を……じゃなくて、体を拭いてやるんだよ」
未だに目が覚めない妹。魔法の発動に体力を奪われ過ぎてしまったようだ。
「お兄さん、今日はこのままそっとしておいてあげましょう。魔法による疲労は相当なものなんです。明日、目が覚めたとしても、二、三日は体に怠さが残ると思います」
「そうか……。こいつ頑張ったんだな……。でも、こんなになっちまったのは俺のせいだよ…。俺がもっと早く助けに行ってりゃ……」
「お…お兄さんは悪くないです。僕の方こそ、妹さんのそばについていながら何もできなくて……」
カインは元からあまり期待されてはいない。
「……ふあ〜〜あ、もう寝るか、カイン。俺達も疲れてるんだ。何かもう、考えるのも面倒だしよ。つーか、俺達がもっと強くなりゃ済む話だしな」
「そ…そうですね……僕も、僕も頑張ります……!」
昔から兄の前向きさというか、いい意味でのシンプルさは、周りの人間にも強い影響を与えることがあるのだ。
次の日。三人の内、最初に目を覚ましたのは、なんと妹だった。
「……あれ? ………あ、そうか……。私あのまま気を失って……。」
妹はベッドから上半身を起こした。
「私がここ(マリモ村の宿)にいるっていうことは、お兄ちゃんとカイン君、勝ったんだよね……。」
妹はベッドから降りた。
「もう起きてるかな……」
「……う……う〜〜ん………もう朝か?」
朝日で窓が白く輝いている。その窓の手前では、まだカインが眠っていた。
「ん? あれ?」
兄は今、窓の方に体を向けて寝ている。そんな兄の背中の辺りの毛布がやけに膨らんでいた。
(ま、まさか……あいつか? あいつなのか……? そうかそうか、俺と一緒に寝たかったんだな…)
兄は体を反転させ、毛布の中にいる人物を優しく抱きしめた。
(あれ? あいつ、いつの間にか、ずいぶん大きくなってたんだなぁ……)
その時、部屋の扉が開いた。
「ん? 誰だ?」
「お兄ちゃん、おはよう!」
部屋に入ってきたのは妹だった。
「あれ!? お、お前、何でそこに!? じゃあ、これは!!?」
兄は毛布をめくり、驚愕の声を上げた。
「だ、誰だお前は!!?」
兄に寄り添って寝ていたのは、兄と同じくらいの年頃の少女だった。それも全裸の。
「お、お兄ちゃんはそんなことをするためにこの世界に来たの!!?」
「何を言っている!? 俺はお前一筋だ!!」
「うるさい馬鹿ーー!! もう知らない!!!」
妹は部屋を出ていってしまった。
「……ん……何だろう、今、妹さんの声が……」
兄妹の騒がしいやり取りで、カインがやっと目を覚ました。
「ええ!!?」
兄が裸の女性の寝ている横で、一人泣いている。
「うう……もう死にたい……」
「え!? ちょっ! 何言ってるんですかお兄さん!!」
「おお……カイン……おはよう………。喜べ…俺は妹に嫌われてしまった……。だからお前にもチャンスがあるぞ……。」
「えっ! 本当ですか!?」
「マジに喜んでんじゃねーーー!!!」
「ヒィィィィィィィ!!!」
兄はカインを窓から投げた。
|