妄想兄妹
いつも賑やかな音楽がれている妹の部屋が、今日は鉛筆の音だけが鳴り響く静かな空間へと化していた。
妹は明日のテストのため、勉強に全神経を集中させているのだ。
そんな妹の部屋のドアが、鉛筆の音に紛れてしまうくらい静かに開く。
「…ん?」
妹は手を休め、つと後ろを振り向いた。
ドアは閉まっている。しかし、部屋の中に見慣れないダンボールが置かれていた。
妹は気付かないふりをして、再び鉛筆を動かし始めた。
五秒ほど経ち、妹はもう一度顔を後ろに向ける。
「あれ…? ダンボールが無い………あっ!」
妹は声をあげた。ダンボールが妹の足元まで移動していたのだ。
「もう! お兄ちゃんでしょ!? 何しにきたの!? 今勉強してるんだから出てってよ! いっつも邪魔しに来るんだから!」
妹の言葉に反応したのか、ダンボールが突然小刻みに揺れだした。
「ちょっとお兄ちゃん! 言い過ぎちゃったのは謝るけど、ダンボールに入ったまま泣かないでよ! 妙に恐いから!」
妹が言葉を言い終えるか終えないかのところで、ダンボールが突然勢い良く上昇した。
ダンボールの底から、人間の体が出現し、そのまま立ち上がったのだ。ただ頭だけは、まだダンボールが被さった状態だ。
「ハッハッハッーー!! 騙されたな妹よ!! 見よ! 実はさっきのは嘘泣きだったのだ! しかも俺の正体は兄ちゃんだったのだーーー!!!」
「いや、『見よ』って……ダンボール被ったまま言われても驚く要素ゼロだよ……。大体、お兄ちゃんだってこと初めから分かってたし……。」
兄は「無念!」と叫び、ダンボールを頭から外し、股に挟んで跡形も無く潰した。
「いや〜、とあるゲームの真似をしてみたんだが、やはり現実じゃ上手くいかないな!」
「知らないよ! そんなことはいいから、早く部屋から出てってよ〜!」
妹は苛立った口調で言った。
「いいじゃないか! 勉強なんかほっといて、俺とエロトークしようぜ!」
「駄目だよ! 私、明日テストだもん!」
「じゃあさ、夢に満ち溢れたドリームトークなんてどうだ!? 明日のテストなんてどうでもよくなるぜ!?」
「ドリーム……トーク……?」
妹は兄のまいた餌にまんまと食いついた。
「そうだなぁ……例えば世界一の大金持ちになったらどうする?」
「大金持ちになったら………? う〜〜ん……孤児院に寄付したいな。」
妹は今の時代の老若男女、誰もが言わないようなことを言い出した。
「欲が無いなお前は〜。」
「じゃあ、お兄ちゃんだったらどうするの?」
「俺だったら、そうだなぁ……全財産をかけて家のセキュリティを万全にするかなぁ。何たって世界一の大金持ちだからな。」
「全財産って………それじゃあ本末転倒だよ……。」
「ハハハ! こりゃ一本取られましたな!!」
誰か、この兄を止めてくれ。
「じゃあ、次は理想の結婚相手についてだ!」
「結婚相手…?」
こういう時に兄の言うことは大体予想がつく。
「俺は妹だ。」
やっぱり。
「さあ、妹よ! お前の理想の結婚相手は!?」
兄の問いに、妹はハートブレイクな一言を言い放った。
「お兄ちゃん以外なら何でもいいよ。」
「そ…そうか……。お前は俺以外が相手ならならウンコでもいいと言うのか……。分かった……よーく分かった……。」
兄は妹に背を向けた。
「峠へ言ってくる…!」
「峠!?」
今宵、兄の車は峠のガードレールを突き破った。
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