第二部「犬」
今俺の目の前には相当ご機嫌斜めな犬がいる。
牙をむき出しにして俺を威嚇しているつもりなのだろうか?
はぁ・・・・。
ため息をつく。
ご機嫌斜めな犬は吠える。吠える。吠える。
よくもまぁこれだけ吠えて、喉が嗄れないもんだ。
「犬の言葉はわからねぇんだ。」
俺は犬に向かって吐き捨てるように喋るが犬も俺の言葉を理解していない。
まぁそれもそうか。
一人で納得した俺は手足を広げ、
「俺の」
言い終わる前に犬が飛び掛ってきた。
俺は犬の思いがけない行動にびっくりして、動きが取れなかった。
足は噛まれ、腕は抉られるように引っかかれ、一瞬のことで俺は激痛にわめくしかなかった。
全身がいてぇ・・・。
「この糞犬が」
なんとか力を振り絞って犬に手を伸ばす。
指が何かに突き刺さった感触。生ぬるい感触。液体が指先から手へと伝わる。
犬が後ずさった。
暗くてよく見えないが、犬の右目の周りには赤黒い液体が流れていた。
瞬時に、俺の指がこの犬の右目に入ったのを理解した。
理解して、俺は、逃げた。
犬に背を向けて走ろうとしたとき足に激痛が走った。
あぁそうだった。あの犬に足を噛み付かれてたんだっけ。
俺は、足に力が入らなくて、犬に背を向けたまま座り込んでしまった。
それを、あの犬は放っておかなかった。
右目の恨みというように、俺を押し倒しす。
俺はなすがままに、動かなかった。
首筋に生暖かい息がかかったのを俺は感じて、そこで、俺は意識をなくした。 |