第三部「無視」
私には記憶がなかった。
私が生まれたところは、人がたくさんいる街中で生まれた。
最初に目が覚めたところがそこだから、私はそこを産まれたところと呼んでいる。
右も左もわからないところに生まれた私は、ただただ人の流れに沿って歩いていた。
歩いているという感覚はなかった。建物に触れているのに触れている感触がなかった。
ただ足を動かしてる、ただ手を空中に静止させているだけのようだった。
人の言葉は聞けたし理解もできた。だけど、私の声は私の中に流れるだけで、相手には伝わらない。
私は・・・誰なの?
つぶやくけど、それは自分の中にしか流れてこない。
ふと、私は足を動かすのをやめて、空を見上げた。
何故?私はいるの?
ずっと生まれて考えていたことだ。
何にもできない私が、何をすればいいのかわからなかった。
目の前には大きな鏡に映された私がいた。
でも、人々は私を無視する。
私はここに。
ちゃんといるのに。
何で?無視をするの?
私は通り過ぎる人たちに声をかけた。
あの・・・・すみません。
しかし、誰一人
お尋ねしたいんですけど。
止まってはくれなかった。
止まってくれませんか?
本当に見ず知らずの人から無視をされ続けた。
いい加減にしろ!!
怒鳴り声をあげ、私は一人の青年の肩をつかもうとする。
私の手は、青年の肩を通り抜け地面に落ちた。
・・・えっ・・・・・?
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