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平凡な私と平凡じゃない交友関係 作者:メイリ
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社員証

「うん?これは……」

私の足元には見慣れたものが落ちている。
私はその落ちているものを拾い、自分が思っているものかどうか確認してみた。
……うん、やっぱり見慣れた、私も持っている我が社の社員証だ。
なんでこんなところに?
今私がいるのは、資料室の奥の奥、事務の人間も滅多にこない場所なのである。
たまたま昔の資料が必要になりここに来たのだけど。

私は一応誰のものか見てみた。

『コンドウ カナメ』

ふむふむ、近藤さんね。
所属を見ると営業一課とある。
なるほど花形部署ですか。
じゃあ、これは人事に届けておきますか。
基本拾ったモノはきちんと届けるべき所へと運びますよ。
たまに……いや、結構な確率で何処に届ければ良いのか迷うモノを拾うけどね。


「あの、すいません。これを拾ったんですが、本人に連絡して頂けますか?」

人事の人にそう言って社員証を差し出した。
本人に直接でも良いんだけど、営業だと出払っていることも多いし、この会社大きいので何気に各フロアが広いのだ。

「えーっと、これは……うん?預かって良いの?」

人事の推定50才ぐらいのお姉様が不思議そうな顔でこちらを見てくる。
なんで預かって良いの?って疑問系?
こっちが不思議だよ。

「はい。預かってご本人に返して頂けると助かります。……もしかしてこちらではお預かり頂けませんでしたか?」

「いいえ、違うわ。ここで大丈夫よ。ただ……自分で届けに行かなくて良いのかな、って思っただけよ。」

そう言うとお姉様は社員証を受け取ってくれた。
どうして届けに行かなきゃいけないのかな?
たぶん善意で言ってくれているよね?

「そうね……この紙に部署と名前書いてくれるかしら?」

私は言われるがまま紙に記入した。

「これで大丈夫ですか?」

「……ええ、大丈夫よ。じゃあ、きちんと返しておくわね。」

その時、うちの部署に持って行くはずの書類の束が私の目に映った。
なかなかの量でダンボール一箱分ある。
ここにあるってことは、誰かがうちに持ってこなきゃになるだろうからついでに持って行きますか。

「あの、この書類、うちに持っていく分のようなのでついでに持っていって良いですか?」

お姉様は、これまた意外そうな顔をした。

「確かにそうなんだけど……良いの?かなり重いわよ?」

「ええ、大丈夫です。このぐらいならいつも持っていますから。それにこのまま戻るので無駄が省けますよ。わざわざ持ってきてもらうのも大変でしょうし。」

「それじゃあ、甘えさせてもらうわね。ありがとう。」

私は、じゃあ、社員証よろしくお願いしますと言ってその場を離れた。
うーん、これはもしかしてちょっと微妙な拾いモノだったのかな?
まあ、預けたからいいか。


ーー数日後

社員証を拾ったことも記憶の片隅になってきた頃、彼は来た。

「橘さんいらっしゃいますか?」

声のした方を見ると、顔面偏差値の非常に高いお人がいらっしゃる。
ああいうお人をインテリ眼鏡と言うのだろうか……いや、これだと悪口なのか?
私のことを呼んでいるようだけど、誰かな?
入り口にいるその人に、室内の視線が集中する。
みんながコソコソと小さい声で話しているのが聞こえる。
ふむふむ、なになに

『あれって、営業一課の近藤課長じゃない?』
『うわ〜、こんな近くで見られるなんてラッキーじゃん。』
『でも、なんで橘さんを呼んでいるのかな?』

コンドウ……ああ!
この間の社員証の人か。
周りの視線も気になってきた私は急いで席を立ち、近藤さんの元へと向かった。


「お待たせいたしました、橘です。」

近藤さんと思われる人は私が近づくと、今までの無表情を一転させ笑顔で話しかけてきた。
うわ、笑うと一気に良い人感が出てくる。

「ああ、いきなりすいません。私は営業一課の近藤と言います。あの、この間社員証を拾って頂いたそうで、ありがとうございました。」

「いえ、私はただ拾っただけですから。あの、わざわざ申し訳ありませんでした。」

はあ、花形部署の課長さんにご足労いただくなんて申し訳ないわ〜。
わざわざここまで来てお礼を言うなんて律儀なお人だよ。

「…………」

うん?課長さんは意外そうな顔をしている。
この間会った人事のお姉様の表情に似ているね。
何も言わない課長さんに困った私は、もう一度話しかけてみることにした。

「あの、何か問題でもありましたか?」

ちなみに、私は現在問題が発生していますよ。
何故なら、この課長さんとの話しが終わらないために同じ部署の方たちの視線が集中していますから。
聞いていない風を装っていますが、みんな耳はこちらに集中しているのですよ。

「問題は……ないです。むしろなさ過ぎてビックリしています。……さんの見立てがあってたということか。なるほど。」

誰かの名前の部分は声が小さくて聞こえなかった。

「近藤課長、本当にただ拾っただけですからお気になさらないで下さい。無事受け取られたようなので安心しました。では、私は仕事に戻らせて頂きますね。」

私はこれ以上注目されたくなくて、課長へ挨拶をすると席へ戻ろうとした。
だが、課長は私の手をとっさに掴んだ。
私が立ち止まるとすぐに放してくれたけどね。

「ああ、すいません。あの、お礼に何か……あ、いや、そういうことが嫌いそうですね。ふむ、今は退くべきか……。お時間とらせて申し訳ない。本当にありがとう。」

課長はそう言うと素敵なイケメンスマイルを残し去っていった。
残された私は、案の定みんなに囲まれたよ。
うう〜〜、なんでこんな目にあわなければいけないんだ!
やっぱりあの拾いモノはダメなやつだったか。



ーーまたまた数日後

私は今、非常に微妙な状況に立たされている。

『あの、近藤課長……』

『しーー、もう少し待ってて下さい。』

ただ今資料室よりお送りしております。
何故か課長と2人、資料室の奥の奥、非常に狭い空間に挟まっております。
どうしてこうなってしまったのでしょう……。


私はただ必要な書類を取りに来ただけなんだけど、この資料室に入ってすぐに誰かが慌てるように資料室へと入って来た。
誰だろうと扉の方を見れば、数日前に会った課長さんがちょっと焦りながらキョロキョロしている。
何か探し物かな?

「あの〜、何かお探しですか?」

私が声をかけると課長はビクッと体を震わせた。
あ、いきなりだったからびっくりさせちゃったか。
課長はゆっくりこちらを振り返った。
そして私の姿を見ると大きくため息をついた。

「ふう〜〜、橘さんか。良かった。ってホッとしている場合じゃなかったんだ。えーっと、ごめん、ちょっとここに入って。」

私は課長に押され奥へと追いやられた。
するとすぐに部屋のドアが開く音が聞こえ、誰かが入ってきた。


「近藤課長〜〜、どこですか〜〜?」

可愛らしい女性の声だ。
どうやら課長さんを探しているらしい。
私はすぐに出て行こうとしたが課長がブロックしている。
私が何で出て行かないの?という表情で課長を見ると、課長は困った顔をした。

「んも〜〜、今日こそは付き合ってもらおうと思ったのに〜〜。どこに行っちゃったんだろう。もう、課長ったら照れ屋さんなんだから。」

女性はブツブツ言いながら資料室をウロウロした後、諦めたのか部屋から出て行った。
……そして、今に至るわけで。


「あの、行かれたみたいですよ。」

「ああ、そうだね。」

「「…………」」

何故か無言が続いた。
うーん、仕事に戻っていいかな?
私がそんなことを考えていると課長が

「……本当に私に興味がないんだね。はは、面白いよ橘さん。ねえ、もし良かったら私と友達になってくれないかい?君ともう少し話がしてみたいんだ。」

「……面白いところなんてないと思いますよ。」

「いや、本当に面白いよ。うん、決めた。絶対友達になるよ。」

そんなこと勝手に決められても困るんですが……。



なんて思っていましたが、その後いろいろあって課長とはご飯を食べに行くくらい仲良くなりました。
仲良くなってから聞いたが、人事のお姉様は課長の叔母様だったようで、しかもこの会社の社長は課長のお父様なそうな。
まあ、実はその社長さんとは課長よりも先に知り合っていたりしていたんだけどね。
名字が違ったから気づかなかったよ。
課長曰く、修行中の身のためわざと母親の旧姓を名乗っていたそうな。
跡継ぎって大変だね。
私は平凡だから気楽だって言ったら

「はは、そんなこと言ってられるのは今のうちだよ。今にそんなこと言ってられない状態になるんだから。」

意味がわからない。
ただ最近やたらと人事のお姉様と社長に絡まれるんだけど、どういうことかな。
そのことを課長に言うと笑うだけなんだよね。
謎過ぎる。



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