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ガチャ41 リーデンブルグ王城へ

 ギルドの受付でダリアから報酬を受け取ろうとしていたリュウに、武骨な男が声をかける。


「国王様たっての願いでな。ゴブリンキング亜種率いる群れとオーガの集団を討伐した若き戦士に王国として礼をしたいということで、急遽お前を探し出して王城に招待するようにと言われたんだよ」


 マルコは仕方がないから来たんだと言わんばかりの顔をしている。


「それは、拒否権があるのか?」


「バカ。俺が無理矢理でも連れていくに決まっているだろ? 国王様のお願いは命令と一緒だよ」


 左の口角だけを上げ笑うマルコは練った闘気をリュウにだけわかるように開放して見せる。

 圧倒的な力量差を感じたリュウは、買い物を諦めて城に向かうことにした。


(……魔光圧気エーテルグラストじゃないぞ。別のエネルギー? 全く、コイツも化け物らしい。買い物はまた今度にするしかないな。しかし、どんなスキルがあったらこんな芸当ができるんだ?)


 リュウは身体にかかる圧力に鳥肌を立てつつもポーカーフェイスを保ち、疑問を解決するためマルコを鑑定した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名 前 マルコ

種 族 人間

ランク A

レベル  ???

HP ???/???

MP ???/???

筋力 ???

魔力 ???

耐久 ???

敏捷 ???

器用 ???

幸運 ???


スキル

【表示できません】


魔法

【表示できません】


称号

【魔切】【剛力】【闘気を極めし者】


加護

【表示できません】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リュウは思わず目を見開いた。


(何? 鑑定が上手く通らないだと? リィオスの時もそうだったな……)


 解析系スキルの対象とされたことに気がついたマルコは笑ってリュウへと話しかける。


「おい、リュウ。その顔からすると、解析系を使ったけど上手くいかなかったってところか?」


「……俺がスキルを使ったことに気がついていたのか」


「スキル発動直前の違和感を察知することは、近接戦闘をメインにする戦士にとって必要不可欠なセンスだからな」


「へぇ。それで、その素晴らしいセンスを持ったマルコのレベルは幾つなんだ?」


 どうせ答えないだろうと思いつつ、駄目元でリュウはマルコへと確認する。


「俺か? 200以上だ」


 マルコは何気ない顔でそう答えた。


「……レベル200超えだと?」


 思わず目を見開くリュウ。

 マルコは苦笑いしながらリュウを励ますように話す。 


「本当はもっと上だけどな。リュウ自身のレベルと解析系スキルのレベルが上がれば自然と見えるようになってくるだろ。

 多分、リィオスさんにも同じこと言われたんじゃないのか? まぁ、頑張れ。

 じゃあ、そろそろ王城へ行くか」


 リュウはマルコやリィオスとのレベル差が100や200では無いことを察すると同時にレベルの上限もかなり高い可能性に気がついていた。


(鑑定のレベルは8だぞ? 恐らくMAXは10のはず。鑑定のレベルよりも、俺自身のレベルが圧倒的に足りないことが原因か……。マルコはレベル200超えで、リィオスに至ってはどれほどかもわからない。城で国王としゃべってる場合か? そんな時間があるなら、早く飛龍の巣で修業したいところだ。

 まあ、マルコからも逃げられそうにはないし、仕方ないか。

 ……城に行く前に、ダリアに挨拶だけでもしておこう)


「……先に外で待っててくれ。まだ少しだけ用事があるんだ」


「わかった。早く済ませて来いよ?」


 頷いたリュウを見てマルコはギルドの外へと向かって行く。リュウはカウンターで成り行きを見守っていたダリアの目を見つめた。


「ダリア。行ってくる。城で王様に会ったら、そのまま旅に出ようと思う」


「……リュウ。次にあった時には、告白の返事を聞かせてね?」


 ダリアはリュウの手を強く握った。


「ああ。もちろんだ」


 リュウからの返事はいつも短い。

 だが、ダリアはリュウの低めの声を聴いて不安が和らいでいくのを感じていた。


「うふふ。修業、頑張ってね。いってらっしゃい!」


 妖艶な微笑みを浮かべ手を振るダリアに見送られながら、リュウは冒険者ギルドの玄関を出てマルコと合流するのだった。


◇◇◇


 長身で武骨な若者に率いられて、銀髪の青年は王城へ向かってメインストリートを歩いていく。

 すれ違う人々は特注のブリガンダインと大型の魔剣を持つマルコに思わず目を奪われ、時には黄色い歓声を上げている。

 時には露店を開いている商売人達まで、品物を売りながらも横目で何度も確認する始末だ。


「マルコ。お前、有名人なんだな?」


 リュウがマルコをからかうように声をかける。


「……俺は静かな方が好きなんだけどな。一旦名が売れるとこうなっちまうもんさ」


 マルコは大柄な体格に見合わないような小さなため息をつき、周囲から集まる視線から逃れるように歩くスピードを上げていく。

 しばらく歩き、王都の中心に辿り着いたマルコとリュウ。

 2人の頭上から巨大な建造物が影を落としている。


 リーデンブルグ王城は王都の中心に悠然と佇んでいた。

 白い真四角の石材を1つ1つ緻密に積み重ねて作り上げられており、膨大な時間と労力を割かれたことが伺える。

 城内の人々を守るという機能を重視した築城がなされているものの、城塔や城壁の配列は見る者を掻き立てる美しさと威容を誇っていた。

 主塔の先端には旗が掲げられており、そこには絢爛豪華けんらんごうかな黄金の盾が描かれている。

 

「これが、王城か。凄いな……」


 初めて城というものを間近で見たリュウが感慨深げに見上げながら歩いていると、マルコが立ち止まって振り返る。


「おい。そろそろ城門に着くぞ。シャキッとしろ」


「ああ」


 リュウが視線を前に戻すと、そこにはリーデンブルグ王城の門があった。門の扉は赤く染められており、2人の兵士が槍を持って守りに付いている。

 

 マルコはリュウを引き連れて、門番の兵士に声をかけた。


「ご苦労さん。ここ、通らせてもらっていいか?」


 王都守護隊副隊長から直接声をかけられ顔を綻ばせる兵士たちは、マルコが王命である人物を連れてくるように言われていたことを知っていた。

 マルコの後ろに立つ銀髪の青年は腰に美しい装飾がなされた魔剣らしきものを差している。内包する魔力は大きく、精鋭故に感知できてしまった兵士達は冷や汗が出始めていた。

 美しくも感情を感じさせない顔だちをしている青年からは、得体のしれない雰囲気が漂っている。

 兵士たちはマルコが連れてきたのだから間違いないはずだと思いながら、確認せずにはいられなかった。


「……マルコさん。後ろの彼が噂の『スーパールーキー』ですか?」


「そう。ギルド登録して間もなくゴブリンキング亜種とオーガの群れを打ち破った、期待のスーパールーキーだ。名前は……」


 マルコがリュウを紹介するために笑いながら後ろを向く。

 しかし、そこには普段から愛想のかけらもないのに、いつもより更に表情を無くしているリュウがいるのだった。

 

 マルコは額に筋を浮かべながらリュウの頭を殴る。


「……バカ野郎」


 回避が間に合わず殴られたリュウは不機嫌そうに声を上げた。


「マルコ! 痛いだろうが!!」


「お前な。門番に不審がられるような真似をしてるんじゃねぇよ」


 兵士たちはリュウがマルコのことを親し気に呼び捨てにしており、さらに敬語も使わないということに驚いていた。

 しかし、リュウはそんな兵士達を気にも留めずにマルコへの抗議を続けていく。


「ふざけるな。俺はお前に脅されて仕方なくついてきているだけだぞ。これからいよいよ面倒なことに巻き込まれると思えば不機嫌になって当然だろうが」


 嫌な予感がしたマルコは、外れることを祈りながらリュウに質問をせざるを得なかった。


「……なあ、リュウ。まさか、国王様の前でもこんな感じで話すつもりか?」


 リュウは傲岸不遜に笑いながら言い放つ。


「当たり前だろ? 俺は国王の部下でもなんでもない。一介の冒険者だ。面倒なことになりそうだったら王国から出ていくだけの話だな」


 謁見の場が荒れる。そう思ったマルコは頭を押さえており、師匠であり上司であるリィオスに対し怒りが湧いてくるのを感じていた。

 

(リィオスさん、恨みますよ! 謁見でなんかあっても俺はフォローしきれませんからね!!

 ……貴族の文官どもが喚き散らすんだろうな。堅苦しい場所は苦手だってのに、苦痛な時間が長引きそうだ。こうなったら、リィオスさんに何とかしてもらおう)


 マルコは短くため息をつく。


「さっさと謁見を終わらせた方がお互いのためになりそうだ。リュウ。行くぞ」


 マルコは騒がしくなるであろう謁見が少しでも早く終わるようにと願いつつ、リュウを王城の中へ連れていく。

 兵士達は悲壮感漂うマルコの背中を見て、心の中で『ご愁傷様です』と言って見送るのだった。

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