英雄兄妹(16/83)縦書き表示RDF


兄とリリムのちょっとしたイラストを描きました(^^)
http://98329832.blog19.fc2.com/blog-entry-43.html
英雄兄妹
作:HEERO



第16話 そんなもん俺には効かん


 今まさに妹にとどめを刺そうとしていた男を強烈な回し蹴りが襲う。
 「うぐっ!!」
 蹴られた男は大きく吹っ飛んだ。それにより蹴り主の姿が曝されることとなる。
 「お……お兄さん!!」
 カインが歓喜の声をあげた。
 「ちょっと、あんた達どいて!!」
 慌てた様子でリリムが男達を掻き分け、兄の眼前までやってきた。
 「キャ〜〜〜! すっごい、いい男!! 今までの男の比じゃないわ!!」
 典型的な面食い女である。というか、兄はいい男だったのか。
 「邪魔だ」
 兄はリリムを押し退け、妹の元へ駆け寄った。
 「おい、大丈夫か! 返事をしてくれ!!」
 「……う……う……お兄ちゃん……?」
 「おおお! よくぞ目を覚ましてくれた!!」
 「……ごめんね、お兄ちゃん……。私、リリムに勝てなかった………」
 「いいんだ…! お前はよく頑張った! あとは兄ちゃんに任せろ!」
 「お兄ちゃん……」
 兄はおもむろに、妹の唇に自分の唇を近づけた。
 グシャ! 妹の拳が兄の鼻を捉らえる。
 「お兄ちゃん……調子に乗っちゃ駄目……」
 そう言い残し、妹は再び眠りについてしまった。
 兄は鼻血を流しながら立ち上がった。
 「い…いてぇ……いい雰囲気だと思ったんだが……。ちくしょう! 勝負だ、リリム! いや、これから始まるのは勝負ではない……一方的な殺戮だ!!」
 兄が恐いことを言い出した。妹に拒絶された腹いせだろうか。
 「そんな顔しないで! かっこいい、お・に・い・さん!」
 リリムの瞳が鈍く光る。
 「その目を見てはいけません!! リリムに操られてしまいます!!!」
 カインの声は間に合わなかった。兄はバッチリ、リリムのチャーム・アイを拝んでしまったのだ。
 「さあ! これで貴方はあたしのものよ! うふふ! これから存分に可愛がってあ・げ・る!」
 リリムは未だ男に掴まれたままのカインに視線を向けた。
 「そうねえ、まずはあの妖精君を貴方の手で始末してもらおうかしら」
 リリムに言われ、兄はゆっくりとカインの元へと足を進めた。
 「ああ…! お兄さん! 悪魔なんかに操られないでください!」
 兄に反応はない。カインの言葉は届いていないようだ。
 「うわっ!」
 カインが兄の右手に渡った。
 「さあ、そのまま握り潰すのよ!」
 兄の手が力強くにぎりしめられる。しかしそれは、カインのいない左手の方だった。
 左手に作られた拳が小刻みに揺れる。
 「フフフ…ハハハ……ハーーッハッハッハ!!」
 兄、大爆笑。
 「え!? な、何でぇ!?」
 混乱するリリム。
 「こぉの、うつけがぁぁぁ!!! 俺にそんなもんは効かんのじゃぁぁぁい!!!」
 「どうして!? あたしの目を見たはずなのに!!」
 「俺はお前みたいな年増女に興味ないんだよ! お前自体に魅力を感じない者が、お前のチャーム・アイを受けても効果はないんだろ?」
 「た、確かにあたしは何百年も生きてるけど、見た目はまだ……」
 「バーカ! 俺が言ってるのはそういうことじゃない!」
 「えっ!?」
 「俺はなあ、我が愛しの、い・も・う・と、にしか興味無いんだよ!」
 「そ……そんな! 私の邪眼はどんな男にも…!」
 リリムの目が再び鈍い光を放つ。
 「哀れだな、リリムよ。そんなもの(邪眼)に頼らなければ、人の心を動かせないのか?」
 「何よ! ガキんちょが偉そうに!!」
 邪眼の放つ光が強くなっていく。しかし…
 「何で!? どうして効かないのよ!! 私に……この私に興味が無いから!? 嘘よそんなの!!」
 光が止んだ。それと同時にリリムの爪が一気に三十センチほど伸びた。その尖端は鋭く尖っている。
 敵は臨戦態勢。兄は地べたに置いていたアイテム袋をすぐさま拾い上げ、中から何かを取り出した。やはり異世界ならではのファンタジックな武器だろうか?
 「メリケンサック、装・着!!」
 どうやらファンタジーを限界まで無視した武器が登場してしまったようだ。
 「ふん! リーチはこっちの方が上よ!!」
 リリムが凶器と化した爪を兄の頭に振り下ろす。
 鈍い金属音。兄のメリケンサックがリリムの爪を受け止めた。
 「防御用!? でも私はもう片方の手も武器なのよ!」
 兄が防いだのは左手の爪だけだ。故にリリムにはまだ右手で攻撃するチャンスが残されている。
 「あっ! まずっ…!!」
 リリムは容赦無く右手の爪を突き出した。一撃目のようにメリケンサックで受け止めねば、確実にやられてしまう。しかし兄の右手はいつの間にかリリムの左手に掴まれてしまっていた。慌てて振りほどくが、もう防御は間に合いそうにない。
 絶対絶命の兄。ところが……
 「ああああああ!!!」
 どういうわけか、叫び声をあげたのはリリムのほうであった。












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