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ガチャ29 遭遇! 大鬼族オーガ

 リュウはオーガ出現が確認された国境沿いの荒野へ向かって全力で丸1日以上走り続けていた。幾つかあった小さな村を通り過ぎつつ、今も無人の平原を進んでいる。


 人気のない平原だったが生物は存在しているようだ。代表格である灰色狼の群れが、全力で駆けるリュウの周囲を囲む。

 リュウは灰色の狼が内包する魔力量からして大した相手ではないと感じていたが、初見のモンスターであったため、念のために鑑定をした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 グレイウルフ

種族 灰色狼族

レベル 8

HP 41/41

MP 6/6

筋力 28

魔力 7

耐久 13

敏捷 84

器用 18

幸運 13


スキル

魔法

加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(敏捷はなかなかのものだが……。大したことないな。フレイムタンだけで、十分だ)


 勝っている敏捷を生かしてそのまま逃げ切っても良かったが、リュウは敢えて足を止めることにした。

 日が暮れかけており、今日も徹夜をするというつもりなどさらさら無かったリュウ。

 大型魔道天幕の『聖天幕』を初めて使うことを決め、魔道機構を使用するために必要な魔石をいくつか確保することにしたのだ。

 

 リュウは黒革の巻かれた柄を軽く握り、腰を落としてグレイウルフ達が襲い掛かかってくるのを待つ。


 グレイウルフ達にとって、久しぶりに通った良質な魔力を身に宿す人族であるリュウ。

 それぞれが鋭く細い牙の間から舌を出し、餌を前に息荒くよだれを垂れ流していた。

 

 10匹のグレイウルフが獲物であるリュウを中心にして円を組む。


 逃げ道など無いのだと知らしめるかのように、徐々に範囲網を狭めていくグレイウルフ達。


「「……ウォーン!!」」


 示し合わせたかのように吠えたグレイウルフ達が一斉にリュウへ飛び掛かっていく。


 リュウは他より一回り大きなグレイウルフが、僅かに速く飛び出したことを見逃さなかった。

 

 漆黒のえる鞘内で刀身を加速させ、リュウの頭へかぶりつこうとしているグレイウルフ目がけて魔法銀製の紅刃を斜め上に振り抜いていく。


 灰色狼は大きく広げた口の端から尻尾の先まで切断され、勢いを失い地面へと落下する。

 飛び出した臓物が僅かに痙攣を起こしていた。


 群れのリーダー格であったグレイウルフがやられ、圧倒的な力量差を初めて感じ取ったグレイウルフ達。

 

 地を駆けていた5匹は恐怖に怯み身体を委縮させて足を止める。

 

 だが、空中に飛び上がった残りの4匹は止まることができなかった。

 

 動きの鈍ったグレイウルフ4匹それぞれに、高速でフレイムタンが振るわれる。


 夕焼けを受け朱色に輝く紅刃が通った後には、斬り捨てられた灰色狼の死骸が4つ。

 恐怖にひきつる瞳が痙攣した瞬間、切断面から赤黒い血を噴き出した。


 恐怖に震えている残りのグレイウルフ達は、リュウが仕掛けてこないことを理解すると散り散りになって逃げて行く。

 

 追うほどの価値を見出せなかったリュウは仕留めた5匹から聖天幕の魔道機構使用のために必要な魔石を取り出すと、先を急ぐことにしたのだった。


――――数時間後


 リュウは全速力で走っていたが、千里眼を使用しても先に見えるのは未だに緩やかな丘と草原のみであった。太陽は地平線の向こう側で4/5程沈みかけている。

 

(そろそろ、休んでおくか)


 夜目が効くわけでもないリュウは平原の中でも起伏の少ない地面を探す。


(ここら辺にしよう)

 

 丁度良い場所を見つけたリュウはグリードムントの指環を起動。手のひらに収まるサイズまで折りたたまれている聖天幕を取り出した。純白の布地に宿った聖なる気が煌めいている。


(改めて見ると、本当に小さいな。起動は初めてだが、これも『開け』と念じれば開くのか?) 


 そんなことを思いながら聖天幕に触れることで展開が始まった。聖天幕が空中に浮きあがり、リュウの頭上で大きく広がり影を作っている。

 特に骨組みなどは見当たらなく、この後どうなるのかと考えていると驚くべき現象が起きた。


 聖天幕の布が形状を変化させて、純白の生地のみで小さな民家ほどの大きさのドームを作っていく。

 数秒ほどで神々しいまでに聖気を放つ天幕が完成した。

 

(……流石はSランクのマジックアイテムだ)


 リュウは驚きながらも、布だけでできた天幕に頑丈さが備わっているのかを確かめるように触ってみた。


(なに? こいつは凄いな!)


 柔らかい手応えを予想していたリュウは、鋼のように固まっている布に驚愕する。

 この硬度であれば先ほどのウルフやゴブリンなどが攻めてきてもビクともしないだろうと感じたのだ。


 だが、そもそも低ランクモンスターは聖なる気が追い払ってしまうこと、さらには龍印に込めた魔力を使用して結界を張ることも可能だとリュウは思い出し、苦い笑みを浮かべている。

 

 力の抜けたリュウは聖天幕の中へ入り、出入り口付近にある魔道機構の操作板と思われるもの前に移動した。

 操作板には、魔石を掲げることで室内拡張、防音、温度調整機構の稼働が可能になると書かれている。


 グリードムントの指環からグレイウルフの小さな魔石を取り出して操作板に掲げた。

 操作板は魔石から魔力を吸引していく。魔力を取り込み切った操作板が一瞬白く光った瞬間、鈍い音が鳴った。


 操作板が光った際に閉じた目を、リュウはゆっくりと開いていく。

 視界には屋敷と呼べるほどの大きさになった空間が広がっていた。

 秋の寒さを感じさせないように温度も調整されている。防音効果はリュウ1人で確認しようがなかったが、下手な宿よりも快適なのかもしれないと感じていた。


(次は寝心地の良いベットや寛げるソファを買っておくか。コップや食器、スプーンにフォークなんかも用意しなきゃな)


 そんなことを考えながら、徹夜明けに戦闘をこなして疲れを感じていたリュウは地べたに横になると同時に素早く眠りについていた。


◇◇◇


ーーーー翌朝。


 朝日を分厚い純白の布越しに感じてリュウは目覚めた。

 身体を起こしながら劣竜革のジャケットの中へ手を入れる。東洋の龍が刻印された白銀の懐中時計を取り出した。ディザイアクロックの蓋を開け、時刻を確認する。

 時針と分針が朝の6:00であることを示していた。


(よし、いくか)


 聖天幕の外へ出て、リュウは聖天幕に触れつつ収納するよう念じる。聖天幕は素早く綺麗にたたまれていき、リュウの手元へと戻ってきた。グリードムントの指環へ戻し、リュウは再び全速力で荒野へ向かって走り出す。


ーーーー正午頃。


 太陽がリュウの真上に来るほど長い時間走っていた。代り映えのしない景色がずっと続くかと思われたが、ようやく荒れた大地まで辿り着いた。


 リュウは千里眼を使ってオーガが居ないか、くまなく探しながら国境に向かって北上して行く。

 

 しばらくそうしていると、千里眼に緑色で角を生やした大きな鬼型の怪物が数体ほど固まっている姿が映った。


 帝国へと向かう商人の馬車を引き倒して蹂躙し尽くした後のようで、人間の腕や足らしきものを牙の生えた口へ放り込んで咀嚼し、血を滴らせながら醜く顔を歪めている。


(……化け物め。恐らくオーガだな。鑑定だ)


 十中八九、オーガだろうとリュウは思っているが、敵の戦力を正確に測るために鑑定する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 オーガ

種族 大鬼族

レベル 62

HP 1244/1244

MP 79/79

筋力 251

魔力 21

耐久 233

敏捷 181

器用 94

幸運 62


スキル 【棍棒lv4】【危機察知lv2】

魔法

加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(流石は単体でCランクの危険度があると認定されるほどのモンスターだ。高い筋力、耐久、敏捷を生かして肉弾戦を得意とするタイプか。こいつらに、どうすれば俺の雷魔法が通る?)


 リュウは人間を食べ、喜悦きえつしているオーガどもの顔面に、今すぐにでも雷魔法を打ち込みたいところだと感じていた。


(……高い耐久を突破するための方法を考えなければ仕留めることはできないだろう。ステータスで負けている以上、接近戦は選択肢に上がらない)

 

 リュウがしばらく考えていると、悪戯好きな師匠リィオスの言葉を思い出した。


(リィオスは俺の魔法を受けた時、魔力値の倍近くの攻撃力があると言った。あの時は、貫通力を高めるために穂先を鋭くすることばかり意識していた。直径自体はかなり大きかったはず。それであの威力だったわけだ。

 前回より圧縮することができれば密度が上がり、さらに貫通力が高まるだろう。

 ドリルのように螺旋回転を与えるのもありだな。やってみる価値はある)


 やるべきことを決めたリュウは、体内で循環する魔粒子を爆発させて魔光圧気エーテルグラストを開放。

 全身から紫電を放出させる。

 不規則な動きの閃光が空中を走り抜けて行った。

お読み頂きありがとうございます。

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