第15話 妹VSリリム
「カイン君。見てあれ。地下へ繋がってるんじゃないかな?」
木が刈り取られているため、山の頂上はのっぺりとしていた。そのため、妹達が地下への入口を見つけるまでには、僅かな時間すら必要とはしなかった。
「どうするカイン君? あれって一応、敵の本拠地だよね……」
「そうですね……。どうしましょう……」
二人はしばらく思考を続けた。そして、最初に考えをまとめたのは、これまで大して目立った活躍をしていないカインだった。
「僕が偵察してきます…。僕なら見つからずに忍び込めますし、仮に見つかったとしてもすぐ逃げられます」
カインは妹の肩から飛び上がった。
「カ、カイン君、気をつけてね! 危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ!」
「ええ、分かって……あれ?」
カインの体が、何かに包まれた。
「あ……!」
つとカインが見上げると、一人の若い男と目が合った。カインはこの男の手に掴まれているのだ。
「な、何ですか貴方は! 僕の……僕のやっと訪れた大活躍のチャンスを潰す気なんですか!!?」
というか、今はカイン自体が潰されそうな状態である。
「リリム様、怪しい奴らが……」
カインの言葉を無視し、男は地下の入口の方へ顔を向けた。
「え〜? 何よもぅ、これからあたし主催の【イケメン達と行く栗食べ放題ツアー】へ出発するのにぃ〜」
地下から一人の女が現れた。その後ろにはぞろぞろと若い男達を引き連れている。
まだ子供っぽさも残っているが、女の顔立ちは非常によく整っていた。服装はどう見ても漆黒のビキニといった感じで、嫌でも色気を感じさせられる。しかし、彼女の両耳は尖んがっており、その両耳の上には一対の角が天に向かって聳えていた。そして背中にはフェレスのようなコウモリの翼が生えており、さらには黒い尻尾も伸びている。
「悪魔……! 貴女がリリムね!」
リリムはめんどくさそうに妹の方へ顔を向けた。
「うっわ! 何で子供がいんのぉ? あら、そっちは妖精? 可愛いわね」
「あっ、どうも…」
照れるなカイン。
妹はリリムにゴキブリングを向けた。
「その人達を自由にしてあげてください!」
「何あんた? あたしに指図?」
リリムが妹に近づいてゆく。
「来ないで!」
ゴキブリングが電撃を放つ。妹に触れようとしていたリリムの手が弾かれる。
「いったぁぁぁい!!」
リリムは手を押さえてながら後ずさった。
「うざっ!! うっざーー!!! ちょっとあんた達! このガキぶっ殺してよ!!」
操られている男達がリリムの前に出てきた。
「どう? みんないい顔してるでしょ?」
どうやらリリムは、山の警備を厳つい男にやらせ、自分の周りには常に若くて顔立ちのよい男を置いているらしい。
(山を見回ってた人達に比べたら大したことなさそうだけど……駄目! こんな数、相手にできないよ…!)
魔法では対処しきれない敵の数。おまけに敵に捕われてしまった役立たず(カイン)までいるとなっては、妹に打つ手はない。
(ここはリリムを、頭を狙うしかない…。上手くいけば操られている人達を元に戻せるかも……)
妹は念じた。ゴキブリングに意識を集中させ、自分の中のエネルギーが指輪に注ぎ込まれてゆくイメージを膨らませた。
男達が襲い掛かってくる。妹はゴキブリングから軽い電流を発することにより男達を感電させ、その動きを一瞬だけ止めた。
妹は走った。狙いはリリム、ただ一人。
「あれ!? どこ!?」
妹の小さな体は、男達の中に紛れてしまい、リリムはその姿を完全に見失ってしまった。
そしてリリムは不意をつかれた。突然、男の股の間から妹が飛び出してきたのだ。
「えい!!!」
ゴキブリングから今までにない強力な電撃が放たれる。
「まずっ!!」
リリムは中空に飛び上がった。
「いったぁぁぁ……! ああもう!! 尻尾が焦げちゃったじゃない!!」
リリムの尻尾から、小さな煙が立ち昇る。
「はず……れた……」
妹はその場に倒れた。気を失ってしまったようだ。
「妹さん!! 妹さーーーーん!!!」
カインの呼び掛けにも反応はない。
「あんた達! 早くそいつにとどめ刺しちゃって!」
リリムに言われるがまま、男達が妹に群がる。
「妹さーーーーーん!!!」
悲痛の叫びをあげる、相変わらず掴まれたままのカイン。しかし役立たずが叫んだところで、この状況がどうなるというものでもない。
男達の一人が妹に手を振り上げた。小さな悲鳴をあげ、目をつむるカイン。
しかし、その時だった。
「待ぁちやがれぃ!! この腐れチ〇コどもがぁぁぁぁ!!!!」
木々の間から、下品な言葉遣いの男が現れた。
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