お風呂兄妹
「妹よ! 俺と一緒に『イン・ザ・バス』しようぜ!!」
兄は跳びはねながら妹の元へやってきた。
「え…? 何それ?」
妹が不思議そうに聞き返す。
「一緒に風呂に入ろうってことだよ!」
「え〜! やだよ〜! 私、もう三年生なんだよ?」
「『まだ』三年生だろ? ほら、あの国民的アニメ、『ちび何とかちゃん』もお前と同じ三年生だけど、父親と風呂入ってたぞ!」
妹は激しく悩んだ末、渋々風呂場へ同行することを了承した。
(あぁああぁぁぁ………ええ湯じゃけぇぇぇ………。そして……ええ眺めじゃのぉぉぉ………。)
湯舟に浸かりながら、兄は体を洗う妹を『観察』する。
「体なら昔みたいに俺が洗ってやろうか? 素手で。」
「嫌だよ…。何でお兄ちゃんの手で……って、昔みたいに!?」
兄は『しまった!』という顔をしたあと、『君が代』を歌ってごまかしはじめた。
「お兄ちゃん……幼い私に好き放題してたんだね……!」
「……だったら何なんだ?」
「お兄ちゃんの変態!」
「変……態……? 俺が………?」
「な…何でそこで嬉しそうな顔するの!?」
何故か兄は満面の笑みだった。
妹は頭を洗い始めた。
「なあ、『あれ』使わないのか?」
「え? 何それ?」
「あれだよあれ……え〜〜っと、対泡用絶対防御装置……?」
兄は妙なことを言い出した。
「もしかしてシャンプーハットのこと?」
「そう! それ!!」
「そんなの使わないよ。あれはもっと小さい子が使うんだよ。」
「うそっ!!?」
兄は大袈裟に驚いた。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「い……いや、シャンプーハットって、全年齢対象のアイテムだと思ってた……。」
「え……? もしかしてお兄ちゃん……シャンプーハットを………。」
「俺、今日は頭洗わない……。」
「うん……私もお兄ちゃんが頭洗うところ見たくない……。」
風呂場に気まずい雰囲気が漂う。
二人は湯舟に浸かりながら会話を始めた。
「お前、学校でいじめられたりしてないよな?」
「うん、大丈夫。皆仲良くしてくれるよ。」
「そうか。もし、いじめられたら俺に言えよ。お前をいじめる奴がいたら俺は……俺は……そいつを木っ端微塵にしてくれる!!」
「こ…恐いよお兄ちゃん……。でも、ありがとう。」
「細胞のひとかけらも残さんぞ!!!」
「いや、だから恐いってば…!」
「さて、風呂から上がる前に、俺の十八番! 『ステキなぞなぞ』を出題してやろう!!」
「え〜〜! あれ難しいよ〜〜!」
「ではいくぞい!」
兄は容赦無く問題を出し始めた。
『程よい甘みと食感が、人々を極楽へと誘う。そう、それははまるで禁断の果実。その果実には伝説がある。黄金の天使、もしくは白銀の天使と出会いし者に、神鳥の宝、授けん。さて、これは何の食べ物のことを示しているのでしょう?』
「意味分かんないよ〜〜!」
妹がムスッとした顔で言った。
「ハハハ! 駄目な妹ってのも悪くないな!」
「うう〜!! 早く答え教えてよ!!」
兄は妹の顎を指先で軽く持ち上げた。
「答えは『チョコボール』……ステキだろ?」
「あっ! そうか…! でも全然ステキじゃないね……。」
「おっ! 言われてみりゃそうだな! ハハハ!」
「アハハハ!」
風呂場が二人の笑い声に包まれる。
「隙あり!」
兄は妹の背後に回り込み、未発達の両胸に触れた。
「キャアアアアア!!」
妹は兄の顔にエルボーを繰り出し、そのまま風呂から上がってしまった。
兄は鼻血を垂らしながら、一人湯舟に取り残された。
「許せ、妹よ……。こうでもしなければ、さわやかなまま終わってしまう恐れがあったんだ……。やはり最後は俺が妹にたたきのめされる……それがベストのオチなんだよ……。」
兄はこの物語りのことを一番よく考えてくれているようだ。
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