兄のペルソナ
学校から帰ってきた妹が、家に女友達を連れてきた。
「おかえり……あ、いらっしゃい!」
「こんにちは……あの…おじゃまします……。」
玄関で出迎えた兄に、妹の友達は照れ臭そうに挨拶をした。
「あなたのお兄さんってかっこいいよね……。」
妹の部屋で、妹の友達はとんでもないことを言い出した。
「な……何言ってるの!? 全然かっこよくないよ!! うちのお兄ちゃんはすっごく変なんだよ!!」
「どんなふうに変なの…?」
「そ……それは………その………なんか私のことを大好きとか言ってきたり……。」
「え? それは良いことなんじゃ……。」
「そうなんだけど……でもなんか危険な匂いが……。」
妹はまだ幼い故、兄が自分に抱いている感情をはっきりと理解できてはいない。しかし、潜在意識では我が身に迫る危険をしっかりと察しているのである。
「あっ、そうそう。お兄ちゃん、私の出した簡単なナゾナゾに答えられないんだよ。一年生のナゾナゾなのに。これは絶対おかしいよね?」
「わざと間違えてあげてるに決まってるじゃない。やっぱりいいお兄さんだわ。」
「うっ……。あ、あとお兄ちゃん、デューク更家さんの歩きかたで近づいてくるのよ? これは変でしょ?」
「ユーモアがあっていいじゃない。」
「そ…それから……そうそう! 私の宿題の邪魔をしてくるんだよ! 悪いお兄ちゃんでしょ!?」
「あなたのことが可愛いから、かまいたいのよ。それくらい許してあげたら?」
もう妹は何も言えなくなってしまった。
「入るよ〜。」
兄がお菓子とジュースを持ってきてくれた。
「今日は暑かっただろ? ゆっくりしていきなよ。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
妙に優しい兄。いや、兄は基本的にいつも穏やかなんだが、こういう時はどうも嘘臭い感じがして、妹はそれが気に入らなかった。
(いつもは変態のくせに……!)
妹に『いつもは変態』と思われる兄も凄い。
「へ〜! 眉毛がね〜!」
「そうなんです。眉毛なんです。」
兄と妹の友達は、いつの間にか話し込んでいた。
「お、お兄ちゃん! 何で話し込んでるの! 早く出てってよ!」
「ごめん、ごめん!」
いつもはなかなか妹の部屋から出ていかない兄が、素直に謝り、部屋から出ていった。
「やっぱり、いいお兄さんじゃない。私、もうちょっと話したかったな…。」
(なんか……なんかムカつくよぉぉ……!!)
一時間ほどが経ち、妹の友達は帰っていった。
「お兄ちゃんって、外面だけはいいんだから!」
「ハハハ! もう子供じゃないからな。これが大人の接しかたという奴だ。」
「じゃあいつも私にしてるのも、大人の接しかたなの?」
「そ〜〜〜んなわけないだろ!」
「ええ!!?」
「俺は世界で唯一お前の前でだけ、大人としてではなく、なんの仮面もつけていない本当の俺をさらけ出すことができるんだ。」
「ど…どうして!?」
「兄妹だからに決まってるだろ?」
「お兄ちゃん……。」
「いや……兄妹というよりは……恋人…か。」
「そ、それは違う!」
「とにかく、俺が心を許せるのはお前だけなんだ! 我が妹よ! 生まれてくれてありがとう!! 本当にありがとう!!! 妹バンザ〜〜〜〜〜イ!!! バンザ〜〜〜〜〜イ!!!」
「ちょっ! 声大きいよお兄ちゃん!! やめてよ!!」
そう言いながらも、妹の顔は少し嬉しそうだった。
「妹よ、俺と結婚してくれ!!」
「調子乗るな!」
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