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平凡な私と平凡じゃない交友関係 作者:メイリ
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通常運転

「ところで一ノ瀬君や、君確か連ドラ撮ってるんだよね?しかもバッチリ主役だったよね?」

いつも通り、私の部屋のテレビの前でおにぎりを頬張っている一ノ瀬君に話しかけてみる。

「ふぁい。……ゴクン。はい、今絶賛撮影中ですよ。」

口の中のおにぎりの為におかしい返事をしているが……どうやら撮影中で間違いないらしい。
ならば次の質問はこれだね。

「では、その超忙しいはずの一ノ瀬君は何故ここにいるのでしょうか?」

本当に不思議だ。
一ノ瀬君を拾ってからずっと、一週間に一回の我が家への訪問は途切れたことがない。
蓮さんからたまに聞く一ノ瀬君の仕事内容を考えると、どう考えてもおかしい。
だからこんな疑問を持つのも必然なんだけど……。
一ノ瀬君はそうは思わなかったらしい。

「何故って……っは!まさか……俺、邪魔何ですか?」

「いや、邪魔っていうか、お姉さんは不思議なのですよ。超忙しい一ノ瀬君がこうも一週間に一回ここに来られることを。」

私の言葉に一ノ瀬君はあからさまにホッとした表情を浮かべた。

「なんだ、そんなことですか。俺は瑞樹さんに捨てられるのかもって焦りましたよ。」

「捨てるって……」

まあ、拾ったけど私に所有権は発生していないよ。

「でも、忙しいって心配してくれたんですね?嬉しいな〜。そういえば瑞樹さんには言ってなかったけど、俺、土方さんの事務所に移る時に一つだけ約束してもらったんですよ。」

「約束? 」

「はい。どんなに眠る時間がないくらい忙しくても、一週間に一回必ず瑞樹さんのところへ行ける時間を取ってくれるってことを。」

「は? 」

「俺、寝なくても大丈夫だけど、瑞樹さんのおにぎり食べること出来なかったらポンコツになる自信があるんですよ。だから土方さんにお願いしたんです。」

ニコニコ笑顔で話している一ノ瀬君には悪いけど、私的には呆れている。
だって滅茶苦茶忙しいのに身体を休めずにここにいるんだもん。
一ノ瀬君の仕事量を考えたら、いつ倒れてもおかしくないはず。
そう考えたら私は自然と体が動いていた。

「え? え? …………え〜〜! 」

一ノ瀬君が奇声をあげているが御構い無しだ。
私は一ノ瀬君の頭を無理やり自分の膝の上にのせた。
いわゆる膝枕ってやつだね。

「ちょ、ちょっと瑞樹さん! これって、どういう……」

「はい、一ノ瀬君は黙ってて下さい。そしておとなしくお姉さんの言うことを聞いて寝ちゃって下さい。おにぎり食べただけで体力回復するわけないでしょう。さあ、時間の許す限り眠るがいいさ。」

私は起き上がろうとする一ノ瀬君を押し戻した。
一ノ瀬君の方がもちろん力は強いが、私を無理やり退けるつもりはないようだ。
ただ…………非常に真っ赤だけど。

「おや? これは……ほら、無理するから熱が出たんだよ。えーっと、ほい。こうやって毛布も掛けてっと。さあ、寝てちょうだい。」

「へ? い、いや、これじゃあ眠れないですよ!」

一ノ瀬君は慌てている。
何だよ、私の膝枕じゃ不満ということか?

「じゃあ、私のベットで寝る?」

「か、勘弁して下さい。俺、まだ死にたくないですよ〜〜。だけど、この状態も既にヤバイ……」

その後、寝ろ、眠れないのやり取りをしたが、結局家主の権限で無理やり一ノ瀬君を眠らせることに成功した。
何故かずっと『煩悩退散』とか『無になれ俺』とか言っていたけど、やっぱり疲れていたみたいで、暫くすると眠ってしまったのだ。
小一時間睡眠をとった一ノ瀬君は、起きると慌てた様子で我が家を後にした。
そんなに慌てて帰るようならやっぱりゆっくり休息をとった方が良いとお姉さんは思うよ。


ーー数日後

我が家には今日も一ノ瀬君が来ている。
そして今日は、蓮さんと遼太郎君、リナも遊びに来ていた。
みんな本当は忙しいんだよね?そうだよね?

「あら、和樹のドラマ始まるわね。楽しみだわ〜〜。」

遼太郎君がウキウキした様子でテレビのリモコンをいじっている。
蓮さんとリナもテレビの前で待機中だ。
そんな中、何故か一ノ瀬君だけはソファーの隅っこでクッションを抱えながら丸くなっている。
あの大きさで丸くなっても可愛くないよ。

ドラマが始まって、一ノ瀬君とヒロインの子がある場面に差し掛かったところでみんなが画面に食いついた。

「うん?一ノ瀬、お前これ凄い気持ち入っているな。」と蓮さん。

「そうね。なんか本当にこのヒロインが好きみたい。」とリナ。

「あらあら、真っ赤になるところもよく出来てるわね〜〜。こっちまで照れちゃうわ。」と遼太郎君。

みんながあんまり言うから、私もご飯作りの手を止めてテレビを見てみた。


…………う〜〜ん。
画面にはヒロインに膝枕されている一ノ瀬君の姿。
これって、なんか最近記憶に残っているような。
私もテレビを見ていることに気づいた一ノ瀬君がソファーから飛び降りて、慌ててこっちへやって来た。

「あ、あの! こ、これは、別にヒロインの子が好きなわけではなくて! いや、あのドラマの中ではもちろん好きなんですけど。そうじゃなくて……」

一ノ瀬君本人も何を言っているのかわからなくなってしまったようで、頭を抱えている。
一ノ瀬君の様子がおかしいことに気づいた蓮さんが、一ノ瀬君に理由を尋ねた。
すると、一ノ瀬君がポツポツと語り出した。

「この間、瑞樹さんには膝枕してもらって……そうしたらすぐにドラマでも同じような場面を演じる機会がやって来て……なんか瑞樹さんのことを思い出してその場面を演じたら一発OKが出たんですけど、自分で後から見たらすっごく恥ずかしくなっちゃって……」

一ノ瀬君の話を聞いたみんなは

「「「瑞樹に膝枕してもらったの?! 」」」

突っ込むところはそこかな?
膝枕発言に蓮さんは一ノ瀬君の両肩を掴んでなんか言っている。
遼太郎君は

「ねえ、瑞樹。もちろん私にもしてくれるでしょう? 膝枕。あ、でも〜〜、私が瑞樹に膝枕するっていうのも捨てがたいわね〜〜。ねえ、どっちが良い?」

「別にどっちでも良いけど、遼太郎君はちゃんと体調管理出来ているでしょう?」

遼太郎君は基本、そこまで疲れた状態で我が家に来ることはない。
いつでも元気いっぱいでここに来るから。
ん? じゃあ、やっぱり私が膝枕してもらうのかな?
別に家だから自分のベットで寝た方が疲れはとれる。

「ふふ、やっぱり瑞樹は瑞樹ね。そうね〜〜、私は今のところ大丈夫だもんね。」

遼太郎君はニッコリ笑ってそう言ってくれた。
すると今度はリナが絡んできた。

「も〜〜、一ノ瀬君ばっかりズルいよ。私も瑞樹で癒されたい! っていうか瑞樹をまたいじりたい! 」

「……ヤダよ。」

私が本音を漏らすと残念そうに肩を落としている。
そんな風にされても嫌なものは嫌だ。
平凡が一番だよ。


その後、その一ノ瀬君が出演したドラマの膝枕シーンはファンの間で『神回』と呼ばれるようになったとか。
あまりにも一ノ瀬君の姿にキュンキュンしたファンの皆さんは、ヒロイン役の子にかなりジェラシーを燃やしたらしく、しばらくの間騒がれていた。
まあ、そんな事情もあり一ノ瀬君の出演したドラマは同時期のドラマの中で最高視聴率を稼いだそうだ。
なんかよくわからないけど、最終的に蓮さんから凄く感謝された。
事務所的には万々歳だけど、自分的には微妙とかわけがわからないことも言っていたけどね。
とにかく、お役に立てたなら良かったのかな?

私が一ノ瀬君を膝枕したことは、何故か拾いモノ仲間にも知れ渡り一ノ瀬君は会う人会う人にど突かれていた。
私が注意しようか?と言うと

「いえ……これは避けるべきではない案件なので。瑞樹さんは気にしないで下さい。俺、これに関しては逃げませんから。」

と引かない姿勢。
まあ、一ノ瀬君が何故か嬉しそうにど突かれているから良いことにしておこうかな。

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