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平凡な私と平凡じゃない交友関係 作者:メイリ
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こんな日常

私は普通だ。
身長、体重ともに平均。
成績もいつも真ん中。
容姿もいたって普通。
でも、1つだけ……1つだけ普通じゃないことがある。


「橘さん、この書類お願い。」

「はい、わかりました。」

私は素直に書類を受け取り、すぐに作業に入る。
私はこの会社で事務をしている。
この会社はかなり大きい、普通の私がいるのがおかしいくらい。

私の名前は 橘 瑞樹 。
目立つことが嫌いな、いたって普通の一般ピープルだ。
年は25、彼氏なし。
好きなことは散歩。
特技は……よくイロイロなモノを拾うこと。

さて、今日もよく働いた。
今日は……そうだなぁ、違う道で帰りたい気分だ。
まあ、だいたいそういう気分の日は……こうなるんだけどね。


私の目の前にはずぶ濡れの男の子がいる。
どうやら具合が良くないようだ。
建物の陰に隠れるようにうずくまっている。
うん、また拾っちゃうかな?
私は男の子に頭の上に自分のさしていた傘を向けた。
少しすると男の子が私の方を見上げた、どうやら雨が当たらないのを不思議に思ったらしい。
うーん、なんか見たことあるような気がするけど、それよりまず濡れネズミを何とかしないとね。

「大丈夫?なわけないか。ほら、こっちおいで。私の家近くだからタオル貸してあげるよ。あ、別に騙そうなんて思っていないからね。えーっと、あ、これこれ、これ私の免許証。顔も合っているでしょう?名前は橘 瑞樹。とにかくこのままだともっと具合が悪くなりそうだからこっちにおいで。」

男の子は迷うような素振りを見せたが、最終的に私の後をついてきた。
部屋に入るのを躊躇っている男の子の手を引いて、風呂場に押し込んだ。
ちゃんとシャワーの使い方は教えたよ。

「着替えをここに置いておくよ。」

「でも……」

「ここまで来たんだから諦めてお節介を受けて。ああ、濡れた服は乾燥機にかけるから帰りは大丈夫だよ。タオルもあるから使ってね。」

そこまで言うと私は洗面所を後にした。
そして玄関に向かって濡れている男の子の靴を靴の乾燥機にかける。
あとは軽く温かいものでも用意するか。
次は台所で、予約炊きしていたホカホカご飯でおにぎりと、みそ汁を準備した。
まあ、食べるかわからないけど、食べなかったら私の夕飯になるだけだ。
そうこうするうちに男の子がシャワーを終えてこちらに来た。


「あ、ありがとう……ございます。」

お礼を言う男の子の髪はまだ濡れている。
私は男の子に近づき濡れている髪をタオルで拭いた。

「ほら、まだ濡れてるよ。風邪ひいちゃうからちゃんと乾かさないと。ここに座って。」

戸惑っている男の子を座らせ、ドライヤーで髪を乾かす。
男の子の髪はサラサラだ、うーん羨ましい。

「はい、オッケー。じゃあ、これ食べない?もしよかったらだけど。」

私はおにぎりとみそ汁を見せた。
男の子は私のお節介に慣れたのか、素直に頷いてくれた。

「良かった。じゃあ、今準備するね。」

男の子は私の準備したみそ汁をフウフウと冷ましながら飲み、おにぎりを頬張った。

「美味しい……です。」

そう言ってくれた男の子の目には涙が浮かんでいた。
そのあとも次から次へと涙がこぼれる。
泣きながらも男の子は完食した。
そしてその後、何故あんなところにいたかを話してくれた。


男の子……いや、男の子っていうのは失礼か。
彼、一ノ瀬 和樹 君、お年は20歳。
彼は、ここ最近テレビドラマで引っ張りだこの若手ナンバーワン俳優さんでした。
いや、どこかで見たような気がしてはいたんだけど、そういうのに疎いからね〜。
もちろん見栄を張っても良いことないから素直にわからなかった、ごめんねって言いましたよ。
私の言葉に一ノ瀬君はちょっと笑みを浮かべて、俺もまだまだですって言ってくれた、良い子だね。

一ノ瀬君はここ最近のあまりの忙しさに、突発的に逃げてしまったようだ。
休みもずっとなく、眠れない日が続いていたとのこと。
そんな時に雨にも降られ、何処にも行く当てがなくあんなところにいたところ私に拾われたらしい。

話を聞いた私はすぐにある人に連絡をとった。
私が拾ったってことはきっと、一ノ瀬君は今後いなくてはならない存在に成長していくはず。
ならば、私に出来ることはただ1つ。
私の唯一普通じゃない交友関係を使うべきだ。


『もしもし、蓮さん?忙しいところにごめんね。あのね、お願いがあるんだけど、私ねまた「拾いモノ」したの。それで、今回は俳優さんでね。だったら蓮さんが良いと思ったの。……うん?ああ、彼の名前?え、うん、そうだよ、男の子だよ。…………え〜〜、ないない、私なんて襲うわけないじゃん。心配性だな〜、蓮さんは。で、名前だけど、一ノ瀬 和樹 君。……あ、やっぱり知ってた?彼、有名なんだね。私はなんか見たことあるな〜ぐらいだったけど。まあ、私が拾ったから責任持たないとね。……うん?今から来るの?うん、わかったよ。じゃあ、よろしくね。」

そんなわけで打てる手は打った。
一ノ瀬君は疲れているようでウツラウツラしている。
私は毛布を持ってきてかけてあげた。
しばらくすると寝息が聞こえてきた、眠ったようだ。


ーー1時間後

ピンポーン

どうやら蓮さんが来てくれたらしい。
チャイムの音で一ノ瀬君は目が覚めたようで、目を擦っている。
私はそんな一ノ瀬君を居間に残し、玄関へと向かった。
ドアを開けると目の前には、綺麗なお顔がある。

「あ、蓮さんいらっしゃい。忙しいところごめんね。」

「……はぁ〜〜、お前もっと危機感持てよ。確かにお前のその『拾いモノ』の能力は凄いけど、万が一っていうこともあるだろう?まあ、今回も見事に大当たりみたいだけど。……で、何処にいるんだ?」

私は蓮さんを連れて、一ノ瀬君がいる居間へと向かった。
私が蓮さんを連れて居間に戻ると、蓮さんを見た一ノ瀬君が固まった。
ありゃ、先に説明しとけば良かったか?
固まった一ノ瀬君を見て蓮さんが

「瑞樹、お前何にも言ってなかったのか?」

「てへっ」

ベチッ
無言でど突かれた。
確かに私が悪いけど、何もど突かなくても……。

「はあ〜〜、しょうがない。久しぶりだな?一ノ瀬。」

やっぱり知り合いでしたか。
ここで説明しましょう、蓮さんこと、土方 蓮さんは俳優出身で、今は自分で事務所を構えております。
しかも若いのにその事務所は急成長。
今や業界内でも一目を置かれる存在だとか……まあ、これも私の普通じゃない交友関係からの受け売りですけどね。
私に業界のことがわかるわけない。
興味もないのに知識だけが増えていくよ、みんなイロイロ教えていってくれるから。

「はっ、え?な!ど、どうしてここに土方さんが!?」

ありゃりゃ、一ノ瀬君がパニクっている。
ごめんよ〜。

「まあ、落ち着け。お前、ラッキーだぞ。こいつに拾われて。とりあえず、俺にもわかるように事情を説明してくれ。話はそれからだ。」

私と一ノ瀬君はこれまでの経緯を説明した。
ちなみに蓮さんと一ノ瀬君は以前ドラマで共演したことがあるとかで、面識があるらしい。
蓮さんは私達の話しをウンウンと聞いている。


「なるほどな、話しはわかった。……よし、一ノ瀬お前うちに来い。話しは俺がつけてやる。」

どうやら蓮さんが動いてくれるらしい。
だけど突然そんなことを言っている蓮さんに一ノ瀬君は戸惑っている。

「え?あの、うちにって、そんなに簡単なことではないですよね?」

「まあな。でも、瑞樹が拾ったんだ、なら俺も全力を出す。ちょうどお前が今いる事務所のスキャンダルネタを知っているんだ。瑞樹、お前も責任取るならあいつに連絡してくれ。スキャンダルの証拠を集めたい。それから万が一の時のためにおやっさんにも声かけてくれ。」

「うん?証拠集め……ヤバめ?それともあっさりめ?」

「ヤバめ。」

なるほど、意外と一ノ瀬君の事務所は問題あるところらしい。

「じゃあ、『鴉』さんに頼むね。」

『鴉』さんは私が昔拾った、かなり不思議な人だ。
イロイロな情報を瞬時に集めてくれる。

「あ、あとおやっさんって……そんなに被害ありそうなの?」

「保険だ。あの人が出てくれたら1発で片がつく。」

ふーん、さすがおやっさんだね。
おやっさんも私が昔拾った。
かれこれ10年前になる。
おやっさんって言っているけど、まだ37才、ご職業は……警察官だ。
よくわからないけど、エリートらしい、キャリア何ちゃらとか。

とにかく2人には連絡してみた。
私からお願いしたところ、2人とも快く引き受けてくれた。
みんな優しいね。


万全の体制で臨んだわけだが、意外とあっさりと決着した……らしい。
まあ、今や業界内でも発言力のある蓮さんに、鴉さんの集めた確たる証拠、トドメとばかりにおやっさんの名前を出せば、いくら今をときめく若手俳優でも放出しますよ。
自分の会社の利益を守る為なら。
まあ、あっちはいくらでも代わりはいると思っている若手俳優が、今後急成長を遂げるわけだが、それはあちらには関係ない話しだもんね。

今回の拾いモノも素晴らしい才能の持ち主だった。
道端には凄いモノがいっぱい落ちているんだね。

ちなみに一ノ瀬君は蓮さんの事務所に移って生き生きと仕事をしている。
今は仕事が楽しいっていつも言っている。
……何で知っているかというと

ピンポーン

「ありゃ、また来たの?」

「またって言わないでよ。何たって俺は瑞樹さんに拾われたんだから面倒みて下さい。」

今じゃ1週間に1度はうちに来る。
たまにうちに来ている別の拾いモノに会ってはお互いにビックリしている時がある。
まあ、みんな有名人らしいからしょうがないよね?

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