なかよし兄妹(3/10)縦書き表示RDF


話を思いついたのはいいんですが、『こ…これはやり過ぎだろうという!!』という事で、夢の話にしました。
なかよし兄妹
作:HEERO



マジック兄妹


 「おはようお兄ちゃん。」
 さわやかな朝。妹が眠そうな…というより、何か嫌なことがあったかのような顔で、挨拶をしてきた。
 「おはよう。どうしたんだ? 何かあったのか? まさかあの日か? あの日なのか?」
 兄は小学三年生の妹相手に、アダルトクエスチョンを浴びせた。
 「怖い夢を見たの…。」
 「おっ! 怖い夢か? 興味あるな〜! 聞かせてくれよ! ちなみに俺くらいの歳になると、現実でも悪夢をみるんだぜ。怖い夢なんてその予行練習だと思えばいいのさ。」
 兄はテンションが下がった。
 「う〜〜ん……あの夢を説明するのは難しいよ……。とりあえず、私が学校から本を借りてくるところから始まるんだけど……。」
 
 

 妹の説明は大変分かりにくいので、夢の内容は筆者の文章で再現いたします。



 「おっ! お前また本借りてきたのか!」
 妹は学校から何かの本を借りてきた。
 「私本好きだもん!」
 「どんな本借りてきたんだ? エロいやつか? エロいやつなのか?」
 本当に嫌な兄だ。
 「小学校にそんな本ないよ・・・。」
 妹は馬鹿な問いに真剣に答えた。
 「甘いな! 高学年の図書館には、お前の想像をはるかに超える書物が眠っておるのだぞ!」
 兄は少しムキになった。
 「今回私が借りたのはマジックの本だよ!」
 そう言うと、妹はポケットからハンカチを取り出した。
 「まさかお前……マジックができるようになったのか……!?」
 「まだ二つだけどね!」
 妹は何のへんてつもないハンカチから、綺麗な花を出現させた。
 「す……凄い! お前がマジックを習得するとは! 今日からお前はマジカルシスターだ!」
 兄は実の妹を、成人向けゲームのタイトルのように言った。
 「だが、俺のマジックに比べたらまだまだだな!」
 「お兄ちゃんにマジックなんてできるの……?」
 兄が駄目人間だということを、妹は知っていた。
 「お前、俺を信用してないな? よし! 俺とマジック勝負だ!」
 兄は唐突に妹にマジック対決を仕掛けた。
 「お兄ちゃん……やめたほうがいいよ。だってこの前、私となぞなぞ勝負したらお兄ちゃん全然駄目だったじゃん……。」
 妹は兄の古傷を遠慮なくえぐった。
 「ふん! そんなこと言ってられるのも今のうち! 俺のマジックでお前を惚れ直させてやる!」
 それは妹に言う台詞ではない。
 「分かったよ。じゃあ、二人で一つずつマジックをやって、より凄かった方が勝ちってことでいい? どうせ私、あと一つしかマジック知らないし。」
 「異議あり! それでいいぜ!」
 今、兄の日本語に不可解な点があったが、あえてここは無視という形をとることにする。


 「じゃあまず、私がマジックをするからね! よく見ててよ!」
 兄は膝のカサブタが気になって妹の方をよく見ていなかった。この兄、自分が注目されるのは大好きなのだが、人のすることに注目するということはあまりしたがらない。
 「はい! なんとこっちから出てきました〜! どう? 凄かった?」
 「おお! むっちゃ凄かったぞ!」
 見てなかったくせに。
 「でも俺はもっと凄いぜ! 誰にも真似できないからな! それじゃ、外行くか!」
 「え……外?」
 兄は妹を車に乗せて街へ走り出した。
 「お兄ちゃん……一体どんなマジックをするつもりなの……?」
 「『奇跡の大脱出』だ!」
 「え…!?」
 兄は道路わきに車を止めて、妹だけを降ろした。
 「俺は今からあのガソリンスタンドへ……突っ込む!!」
 「えええええ!!?」
 それは純粋な勝利への執念なのか、それとも兄のプライドなのか、いずれにせよ無謀である事に変わりはない。
 「だ…駄目だよそんなことしちゃ! これはもう、無事に脱出できるかとか、そういう問題じゃないよ! 大犯罪だよ!」
 「フッ! 俺にスイッチを入れたのはお前だぜ?」
 兄は車のドアを閉め、自分の身体にロープを巻きつけた。
 「どうしよう、えらいことになっちゃった……。」
 妹の目から涙があふれた。
 「私のせい……? 私のせいでお兄ちゃんがこんな馬鹿なことを……?」
 兄はアクセルを思いっきり踏みつけた。車は迷いなく、目的地であるガソリンスタンドだけを見つめ、矢の如く道路を疾走する。
 「脱出してやるぅぅぅ!! 絶対に生きて帰るんだぁぁぁ!! 大丈夫ぅぅぅ!! 『痛いのさえ我慢できればぁぁぁ!!』」
 静かな街が、ガソリンスタンドを中心に火の海と化した。
 「お兄ちゃーーーん!!! お兄ちゃーーーん!!!」
 叫ぶ…というよりは、泣き叫ぶように妹は兄を呼び続けた。
 「あれは…!?」
 妹は燃え上がる炎の中に、見覚えのある影を見つけた。兄の車だ。
 「あ……!」
 車のドアが開くのが、炎越しに見える。
 「まさか……。」
 車の影から人の影が現れる。
 「うそ……。」
 人の影は妹の方に向かって歩き出す。
 「お兄ちゃん……?」
 人間の原型を失った、焼け焦げた兄が、ガッツポーズを高らかにあげつつ、炎の中からその姿を現す。
 「妹よぉぉぉ! 私は帰ってきたぁぁぁ!!」
 「ギャァァァァァァ!!! 脱出失敗してるぅぅぅぅ!!!」
 妹は獣じみた声をあげた。
 「な〜〜にを言ってる!! 成功したじゃないかぁぁぁ!! 現に俺は生きてるぞぉぉぉ!!!」
 兄が体から炎をあげながら、ゾンビのような動作で近づいてきた。
 「ヒイイイ!! 来ないでぇぇぇ!! 私達がやってるのはマジック対決でしょ!? 超人決定戦じゃないんだからぁぁぁ!!!」
 「なっ!? 俺がこれほど体を張ったというのに…!! 悪い子だ!! お前はお兄ちゃんを否定する悪い子だぁぁぁぁ!!!!」
 兄は尋常ではないスピードで妹の元へ走り出し、一瞬のうちに妹の後ろへ回り込んだ。そして振り向こうとする妹の首を両手で絞め、天に向かってこう叫んだ。
 「アイ アム ア チャンピオーーーーーン!!! アイ アム ア チャンピオーーーーーン!!!」
 その雄叫びは、燃え上がる街に虚しくこだました……。


 以上が、妹の見た夢の内容です。


 「という夢だったの……怖かったぁ……。」
 しかし兄は膝のカサブタが気になっていて、妹の話を全然聞いていなかった。
 (し…しまったぁ……。全然聞いてなかったぁ……。しょうがない、適当にごまかすか……。)
 「そうか、そりゃ怖い夢を見たな。兄ちゃん、失禁しそうになったぞ。あっ、そうだ! 今日は日曜だし、気分を変えて一緒にドライブでも行かないか?」
 その言葉に妹の顔色が変わった。
 「絶対嫌!! お兄ちゃんとドライブなんか行きたくない!!」
 「えええええ!!?? 何か知らんけどむっちゃ嫌われてる!!」


兄は一人、峠へと車を発進させた。 


マジック出来るとカッコイイですよね。
私はマジックを見るのはあまり好きじゃないんですが、やるのは好きです。
あっ、でもやった事ないです(何言ってんだろう……)。











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