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平凡な私と平凡じゃない交友関係 作者:メイリ
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パーティー

「ねえ、お兄ちゃん。何で私はここにいるんだろう? 」

「うん? 何でって……うーん、まあ、アレだ。諦めろ」

 諦められるか。
 何で私がこんなことを言っているかと言いますと、問題はこの場所にある。
 ここは某有名ホテルの最上階、たぶんデラックススイートルームなんて名前がついてそうな、私には全く縁の無い場所なのだ。
 もう、見る物全てが高そうという感想しか持てない私を許してほしい。
 だって本当にわからないんだもん。

「ねえ、お兄ちゃん。私、用事があるんだけど」

「うん? どうせ明日休みだからゲームか本読む気だろう? 」

 ふむ、バレてる。
 しかしそれの何が悪い!
 休みぐらい好きなことをさせてほしい。
 何が悲しくて会社帰りに兄に拉致られねばならんのだ。

「じゃあ、いつ帰って良いの? 」

「パーティー出たら」

 はあ?
 パーティー……ですと?
 いつの間に私はそんなモノに出ることになったのだろう。
 記憶が無いんだけど。

「お兄ちゃん……私はいつの間にパーティーに出ることになってたんだろう? 」

「うん? 今言った」

 ヨシ!その喧嘩買った!
 今言ったって何なの。

「帰る」

「だーめ。それにタダで出ろっていうわけじゃない。……ほら、コレ」

 こ、これは!
 ずっと欲しかったゲーム!
 ちょっと昔の物で、根強い人気の為かなかなか手に入らない幻のお宝。

「…………イエス、サー。何でも参加させていただきます」

「うん、ありがと」

 このゲームが出来るなら、ちょっとぐらいのパーティー参加するわ。
 たぶん美味しいご飯も食べられるでしょう。


「じゃあ、瑞樹の許可ももらったことだし着替えようね? 」

「え? 着替えるの? 」

「うーん、瑞樹は何を着ていても可愛いけど、今回のパーティーって結構エライ人がいるから正装が良いよ。大丈夫。ちゃんと瑞樹用にドレスとアクセサリーは準備しているから。きっと気にいるよ。じゃあ、皆さんよろしくお願いしますね」

 兄がそう言うと何処からか人がワラワラと現れた。
 うわ、なにこの人たち。
 なんかみんなオシャレな感じなんですけど……。

「お、お兄ちゃん? この人たちって……」

「うん? みんな瑞樹をもっと可愛くしてくれる為に来てくれたんだ。安心して着替えてきてね」

「え? って、うわ〜〜」

 私は現れた人たちに引きづられるように奥へと連れて行かれた。
 何なんだ、この状態は?



 そして私は散々弄ばれた。
 そりゃもう念入りに。
 前にリナにやられたことを数人がかりでだ。

 仕上がった私を兄が満足気に見ている。
 私は無言で近くにあったゴージャスなクッションを、全力で兄に投げつけた。
 しかし兄は何時ぞやかの一ノ瀬君のように避けやがった。
 何でみんな私の怒りの一撃を甘んじて受けないんだろう?

「瑞樹とっても似合っているよ。さあ、行こうかお姫様」

 いつに間にかいつもの胡散臭い占い師用のローブから着替えた兄は、自分の兄ながらカッコよかった。
 っく、眩しい。
 兄は私の手を取るとスタスタと部屋を後にした。
 歩きながら兄が

「今日のパーティーで瑞樹は、俺の側に居てくれるだけで良いから。誰かに何か言われても返事しなくて良いよ。むしろしないで。あと、勝手に何処かへは行かないでね? 」

「む。ご飯は? 」

 こんな苦行に耐えなきゃいけないのにご飯抜きかい?

「さすが瑞樹。色気より食い気だね。悪いけどパーティーでは俺から離れないで。ご飯は終わってから何でも好きな物食べさせてあげるよ」

 はあ〜〜、しょうがないか。
 確かにお腹は空いているけど、このお腹に余裕のないドレスではお腹いっぱい食べられない。
 終わったら好きなだけ頼んでやろう。

「わかったよ。じゃあ、とっとと終わらせよう」

「ありがとう瑞樹。そうだね、とっとと終わるといいね」

 そう言う兄の顔は何故か苦笑い。
 ……何だろう、そこはかとなく嫌な予感が。
 私は、いわゆるフラグと呼ばれるものが立った気がした。


 パーティー会場に到着した。
 ……うん、こんな豪華なパーティーはテレビでしか見たことがない。
 聞いてなかったけど、今日のパーティーはどういったものなんだろう?
 聞きたいような、聞いたら後悔するような……迷いますな。

 そんなことを考えていたら、兄が私の手を引きドンドン会場内へと進んで行った。
 なんか妙に視線を感じます。
 まあ、兄がカッコ良いからみんな目の保養をしているんでしょうな。

 ところで、チラホラと私の知り合いも見かけますな〜〜。
 でも、たぶん私がドレスを着てバッチリメイクもしている為か誰も気づいてくれない。
 化粧で印象って変わるもんね。

 そんなことを考えながら兄に引きづられていると、誰かが兄の前に立ちふさがった。
 私は兄が急に止まったため、思いっきり兄の背中にぶつかる結果に。
 う〜〜、鼻が痛いです。

「これはこれは、草薙さんではないですか」

 えーっと、草薙さんというのは兄のことですよ。
 兄の名前は草薙海里というのです。

「…………ああ。こんばんわ」

 お、兄の態度がそっけない。
 どうやらあまり好きではない人のようだ。
 だけどお相手の……なかなか恰幅の良いおじさんは兄と話したいようで。

「このようなところに来るなんて珍しいですね。是非とも今度は私の開催するものにも出ていただきたいもんですな」

 おじさんは笑いながらそんなことを言っている。
 その横にはなかなか綺麗な、だけど目つきの鋭いお嬢さんが立っていた。
 まあ、目つきが鋭いのはたぶん、私のことを邪魔だと思っているのでしょう。
 だって兄を見るその眼差しは、非常に熱がこもっているもの。
 そのお嬢さんは隣のおじさんに何事か話しかけている。

「ところで……草薙さんの後ろにいる方はどなたですかな? 見かけたことがありませんが」

 そう言うおじさんは私をジッと見てきた。
 私なんて見なくてイイですよ〜〜。
 おじさんの言葉に兄がニヤッと笑った……何だろう非常に嫌な予感が。

「ええ、あまりこういう場所には連れて来ませんから。この子は私の……とても大事な人ですよ」

 兄の言葉にお嬢さんが般若に!
 怖いっす、マジヤバイっす!
 しかも絶妙に私にだけその顔を見せてくる。

「ほう! しかし草薙さんでしたらより取り見取りでしょう。あまり早くに一人に決めてしまうのはもったいないのではないですかな? 」

 うわ〜〜、このおじさんナニモノ?
 それともこういうところの集まりではこんなやり取りが日常茶飯事なの?
 いろいろ突っ込みたいけど喋るなって言われているからガマン、ガマン。

「この子は特別なんですよ。この子の代わりなんて誰にも出来ませんから」

 兄はそう言うと私にキラキラの笑顔を見せて肩を抱き寄せた。
 兄〜〜、見て、見てちょうだい!
 今のお嬢さんのお顔を、もはや原型をとどめていないですよ!
 でも兄は何事もなかったかのようにその場を後にした。
 しかも小さな声で『小物が』とか言ってるし。
 正直あの人たちにはもう関わりたくないですな。


 …………なんて思ったのが悪いんだろうか?
 只今、私ピンチのようです。

「ねえ、あなた! 何で草薙さんと一緒にいるのよ! 今まで草薙さんは一人でいたのに……。草薙さんは私のお父様もお認めになる人なのよ。それなのに、今までこういう催し物に参加もしたことのないあなたが何故草薙さんの隣にいるのよ! 」

 絶賛絡まれ中。
 ちょっとだけだからと思いトイレに行ったのが悪かったのですね。
 出たところでこのお嬢さんに捕まってしまった。

「何で何も言わないの? 何か言いなさいよ! 」

 まあ、言いたいことならイロイロあるけど聞いてくれなさそうだし。
 それに兄にも何も喋るなって言われているしな〜。
 私が遠くを眺めながらそんなことを考えているとお嬢さんがますますヒートアップしていた。

「あなた私のことを馬鹿にしているのね! 許さない……許さないんだから! 」

 あ、これはぶたれる。
 そう悟った私は目をつぶってその時を待った。
 …………
 あれ? 来るはずの衝撃がなかなか来ませんよ。
 私は恐る恐る目を開けてみた。

 私の目の前ではお嬢さんが床とお友達になっている。
 そして周りには…………あれ? 知り合いが結構いますね。


「瑞樹大丈夫か?」
「怪我などしていませんか? 」
「いや〜〜ん、瑞樹ったらカワイイ! 」
「おい、さすがに床に倒すのは……まあ、しょうがねえか」
「瑞樹さん……ヤバイです。その姿は本当にマズイです。と、とりあえず写真を」

 上から蓮さん、アレク、リナ、おやっさん、一ノ瀬君だ。
 みんな良く私ってわかったね。
 あ、そっか、この間のゲーム大会の時か。

 私はとりあえずみんなに深く礼をした。

「うん? どうした。何で喋んないんだ? 」

 私は身振り手振りで何とか説明を試みた。

「ふむふむ、なるほど。お兄さんのお願いで話せないと」

 私が言うのも何だけど良く分かったねアレク。
 ところでみんなは何でここに?
 どうやらこのパーティーはいろんな分野の有名人を集めたものらしい。

「それでこの問題児はどうするよ」

 言わずと知れたお嬢さんですよ。
 私としてはもう関わりたくないんだけど。
 するとアレクが近くを通りかかったホテルの人を呼び止めて

「すみません。この方が貧血で倒れてしまったようなので何処かで休ませてあげて下さい」

 速攻回収されていくお嬢さん。
 とりあえず面倒な人はいなくなってくれたか。

「じゃあ、瑞樹は私が会場に連れて行くね。男性だと後で何か言われるかもしれないからさ」

 リナはそう言うと私の手を引いて会場内に戻り始めた。
 後ろから男性陣の声が聞こえる。

『ズルいですよ、リナさん』
『もうちょっとゆっくりでも良いんじゃないか?』

 などなど。


「それで、瑞樹〜〜。そのお兄さんとやらはどこにいるのかしら? 」

 私はさっきまで兄がいた方向を指し示した。
 リナはその方向へと歩みを進める。
 すると前方に兄の姿が。
 私はリナの手を引っ張ってそちらへと向かった。

「うん? おかえり。遅かったね。……おや、綺麗なお嬢さんを連れて来たのかい? 」

 兄はそう言ってリナを見た。
 対するリナは……アレ? 固まってる?
『うそ……。この人が瑞樹の……。あ〜〜でも瑞樹なら何でもアリか。むしろ納得? 』
 リナがブツブツ言っている。

「えーっと、この子を助けてくれてありがとう。さすが瑞樹のキラキラさんたちだね。さあ、あと少しでこの茶番も終わるよ。もうちょっとだけ頑張ってね」

 ふむ、兄は私に何が起きたか知っているみたいだ。
 ……まあ、アレだけ当たる占い師なんだから全てお見通しってところなのかな。
 私を送ってくれたリナは、まだ挨拶する人がいるとかで名残惜しそうに去って行った。
 そしてパーティーも終盤、もうそろそろお開きかと思われる頃あの人たちがまたやって来た。


「草薙さん。あなたのお連れ様は私の娘に暴力を振るってきたそうなのですが、どういうおつもりですかな? 」

 さっきのおじさんとお嬢さん、ついでにおじさんの部下らしき人が私たちの周りにやって来た。

「草薙さん! あなたはその子に騙されているんですわ。大人しそうにしていますが、私は気づいたら気を失っていたんですよ! 」

 ふむ、自分の行いはなかったことになっているんですね。
 さて、説明したくても聞いてくれなさそうだし、兄から許可も出ていないからな〜〜。
 どうしようかと思っていたら突然会場が暗くなった。
 周囲がざわついていると、前方にスクリーンが登場。
 映し出されたのは…………

「ちょ! 何しているの?! 早く止めて! 」

 はい、お嬢さんが慌てております。
 そうです、御察しの通り先ほど私がお嬢さんに詰め寄られていたところですね。
 おお、お嬢さんがすごい形相で私を打とうとしております、ホラーですな。

 上映が終わって明るくなるとスクリーンの横には鴉さんの姿が……いつの間に!
 ちなみにお嬢さんが気を失った場面はありません。

「……それで、この子が何をしたんでしょうね? どう見ても一方的にそちらのお嬢さんにやられているんですが」

「いや、これは……」

 おじさんは顔色が非常に悪い。
 出てもいない汗をハンカチで何度も拭っている。
 対してお嬢さんは

「こ、こんなの作り物よ! 私は気を失ったのよ! 」

 よくもまだそんなことが言えるな〜〜。
 心臓に毛が生えているんだろうか?

「私はね、大切にしているモノを傷つけられるのが一番嫌いなんですよ。短い付き合いでしたがあなたとは手を切ります。それから……あなたと付き合いがある人たちの依頼も一切受け付けません。個人的な親交だろうが会社の付き合いだろうが少しでも付き合いがあれば、私は絶対占いません」

 兄はそう言うと私を連れて会場を後にした。
 後ろからおじさんたちの叫び声が聞こえるが、追いかけては来ないみたい。
 きっと誰かが止めてくれているんだろうね。


 ーー数日後

「ってなわけで、全て丸く収まったよ」

 兄が笑顔でそう言った。
 テレビにはこの間のおじさんが映っている。
 イロイロやらかしていたようで、兄が縁を切ったことで今まで押さえつけられていた他の人たちもみんな見限り、出るわ出るわの不正やら犯罪まがいの証拠、証言が。
 その結果、かなりの大企業の社長だったおじさんは捕まってしまいました。

「俺もここまでやるつもりはなかったんだけどさ〜〜。でも、あいつ俺の大事な妹に手を出すつもりだったんだよ。瑞樹の安全はかなり保たれているけど絶対はないからね。やられる前にやってやった訳。見事に策にハマってくれて良かったよ」

 ふむ、兄は私のためにこの舞台を整えてくれたようだ。

「瑞樹のキラキラたちも手伝ってくれたしね。みんな喜んでやってくれたよ」

 なるほど、見えないところで助けられていたようだ。
 たぶんこうやって私の平和な日常は保たれている様子。
 ……私、平凡……だよね?
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