第14話 ゴキブリング
カインは襲い掛かってきた大男を一撃で沈めた。
「カ……カイン君、凄い……」
「あ、あれ…? そ、そうだ、僕は早く妹さんの肩に乗りたくて、がむしゃらに……」
どんだけ妹の肩に乗りたいねん。
「カイン君、このオジサンは……」
「恐らく、リリムに操られているマリモ村の人でしょう…。山の周辺を見張る役割だったんじゃないでしょうか」
「………早くリリムをやっつけないとね!」
その頃兄は、
「うおおおおお!!! ウ……ウンコしてぇぇぇぇ!!!」
マリモ村に引き返していた。
山の中には、見張りの男が何人もうろついていた。何故かどの男も体格のいい、厳つい風貌をしている。
「妹さん、落ち着いてください。大丈夫です。見つかりそうな時は僕が囮になりますから」
妹の肩に乗っているカインには、妹の動悸がしっかりと伝わっているようだ。妹は緊張のせいか額に汗を滲ませている。
「あっ、そういえば、操られている人間は、正気の時に比べて五感があまり働かないらしいです。ですから、極端に大きな音を立てたりしなければ、何とかなりますよ!」
「あのさあ、カイン君……」
「何ですか?」
「もう見つかってるみたい……」
いつの間にか、二人は五人の男に取り囲まれていた。たぶん、カインの声が大きかったせいだ。
「侵入者だ!」
「殺せ!」
「四肢をもげ!」
「目をえぐれ!」
「臓物を引きずり出せ!」
かなり恐い。
「ど、どうしよカイン君! このオジサン達、何だかスプラッタなこと言ってるよ〜!」
焦る妹。しかしカインはそれ以上に焦っていた。役に立たんにもほどがある。
「そうだ! あの指輪、ゴキブリング!!」
妹はポケットから魔法を扱うことができるゴキブリングを取り出し、指にはめた。指が細いのでぶかぶかである。
「えっと、どうやるんだろ!? な、何でもいいから出てーー!!」
出た。
「うわああああああ!!」
指輪の宝石部分から飛び出した電撃が、男達の体を駆け巡る。
「ストップ、ストップ! 止まって!!」
妹の声に反応したのか、電撃がぴたりと治まった。それと同時に、男達がバタバタと倒れる。
「ハア……ハア……あれ……なんか………貧血……?」
妹はその場にへたりこんだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「カイン君……魔法って……結構疲れるんだね……」
「ええ…。魔法を発動させるには、それなりの体力と精神力を必要としますから…。あの、やっぱりゴキブリングはお兄さんに渡したほうが…」
「だ、駄目なのそれじゃ!」
「え……?」
「お兄ちゃんは……いつもふざけてるようだけど、いざというときは凄く頼りになるの……。私、いつもお兄ちゃんに生意気なことを言ってるけど、なんだかんだ言って、お兄ちゃんに助けられてばかりだし……。だから、これからは私が頑張って、お兄ちゃんを助けてあげるの! この指輪の力を借りれば、私でも十分戦えるはずだから!」
「ハア、ハア、もう少しで着くぞ……」
息せき切って山を目指す兄。
「うおおおお!! 心配だよおおおお!! 我が愛しのエンジェリックメガトンダイナミックプリンセスシスターよ、無事でいてくれええええ!!!!」
こんなこと言いながら疾走するような兄を持って、妹は本当に幸せ者である。
「カイン君、私、実の妹のことをエンジェリックメガトンダイナミックプリンセスシスターとか言うお兄ちゃんは絶対嫌だよ」
「ど、どうしたんですかいきなり?」
「あれ? 私、何でこんなこと言ってんだろ?」
「あっ! 妹さん! 後ろ!!」
妹の背後にまたしても大柄の男が迫っていた。
「えい!」
妹はゴキブリングを使った。放たれた電撃は、最初に使った時よりもずっと弱々しい。
男はビクンと体を痙攣させ、その場に倒れ伏せた。
「凄い……もう威力の調節ができるようになったんですか?」
「う〜ん、よく分かんない。この人をなるべく最低限の力で気絶させようと思ったらこうなったんだけど……」
(も、もしかしたら妹さんは……)
二人は再び山道を歩きだした。頂上は目前である。
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