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ガチャ19 レアガチャと刻印

「いらっしゃいませ! リュウさん。また来てくれたんですね?」


 カウンターには恰幅のよい女将ではなく、やすらぎ亭の看板娘が立っていた。聞こえてくる声から瑞々しい若さが伝わってくる。


「エリー、この前の部屋空いてるか?」


「3階の角部屋ですよね? 空いてますよ」


「しばらく借りたいんだが」


「何日間、泊まりますか?」


(どれくらい修業するかはわからないが、少し長めに借りておくか)


「とりあえず、1ヶ月で」


「朝夕の食事つきなら銀貨10枚になります」


「思ったより安いな。それで頼むよ」


「わかりました! 今度は長く泊まって下さるんですね! ……嬉しいな」


 最後の方はあまりに小さい声になってしまいリュウには聞き取れなかった。頬が熱を持ち始めたことに気がついたエリーは誤魔化すように『ありがとうございます』と言いながら頭を下げる。


「よろしくな」


 慌てて頭を下げるエリーに軽く声を掛けたリュウは3階の角部屋に上がっていった。

 

(……ようやく、報酬をポイントに変換できるな!)


 唯一ある椅子に腰掛け、布袋から金貨を取りだしてはテーブルに放っていく。

 100万円の価値がある黄金のコインが小さな山となった。

 全ての金貨を出しきったリュウはレアガチャスキルを発動。虚空からスマートフォンを出現させ、ガチャポイントに変換していく。


(ガチャポイント550万!  ガチャ5回できるな!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

GP5,500,000 


NO ITEM.NO LIFE.キャンペーン


※ガチャ1回につき、1,000,000使用 いずれのガチャもC~Aランクが排出されます。キャンペーン限定ガチャはランクA以上確定!!


キャンペーン限定! スペシャルアイテムガチャ


キャンペーン限定! スペシャルスキルガチャ

※2回目以降は100,000,000使用


魔法ガチャ


武器ガチャシリーズ(欲しい武器種ごとのガチャ)


防具ガチャシリーズ(欲しい防具種ごとのガチャ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(武器や防具は今のところ充分だ。今回はAランク以上確定のキャンペーン限定スペシャルアイテムガチャに全部突っ込むぞ!)


 画面の『キャンペーン限定! スペシャルアイテムガチャ』を選び『5連続回す』をpushする。


(頼むぞ! SSランク、こいこいこいこいこいこいこいっ!!!)


 高ランク確定のファンファーレと共に、金の卵が黒猫の口から5つ転がって出てきた。

 画面には入手したアイテム一覧が表示されている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

残りGP500,000 


NO ITEM.NO LIFE.キャンペーン


キャンペーン限定! スペシャルアイテムガチャ


※キャンペーン限定ガチャはランクA以上確定!!



1  ランクS :聖天幕

2  ランクA :盗賊王のマスターキー(レプリカ)

3  ランクSS:マギ・スクロール【ワープ】

4  ランクSS:グリードムントの指環

5  ランクS :ディザイアクロック

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(きたきたきたぁ! よぉおおし!! SSランクが2つか! 他の物もAとSだ。大金を叩いた甲斐がある!!)


 普段はポーカーフェイスのリュウもこの瞬間だけは少年のように興奮して頬を上気させている。

 恐らくは凄まじい性能を誇るマジックアイテム達。

 どのような効果があるのかを精査するべく、リュウはスマートフォンに写る項目を1つずつ丁寧に確認していく。


聖天幕 

 大型の魔導天幕。布に聖なる力が付与されており、低ランクモンスターを寄せ付けない。魔導機構として室内拡張、防音、温度調整の機能を備える。魔導機構使用には魔石が必要。


盗賊王のマスターキー(レプリカ)

 どのような錠前でも開けてきた盗賊王のマスターキーのレプリカ。魔法で鍵の形を変え、どのような錠前でも開けることができ、解錠の際に罠を解除することができる。3回使用すると壊れる。


マギ・スクロール【ワープ】

 所有者が認識したことのある空間に転移できる魔法【ワープ】を封じ込めたマギ・スクロール。チャージ2


グリードムントの指環

 強欲で何でも食べるモンスター『グリードムント』の魔石を古の魔導士が加工して作った指環型のアイテムボックス。無限と思えるほどの収容量を誇る。


ディザイアクロック

 魔法の懐中時計。所有者の近くにランクの高いアイテムなどがある場合、文字盤がディザイアモードに変化。分針が方角を指し示す。近づくとⅩⅡが北。Ⅵが南。Ⅲが東。Ⅸが西となる。


(野営する機会も頻繁に出てくるだろうし、聖天幕の機能は日本に、いた記憶が抜けない俺にとって正直助かるな。広い個室にエアコン完備! いいじゃないか。カスタムしたいな……。


 盗賊王のマスターキー(レプリカ)も回数上限があるけど、ディザイアクロックも合わせて使えばかなり有用だな! 罠を気にせず開けられるなんて凄すぎるぜ盗賊王。有り難く使わせてもらおう。


 マギ・スクロール【ワープ】は納得のSSランクだな! 憧れのワープ!! 切り札として使い所を見極めなきゃな。


 グリードムントの指環もSSランクか! 指環型のアイテムボックス。手に入れたアイテムも入れられるし、大型のモンスターを討伐したとしても、そのまま持ち運べるのは嬉しいな! だが、どうしてマジックポーチを買った後に出るんだ! まったく。高かったんだぞ。手袋しても使えるかどうか、早めに確認したいな。


 ディザイアクロックは、個人的に高く評価できるな。ガチャを回すには金目のものが必要だ。秘境、魔境、ダンジョン、まだ見ぬ土地。お宝は俺が奪ってやるから待ってろよ!)


 幾つものレアアイテムを手に入れ満足感に浸る。

 この至福の時をまた味わうために、さらに強くなってモンスターを倒し、その内ダンジョンを攻略してやろうと強く思ったリュウであった。


(よし。余韻に浸るのもここまでだ。やるべきことをやろう。まずはこの高ランクマジックアイテム達や武具、防具に【刻印】をするか)


 SSランクスキル【刻印】をリュウは盗難防止に最適なスキルだと認識している。


 【刻印】のスキルは、獲得したモノに刻印主の魔力紋を刻印できる。刻印したモノの位置はどれ程離れていても把握でき、許可なくモノに触れようとすると刻印に込められたMPを消費して魔力障壁が展開されるというもの。


 魔力紋は固有のものというのがユグドラシルの常識。貴族も盗難されても取り返しやすくするために、家宝には必ず魔力紋を刻んでいる。市場に流通してもすぐに魔力紋で特定可能だからだ。

 ただし、魔力紋登録を前提に作られたギルドカードと違って、他の物は魔力紋の登録作業が難しい。


 そういった物は【授印】スキル持ちの職人が多大な時間をかけて登録作業をする必要がある。職人の数も王国全土で見て5人程度しかおらず、皆王国に囲い込まれている状態のため、魔力紋登録は法外な利用料金がかかる。膨大な資金のある貴族や大商人といった者しかできないため、授印で魔力紋を家宝に刻んだ者達は羨望の眼差しで見られるほど。

 

 リュウはそんな【授印】の完全上位スキル【刻印】を手に入れている。後に新たな面倒事を運ぶとは知らず、防犯に便利だと考え、フレイムタンや魔弾の拳銃を始めとしたレアガチャで手に入れた全ての装備品とアイテムに刻印をすることにした。


(装備品とマジックアイテムの合計が10だから、キリよく魔力紋1つにつき10MPずつでやってみるか)


 ステータスを確認すると残りMP89。100に少し足りないためどうするかと悩むが、以前MPポーションを購入してマジックポーチにしまったことを思い出すと、素早く取り出して飲み干した。

 

(不味い! だが、MPが139まで回復したな。これで問題なくできる)


 紅い魔法銀製のショートソードを左手で握り、燃えるように赤い刀身の一部に魔力紋を刻むイメージで右手を添える。橙色の光が刀身に添えた右の掌から立ち上り、一瞬で魔力紋を刻んだ。


 刀身には魔力紋を刻む時にイメージしやすかった『東洋の龍』が刻印されている。


 Aランクを越える魔剣ともなれば【授印】スキル所持者が5人がかりで登録に3日はかかるものを、瞬きをするまもないほどの短時間で終わり、しかも微細なタッチで龍まで描き切ったリュウは既に王国1の魔力紋登録者であると言えるが、幸か不幸か本人はそのことをまだ知らない。


(よし、魔力紋の龍も気に入った! よく見ないとわからないが、なかなかカッコいいじゃないか。龍印と呼ぼう!)


 その後も王国お抱えの職人が聞いたら卒倒するようなスピードであっさりと残りの装備品とマジックアイテムに龍印を刻んでいった。


「ふーー。これだけMPを使うとしんどいな」


 ガチャを回し【刻印】を済ませて一息つけると思ったところで挽課の鐘が鳴る。ちょうど小腹がすいた頃だと思っていると少女の透き通るような声がドアの向こうから聞こえてきた。


「リュウさん。晩御飯の時間ですよ!」


「ああ。今いく」


 油で揚げる音が階段まで聞こえてくる。涎が垂れそうになりながら足早に食堂へいく。


「親父さん。今日は何を食わせてくれんるだ?」


 やすらぎ亭、唯一のシェフは職人気質で口数が少ない。聞かれたことに対して簡潔に答えた。


「ビッグバードの唐揚げ、秋野菜のサラダ、パン、バロシュのポタージュだ」


 フリルのついたエプロンを着たエリーが小走りで料理をテーブルへ運んでいく。他の宿泊客も集まりだした。

 全ての料理が並んだところで食事を始めると、配膳を終えたエリーがエプロンを着たままリュウの目の前に座った。


「ここ、いいですか?」


「いいよ」


「……やった!」


 軽くガッツポーズをとるエリー。


「何で、嬉しそうなの?」


 恥ずかしそうに赤くなった頬をかきながらしばらく沈黙するが、リュウは気にせず唐揚げを食べ続けた。

 しばらくすると、勇気を出してエリーが喋り出す。


「……リュウさんと初めてあった日、もしお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかなって思ったんですよ! だから、長く泊まってくれるのが嬉しくて。そう思ったら、一緒に食事もしたいなって思っちゃって……嫌でしたか?」


 年下の美少女が円らな瞳を潤ませながらリュウを見上げるように見つめている。


「い、嫌じゃない。大丈夫だ」


「……本当ですか?」


「あ、ああ」


「よかった!! えへへ」


 花が咲くような笑顔を見せ喜ぶエリー。こんな妹がいるのも悪くないと思いながら、雑談をしながら一緒に食事をした。あっという間に時間が過ぎ、皿の上にはもう何も残っていない。


「ごちそうさま。エリー。おやすみ」


「リュウさん。おやすみなさい!」


 エリーと別れて部屋に戻ったリュウは、リィオスからの課題を思いだした。素振り1万回は夜も遅いため明日からやることに決め、今日はMPを使いきることにした。


(残りMP39。魔弾の精製は1発しかできないな。残りはどうするか……。【刻印】ならMPを指定して魔力を流し込めるな! フレイムタンの龍印に19追加しよう)


 魔弾の拳銃の弾倉に新たに1発の弾を精製した後、フレイムタンを手に取り龍紋に右手を添えてMPを流し込んでいく。すぐにMPの追加が終わり、MPが0になったリュウ。


(なんだ!? 息苦しい! 動けん! 駄目だ、もうむ……り……)


 魔力枯渇現象が起きて顔を真っ青にしたリュウは気絶しかけている。ふざけた師匠が笑っているような気がして怒りを覚えつつ、意識が遠退いていった。


 鳥のさえずりで目を覚ましたリュウはリィオスに文句をいってやると心に誓いながら、本当にMPが増えているのかを確認するためにステータスオープンを唱えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名 前 リュウ

種 族 人間

ランク F

レベル 24 

HP 222/238

MP 271/271

筋力 131

魔力 88

耐久 128

敏捷 164

器用 89

幸運 EX


スキル

【レアガチャlv1】

【刻印lv1】

【MP増加lv1】

【身体能力強化lv2】

【千里眼lv2】

【鑑定lv8】

【 異世界言語翻訳・通訳】

【剣lv2】

【銃lv1】


魔法

【雷魔法lv1】

【サバイバル魔法lv10】


称号

【ゴブリンキラー】


加護

【ガチャ神の加護】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(マジかよ! 5%くらい上がってるんじゃないのか!?)


 元Sランク冒険者の肩書きは伊達じゃないと思いつつ、こんな思いを毎晩するのかと考え出して、やりきれない気持ちになっていと朝課の鐘が鳴り響く。


(素振り1万回もなかなかふざけてやがる。だが、やれば身になるとわかってしまった。やるしかないな)


 澄み渡る青空の下を駆ける。リュウは修業できそうな深緑の森へ向かうため、城門に向かっていった。

お読み頂きありがとうございます!


次回は本格的に修業が始まります。

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