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平凡な私と平凡じゃない交友関係 作者:メイリ
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2/17

そんな日常

今日も我が家のテレビの前には一ノ瀬君がいる。
まあ、知り合ってそんなに時間は経っていないけど、ここ最近1番頻繁に来ている拾いモノさんだ。
1週間に1回の来訪、このサイクルは基本変わっていない。
たぶん忙しいはず……けどうちに現れる。

人が家に来るのは嫌いではないから良いけど、ちゃんと休んでいるのかね〜。
前の事務所のように、無理は蓮さんがさせないから大丈夫だと思うけど。


「瑞樹さ〜〜ん、お腹空きました〜〜。」

慣れたモノで、ご飯の催促をしてくる。
しかも決まっておにぎりが食べたいと言う。
アレだね、初めての餌付けでおにぎりを使用したからだね。
一ノ瀬君は具のない、塩むすびを好む。
お米の味がわかって良いそうだ。
まあ、作る代わりにお米を山ほど持ち込んでくれるから良いけどね。

「はいはい、今持っていくよ。」

炊きたてご飯をお塩のついた手で軽く握る。
やっぱり炊きたてのお米のおにぎりは最強だね。
握ったお米に海苔を巻く、あっという間に完成だ。

出来立てのおにぎりを一ノ瀬君の前に出せば、「いただきます!」と挨拶を済ませ勢いよくおにぎりにかぶり付く。
大きめに作ったおにぎりをどんどん口に運んで、ものの数分で完食。
自分の作ったものをこんな風に食べてもらえたら幸せだ。


「ふう、ご馳走様でした!これで明日の仕事も何とか乗り越えられそうです。」

「はい、お粗末様でした。こんなおにぎりぐらいで大丈夫なのかい?」

「何言っているんですか?!おにぎりと瑞樹さんに会えるだけで1週間頑張れますよ。……ただ、今回はちょっと明日の仕事が……」

明日の仕事が憂鬱なのかな?
珍しいこともあるもんだ。
基本何でも楽しそうにお仕事している一ノ瀬君が憂鬱になるなんて。

「なんか嫌なお仕事なの?」

「い、いえ!嫌というわけじゃなくて……どう接したら良いのかわからなくて。……あっ、この人、この人と明日対談するんですよ。」

一ノ瀬君がテレビに映る人を見ている。
私も視線をテレビに移せば、そこには今をときめく有名ピアニストの姿が。

「比嘉 遼太郎 さん。この若さで世界で活躍するピアニスト。あらゆる賞を総ナメ。そんな凄い人と同じ年という理由で明日、雑誌の企画で対談するんですよ。しかも海外公演だったとかで今日帰国して明日って。噂によるとスゴく寡黙な人らしくて……明日会話が続くのか心配で、心配で。」

「いやいや、凄い人って。一ノ瀬君だってこの間なんか賞取ってたよね?しかも連ドラの主役やって、来年映画も主演だって聞いたよ?十分凄い人なんだけど。」

「いや、俺なんてまだまだですよ。土方さんのサポートが無ければ、ここまで順調に来てませんから。」

一ノ瀬君は謙遜しているけど、蓮さんも一ノ瀬君のこと褒めていた。
本人には直接言わないみたいだけど、やっぱり才能のあるモノ同士わかるんだね。
そんなことを考えていたら


ピンポーン

チャイムがなった。
その音に一ノ瀬君がビクッとなっている。
何故ならここに一ノ瀬君が来るようになってから、何回かこういう風にチャイムがなり、一ノ瀬君の予想しないような人が現れるからだ。
最近では、あるアイドルグループの1人が遊びに来たことがある。
でも、一ノ瀬君もさすがで、ここで仲良くなって仕事でも上手くやっているようだ。

私は、はいは〜〜いと言いながら玄関へと向かった。
ドアを開けるとそこには

「はぁ〜〜い、瑞樹!元気にしてた〜〜?」

いつもの調子の彼が立っていた。

「うん、元気だよ。久しぶりだね、1年ぶりぐらいかな?」

「そうね〜、今日帰国してその足で来たの。」

「それはお疲れ様。今、1人いるけど良いかな?」

「もちろん、何の連絡もせずに来た私が悪いんだもの。」

快く承諾してくれた彼を連れて一ノ瀬君の待つ居間へと戻った。
彼と一緒に居間へ入ると、案の定一ノ瀬君が固まった。

「ふぇ?」

言葉になっていないよ。
まあ、しょうがないか、さっきまで話題に上っていた本人の登場だもんね。


「あら、初めまして。私は比嘉 遼太郎よ。よろしくね、一ノ瀬 和樹 君。」


どうやら遼太郎君は一ノ瀬君のことを知っていたらしい。
良かったね、明日の対談大丈夫だよ。

「は、は、初めまして!い、一ノ瀬和樹と申します。比嘉遼太郎……さん?」

本当に驚いているみたい。
でも、驚いているのは本人登場というより、たぶんその話し方になんだと思う。

「ふふ、まさか明日対談予定の人にここで会えるなんてね〜。さすが瑞樹の家ね〜。」

遼太郎君は笑いながらそんなことを言っている。
対する一ノ瀬君はまだ信じられないみたいで、ボーッと遼太郎君の顔を見つめていた。

「一ノ瀬君、ちょうど良かったね。今日、遼太郎君と明日何話すか打ち合わせしたら?」

と私が言えば

「え?あ、は、ふぁい。」

一ノ瀬君の面白い返事が返ってきた。

「ぷぷ〜、ふぁいって、面白いね一ノ瀬君。明日はリラックスしてお仕事出来そうだわ。」

遼太郎君が嬉しそうに一ノ瀬君に語りかけている。
とりあえず、一ノ瀬君に遼太郎君のこの口調のこと説明しないといけないね。



「なるほど、お姉さんが3人いてその影響でそういう口調になってしまったんですね。」

そうなのだ、遼太郎君はお姉さんが3人いて、昔から可愛らしい容姿だった遼太郎君は女の子のように扱われていたとか。
物心つく頃にはバッチリ、女言葉?が身についていたらしい。
だから仕事ではその言葉が出ないように、寡黙ということにしていたようだ。

「あ、でも安心してね、恋愛は普通に女の子が好きだから。」

普段、ピアニストとして活躍している時は全然女らしさはないけど、遼太郎君はやっぱりお姉さんたちの影響でお菓子作りが趣味だったり、可愛い小物が好きなのだ。
ただ売れっ子ピアニストのイメージが崩れるとかいう理由で言葉遣いにNGが出てしまい、やむなく喋らないことを選んだ。
でも、対談って……筆談か?

「ねえ、遼太郎君。明日どうするの?いつも通りに話すの?」

「うーん、どうしようかしら。あまり話さず、『はい』と『いえ』で乗り切るつもりだったんだけど、瑞樹の知り合いってなるとそれじゃダメね。是非とも盛り上げないと。」

遼太郎君がやる気を出してくれているけど、遼太郎君のイメージが壊れる……というより、勝手に作られた遼太郎君のイメージが崩れることによって遼太郎君が傷つけられるのはイヤだ。
私と遼太郎君が困っていると、一ノ瀬君がそっと話しかけてきた。

「あの、比嘉さんは日本語だとそうなるんですよね?」

うん?どういう意味?
私はピンときていなかったが、遼太郎君は何か気づいたようだ。

「もしかして一ノ瀬君、英語とか話せちゃう人?」

「はい。この仕事始める前までは海外に憧れていて、本気で留学考えていて英語は話せるようにしたんです。なので専門用語とかではない限り話せます。」

「あら、素敵。なら明日の対談、みんなをびっくりさせちゃいましょうか?」


その言葉通り、対談では周囲を驚かせたらしい。
遼太郎君が英語で挨拶し、それに一ノ瀬君がスラスラっと返したところから始まり、そのままの流れで英語で対談を続けたようだ。
遼太郎君が英語を話すのはみんな知っていたが、一ノ瀬君が話せるのは知らなかったようだし、何より普段寡黙なはずの遼太郎君が笑顔で話しまくったものだから大変だ。
この対談が載った雑誌は異例の大ヒット、書店では品切れが相次いだとか。

そんな2人は今仲良く我が家で寛いでいる。
何を隠そう遼太郎君の好物も塩むすびなのである。
意気投合した2人は仲良く塩むすびを所望している。

「瑞樹さ〜〜ん!お腹空きました!」

「瑞樹!おにぎりいっぱい食べたいわ〜。」

はいはい、わかりましたよ。
私は今日もホカホカご飯でおむすび作り。
たまには他のものも食べなよ、と思いながらもつい喜ぶ顔が見たくて作ってしまう。
そんな日常。

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